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伊藤朝日太郎 越原学園の不当労働行為に対し画期的な救済命令
加藤  修 熊本県営・路木ダムの違法性が認められる
小島 高志 鈴鹿医療科学大学配置転換事件報告
大学教員の研究と授業の権利性、教授会の人事権
松島  暁 気分はまるで「開戦前夜」
― 一触即発の日中関係
岩月 浩二 TPPに関連して『法のグローバル化』について
大久保 賢一 人類と核は共存できない
第二回「原発と人権全国研究交流集会」分科会のご案内
柿沼 真利 三月九日(日)「NoNukesDay」報告と四月五日(土)六日(日)第二回「原発と人権」全国研究交流集会in福島の紹介
広田 次男 原発労働・除染労働弁護団の結成
田井  勝 「自由法曹団」フェイスブック、開設しました!
鷲見 賢一郎 アベノコヨウハカイ(安倍の雇用破壊)―戦後最大の労働法制改悪の攻撃を阻止しよう!



越原学園の不当労働行為に対し画期的な救済命令

東京支部  伊藤朝日太郎

 名古屋女子大学中学校・高等学校(越原学園)における組合攻撃について、愛知県労働委員会において画期的な救済命令を勝ち取りました(愛労委平成二四年(不)第四号不当労働行為救済申立事件)ので、報告します。
一 申立ての経緯
 名古屋女子大学中学校・高等学校を経営する越原学園は、大正四年に名古屋女学校として設立された伝統校である。
 越原学園においては近年、人件費削減政策が進められ、職場環境の悪化が進行していた。組合側からの団体交渉の申し入れに対しても、理事会が対応するのではなく、「労務委員会」なる組織が対応するようになった。
 本件はかかる状況の中、学園側が不誠実な団交態度に終始したうえ、執拗な組合批判を展開したことなどに対する救済を求めたものである。
二 事案の概要
(1)団交自体の拒否・遅延
 学園は、組合側からの一五回の団体交渉申入れについて五回しか応諾せず、団交の当初申入れから団交開催までの期間も長期(最長で一二五日)に及ぶ状況だった。
(2)誠実な説明及び資料開示の拒否
 学園は団体交渉において、一時金削減の根拠について具体的に説明せず、財務諸表の開示にも応じなかった。
(3)単組組合員に対する一時金支払いの留保
 学園は単組組合員についてのみ定例支給日に期末手当を支払わなかった。
 しかも学園は全専任教員に対して「なお、名古屋女子大学中学校・高等学校教職員に対しては本件は交渉中であることに配慮し、一方的に支給しないこととしております」との記載のあるメールを送信した。
三 愛知県労働委員会の判断
 愛知県労働委員会は、ほぼすべての争点について組合側の主張を認め、不誠実団交、不利益取り扱い、支配介入の不当労働行為の成立を認定した。
 命令書は、団体交渉の席において学園側弁護士が「期末手当の額については組合と事前に相談する事案ではなく、理事会の専権事項である」「一時金についてと、団交については別次元の話である」、教頭が「話し合いで支給額を決めるのはおかしい」と述べたことを指摘し、「一時金の支給が労働条件の一つであり、義務的団交事項に当たることはいうまでもないが、上記弁護士及び教頭の発言からは、学園に、一時金が団体交渉で協議されるべきものであるという基本的な認識が欠けていることが明らかである」と学園側が労働法に対する理解を根本的に欠いていることを痛烈に批判している。
 また命令書は、学園が単組からの団体交渉申入れ等に対し度々抗議をしていたこと、及びその挑発的ともいえる表現(「意図的に労務委員会とかみ合わない議論を持ち込み、事態を紛糾させようとすることを狙いとして、貴組合にいったい何の利益があるのか、全く理解できない」「期末手当を不要とする組合との交渉を行う必要はない」)を指摘した上、「学園が常日頃から組合に対する嫌悪の感情を持っていたことがうかがわれる」と認定した。
四 まとめ
 本命令は、学園側が労使協議の意義を理解せず、組合を敵視した行動を行っていたことを明らかにした。
 主文では、(1)団体交渉に速やかに応じるべきこと、(2)一定の資料の提示、(3)いわゆる謝罪文の掲示が認容された。
 本命令が支配介入の不当労働行為の成立を正面から認め、いわゆる謝罪文の掲示を命じたことは、学園の反組合的姿勢を厳しく批判する意義を持ち、学園経営者への反省を迫るものであり、重要な意義を持っている。
 残念ながら学園は、中央労働委員会に対して再審査申し立てをしたうえ、主文のいくつかについてはこれに従うことを拒否するなど、依然として労働組合法を無視し、組合を敵視する振る舞いを続けている。
 学園の組合敵視体質は,大学組合への過酷な攻撃としても表れており、大学組合委員長解雇事件等計四件の訴訟事件が係属している。これらについては逐次別の機に報告されることになろう。
 中労委での勝利とともに、単組・私教連の運動の力で、学園の異常な労使関係が是正されることを願ってやまない(弁護団は、小島高志団員、森弘典団員、川津聡団員及び伊藤の四名)。


熊本県営・路木ダムの違法性が認められる

熊本支部  加 藤   修

 平成二六年二月二八日に熊本地裁(片山 昭人裁判長)が下した判決において、県営・路木ダムが違法であるとして、判決確定以後の建設のための支出を差し止めた。そしてその前提として平成二二年度以降の支出については住民監査請求の対象外であったから住民監査請求を経ていないという被告の主張については、「公金支出について平成二二年度以降ものを殊更除外する趣旨であったとは解されず、同年度以降の公金支出も監査の対象とする趣旨であったと解するのが相当である。」として支出全体について住民監査請求をしたものとした。
 まず、路木集落の過去の洪水被害については、「(証拠に照らすと)昭和五七年七月の豪雨及び平成一八年年豪雨の際において、路木川の堤防決壊や路木集落における家屋の浸水被害は発生しなかったことが優に認められるというべきである。」として、「本件整備計画等の作成及び本件計画規模(本件治水安全度)の決定の際、県知事には、最も重要な考慮要素の一つについて重大な事実誤認があったものというべきである。」「以上の通りであるから、本件整備計画等は、重要な事実の基礎を欠くものであり、県知事の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。」
 また、破提想定については「本件破提の形状に係る想定については、事実的基礎に欠け、合理性の欠如が明らかというべきである。」「本件破提想定は、本件マニュアル及び本件国交省回答に反するものであって、合理性の欠如が明らかであるというべきである。」「本件計画規模を前提としても、本件破提は発生しえないのである。」としている。そして、「本件治水安全度の確保のために、洪水調整施設として路木ダムを建設する必要性は認められない」とした。
 さらに、費用便益比については、「床上浸水とされている家屋一一棟はすべて床下浸水となり、適用される被害率が大幅に小さいものとなる。」「費用便益比は、原告らの算出によれば、〇・九一をさらに下回ることになると考えられる。」
 そして、結論として判決は、「本件整備計画等の内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとなっているというべきであり、したがって、本件整備計画等は県知事の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるといわざるを得ないのである。」と結論づけている。
 路木ダムは、住民の意見をまったく聞かず工事はすすめられてほぼ完成してしまった。県知事への賠償請求は、故意過失が認められないという理由で棄却されたが、判決確定後の建設費用の差し止めは認められた。違法なダムを推し進めた結果貴重な自然を破壊して公金を浪費した県の責任は免れるものではない。公共工事は住民の話合いをもとに進めていくことの重要性を改めて示したものといえるであろう。
 無駄な公共工事の問題は全国各地で起こっている。ぜひ参考にして頂きたい。
 弁護団は札幌の市川守弘弁護士を中心として熊本の加藤修弁護士、小林法子弁護士が担当した。


都教委の学校専制支配を明確に批判東京都再任用更新拒否事件判決

東京支部  牛 久 保 秀 樹

 三月六日、東京地方裁判所(民事第一九部 古久保正人裁判長)は、東京都教員の再任用更新拒否裁判について、被告東京都に七〇万の損害賠償を命じた。古久保裁判長は、東京三鷹高校の土肥校長の再任用拒否事件で、原告敗訴の判決を出している。
 判決では、弁論で争われた諸点について、原告の主張を認め、被告側の主張をことごとく退けた。選考面接に関して、形式も内容も「実施されたと評価することは到底できない」とし、面接評定票についても「選考手続において作成が要求されている面接評定票とは評価し得ない」と断じた。
 また、不合格理由とされた事項についても逐一検討している。最大の理由とまで校長(当時)が強調した、職場全体で取り組んだ分掌希望調査について、分掌希望調査そのものにつき、「校長の人事権を制約するものとも、校長の意思決定を拘束するものとも認めることはできない」と判断した。職員会議での発言についても、海外修学旅行の実施をめぐるアンケートを取ることを提案した発言に関して「校長の意思決定を円滑に進めるための打開策として提案したものであり、校長の意思決定権を侵害する意図によるものでなかったと認めるのが相当」と評価した。企画調整会議で決定したとする五〇周年記念行事の日程に、職員会議で原告が危惧を表明したことについて、校長は、職員の建設的意見を聴取しなければならないとした。
 この判決は、日の丸・君が代で強行措置をとる都教委が、職員会議の形骸化から、更に発言封じによる校長の学校専制支配とでもいうべき状況を作り出そうとしていることにつき、それを強く批判するものとなっている。合わせて判決は、公務員の再任用につき、期待権を認めて、国賠の根拠とした。更に、生徒との信頼関係を壊したとして慰謝料を認めた。
 原告は、校長の専制的運営に対し、学校全体のまとまりこそ教育の力であることをたゆまず発言し、実践してきた。その結果、再任用拒否という結論がでたあとではあるが、原告が指導した三年生を送る会について、校長の認識を変えるに至ったことにつき、「校長は、原告について、教科の授業時間を確保しつつ、他の教員の意向を踏まえた指導をして大成功を収めたと評価していた」と、認定されている。
 追い風になったのは、再雇用拒否を違法とした最高裁判決、同じく教員の再任用拒否事案の熊本地裁、福岡高裁の判決、教員の人事考課についての東京高裁判決である。いつもながら、全国の団員、弁護士の奮闘が、勝訴判決の力となっていることを痛感する。


鈴鹿医療科学大学配置転換事件報告
大学教員の研究と授業の権利性、教授会の人事権

愛知支部  小 島 高 志

(事案)
 解剖学等の授業を担当し西洋医学的観点からの鍼灸研究者であり複数の科研費研究を継続中であった女性専任講師T氏が、二〇一一年度、突然、学部付属鍼灸センターでの鍼灸施術業務(=医療職員の業務)への専念を命じられ、研究・授業等の業務を奪われた。
T氏は、命令自体の不合理性、研究と授業の中断による著しい不利益とくに科研費研究継続の困難性、余儀なくされた莫大な業務時間外労働、昇任上の不利益、教授会審議欠如の違法等を主張して命令の効力を争った。また無形の損害の賠償を求めた。
(注目点)
 本件仮処分決定、地裁判決、高裁判決はいずれも本件配転命令を違法、無効とし、配置転換命令を不法行為とし損害賠償を命じた。ここでは①教授会審議を欠いた配置転換命令の効力②大学教員の研究や授業等に権利性についての判断に注目したい。
 仮処分決定(津地決H二四・三・二九首藤晴久裁判官)
 「…教授会の審議を経ずに…された同命令は人選の合理性が高いものとはいいがたい」
 「(大学教員の)職務の本質的な部分は、教育・研究にあるといえる。…かかる職務は、教育職員にとって、雇用契約上の義務にとどまらず権利的な側面を有することは否定できない。」
 地裁判決(津地判H二五・六・二八山下隼人裁判官)
 「…被告が行った本件配置転換命令は、その業務上の必要性の程度は低く、研究者・教育者としてのキャリアを積み重ねてきた原告に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであり、人選及び配置転換に至る手続きにも問題があったというべきである。」
 高裁判決(名古屋高判H二六・一・三〇長門栄吉裁判長・確定)
 「控訴人がした本件配置転換命令は、権利を濫用したものとして無効であり、被控訴人の研究者・教育者としてのキャリア形成に大きな不利益を与えたものであるから、被控訴人に対する不法行為に該当するというべきである。」
 「…被控訴人が精神的苦痛を受けたことは明らかであり、研究者・教育者としての評価や昇進の場面でも不利益を受けると考えられることなどの諸般の事情を考慮すると、本件配置転換命令により被控訴人が受けた無形的な損害の額は一二〇万円と認めるのが相当である。」
 「自己の研究成果を講義という形で学生に伝え、それに対し単位認定することと、単位認定決定権限がない実習補助では、学生に対する影響は大きく違うのであり、教育面でも不利益がないとの控訴人の主張は採用できない。」
 「…教育職員から医療職員への配置転換は、それだけでも被控訴人に不利益を与えるものである上、被控訴人に、教育面、研究面での不利益が生じているのであるから、被控訴人は、本件配置転換により、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を受けている…」
 「控訴人は、…控訴人大学の学内では、配置転換は教授会の審議事項としないという慣習が成立していたと主張するが、そのような被用者側にとって不利な慣習が、控訴人と被控訴人間の雇用契約にも当然適用されると認めることはできないし、平成二四年四月一二日の教授会により、被控訴人には講義を担当させないとの決議がされているが、このような決議が本件配置転換後にされたからといって、本件配置転換命令の手続き上の瑕疵が治癒されるという根拠もない。」
(評価)
 近時、理事会主導の大学運営が強まり、教授会の権能が後退させられ、大学教員の教育・研究活動の自主性や身分の安定性が損なわれる状況が生まれている。
 第一に、本件一連の判断は、大学教員が行う研究と授業には権利性があり、保護されるべき法益だと見ている。就労請求権否定論に屈することなく、この法理がさらに前進させられるべきである。
 第二に、仮処分決定は、配転にかかる教授会審議の欠如は人選の合理性を低めると判断し、高裁判決はさらに進んで、教授会権限が後退させられている慣習を是認せず、教員にとって不利益な学内慣習の効力を否定し、教授会審議の欠如は手続き上の瑕疵であるとした。大学自治理念の原点を踏まえた判断だろう。
 これら法理は、大学関連事件においても大学現場においても、おおいに活用されるべきだと考えられる。


気分はまるで「開戦前夜」
― 一触即発の日中関係

東京支部  松 島   暁

 団・秘密保護法プロジェクト編集の『これが秘密保護法だ―全条文徹底批判』が出版された。これ一冊あれば学習会の講師を依頼されても鬼に金棒。ぜひお買い求めいただきたい。
 団のプロジェクトでは主に国家安全保障会議(日本版NSC)設置法の分析・批判を担当したこともあり、谷内正太郎初代安全保障局長など外交・防衛の実務担当の人々やその周囲のメンバーが、何を考え、どう行動しようとしているのかを見据えるため、彼らの発言や執筆したものをまとめて読んでみた。
 それによって分かったことであるが、今にも中国との軍事衝突が起きかねない、それにどうに対応するのかが、真剣に議論されている。彼らの気分はまるで「開戦前夜」のようなのである。
 「今後、中国の出方によっては、尖閣諸島や日中国境線付近などでの偶発的な小競り合いが引き金となって、本格的衝突へとエスカレートする可能性も否定できない」、「中国との衝突になれば、対北朝鮮とは比較にならない規模、態様の事態を想定せざるをえない」、「日本自身の努力により事態発生を抑止し、適切に対処するなどの態勢を整備し、米国の対A2/AD戦略と一体となって、中国の野望を挫かねばならない」、「潜水艦や航空機からの特殊戦部隊(コマンドウ)の潜入に加えて、多数の漁船にコマンドウや工作員を紛れ込ませて上陸させ、上陸した愛国者たちを保護するという名目で改めて軍隊を派遣し、実効支配を固めるというシナリオの可能性が最も高そうである。このような事態に際して迅速な決定が下せる政府の意思決定メカニズムを確立することが急務である。しかしそれでも、当分の間、我が国の島嶼防衛は中国によって占拠された後の奪回作戦が主にならざるを得ないであろう」と、以上、谷内正太郎編『論集・日本の安全保障と防衛政策』(ウェッジ)。また、自衛隊OBである夏川和也元統合幕僚会議議長監修『日中海戦はあるか』では、「中国は資源確保と米国を意識した国防の観点から、南シナ海ではほぼ全海域の領有をを宣言し、東シナ海では尖閣の領有を主張し、さらには沖縄の領有に向けての工作を始めている。その先には米国との太平洋二分論が控えている。中国の常套手段の第一歩がすでに始まっている・・・・『日中もし戦わば』という設問は、極めて厳しいものである。『質の海上自衛隊』か『量の中国海軍』か、空軍・ミサイル部隊の支援を加味すれば、一層苦しいものになるだろう」とまで公言している。
 問題が深刻なのは、これらの好戦的で過激な言説が、一部のネット右翼や泡沫ジャーナリストから発せられているのではなく、政権の中枢ないしその取り巻きから出されていることにある。防衛・外交の実務部隊は、中国との軍事衝突を本気で「想定」し、その備えを構築しようとしている。
 そしてそれにも増して問題を深刻化させているのは、防衛・外交の実務家の情勢分析・判断が、単なる妄想ではなく、一定の裏付けに由来している事実にある。彼らの指摘する中国側の動きが、一〇〇%ではないにしろ、事実だということにある。
 「二〇一三年一〇月、習近平は、親・誠・恵・容の理念を提起、周辺において運命共同体を積極的に構築するように指示した。(が)日本とフィリピンは(この)善隣関係のネットワークの例外だ。両国は、領土・海洋紛争で中国と深刻に対立・・・・領土主権などの国家の核心的利益がかかわる重大問題においては、中国は明確な戦略を形成しつつある」(暁岸)、「安倍政権は、中国脅威を煽ることで集団的自衛権を手に入れ、更には対外的武力行使ひいては先制攻撃に向かおうとしている。安倍政権は、積極平和主義の化けの皮のもと、対外侵略に失敗した歴史の教訓を無視し、その右傾化の逆流及び軍事大国になろうとする野心はすでに東アジアの平和と安定に対する重大な脅威となっている」(陳向陽)。以上、浅井基文氏のコラムより。中国現代国際関係研究院・林利民「釣魚島紛争の四種の戦略シナリオとその見通し」(北京日報)では、①全面衝突、②釣魚島付近海域で海空局部戦争、③当該海域で海空の衝突が発生する場合、④釣魚島紛争の軟着陸、等のケースを想定した議論がなされている。以上、防衛戦略研究会議論文集『二〇一〇年代の国際政治環境と日本の安全保障』。好戦的言説が、中国側からも発せられている。
 加えて、南シナ海や東シナ海における中国の実効支配の拡張の現実がある。歴史的に見ると、一九七四年に西沙諸島、八八年に南沙諸島の一部を、ベトナム軍を撃破して中国は占領、九二年に領海法制定、九五年にはフィリピンが領有権を主張するミスチーフ環礁に上陸し対空砲や対艦砲を設置、二〇一二年に漁政と海監が共同でフィリピン海軍を排除、スカーボロ環礁の実効支配を確立した。さらに二〇一三年七月には、それまで海監・海警・漁政・海関の分かれていた海上法執行機関を「国家海洋局」に再編・統合した。
 中国漁船の巡視船衝突事件やレーダー照射事件を見るとき、日中関係、特に尖閣・領土をめぐる日中の確執は一触即発の状態にあるというべきである。
 社会主義国である中国が他国を侵略するはずがないという論は、さすがにもう見られないであろうが、中国の危険性を肯定することは、政府自民党の軍事化=改憲策動に加担することになりはしないかという危惧から、中国評価を躊躇う傾向がないではない。しかし、冷静に見れば、事態は危険水域に達している。
 私たちは、一九四五年の敗戦に際して領土を削り取られたことを除けば、目の前で実効支配している領土を奪われた経験を持たない。中国漁民や偽装漁民が上陸・占拠したり、中国公船が尖閣諸島を支配する事態が眼の前で起きたときの、この国のナショナリズムの暴発を危惧する。そのような事態を招かないために、私たちに何ができるのか、何をしなければならないのか。日本の平和主義の真価が問われている。


TPPに関連して『法のグローバル化』について

愛知支部  岩 月 浩 二

一 はじめに
 昨年一〇月一日に、衆議院第一議員会館で行われた『TPPを考える国際シンポジウム』における韓国の徐尚範(ソ・サンボン)弁護士の報告書の仮訳作業をようやく終えた(むろん韓国語の翻訳は専門家に依頼したが、法律校正だけでも苦労した)。
 徐弁護士は『民主社会のための弁護士会』の外交通商委員会に所属している。
 報告書は全二二頁に及ぶが、冒頭部分に『法のグローバル化』との標題で現代グローバリズムに対する本質的な認識が示されているので、紹介させていただきたい。
二 徐尚範弁護士報告の引用
.現在の法のグローバル化は、国際法の分野では基本的に「脱政治」という方向に進んでおり、それは「国家が前提とされない世界法」の形で、そして政治から自由で普遍的な市場システムの形成を目指している。
.国内の憲政秩序や民主秩序、そしてこうした秩序に基づいて構成される公益など、最も重要な国家の領域も通商と呼ばれる私的な利害関係が動作する対象へと転落する。
.韓国の国内における立法作用は、国家の構成員がどのような生活をどのように営むべきかについての根本的な選択と決定を行う行為であり、それは国民の生命、自由および財産、そして幸福の質と内容を規律する法規範の制定作用である。近代国家の登場自体が立法権に対する市民的制御として進行し、市民革命の過程で、立法の権利は、国民主権の最も重要な要素として構成されてきた。
.韓米FTAのように、条約によって包括的・一般的に統治権を留保することは、一種の「包括的立法の委任」に相当する統治権の放棄になると言わざるを得ない。
三 解説
 あまりにも簡潔に要約されているため、私なりに読み取った大意を次に紹介する。
 現在、法のグローバル化が進行している。これは、「政治から自由で普遍的な市場システム」を世界規模で形成することを目的としている。グローバル化した法は、「国家を前提としない世界法」として直接に市場や企業活動に対する世界的な規律を提供する。「グローバル化した『法の支配』」によって、市場・企業活動ルールが、先行的に決定されるため、国家の経済弱者保護等の経済・社会・産業保護政策などの余地は著しく狭められる。
 つまり、「グローバルな法の支配」により、市場や経済活動に対する主権国家の「政治」作用は排除される。このことを報告はグローバル法が、「脱政治」の方向に進行していると端的に表現している(以上、カ項)。
 本来、主権国家の立法作用は、国民の生命、自由、財産、幸福追求の権利などを保障し、個々の国民の生活のあり様を左右する重要な基本的権能である。立法作用が国民の統制の下にあることこそが、近代国家における国民主権の重要な基本原理である(以上、ダ項)。
 ところが、「法のグローバル化」は、上記のような憲法秩序や民主秩序に基づく、人権保障等の公共の福祉を、国際商取引という私的な利害関係の対象に貶め、私的利害に従属する分野へと転落させてしまう(以上、ナ項)。
 政府が条約(この場合は、米韓FTA)を結ぶことで、主権者である国民が自らの人権を保障・実現するため有する広範な立法権限を包括的に国家の私的利害が支配するグローバル法の領域へ委ねてしまうことは、近代憲法が禁じる「包括的な委任立法」に相当するもので、国民主権の放棄に等しい(以上、ラ項)。
四 結論
 TPPに限らず、現在、政府が進めている自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)や二国間投資協定(BIT)の最大の眼目は「非関税障壁の撤廃」にある。「非関税障壁」とは、国民の権利を保護する政府の政策、制度、規制、措置や慣行すべてであり、「自由貿易」を標榜して進められる政策は、これらが自由貿易や自由競争の妨げとなるとして撤廃することを目指すものである。国際法からの新自由主義の徹底といえる。
 一部には、アメリカ型ISDと非アメリカ型ISDが存在するかのような誤解も生まれているようである。しかし、国際経済法の第一人者も、世界三〇〇〇近いISD条項のネットワークによって、単一の一般国際法が世界法として形成されつつあり、主権国家に対する法の支配という世界秩序が展望されるとしており、徐尚範弁護士と同様の認識が示されている。
 徐尚範弁護士の『法のグローバル化』に対する認識は、自由法曹団としても学ぶ価値があると考え紹介する次第である。


人類と核は共存できない

第二回「原発と人権全国研究交流集会」分科会のご案内

埼玉支部  大 久 保 賢 一

 四月五日、六日。福島大学で、第二回「原発と人権全国研究交流集会」が予定されている。全体の案内については三月一一日付団通信で杉本朗さんが書いている。ここでは、「人類と核は共存できない」をテーマとする分科会の案内をしたい。
一 原発事故の特徴と脱原発の理由
 福島原発事故は、新たなヒバクシャ、原発難民、人の住めない地域を作り出している。この未曾有の大規模な被害の特徴は、人類が制御の知識も技術も持ち合わせていない放射能に起因するということである。原発は、核分裂エネルギーを利用する技術であり、人工放射性物質を発生し続けている。これに加えて、ウランの採掘や精錬の持つ危険性、放射性廃棄物の処理技術の未確立、核テロの危険性なども忘れてはならない。原発は、そのサイクルの最初から最後まで、本質的に危険な存在なのである。
二 原発推進の論理
 原発推進の表向きの理由は、電気エネルギーの安定的提供、地球環境にやさしい、安価に提供できる、事故があってもの安全策がとられているので心配ない、などというものであった。この論理は、福島後も展開されている。原発の本質的危険性など歯牙にもかけられず、業界の都合だけが強調されている。この安全性軽視と利潤追求第一の論理は、原発の輸出についても貫徹している。
三 原発と核兵器
 他方、表には出せない理由は、原発稼働の結果産出されるプルトニウムの保有は、核兵器の製造を可能とし、「国家安全保障の切り札」であるというものであった。核兵器国や日本は、現在も、この発想である。原発の導入と核兵器保有の衝動は、表裏一体のものだったのである。原発事故と対抗するにあたって、完全な被害回復と原発の廃炉を求めるだけではなく、核兵器との関連を視野におく必要があるのは、このような背景があるからである。
四 核の平和利用の欺瞞と核兵器廃絶の動き
 原発を導入した勢力は、核エネルギーの平和利用の可能性を喧伝することにより、広島、長崎の原爆被害を矮小化して反核運動の動きに水を差し、電力会社に新たなビジネスチャンスを提供し、更には、自国の核兵器保有に道を開こうとしたのである。けれども、長崎の後、実戦での核兵器の使用はなされていない。核不拡散条約(NPT)は、核兵器国に全面軍縮についての交渉を命じている(六条)。国際司法裁判所は、核兵器の使用や威嚇は「一般的に違法」であるとしているし、全面軍縮について交渉の締結を求めている。国連には「モデル核兵器条約」も提案されている。最近では、非人道性への着目により、核兵器廃絶の動きはより広範で着実なものとなっている。
五 原発の位置づけ
 他方、核不拡散条約(NPT)は、原子力エネルギーの平和利用について、加盟国の「奪いえない権利」としている(四条)。核兵器が廃絶への方向が示されていることと比較すれば、全く異なる位置づけがなされているのである。現行国際法のもとでは、核エネルギーの平和利用は、権利であるとされているのである。また、原子力事故に関する諸条約(通報条約や援助条約)はあるが、本質的危険性は法的規制の対象とはされていない。ここに、核兵器と原発の法的位置づけの違いが端的に表れている。
六 私たちの課題
 私たちが、核と人類は共存できないとして、脱原発と核兵器廃絶を求める場合、この違いを念頭におかなくてはならないであろう。原発は「違法な存在」ではなく、その利用は「奪いえない権利」とされている国際社会の中で、どのような価値観と論理で、脱原発を実現するかが問われているのである。加えて、原発からの脱却が、電気エネルギーの持続的確保と並行しながら可能であることを指し示すことができなければ、社会的発展のために電気エネルギーが必要であるとしている人々を説得することはできないであろう。原子力利用の危険性を排除し、かつ化石燃料利用による地球温暖化に対処しながら、電気エネルギーを確保することが課題なのである。
分科会の内容
 このような問題意識に基づいて分科会を開催したい。
山田寿則さん(明治大学)には、核兵器と原発(核の「平和利用」)とに関わる現在の国際法(核不拡散条約(NPT)体制)を概観していただきたいと考えている。
 スティーブン・リーパーさん(広島平和研究所)には、核兵器と原発の危険性、相互の関連性、核との共存を拒否する論理と運動の在り方などについて、包括的な問題提起をしていただきたいと考えている。
 また、大いに参考にしたいのが、実際に脱原発を実現した国家の経験である。
 フィリピンの経験については、ブッチさん(フィリピン活動家)に。ドイツについては千葉恒久弁護士に報告していただきたいと考えている。
 そして伊藤和子団員には、国際社会は福島原発事故をどのように見ているのか。脱原発の動きを国際社会に広げるうえで、どのような取り組みが可能なのか。などを語っていただきたいと考えている。
 ぜひ大勢の団員の参加をお願いしたい。

(二〇一四・三・一四記)


三月九日(日)「NoNukesDay」報告と四月五日(土)六日(日)第二回「原発と人権」全国研究交流集会in福島の紹介

東京支部  柿 沼 真 利

 二〇一四年三月九日(日)午後、東京・日比谷公園、及び、国会周辺は、「原発ゼロ」を求める多くの人たちの「声」に包まれた。
 全体延べの参加者数は、主催者発表で、三万二〇〇〇人!!
えっ、「なにが?」って?
 「三・九No Nukes Day 〇三〇九原発ゼロ大統一行動」のことですよ。
 二〇一一年三月一一日の東日本大震災、そして、これに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故から、三年。
 この事故により、故郷をおわれ、困難な避難生活を強いられている方々は、なお一四万人にのぼるとされています。また、事故現場は、収束どころか、混迷の度を深めています。爆発した一〜三号機では、放射線量のため、溶けだした燃料の所在、現状はもとより、原子炉格納容器の状態確認すらできない状態が続いており、原子炉建屋への地下水の流入と、原子炉からの冷却水漏れにより、高濃度の汚染水が大量に流れつづけて、その減量化、処理のめども立っていません。海洋汚染も含めた深刻な事態に至っています。爆発を免れた四号機からの使用済み核燃料棒の取り出しが始まりましたが、一〜三号機では燃料の存在場所さえ特定できず、原子炉の廃炉、解体の目途さえ立っていない状況です。
 ところが、現安倍内閣は、なお、原発再稼働、原発輸出など、原発政策の推進を目論み、特に、本年二月二五日、原子力発電について、「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけた上で、原子力規制委員会による安全性判断に基づき「再稼動を進める」と明記した「エネルギー基本計画」の原案を公表し、この三月中にもその閣議決定を狙っています。
 そんな中、三万二〇〇〇人が、「原発ゼロ」の声を上げました。参加者の中には、音楽家の坂本龍一氏のような著名人もいました。
「No Nukes Day」は、「首都圏反原発連合」「さようなら原発一〇〇〇万人アクション」「原発をなくす全国連絡会」の三者が合同で、統一行動を呼びかけるもので、昨年の六月二日、一〇月一三日と二回行われ、大成功を収め、今回三回目の開催でした。
 私も、日比谷公園内から、国会前までのデモに参加し、多くの団員たちとともに、「原発ゼロ」の声を上げました。昨年九月以降、日本は、「原発稼動ゼロ状態」が続いており、これは、多くの国民が「原発ゼロ」の声を上げ、訴えた成果です。今後も、大いに声を上げていきましょう!!
あっ、あと一つ。
 本年四月五日(土)六日(日)、福島県福島市金谷川にある福島大学キャンパス内で、第二回「原発と人権」全国研究交流集会in福島が、開催されます。同集会は、一昨年の四月七日(土)、八日(日)に第一回が開催され、東電福島第一原発の事故の風化を許さず、現在の被害の状況と情勢の全体像をしっかりと把握し、運動の課題を明らかにし、全国に広がっている「被害回復」「脱原発」の運動の連携を進めること、さらには原発輸出を阻止するためにも国際的連帯を目指して、行われる集会です。
 実施要綱、参加方法などについては、「原発と人権」ネットワークのホームページ(「原発と人権」で検索。)のトップページに、バナーが貼ってありますので、そちらをクリックしていただいて見ていただければ、と思います。
 ぜひぜひ、ご参加ください。


原発労働・除染労働弁護団の結成

福島支部  広 田 次 男

〈原発・除染労働者〉
 三・一一以後、いわき市には全国から流入した原発労働者・除染労働者は、その数一万ともいわれる。その大半は男性独身者である。
 広野町・楢葉町には、単身労働者用の仮設アパートが林立する。広野町では、労働者の増加を帰還拒否の理由の一つに挙げる家族も少なくない。
 また、いわきの夜の街で、作業衣姿での飲酒客は、必ずと言っていい程に見かける存在である。
 即ち、いわき市民とこれら労働者との間には、ある種の緊張感が存在する。
 他方、これら労働者の存在なくして、事故収束・除染作業の進展があり得ない事は明らかであり、且つ、その労働条件が低劣である事も明らかであった。
〈明らかな違法〉
 ほぼ全ての原発・除染労働者につき、以下の点が指摘できる。
 第一は、危険手当の不払い・ピンハネである。
原発労働者について、東電は「線量の高低に応じて、一日あて二万円から一〇万円の手当を支払っている」と発表している。
 ところが、末端の下請労働者からの聴き取りでは、ほぼ全ての労働者が、この手当なるものを受け取っていない。「東電は本当に危険手当を出しているのか」「東電は、ピンハネを前提とした請負契約の締結をしているのではないか」との疑念が指摘される。
 除染労働者についても、ハローワークでの求人票には、危険手当を明示しておきながら、実際には零ないしは半額程といった例が大半である。
 第二は、正規労働時間を超えた拘束時間に対する賃金不払いである。
 原発労働者については、拠点であるJヴィレッジに、始業時間の六〇分ないし九〇分前の集合が義務づけられており、Jヴィレッジで点呼・持物検査を受け、指定のバスに乗車して現場に向かうのが通常である。
 除染労働者については、Jヴィレッジ集合のケースもあるが、いわき市内の宿舎となっているホテルのロビーに集合して、指定のバスに乗車というケースもある。
 いずれにしても、指定バスへの乗車以後は拘束時間として、賃金支払いの対象時間であるにも拘わらず、その支払いは皆無である。
〈提訴〉
 二月二〇日、二人の元原発労働者が、上記第一・第二の支払を求めて提訴した。
 二人とも「名前と顔を出せば、いわきで飯が食えなくなる」との強い想いがあり、提訴の記者会見は、弁護士と支援労組の人々だけで行い、提訴と同時に訴状の閲覧制限の申立を行った。
 二人に続いて提訴予定であった三人は、会社側に簡単に潰された。東電およびその関係事業所の圧力の強さ、壁の高さを改めて思い知らされた。
 続いて、元原発労働者の被曝者が提訴を決意した。先日の詳細聴き取りの際には、余りにも生々しい原発労働の実態に触れて、必ずやこの実態を法廷の場で、白日の下に曝してやるとの決意を新たにした。
〈弁護団結成〉
 原発労働・除染労働者の間には、前記第一・第二の不満が蓄積している。二月二〇日の提訴は、県内ニュースに止まったが、早くも反応が出始めている。この斗いの芽を丁寧に育てる事により、原発労働・除染労働にまとわりつく利権構造、その危険性を告発する大きなうねりへの発展が可能だと思う。
 三月九日、原発労働・除染労働弁護団を発足させた。共同代表に海渡雄一さんと私、顧問に宮里邦雄さんと小野寺利孝さん、事務局長に只野靖さんの各弁護士という体制になった。
 いわきの現場は常に人手不足である。一人でも多くの団員の参加を切望して止まない。


「自由法曹団」フェイスブック、開設しました!

事務局次長  田 井   勝

 自由法曹団本部は今回、Facebook(フェイスブック)ページを開設しました
 フェイスブックは、パソコンインターネットのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)です。世界中、一三歳以上のどなたでも、登録して個人のページをつくり、様々な方と友達になれば、友達のページを閲覧したり、コメントして連絡を取り合ったりすることができます。
 このフェイスブックでは団体のページも作れるので、今回、自由法曹団としてページを作りました。
 自由法曹団は今後、このフェイスブックページで、声明や意見書の全文掲載、集会の呼びかけ告知、出版した本の宣伝等々を行っていきます。基本的にはこれまでホームページで発表してきた内容と同じものですが、徐々にこのページ独自の情報もお伝えしていこうと考えています。
 既にフェイスブックを利用している方へ。この自由法曹団ページにある「いいね!」のボタンを押して下さい。そうすれば自由法曹団のページが声明等を発表(アップ)するごとに、自分のページ上で閲覧することができます。
 また、自由法曹団ページにアップした内容に関して、「シェア」のボタンを押していただけると、その内容が皆さんのページに掲載され、自分の友達も閲覧することができます。いわゆる「カクサン」というものです。ご協力ください。
 まだフェイスブックを利用されていない方へ。この機会にぜひともフェイスブックに登録してください。インターネット上で「フェイスブック」と検索すれば、フェイスブックのホームページにたどり着けます。そこで、ご自分の名前とメールアドレスを書き込めば登録できます。
 登録は簡単です。フェイスブック上には自由法曹団以外にも他団体のページなどあるので、なにかと役に立ちます。
 開設後、このページ上で労働法改悪に反対する声明や、秘密保護法反対運動の報告集、集会の告知などをアップしましたが、団員・労働組合の方・政治家・一般の方々と様々な方に「いいね!」を押してもらっています。
 特に三・九の原発集会の告知は、多くのかたに「いいね!」や「シェア」を押していただきました。現時点(二〇一四年三月七日時点)で一〇〇〇人前後の方に閲覧してもらっています。
 団の情報発信の新たな形態として、このフェイスブックページをよろしくお願いします。


アベノコヨウハカイ(安倍の雇用破壊)―戦後最大の労働法制改悪の攻撃を阻止しよう!

東京支部  鷲 見 賢 一 郎

一 二つのキー・ワード「世界で一番企業が活動しやすい国」と「雇用維持型から労働移動支援型へ」
 安倍内閣は、昨年一月一一日、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定し、その中で、日本経済再生に向けて、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」を打ち出しました。そして、「成長のための戦略の実行・実現」として、「民間投資を喚起し持続的な成長を通じて富を創出するため、『世界で一番企業が活動しやすい国』、『個人の可能性が最大限発揮され雇用と所得が拡大する国』を目指す」としています。この成長戦略の主要なテーマの一つが、労働の規制緩和なのです。
 次いで、安倍首相は、昨年四月二日、厚生労働大臣に対して、「成熟産業から成長産業へ『失業なき円滑な労働移動』を図る。このため、雇用支援施策に関して、行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策シフトを具体化すること。」を指示しました。
 これらの二つのキー・ワードを見ただけでも、安倍政権の労働の規制緩和が雇用を破壊し、大量失業をまねく、異常極まりないものであることがわかります。
二 労働法制改悪実施計画の閣議決定と労働者派遣法大改悪案等の国会提出
 安倍内閣は、規制改革会議の答申を受けて、昨年六月一四日、規制改革実施計画を閣議決定しました。実施計画は、雇用分野では、「①解雇しやすく低賃金の『限定正社員』制度の創設、②タダ働きと過労死をふやす労働時間法制の改悪、③国の責任を緩和する有料職業紹介事業の規制緩和、④労働者派遣を恒常的・永続的な制度にする派遣法の大改悪」に重点的に取り組むといっています(詳細は、労働法制中央連絡会・自由法曹団・全労連編「安倍『雇用改革』を切る!」(学習の友社)を参照下さい。)。
 そして、安倍内閣は、今年三月七日、労働者が無期転換権を行使できるようになる期間を「五年超」から「一〇年超」に延長するなどの労働契約法一八条の特例法案を国会に提出しました。次いで、安倍内閣は、三月一一日、労働者派遣を無期限・無制限に使用できるようにする派遣法の大改悪案を国会に提出しました。
 この派遣法大改悪案は、「労働者派遣は臨時的・一時的業務にかぎり、常用代替として使用してはならない。」との労働者派遣法の大原則を捨て去り、派遣労働者の直接雇用と正社員へのみちを閉ざし、正社員の派遣労働者への置き換えを促進するものです。まさに、「生涯派遣・正社員ゼロ」法案です。何が何でも廃案にしなければなりません。
三 いま、全国各地で、「アベノコヨウハカイ(安倍の雇用破壊)反対、労働者派遣法改悪案を廃案へ」の大運動を!
 いま、財界と安倍政権の雇用破壊の攻撃に対して、私たち労働者・国民のたたかいは立ち遅れていると思います。いま、全国各地で、学習会、集会、街頭宣伝、国会議員要請、地域連絡会の再建等、「アベノコヨウハカイ反対、労働者派遣法改悪案を廃案へ」の大運動を起こす時です。団支部(県)、各地の法律事務所が、労働組合等と一緒に、その先頭に立つことが求められていると思います。
 団本部は、三月一五日の常任幹事会で、労働法制改悪阻止対策本部(本部長・鷲見賢一郎、事務局長・今村幸次郎)を設置することを決定しました。団本部は、現在、三月三一日午後一〜五時に衆議院第二議員会館第一会議室で行う、「許すな!!労働者派遣法と労働契約法の改悪 三・三一安倍『雇用改革』に反対する院内集会」の準備に力を注いでいます。また、四月初旬には、リーフレット「STOP!アベノ雇用破壊!! さよならブラック企業」を五万部(初刷)発行する予定です。
 全国各地で、知恵と力と創意工夫を集め、アベノコヨウハカイ―戦後最大の労働法制改悪の攻撃を必ず阻止しましょう。