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坂本  修 *憲法特集*
迫る濁流・九六条先行改憲を前にして ――「第一の天王山」に勝利を
松井 繁明 憲法は悪文か?―改憲論者の宣伝に抗して
松島  暁 九六条改憲と立憲主義
岸  松江 女性の視点で語る憲法
石川 賢治 二〇一三年滋賀弁護士会憲法記念の集い
井上 洋子 社会権規約委員会第三回日本政府報告書審査を傍聴して〜NGOの重要性と義務〜
林   治 ホンダ期間契約社員雇止め事件〜不当判決〜
鈴木  亨 自由法曹団岐阜支部事務所交流会のご報告
室  穂高 「明日の自由を守る若手弁護士の会」第一回総会
自由法曹団女性部総会のご案内
森  孝博 「もう一度 空へ」(JAL不当解雇撤回裁判原告団編)の普及にご協力下さい!



*憲法特集*

迫る濁流・九六条先行改憲を前にして ――「第一の天王山」に勝利を

東京支部  坂 本   修

 四月一日から、憲法問題の学習会の現場に「一人の話し手」として復帰し、現在までに三カ所話してきました。私は五月集会特別報告集に、「憲法学習会『現場復帰』にあたっての〈メモ〉」を投稿し、そのなかで「九六条先行改憲策動の重大な危険、これと立ち向かうことの重要性」を書いています。しかし、まったく不十分でした。「団通信」(四月二一日号)での泉澤事務局長の呼びかけを機に、三回の学習会を経ての経験にもとづいて、より鮮明に、私の問題意識を述べさせてもらいます。

〈九六条先行急襲改憲攻撃が迫っている〉

 内閣支持率の高止まりにも勢いを経て、安倍首相は九六条改憲を今度の参議院選挙の目玉「公約」とし、その後、国民投票法での三つの検討課題を処理したうえで、改憲発議をすることを何度も断言し、自民党もそのことを正式に決定した。

 (1)なんのための改憲かはぼかして、九六条先行改憲を公約とする、(2)参議院選挙で勝利し、国民の審判で公約は支持されたとして、各院の三分の二以上の賛成で発議し、国民投票で九六条をまず改憲するという、安倍首相を先頭とする改憲勢力の二段階改憲戦略は固まったとみなければならない。

 九六条先行改憲は、「戦後レヂームの解体」、二〇〇四年までに「九条改憲」を掲げて「参議院で歴史的大敗」をした安倍首相が敗北に学び、今度こそと策を練り、腹を固めての攻撃である。

 それにはいくつもの利点があると、安倍首相と自民党は計算していると思われる。(1)いきなり九条改憲で打って出れば、世論調査で六割を占める九条改憲反対の国民のつよい批判を受け、選挙でも後退する、(2)強引に発議しても、国民投票では必ずしも勝算が立たない、(3)九条改憲反対の一致点での共同は、七五〇〇の九条の会を主力に、容易ならない力になっているが、九六条改憲なら、あるいはその力を分断し、反対のエネルギーを弱めることができる、(4)改憲賛成はいくつもの世論調査で多数派である。いつまでも、なにも改憲できない憲法では困る。改憲手続きのハードルを低くして、改憲しやすくしようといえば、国民の支持を得られる、(5)国会での三分の二発議は、衆議院ではもう可能である。参議院でも九条改憲となると簡単ではないが、参議院選挙で勝利すれば、九六条改憲なら三分の二をとれる可能性が十分ある。

 私たちの反対運動が時機を失したり、阻止にふさわしい広がりとつよさを持ちえなかったら、彼らの計算どおり、策動が実現する危険は軽視できない。しかも、九六条先行改憲を争点とする参議院選挙は間近に迫っている。安倍内閣の以前とは違う“急襲”、しかも新たな“攻め口”からの攻撃にどう立ち向かうかが問われているのである。

〈「第一の天王山」ととらえている〉

 九六条先行急襲改憲とのたたかいは、たとえれば、憲法闘争の「第一の天王山」のたたかいだと、私はとらえている。

 今、目の前に迫っている九六条先行改憲のための発議を許し、国民投票で改憲を許すかどうかは、「幾多のたたかいの一つ」ではすまない。九六条改憲自体が立憲主義の憲法を破壊する暴挙であるが、それを許すことは、法技術的に次の改憲を容易にするというだけのことではない。民意を歪曲した「虚構の多数」政権政党が中心になって、憲法を破壊することができるという既成事実を作らせることになる。それは、政治的、社会的に“壊憲”の濁流をつよめ、“護憲”の堤防を「劣化」させることになろう。国民に改憲に慣れさせ、以後の連続改憲――九条改憲を中心とする自民党改憲草案型の全面“壊憲”――を一段とたやすくすることに通ずる。

 一方、九六条先行改憲の発議を阻止したら、あるいは仮に発議は阻止できなくても国民投票で阻止したら、“せめぎ合い”での彼我の流れは大きく変わる。改憲勢力の挫折は手痛く、憲法を守る私たちの力は、飛躍的につよまる。憲法を守り、憲法を生かす日本への道を切り開くことは多くの国民の確信になるにちがいない。

 “せめぎ合い”には大事な戦機がある。九六条先行改憲急襲を許すかどうかは文字どおり“天地の違い”といえよう。だから、私は「第一の天王山」にたとえたのである。

〈迎え撃って勝利する展望をどこにみるか〉

 「第一の天王山」に勝利することは可能だと私は考え、学習会ではそう話している。それについて語る紙数はないので、くわしくは憲法メールに掲載する私の〈マイ・ノート〉を参照されたい。ただ一つ、ここで強調しておきたいのは、九六条先行改憲という詐術的な戦術は、大きな弱点を持っており、これをつかんで反撃すれば、ピンチをチャンスに変えて改憲策動を阻止する展望が生まれているということである。

 私たちはこの一〇年以上にわたって「『戦争をする国』にする九条改憲反対」というわかりやすい「一致点」で共同し運動してきた。今回のいわば“からめ手”からの九六条先行急襲改憲という攻撃に機敏に、そして幅広い共同で立ち向かえるか、正直のところ私は心配した。しかし、この間の運動をみれば、私たちは新たな勢いで立ち向かいつつあるといえるように思う。戸惑うことなく、怒りをつよめ、危機を直視してギアチェンジしているといっていい。それだけではない。立憲主義を根底から否定、破壊するものとして、いままで改憲論者であった人々もこのようなイカサマ攻撃は許さないとして、反対の隊列に参加し始めている。著名な改憲論者である小林節慶大教授が「毎日」「赤旗日曜版」「赤旗」と連続してインタビューで痛烈な批判を展開しているのは、そうした現われの一つである。マスコミでも「朝日」「毎日」「東京」など、批判が相次いでいる。詐術はその正体がバレれば、策動者の足を痛撃する。安倍首相らのすでに述べた計算(3)、(4)は裏目に出始めている。

 「機敏にたたかい抜けば、勝利は可能だ」「『第一の天王山」』での勝利を得て改憲策動反対での全面勝利を」と、つよく思う。そしてそのために、守川幸男団員の提起している「ありとあらゆる活動」(「団通信」五月一日号)のなかの一つとして、私は草の根の学習会で語り歩き始める……。


憲法は悪文か?―改憲論者の宣伝に抗して

東京支部  松 井 繁 明

 緊迫をつよめつつある憲法改悪をめぐって、主なテーマが立憲主義・九条と国防軍、人権諸規程、国民主権と選挙制度、そして急浮上してきた九六条改憲論などにあることは明らかであろう。これらについては他の論稿を待つことにして、ここでは憲法の文章(文体)について述べたい。

 改憲阻止の勢力のなかではあまり注目されていないが、改憲論者はつぎのようにも主張している。

 ―明治憲法が名文であったのにたいし、現行憲法は欧文の直訳のようで、日本語として悪文である。そのことだけでも改めなければならない。なにか言いがかりのような批判だが、国民のあいだには意外な影響をおよぼしているらしい。

 明治憲法のどこが名文か、と問われるとこの論者が共通して挙げるのは「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラズ」(明治憲法第三条)である。名文と悪文の基準を示さないので、なぜこれが名文なのかが判らない。ただこの文章が五七七となっていて読んで調子がよい、ということなのかもしれない。しかしそんなことをいえば「こじきをし、又はこじきをさせた者」(軽犯罪法第一条二二号)だって五七五なのだが、これを名文だという評価は聞いたことがない。

 この明治憲法第三条をつとに悪文だと断じたのは、さきごろ亡くなった作家の丸谷才一氏である。以下はほぼ丸谷氏の受け売りである。

 知られているように明治憲法第三条はプロイセン憲法に由来する。しかしプロイセン憲法の元文は「皇帝の身体は神聖であるから損傷してはならない」。これを「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラズ」と翻訳したのである。両者は、似ているようにみえて大きな差がある。プロイセン憲法では対象が「皇帝の身体」に限られ、禁止行為は「損傷すること」のみである。このような立法が妥当かどうかはともかく、なにが禁じられ、なにが禁じられていないか、その区別は明確である。

 これにたいし明治憲法のばあい、対象は天皇にまつわる諸々の事象にひろがり、禁止されるのは損傷に限らず、言論による批判をふくむすべての「侵す」行為を包含する。ここに、のちに治安維持法の成立を許す、法規範としての脆弱性があったといえるであろう。

 法規範を表現する文章の基本は、区別の明確性であって、これが表現されているものが名文、そうでないものは悪文なのである。

「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」(憲法九条)。

 ここでは、なにを「放棄」し、なにを「保持」しないのか、なにを「認めない」のかが、明確に表現されている。名文なのである。

 国民向けの宣伝では憲法悪文論を主張しつづけている自民党も、その改憲草案ではさすがに文体まで全面的に変更してはいない。現行の規定に削除や加筆をするだけなので、文体の変更は不可能だからである。

 それどころか前文の改訂案などをみると、現憲法の前文が統一した思想と深い理念に裏づけられているのにたいし、あまりの無思想、あまりの理念の欠如にあきれるばかりの、貧相な文体と化している。

 講演などで憲法の文章論などにふれる時間的余裕はまずないだろうが、改憲論者がこんな宣伝をしていることにも注意して、逆に憲法前文などを「声に出して読む」こと(内容がすっきり理解できる)などを提言してみたらどうだろうか。


九六条改憲と立憲主義

東京支部  松 島   暁

 四月常幹(四月二〇日)での、九六条改憲をめぐる私の発言について、四位直毅団員から、立憲主義に関連して先日わざわざお電話をいただいた。そこであらためて九六条改憲についての四月常幹での発言の概要と若干の補足を記しておきたい。

 九六条改憲を七月の参院選挙において実質的争点とさせない取り組みが今、緊急に必要ではないかと考える。

 護憲勢力が統一して選挙をたたかう体制がとれない現状では、参議院において改憲勢力の三分の二を阻止することは難しいものと思われる。それゆえ、参院選挙において、九六条を含む憲法「改正」問題が実質的争点と化することを阻止し、九六条改憲など、まことに愚かで、公約(マニフェスト)にかかげることことすら恥ずかしいという世論形成を目指すべきである。「九六条改憲はわが国の恥」「小狡い九六条改憲は認められない」、「自分たちの利益=改憲のためにルールを変えてしまえという、その手口は、うす汚れており、小狡いのだ!」という世論をである。

 このことを二月二三日付の河北新報・社説は「野球で、貧打に悩むチームが『三振』を『四振』に変えてくれと相手チームに持ち掛けても、通るはずがなかろう」と評し、改憲論者である小林節慶大教授はこれを九六条改憲を「邪道」と表現している(四月九日付毎日新聞夕刊)。このような改憲を許せば、この国の政治家も国民も世界の笑いものとなるであろう(猪瀬直樹東京都知事の「失言」レベルではない)。この感覚を共有できるマスコミの論説委員クラスは層として多数存在すると思う。

 知りうる限りではあるが、憲法改正手続(要件)そのものを改憲対象とした例はない。ましてや、海外の立憲国において、「手続条件が厳しすぎて改憲できないから、先ず条件を緩める」のだと「公言」して改憲した国の存在を知らない。

 自民党の「日本国憲法改正草案Q&A」が下敷きにしたと思われる、山岡規雄・北村貴「諸外国における戦後の憲法改正【第3版】」(調査と情報六八七号)によっても、改正手続を改正対象とした例はない。紹介されているほとんどは、投票権ないし統治機構に関するもの─大統領の三選禁止、議員定数の変更、国民投票対象事項の拡大、投票年齢の引き下げ等々─がほとんどである。

 日本国憲法の改正条件が、アメリカ・ドイツ・韓国等々と比較しても厳しいものでないこと、日本と同等ないしそれ以上に改正要件が厳格な国々において改正が複数回実施されている例は、前記「調査と情報」はじめ様々に紹介されている。わが国において改憲が為されなかった固有の根拠は、手続要件の厳格さにはなく、改憲勢力が、九条や前文等の憲法の根幹にかかわる部分を改正対象とした結果に他ならない。統治の手続部分に限定しての改憲であればその可能性は十分あったのである(歴史のイフではあるが)。

 この意味においても、九六条改憲論には正当性のないこと、広く世論化しうる可能性があるし、しなければならないのだ。簡明な意見書を作成し、議員・マスコミ・世論に打って出るべきである。

 九六条改憲が立憲主義の破壊であることは、論をまたない。問題は、九六条改憲がいかなる意味において立憲主義の破壊なのか、何故に立憲主義は護られなければならないのかにある。

 改憲勢力は、「国会の三分の二というハードルが、国民の憲法改正へのアクセスの障害となっている」とか「国民の過半数が改憲を望んでいるにもかかわらず、国会議員の三分の一が改憲に反対すれば、これを阻めるのはおかしい」と主張する。しかし、立憲主義とは、「過去」の多数意思によって、「現在」の多数意思を拘束するもに他ならず、当然のことであり、なにも怯む必要はないのだ。

 トマス・ペインは「墓の中に入っていながら、なおこの世を統治しようなどという虚栄心ないし思い上がりは数ある専制のなかでも、それこそ笑うべき傲慢不遜な専制と言うべき」だとして立憲主義を攻撃した。立憲主義を守るということは、過去の制憲者意思をもって、現在の多数意見、民主主義的に形成された多数意見をも拘束するものであり、ペイン流にいえば、「墓場からの統治=専制」を擁護することに他ならない。

 「立憲主義は、現在の多数者の幸せと自己実現の邪魔をしている」との攻撃に晒されている以上、なにゆえに私たちは立憲主義を擁護するのか、実践的にも理論的にも応答する責務がある。


女性の視点で語る憲法

東京支部  岸   松 江

 この間、茨城、埼玉、愛知、三重などの国際女性デーに呼ばれ、女性の視点から憲法を語る講演を行いました。思いがけず好評でその後も同様の講演依頼が続いています。概略を以下に紹介します。

一 大きな「気づき」を与えてくれた憲法

 今でさえ労働弁護士としてアドバイスする立場にある私ですが、二〇代の頃、小さな子どもを抱えて解雇されたり、就職面接試験で何度も落とされた苦い経験があります。女性だから母親だから仕方ないのかなと思っていた私に、「女性だからといってあきらめることはない」という「気づき」を与えてくれたのは、日本国憲法と女性差別撤廃条約でした。憲法を勉強して弁護士という職を得、今は、憲法のお話をすることで、みなさんと出会う機会を与えられました。

 そういう意味で、憲法は私の人生を切り開いてくれた導きの書です。だから私はこの憲法が大好きです。そして私は、この憲法が、私だけでなく全ての女性たちを導く力を持っていると信じています。

二 日本国憲法二四条を中心に

 現憲法の前の明治憲法下では、女性は選挙権もなく、戸主の許可がなければ結婚も家を買うこともできませんでした。結婚後は、自分で得た財産であっても全て夫に管理権がありました。女性は一人前の人間として扱われていなかったのです。

 それを大きく変えて「家」制度を廃止し、日本の女性を一人の人間としての権利をもたらしたのが憲法二四条です。

 二四条はいわば家庭内の「個人の尊厳原理」を宣言しています。それぞれの家庭や団体、国の構成員である一人ひとりが大切にされ幸せになることが、その家族や団体、国全体が幸せになると憲法は考えるのです。

 また、憲法の平和主義は、憲法九条にとどまらず、戦争遂行に利用された女性差別、家制度、人権侵害、天皇主権制度、言論弾圧・・など全ての制度を変えて平和を担保しようというものです。二四条もそのひとつです。

三 二四条と他条項との関係

 二四条は家庭内の暴力を否定しています。九条と併せると、憲法は私的暴力と公的暴力を否定しています。両者の暴力は密接に関連していますから、憲法の平和主義は深いです。

 二四条と一四条を併せると、憲法は家庭内の差別と、職場や地域など公的な男女差別を禁止しています。

 また、家庭内の実質的平等を実現するためには、保育園や介護施設など二五条による社会保障の整備が欠かせません。

 女性たちは子育てや夫との関係、職場のことなど、家庭内外で様々な悩みを抱えています。それを解決するヒントが憲法にあると私は思います。そんな憲法が持つ力を多くの人たちに実感し身近に感じてほしいと思います。

四 多数派である女性の役割

 女性は人口の五一%の多数派です。そのうえ多くの女性が選挙権のない子どもたちの声を代弁する役割を担っており、五一%+αの多数派だと思います。

 そんな自らの役割に気づいて、女性たちが自分らしく生きることができれば、憲法はもっともっと多くのことを私たちにもたらしてくれると思います。

 参考文献「憲法二四条+九条 なぜ男女平等がねらわれるか」(中里見博 かもがわブックレット)

「個人・家族が国家にねらわれるとき」(岩波ブックレット)


二〇一三年滋賀弁護士会憲法記念の集い

滋賀支部  石 川 賢 治

 滋賀弁護士会では、例年四月、「憲法記念の集い」と題して、憲法上のテーマについて市民と一緒に考える集会を開催しています。第二七回目となる今回は、去る四月一三日、「本当にいいの?生活保護バッシング」というタイトルで、昨今の生活保護バッシング問題を取り上げ、二〇〇名の参加者を集めて行われました。私は、企画班の班長として、全体の構成を企画し、当日はパネルディスカッションのコーディネーターを務めました。実行委員を拝命した団員は、岡村団員、杉山団員及び私の三名であり、杉山団員は当日の総合司会を務め、岡村団員の案がシンポジウムのメインタイトルとして採用されました。

二 和久井みちるさんからの報告

 今回の集会では、市民の皆さんに当事者の生の声を聞いていただくことを重視しました。生活保護バッシングの多くは、正しい情報に基づかない感情的なものばかりであり、とりわけ生活保護利用者の生活実態からかけ離れたものばかりであるという問題意識からです。

 そこで、集会のプログラムとしても、まず生活保護利用者であった和久井みちるさんから生活保護利用者の生活実態について報告をしていただきました。和久井さんからは、本を買うお金もなく、生活費の足りない月は新聞を止めてしのぐという生活実態が報告され、文化的とは一体何なのかと考えさせられました。

三 滋賀弁護士会会員による寸劇

 生活保護利用者の視点を来場者に持ってほしいとの狙いから、保護を受給しているある母子が様々なバッシングにさらされるという設定の寸劇を上演しました。母親役には、日弁連副会長の任期を終えたばかりの小川恭子団員をキャスティングしました。

四 宇都宮先生による講演

 続いて、宇都宮健児弁護士から、「生活保護バッシングと生存権保障」と題して、ご講演をいただきました。

 宇都宮弁護士は、誤解に基づく報道とそれによって生み出されたバッシングの中で引き下げ問題が議論されていると現状を分析され、当事者の声に耳を傾けないままに基準引き下げが行われようとしていることが非民主的であると指摘されました。

 また、兵庫県小野市で新しくできたいわゆる監視条例にも触れられ、こうした条例が生活保護受給者に対する偏見助長につながりかねないとの懸念を示され、こうした条例が受け入れられる社会に日本がなりつつあることが怖いと述べられました。

 権利の行使を監視しようという発想自体がそもそも理解し難いところですが、これを異常なことと感じることができないところに、我が国の立憲主義や民主主義の弱さがあるのかもしれないと感じました。

五 パネルディスカッション

 パネルディスカッションは、「傷つけ合う社会から分かち合う社会へ」と題し、これまで報告、講演いただいた、和久井さん、宇都宮弁護士に加えて、花園大学の吉永純教授にパネリストとして参加していただきました。

 吉永教授は、今回の引き下げ議論の中で出ているデフレ勘案の五八〇億円削減問題についても触れられ、デフレ下では消費刺激策をとるべきであるのに、生活保護基準を引き下げることは、これに逆行する政策であると指摘されました。

 個人的にも、この点は、デフレ脱却政策を掲げておきながらデフレ進行を前提とするかのような点において、政策相互間に矛盾があるのではないとの疑問を持っていたところであり、吉永先生の指摘は非常に明快に感じました。

六 若手弁護士による準備

 今回のシンポジウムは、三二名の実行委員で準備を進めてきましたが、六〇期以降が二六名、その中でも六三期と六四期の合計が一九名という構成でした。幽霊委員はおらず、全員が何らかの分担を持った実働でした。滋賀弁護士会では、この恒例行事を若手弁護士中心で準備する慣例となっており、このような構成になっているものですが、若手弁護士にとっても、普段あまり考える機会のない憲法上の問題を考える良い機会になっていると思います。


社会権規約委員会第三回日本政府報告書審査を傍聴して〜NGOの重要性と義務〜

大阪支部  井 上 洋 子

 二〇一三年四月二九日、三〇日と、ジュネーブで社会権規約委員会第三回日本政府報告書審査を傍聴してきた。たった二日間ではあるが、いろいろなことを感じた。

一 NGOは審査に組み込まれた必須の要素である。

 規約委員会は、文書において、日本政府からの報告書だけではなく民間からの意見書を受け取って読んでいる他、口頭の報告・審査においても民間から意見を聴取する機会を、政府の審査の前日に組み込んでいる。

 一つはNGO主宰の会合である。NGOが委員をランチ(サンドイッチ等と飲み物程度)に招く形で行われるのでランチタイムブリーフィングと言われる。一時間ほどの短時間である。

 もう一つは、規約委員会主宰で、NGOミーティングと呼ばれ、その週に審査対象となっている四カ国のNGOから三時間にわたって、各国の実情を聞く。このたびは、各国NGOの要求の度合い、課題の多さに応じて、イラン三〇分、アゼルバイジャン一五分、そして残りは日本に宛てられた。

 こうして、規約委員会は、事前の文書報告、口頭報告ともに、各国の政府とNGOの双方から意見を聞いて、その国の実態を把握しようとする。

二 NGOの訴えの意味

 今回、国際人権活動日本委員会(鈴木亜英団員が議長として参加)傘下の五団体、すなわち、年金者組合、過労死を考える家族の会(岩城穣団員が引率)、JAL争議団、スズキ自動車争議団、自由法曹団国際問題委員会(瀬川宏貴団員と筆者が参加)の他、WWN(住友四社など男女昇格差別事件の原告らを主体とするワーキングウイメンズネットワーク)、ヒューマンライツナウ(伊藤和子団員が事務局長)、日弁連(安藤ヨイ子団員が参加)など計一六団体が日本のNGOとして参加した。

 NGOはそれぞれの関心事について日本の実情と政府の対応について訴える。三分あるいは、一分半で打ち切りという制約の中、原稿の推敲と読み上げの訓練など事前準備をしっかりして臨んでいた。そして本番では、自分たちの置かれている立場をわかってほしいという気魄に満ちて、英語の舌もなめらかで、その立派な態度に尊敬の念を禁じ得ない。とくに、私も設立間近のころから知っているWWNについては、その行動力と用意周到さと洗練された態度に脱帽であった。

 個々の事件やテーマが規約委員会を通じて直接に解決されるものではない。しかし、委員が個々の事件や具体例を耳にすることは、日本の縮図の一つ、各論の一つとして、委員の理解を深め、日本の実情を把握する助けとなる。規約委員会の審査を実効あるものにし、その勧告を偏頗ではなく正鵠を得たものにするには、NGOの存在と活動は不可欠で、かつ、きわめて重要である。NGOは、日本の実情をきちんと伝えるために、意見書を書き、訴えに行く自由があるだけでなく、義務さえあるのではないか、とすら感じた。

三 規約委員会の関心事と日本政府代表団の態度

 委員から日本政府代表に対し、ILO一〇五、一一一号条約への批准、過労死・自殺、外国人労働者、非正規労働者、労働における男女差別や間接差別、雇用と賃金、セクシャルハラスメント、家庭内暴力、福祉政策、年金、生活保護、震災補償、従軍慰安婦、授業料無償化からの朝鮮学校除外、アイヌや同和問題と差別禁止法制定、など、NGOが訴えてきた問題について、質問がなされた。(このことでもわかるように、委員会は多かれ少なかれNGOに依拠せざるを得ないのである。)

 これに対し、日本政府からは、(1)答弁を逃げる、(2)通り一遍の答弁を繰り返す、(3)制度や数字を詳細に説明する、という三つの対応がとられた。

 (1)の答弁を逃げるのは全くいただけなかった。日本政府は、規約の一般的意見(ジェネラルコメント)の意義と効力、長時間労働と過労死などについてはそうした態度をとった。見解の相違があっても、「そのような政策や意見は採れない。なぜならば・・・」と理由をつけて説明し委員に理解を求めればよいのである。しかし、否定の結論だけを、前置きをしたり、無用で冗長な形容詞節を付け加えたり、時には聞かれてもいない場違いな自らの体験を述べたりして、ふくらませて回答し、時間を無駄に使っていた。審査は英語ではダイアログ(dialogue)と表現されており、本来は規約委員と政府委員との建設的な対話である。しかし、日本政府の官僚の態度は、対話ではなく言いっ放しの感があった。対話がなければ相手を無視しているように感じられる。日本政府が委員会に敬意を表していないかのような、対話や議論を避ける態度は、国の度量の小ささを露呈して、日本国民として恥ずかしさを感じた。

 (3)のように日本政府からより詳細な説明をすることで(その内容への賛否はともかく)委員の理解を深めたという場面もあった。各種の統計的数字、アイヌの現状、従軍慰安婦についての政府の見解の根拠の説明(日本政府はかなりむきになってこの点の説明に時間を割いていた)、などはそういった部類であった。

 (2)の態度は見ていて隔靴掻痒であった。「外国人労働者にも日本人と同様の労働法制が適用されます」という答弁に、委員から外国人研修制度を材料とした追及がなかった。また、同和問題については、NGOから差別がまだ残っているという訴えがなされるため、委員の日本政府への質問は、同和事業の廃止ではなく施策を迫り、人権教育を徹底すべきではないか、というものとなっていた。日本政府からは、同和事業の終結と現在も差別が残っていることのみ答弁され、同和事業終結の意義と行政介入の弊害と不要性を歴史的事実を踏まえながら説明する答弁はなされなかった。私は、この問題では政府の態度がもどかしかった。この問題については、今後、私たちが方策を練らねばなるまい。

 最後に委員がまとめで述べたのは(1)日本は規約及び一般的意見を守る義務があることをもっと認識して、その趣旨を制度に組み込むべきである、(2)国内人権機関がいつまでたっても設立されないのはなぜなのか、先進国・経済大国として恥ずべきことではないか、という二つのことであった。五月一七日には、今回の審査をふまえ、日本についての追加課題(フォローアップ)を委員会がまとめるとのことである。

(二〇一三年五月一日記)


ホンダ期間契約社員雇止め事件〜不当判決〜

東京支部  林     治

一 裁判の結果

 ホンダは、〇八年九月リーマンショックによる減産を理由に〇八年末栃木製作所で働いていた期間契約社員の一六六人全員を雇止めにした。

 栃木製作所で、正社員が混在したチームの中で正社員と同じ業務内容で一一年一か月(更新回数七四回)に渡って働いてきた期間契約社員の桜井氏が、この雇止めが違法・無効であるとして、〇九年四月に訴えたが、東京地裁(民事一九部・渡邉和義裁判官(単独))、東京高裁(第二一民事部・裁判官斎藤隆、飯田恭示、春名茂)と敗訴し、一三年四月最高裁も上告不受理となり、桜井さんの敗訴が確定した。

 これまで、多くの方のご支援をいただきながらたたかってきたが、残念な結果となった。この裁判の報告と自分なりの総括を述べたい。

二 期間契約社員の位置づけと不更新条項の効力

 この裁判のポイントは、二つあったと思う。

 一つは、桜井さんのような一〜三ヶ月という短期間の契約を繰り返す期間契約社員の位置づけである。もう一つは、桜井さんが最後に作成させられた「この契約が最後であり、その後の契約更新は行わない」旨の不更新条項の契約書の効力である。

(1) 期間契約社員の位置づけ

 ホンダは、期間契約社員について、正社員の雇用継続を前提とした上で、景気変動、生産計画の変動等による製造ラインの需給調整に対応する臨時的・一時的雇用者として位置付けており、熟練を要しない単純な作業のみを担当すると主張した。

 一審、二審の裁判所は、これらについて独自の判断をすることなく、「被告は、一時的・臨時的雇用者と位置付けている」とおうむ返しに述べているだけであり、作業内については期間契約社員が正社員と同様の業務に従事している実態を無視し、ホンダの主張のとおり単純な作業に従事していると判断した。

 この判断は、非正規労働者が労働者の三分の一以上になり、非正規労働者が生産現場でも重要なポジションを占める状況になっていることを裁判所が十分に認識していないことから生じている。

 また、工場では機械化が進み、熟練の技術を要しなくてもそれなりの仕事ができるようになっていることも、期間契約社員が単純労働だけ行うという判断につながっていると思われる。すなわち「容易に他の人で代替できる業務であるから基幹的・恒常的業務ではない」と判断したと思われる(もっとも、機械化されているとは言っても、実際の現場では人間の経験や技術を要する場面は多い)。

 栃木製作所ではないが、ホンダの他の製作所の正社員の方は「機械化されているから、正社員だってそんなに難しいことをしているわけでない」「正社員だって単純作業だ」と話しており、熟練が要する作業であり、基幹的・恒常的業務に従事しているということを理解してもらうのが難しいのではないか。「正社員と同じ業務である」と強く主張したとしても、「単純業務である」と言われてしまうのである。

 さらに、裁判所の中には未だに非正規労働者は雇用の調整弁という考え方を基本としていることである。本事件でも桜井さんが期間契約社員は正社員とはことなる働き方で、そのことを認識して雇用契約を締結したのであるから、このような事態は承知の上であったという判断をしているのである。

 労働契約法が改正され、有期労働者に不合理な差別の禁止が定められたが、解雇の場面では未だに裁判所は非正規労働者を雇用の調整弁と見ているのである。

 期間契約社員は基幹的・恒常的業務に従事する労働者であるとの主張を裁判所に理解させるための工夫が今後いっそう求められる。

(2) 不更新条項の効力

 ホンダは、「不更新条項が入った契約書を作成したのであるから雇止めに納得しているはずだ」として、この点を一番強調して争った。

 一審は、不更新条項付きの契約書を作成するまでは桜井さんに雇用継続に対する合理的期待を有していたが、不更新条項付きの契約書を作成したことにより期待利益を確定的に放棄したと判断し、整理解雇四要件の類推適用をすることもなく、敗訴させた。不更新条項を有効としてこれがある以上争えないとしたのである。

 しかし、不更新条項付き契約書を作成しなければ、現在の契約期間終了により雇止めになり、作成すれば次の期間満了時に雇止めになるのである。つまり、すぐに辞めるか、最後の契約期間後に辞めるのかの二者択一を労働者は迫られるのであるから、何の留保もなくこれの効力を認めるのは不当である。

 二審は、この点について「不更新条項に合意しなければ有期雇用契約が締結できない立場におかれる一方、契約を締結した場合には、次回以降の更新がされない立場におかれるという意味で、いわば二者択一の立場におかれることから、半ば強制的に自由な意志に基づかず有期雇用契約を締結する場合も考えられ、このような事情が認められれば、不更新条項の効力が意思表示の瑕疵により否定されることもあり得る」と一応の配慮をした。しかし、「労働者が次回は更新されないことを真に理解して契約を締結した場合には、雇用継続に対する合理的期待を放棄したものであり、不更新条項の効力を否定すべき理由はない」として、結局本件では雇用継続に対する合理的期待を放棄したと認定している。

 力関係、情報能力などに圧倒的に差のあるホンダと桜井さんの間で交わされた不更新条項付きの労働契約を、桜井さんが真に理解して契約をしたとは到底思えない。両者の関係を一切無視し、労働者の弱い立場にこころを寄せない判断である。

 「労働者も真に理解して不更新条項付きの契約を結んだのだから効力を認める」という発想を打ち砕けなかった。

 改正労働契約法が実施にともない、有期契約の無期転換を逃れるため不更新条項を入れる企業が増え、事件として争われることも予想される。不更新条項について、十分に研究しておくことが必要である。

三 最後に

 リーマンショックを契機に全国のホンダの製作所で約四二五〇人の期間契約社員が雇止めにあった。そんな中で裁判をたたかったのは桜井さんただ一人であった。桜井さんの勇気と奮闘には頭が下がる思いである。

 本事件は敗れてしまったが、今後の有期労働者のたたかいに経験を活かして、有期労働者が簡単に雇止めに遭わないように社会を実現していきたい。


自由法曹団岐阜支部事務所交流会のご報告

岐阜支部  鈴 木   亨

一 はじめに

 三月二九日(金)午後三時より、毎年恒例の自由法曹団岐阜支部の事務所交流会が、岐阜市内の岐阜キャッスルインで行われました。例年第一部の活動報告と第二部の懇親会とに分かれており、団員と各事務所の事務員の方々も出席頂き、互いの親睦を深める貴重な機会であります。冒頭、笹田参三支部長による挨拶の中で、現在岐阜県弁護士会の会員数約一五〇人のうち団員は約三〇人であり、近年においては本庁内はもちろん、支部においても団員数が増加している状況等について説明がなされ、今後も県内全域にわたって、貧困・労働・憲法問題等に取り組む団員を増やしていくことの重要性を説明されました。

二 第一部 

(1)活動報告(1)「無罪を主張した裁判員裁判を通じて考えたこと」

 まず、小嶋道明団員より、自身が経験された裁判員裁判での経験をもとに、刑事弁護人が無罪を主張することの意義についての報告をされました。

 小嶋団員は、初の経験となる裁判員裁判で、犯人性が争点となった殺人の否認事件を担当され、この事件は地元マスコミでも注目されました。有罪認定となる直接証拠がない反面、弁護側にとってかなり不利な状況証拠が揃っている中で、どのような弁護方針に基づいて事件に取り組んだかについて語られました。一見不合理と思われる否認理由についても、被告人の言い分をよく聞き、事件現場にも自ら足を運ぶなど、被告人との信頼関係を築きながら刑事弁護人としての職責を全うしたことで、弁護士としてのやりがいを感じたことなど、刑事弁護人とはどうあるべきかということを再考させられる報告でありました。

(2)活動報告(2)「弾圧事件と自由法曹団員の役割」

 次に、仲松正人団員より、弾圧事件に対して団員はどのような役割を担うべきかについての講義がなされました。

 まずは、東京目黒の社会保険事務所勤務の職員が、休日に自宅周辺の民家やマンションのポストに日本共産党のビラを配布したことが国家公務員法等に違反するとして逮捕・起訴された事件(二〇〇四年堀越事件・最高裁で無罪)での、捜査官による盗撮の状況(車四台、ビデオカメラ六台での尾行による監視)を生々しく捉えたDVDを視聴し、公安によるいわれなき弾圧の実態が現代においてもなお続いている現実を見せつけられました。

 その後、昨年の岐阜県知事選挙の際、岐阜近郊のK町町議が支援者にビラを配布したことが公選法違反の疑いがあるとして任意取調べや支援者への事情聴取を行おうとした事件に関し、直接弾圧の被害にあった議員より、経験談をお聞きしました。この事件は、即座に団員による弁護団が組織され、警察署へ直接抗議した結果、その後の捜査は打ち切られたものですが、日本共産党の議員に対する萎縮効果としては十分なものでした。

 その後仲松団員より、自身の経験を踏まえ、弾圧事件に対して弁護士はどう闘うべきかについて説明されました。その中で「悪法は法」ではなく「悪法は悪法」という認識のもと、公選法、軽犯罪法、屋外広告物法等の「悪法」の中味をよく学ぶことの重要性や、警察への対応、被疑者やその家族への対応方法を具体的に説明され、弾圧事件に対しては一人の弁護士で対応せず集団で対応することの重要性を説かれました。そして、弾圧事件と闘うことは自由法曹団員の原点であると強調されました。

三 第二部 親睦交流会

 第二部は、親睦会が開かれ、各事務所ごとの自己紹介の後、恒例のビンゴ大会が開かれました。食事をしながらのビンゴ大会は毎年のことながら大いに盛り上がり、残念ながら参加賞に終わってしまった者も含め(私がそうでした)、日頃のストレス発散には十分だったのではないでしょうか。

 これからも団員が増加していくことが予想されますが、このような交流会は今後も継続し、互いの顔が見える温かな支部を作り上げていきたいと感じました。


「明日の自由を守る若手弁護士の会」第一回総会

愛知支部  室   穂 高

一 はじめに

 二〇一三年三月三〇日、中央大学駿河台記念館において、明日の自由を守る若手弁護士の会(略称「あすわか」)設立後初めてとなる総会が開催された。全国各地から多くの若手弁護士(五一期以降)が集まり、報道関係者の姿も見られた。なお、当会ホームページ(http://www.asuno-jiyuu.com/)でも本総会の様子を写真付きで掲載しているので、ご覧いただきたい。

二 総会の概要

 初めに、共同代表の神保大地団員から開会の挨拶が行われた。神保団員は、ある国賠事件の記者会見で遺族が述べた「一人ひとりが大切にされる社会になってほしい」との言葉を引用し、憲法について意識的に勉強していない人でも日本国憲法が保障する「個人の尊厳」の大切さを理解していると述べた上で、総会参加者に対し、若者らしく活発に意見を出し合うよう呼びかけた。

 開会の挨拶の後、一橋大学の阪口正二郎教授から「憲法学の視点から斬る自民党改憲草案」との演題でご講演をいただいた。

 阪口教授は、まず、当会に期待することとして、フェイスブック等を活用して呼びかけるフットワークの軽さを挙げられ、憲法改正について自分の頭で真面目に考える人を一人でも増やして欲しいと述べられた。

 そして、二〇一二年に発表された自民党改憲草案について具体的にお話しいただいた。(1)同草案の前文については、普遍性を有する社会契約という論理がなく、日本の「歴史」「固有の文化」「良き伝統」を強調し、「国と郷土を守る」「和を尊ぶ国家を形成する」「自由と規律を重んじる」「良き伝統を子孫に継承する」国民を措定しており、国家の側から国民を縛る狙いが見えるとのことであった。(2)同草案の九条については、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」の意義が曖昧であり、集団的自衛権行使の容認に狙いがあること、領土等の保全に対する国民の「協力」義務によって国民が国家の従たる存在とされることなどの危険性を指摘された。(3)基本的人権については、一三条が最も重要な条文であること(「個人の尊重」を定め、個人より国家・共同体を優先する傾向にある日本社会に楔を打ち込む決定的な意義を有していること)を強調された上で、同草案が日本の歴史・文化・伝統を強調していることからすると、一三条の「個人の尊重」が同草案の「人の尊重」に変更されることによって、人権が日本の歴史・文化等を前提とする「日本人の権利」に変質する危険性があり、安易に一三条を変更してはならないと訴えられた。(4)同草案の規定する国民の憲法尊重擁護義務については、現在の九九条は、日本国憲法が近代立憲主義(憲法によって国民が国家を縛る)に立脚していることと、「闘う民主政」を採用していないことの二つの意味があるところ、同草案の規定はこれらを放棄する重大な問題を孕んでいるとのことであった。(5)以上のまとめとして、同草案は、「普遍からの逃避」、「個人より国家・共同体の優先」、「関係の逆転=国家を縛る憲法から国民を縛る憲法へ」という三つの狙いがあることを指摘された。

 さらに、九六条を改正するとはどういうことかについてお話しいただき、その中で、人権には、民主主義を実現するための人権と「個人の尊重」を実現するための人権の二つがあり、その両面から硬性憲法の意味を捉える必要があるとされ、具体例を交えながら詳細にご説明いただいた。

 ご講演の後には、活発な質疑応答が行われ、阪口教授から、さらに興味深いお話を伺うことができた。

 その後、当会の事務局から、パンフレットの完成、紙芝居の実演、ホームページ等の状況、憲法学者との連携についての報告がなされ、今後の当会の活動について意見交換が行われた。

 そして、規約・設立趣意書・会計収支報告・役員について一括して承認された。

 最後に、共同代表の黒澤いつき元団員より、本総会当日現在で会員数が二〇四名となったことが報告され、本総会が出発点であり、パンフレット等のツールが揃った現時点から、会員一人ひとりが全国各地で草の根の動きをして欲しいとの呼びかけがなされた。

三 おわりに

 総会後の懇親会においても各地から参加した会員から活発な発言がなされ、本総会は、憲法に対する熱い思いを抱いた若手弁護士らが語り合う熱気あふれるものとなった。そして、会員のそれぞれが、自民党改憲草案の危険性を市民にアピールする「明日の自由を守る」活動への決意を新たにすることとなった。当会は、今後、完成したパンフレットや紙芝居等のツールを活用し、明日の自由を守る活動を活発に展開していく(なお、本稿が掲載される頃には、各地での活動が行われているはずである。詳細については、前記ホームページをご覧いただきたい。)。


自由法曹団女性部総会のご案内

自由法曹団女性部員 各位

 2013年5月

自由法曹団女性部部長 中野和子
同事務局長      湯山 薫
事務局(総会担当)  牧戸美佳

 部員の皆様におかれましては,益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 さて,今年度の自由法曹団女性部総会は,下記の日程・内容で北海道で開催いたします。今回の総会では,北海道の元中学校教師で退職後「こどもの心を守る」というテーマで講演活動を活発に行っておられる坂本勤先生をお招きしてお話を伺います。また,北海道の川上麻里江団員による立憲主義をテーマとした紙芝居も予定しています。さらに,総会終了後(2日目午後)は,小林多喜二ゆかりの地を巡るオプショナルツアーも検討中です。皆様奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。

 準備の関係がありますので,ご出席の方は2013年6月末日までにお知らせください。

 なお,ご不明な点等ございましたら,事務担当牧戸(渋谷共同法律事務所 TEL 03-3463-4351 E-MAIL shibuya-maki06@tea.odn.ne.jp)までご連絡ください。

【日   時】 2013年9月13日13時〜同9月14日12時まで

【日程・内容】 9月13日 (1)議案書説明

                (2)「子どもの心を守る」講師 坂本勤先生

                (3)「王様を縛る法〜憲法のはじまり」(紙芝居)

                講演 川上麻里江団員

        9月14日  (1)今期の活動・決算

                (2)各地の報告

                (3)来期の活動・人事

【宿泊場所及び会議場所】 小樽朝里川温泉「宏楽園」

              〒972-8326 北海道小樽市新光5−23−1

                    TEL 0134-54-8221(代表)

     HP http://www.otaru-kourakuen.com/

※ JR新千歳空港駅より小樽行快速エアポートで約80分→小樽築港駅下車JR札幌駅より小樽行快速列車で約30分→小樽築港駅下車

※ 小樽築港駅から送迎バス(11:50発と12:20発の2便)があります。

ご希望の方は,出欠席回答書の「送迎バスの希望」欄のご希望の時間に○印をお願いします。

※ タクシーの場合,JR小樽築港駅から約10分,JR朝里駅(無人駅)から約5分です。

※ JR小樽駅から路線バスもあります(所要時間約23分)。時刻表・乗り場等は「宏楽園」のホームページ「アクセス」をご覧下さい。

※ 会議室名は追ってご連絡いたします。

【参加費用(概算)】  和室(4〜5人利用) 19,000円

              和室(2〜3人利用) 20,000円

              和室(1人利用) 28,500円

※ 和室(2〜3人利用)及び和室(1人利用)は数に限りがございます。「出欠席回答書」の先着順とさせていただきますので,ご了承ください。

※ 63〜65期及び修習生については,1万円を目途に検討中です。

※ 子ども料金については,別途お問い合わせ下さい。

【オプショナルツアー】(詳細未定) ※参加希望者が少ない場合は中止します。

<日時>2013年9月14日総会終了後〜17時ころ

<内容>(1)貸切バスで文学館など小林多喜二ゆかりの場所を見学

(2)北一硝子(http://www.kitaichiglass.co.jp/index.html)見学

(3)JR小樽駅ないしはJR新千歳空港駅で解散

<費用>参加人数にもよりますが,約5,000〜8,000円(昼食代含む)を予定しています。

********自由法曹団女性部総会出欠席回答書********

弁護士 牧戸美佳 行(FAX03−3496−4345)

支   部   (        )支部

事 務 所   (        )法律事務所

お 名 前 (       )

  期     (    )期

お電話番号   (            )

メールアドレス  (          @         )

※ メールアドレスご記入の方は,自由法曹団女性部MLにご登録させて頂きます。

  後日,加入お手続きのメールをお送りさせていただきます。

出 欠 席   出  席 ( 宿泊する ・ 宿泊しない )

         欠  席

送迎バスの希望  希望する ( 11:50発 ・ 12:20発 )

         希望しない

オプショナルツアー  参 加  ・  不参加

宿泊・参加に際してのご要望(1人部屋希望・会議中の保育の希望等)

一言(皆さんにお伝えしたいので近況をお知らせ下さい

※ 本年1月12日に自由法曹団女性部の創設者のお1人であった坂本福子弁護士が逝去されました。坂本福子弁護士に関する思い出,エピソード,逝去を受けてのお別れのメッセージなどございましたらご記入いただければ幸いです。

 坂本福子弁護士について寄せていただいたメッセージは、こちらでとりまとめ議案書に掲載させていただきたいと存じます。


「もう一度 空へ」(JAL不当解雇撤回裁判原告団編)の普及にご協力下さい!

東京支部  森   孝 博

 二〇一二年一二月からJAL不当解雇撤回裁判の高裁審理が始まりました(客室乗務員裁判は東京高裁第五民事部、運航乗務員裁判は東京高裁第二四民事部に係属中)。本件は、判例雑誌等において会社更生手続下における整理解雇の有効性が争われた初のケースとして注目されていますが、それはあくまでも本件の外観であり、この事件の本質を正確に捉えたものではありません。恥ずかしながら私自身、弁護団に加入する前はこのことを十分に理解していませんでした。控訴審から弁護団に加えていただき、日航の組合嫌悪・不当労働政策の歴史(数々の分裂労務政策、客室乗務員監視ファイル事件など)、二〇一〇年一月の会社更生手続開始決定から同年一二月の整理解雇に至るまでの異常な経緯(年齢による希望退職応募者の限定、中途での削減目標の上乗せ、特定の組合員に対する乗務外しと執拗な退職強要、団交による解決の拒否、争議権確立の一般投票への介入など)といった生の事実を深く知るにつれて、本件の本質は会社更生手続を利用したたたかう労働組合の弱体化と整理解雇法理の形骸化にあることがわかりました。そして、こうした横暴を許さないことは、電機業界でも大量リストラが強行され、安倍政権の下でいっそうの雇用の不安定化が狙われている昨今、全労働者に共通する重要なたたかいといえると思います(なお、高裁審理の状況については、二〇一三年特別報告集の「JAL整理解雇事件 控訴審の報告」〔東京支部・竹村和也団員〕で詳細な報告がなされていますので、ご一読下さい。)。

 このようなJAL整理解雇の本質を広く知らせ、支援の輪を広げ、不当解雇撤回闘争の一日も早い勝利解決を実現するため、ブックレット「もう一度 空へ」が発刊されました。左記で紹介するような多彩な執筆陣のご協力によって、JAL整理解雇の本質をわかりやすく解明し、かつ充実した内容となっていますので、ぜひ購入・普及にご協力下さい!

JAL不当解雇撤回裁判原告団編「もう一度 空へ」

 学習の友社 定価五〇〇円

 お申込み方法は原告団HPhttps://sites.google.com/site/jalgkd148/xin-kan-shao-jie-mou-yi-du-konghe)をご参照下さい。