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今村 幸次郎 *改憲・戦争法制阻止特集*
戦争法制の阻止に向けて全団員の奮闘を―二・二二平城京の誓い
田中 隆 戦争法制(安保法制)がつくりだす国
井上 正信 二〇一五・二・二二 憲法討論集会(奈良)問題提起発言要旨
加藤 健次 *盗聴法拡大・司法取引制度導入阻止特集*
盗聴法拡大・司法取引制度導入阻止のために全国で取り組みを強めよう!
横山 雅 治安パンフレット「秘密・監視・密告の社会はごめん!」を活用下さい。
山田 大輔 「戦争への道―秘密・監視・密告の社会はゴメン!二・一三集会」のご報告
柿沼 真利 東京電力・福島第一原発事故から四年 ―二〇一五年三月原発関係企画の紹介
石田 正也 福島原発おかやま訴訟第一回口頭弁論(二月三日)
林 裕介 教科書学習会(二月一二日)の報告
武田 芳彦
一由 貴史
審査段階での労災認定事例の報告
萩尾 健太 郵政六五歳非正規定年制無効裁判 判決日は五月一三日!
谷  文彰 「労働法制改悪阻止・労働裁判闘争勝利をめざす全国会議二・六」のご報告
関本 正彦 労働全国会議感想
塚本 和也 二・六労働全国会議に参加して
松本 華子 八法亭みややっこのマネージャー
小峰 将太郎
足立 悠
自由法曹団女性部新人学習会の報告



*改憲・戦争法制阻止特集*

戦争法制の阻止に向けて全団員の奮闘を―二・二二平城京の誓い

幹事長  今 村 幸 次 郎

 二月二二日に奈良で行われた憲法討論集会は、一三一名の参加を得て、盛会裏に終わりました。前日の拡大常幹とあわせて、種々のお骨折りをいただいた奈良支部の皆様に心よりお礼申し上げます。
 今回の憲法討論集会は、戦争法制(安保法制)「整備」に関する政府・与党協議が開始され、五月の連休明けには法案提出が予定され、あわせて日米防衛ガイドラインの再改定も進められ、さらに、首相や政権幹部から来年夏の参議院選挙後に改憲国民投票を行うべしとの発言が飛び出すという情勢の中で行われました。こうした情勢を受け、参加者からは、熱く力のこもった運動の提起が次々となされました。
 以下では、憲法討論集会で提起された行動のうちのいくつかを誌上で再現し、当面の行動を呼びかけます。全団員が火の玉となって、戦争法制阻止の運動に打って出ましょう。
■地方議会で戦争法制反対意見書等の採択を求める取り組み
 (意見書のひな形が常幹・討論集会資料に入っています。)
■四月の統一地方選挙での争点化と護憲勢力の伸長をめざす取り組み
■つくる会教科書を採択させない運動とリンクした取り組み
■戦争法制反対の学習会、街頭宣伝、議員要請等の取り組み
■沖縄新基地建設反対運動・支援の取り組み
 (「翁長知事激励」葉書、「安倍首相抗議」葉書が常幹・討論集会資料に入っています。取り寄せは沖縄支部へお問い合わせ下さい。)
■共同センターリーフの大量普及、活用しての街頭宣伝等の取り組み
 (共同センターリーフ・同申込書が常幹・討論集会資料に入っています。)
■日弁連署名の普及、集約の取り組み
 (日弁連署名用紙が常幹・討論集会資料に入っています。)
■「安倍政権NO!0322大行動」への参加等の取り組み
 (三月二二日午後一時から東京・日比谷野音集会、午後二時から 巨大請願デモ・国会大包囲)
■「平和といのちと人権を!五・三憲法集会〜戦争・原発・貧困・ 差別を許さない」への参加等の取り組み
 (五月三日午後一時から午後三時三〇分、横浜・港みらい臨港パーク)
■全国各地での五・三集会等の取り組み
 紛争と暴力の連鎖をもたらす軍事大国路線か、世界と日本の平和のために九条を守り生かすのか、日本の将来を大きく左右する分岐点にきています。頑張りましょう。


戦争法制(安保法制)がつくりだす国

東京支部  田 中   隆

一 政府・与党協議と戦争法制
 七・一閣議決定を法制化する戦争法制(安保法制)の政府・与党協議がはじまっている。二月一三日に開始された協議は、毎週一回のペースで行われ、三月下旬には政府・与党の結論をまとめる予定とされている。そうなれば、連休明けには法案が提出されることになり、安倍政権は通常国会(六月二二日会期末)の会期を大幅延長して強行成立をはかろうとするだろう。
 安全保障会議設置、秘密保護法制定、国家安全保障戦略、新「大綱」・中期防、防衛装備移転三原則、ODA大綱改定、「繁栄の弧」への地球を俯瞰した外交と、多方面にわたって展開されている安全保障(外交・軍事)戦略の全面再編は、いよいよ平和憲法と直接的に対峙する軍事法の全面再整備の段階に入ることになる。
 全体を通じて留意すべき点を指摘しておく。
 第一に、行われているのは「自公協議」でも「与党協議」でもなく、「政府・与党協議」であること。連日の報道でも明らかなように、協議をリードして公明党を追いつめているのは、自民党ではなく政府そのもの。政府の対応機関は国家安全保障局であり、谷内正太郎局長、兼原信克次長、高見沢将林次長という「陣容」である。
 第二に、改定(九七年)を先行させて周辺事態法の強行(九九年)にいたった前回と違って、法制化とガイドライン改定が同時並行で行われることになっていること。その法制化を米国政府との協議なしに行えるわけはなく、「政府・与党協議」と同時に、水面下の「日米包括メカニズム」で「相互協力計画についての検討」(現行ガイドライン)が、秘密裏に行われているに違いない。
 第三に、後記のとおり、「存立事態」から「存立危険事態」、「周辺事態」から「周辺」を超えた「影響事態」、「邦人救出」にとどまらず「治安維持活動」、「米軍」にとどまらず「オーストラリア軍など」と、七・一閣議決定すら超越した軍事突出が顕著であること。「どうすれば万全の構えがとれるか」という軍事合理主義ないし抑止力論の「なせるわざ」であり、こうした突出にいかざるを得ないことが、このいまの策動の構造的な弱点でもある。
二 すべての「チャンネル」で軍事強化
 つくられようとしている戦争法制は、法改正や新法制定等によって、「五つのチャンネル」で自衛隊の活動を飛躍的に攻撃的にする。唯一改正が予定されていないのは海賊対処法(第六のチャンネル)だが、船体射撃の容認など最初から攻撃的な構造をもっているからで、ジブチにある統合根拠地の拡張など軍事強化がはかられることは変わらない。
 それぞれのチャンネルの特徴を箇条書き的にスケッチする。
1 有事法制の拡張・再起動
 有事法制体系は、アフガン・イラク戦争の「後方」を固めることを目的に〇三年、〇四年に強行された法制。武力攻撃事態法を頂点に、自衛隊法や特定公共施設等利用法、米軍支援法、国民保護法などの個別法からなっている。この国への武力攻撃が発生あるいは予測されたとき、事態認定と対処基本計画の閣議決定と国会承認によって、すべての個別法が起動する仕組みである。
 民間企業(指定公共機関)や地方自治体が対処に組み込まれ、地方自治体では国民保護計画が作成されて「国民保護演習」が繰り返されている。国民は協力の責務を負わされ、医療・建設・輸送分野には自衛隊法による業務従事命令(徴用)まで予定されている。
 有事法制は「国をあげて戦争をする法制」であって、「自衛隊と隊員だけが戦争をする法制」では決してない。
 集団的自衛権容認(新三要件)によって、その有事法制に、「存立事態」がつけ加えられる。「他国に対する武力攻撃」で「我が国の存立が脅かされ(る)・・明白な危険」が生じれば、「存立事態」を認定して自衛隊は海外に出撃し、この国のすべてが戦争態勢に入ることになる。「米国に対する武力攻撃は、わが国の国民の命や暮らしを守るための活動に対する攻撃だから、新三要件にあてはまる可能性が高い」(一四年七月一四日岸田文雄外相答弁)と言うのだから、「米国が戦争に入ればただちに参戦する」と宣言しているに等しい。
 この「存立事態」でも個別法は発動される。米軍を支援するために民間企業や地方自治体が動員され(米軍支援法)、港湾や空港、道路などに米軍優先措置がされることになるだろう(特定公共施設等利用法)、テロ攻撃を含めた反撃が考えられれば国民保護法が発動されて住民避難も検討されることになるだろう。「国の存立がかかる」と言うのだから、「国民の協力は当然」となるに違いない。
 「存立事態」の組み込みは、有事法制を「米国の戦争で発動される戦争法」として再起動させることを意味している。
 それだけではない。国家安全保障局の原案には、「経済的な損失が発生し、国民の財産が失われる危険」を想定した「存立危険事態」なる概念まで含まれている(二月四日毎日)。予測事態に近いものを考えているのだろう。「危険の危険」と言うに等しい事態について、公正な認定や国会のチェックなど、期待できるはずがない。
 そうした事態でも防衛出動待機命令の発令や一部の個別法の発動は可能よするはずだから、「ペルシャ湾に機雷が敷設されそうだから、ジブチ根拠地に掃海艇部隊を集結させ、護衛艦部隊に湾内をパトロールさせる」ことにもなるだろう。これでは、緊張をことさらエスカレートさせることにしかならない。
2 周辺事態法(影響事態法?)の「再生・強化」
 現行ガイドラインの平時―周辺事態―有事の「段階論」に対応して九九年に制定された周辺事態法は、段階論を廃した「切れ目のない対応」(ガイドライン改定中間報告)によって、廃止の運命をたどるものと思われていた。
 その周辺事態法は「公明党の要望」を政府と自民党が受容したことによって「再生」し、「周辺概念」を撤廃したものに生まれ変わることになった。発動要件は「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」となるはずで、「影響事態法」とでも言うほかはない。
 この融通無碍な要件のもとで事態法が発動されると、自衛隊は軍事行動を行う部隊の支援活動や捜索救援活動を行う。「後方地域」の限定は受けず、戦闘が現に行われていない地域であれば実施でき、米軍のみでなくオーストラリア軍などの支援も可能となるから、活動の範囲は飛躍的に拡大する。
 留意すべきは、周辺事態法は米軍が他国と交戦していることを前提にその後方支援を認めた法制であり、「周辺」を撤廃してもその構造は変わらないことである。米軍に軍事支援を行う自衛隊は、その他国からすればまごうことなく「敵国」であり、米軍ともども攻撃(反撃)を受けることになるだろう。
 このとき、「戦闘現場になったら中断・撤退」などできるわけはなく、応戦して戦闘行動に入らなければ全滅する。なしくずし的な集団的自衛権行使の「糸口」のひとつである。
3 海外派兵恒久法(一般法)
 〇一年の「テロ特措法」、〇三年のイラク特措法は、補給活動による参戦(アフガン戦争)や戦地派遣(イラク戦争)の問題を引き起こしながらも、いずれも戦闘行為も戦死者もなく失効した。活動地域が将来にわたって戦闘が起こることがない「非戦闘地域」に限定され、武器の使用が「自己保存型」と「武器防護型」に限定されていたことがあずかって大きい。
 この「国際貢献の海外派兵」は、海外派兵恒久法(一般法)によって恒久化され、はるかに攻撃的なものに生まれ変わる。
 第一に、派遣要件。国連決議がある場合に限定されず、「多国籍軍」型、「有志連合」型も許容される。国会承認が要件だが、秘密保護法の制約もとで、国会のチェックはほとんど期待できまい。
 第二に、活動地域と武器使用。非戦闘地域に限定されず、現に戦闘が行われていない地域でなければ可能とされる。また、武器の使用は、「国家あるいは国家に準じる組織」が「敵」でなければ、「自己保存型」「武器防護型」に限定されず、「目的遂行のための武器の使用」が認められる。
 第三に、活動内容。後方支援活動、人道復興支援活動が認められるのは特措法と同じだが、人質殺害事件等を理由に邦人救出活動が強調されるだろう。
 そればかりか、閣議決定が「領域国の受け入れ同意による警察的な活動」を容認したことから、「紛争終結後の治安維持活動は可能」として、安全確保、派遣先住民保護、巡回、検問などの安全確保活動まで拡張されると考えられる(二月二二日読売)。安全確保活動への抵抗や妨害は、「目的遂行のための武器の使用」によって鎮圧・排除することになる。
 「紛争終結後の治安維持活動」は、治安紊乱勢力に対する掃討作戦を意味している。「ファルージャの虐殺」は戦争終結宣言後に行われ、中国での粛清掃討作戦(中国名「三光作戦」)も占領政策実施のもとで展開された。最も残虐な殺戮が行われたのが「紛争終結後の治安維持活動」だったという歴史的事実を、忘却してはならない。
4 PKOの変質
 九二年に制定されたPKO法によって、世界各地に自衛隊が派遣されている。武器使用を「自己保存型」等に限定することを含むPKO五原則を遵守させ、「自衛隊はかかわるが平和的貢献」というのが制定時の確認だった。
 このPKO法も改正され、「駆けつけ警護」や「治安維持活動」が活動内容に加えられ、それらを遂行するための「目的遂行のための武器の使用」が認められる。なにが起こるか。
 他国のPKOやNGOが襲撃の危険に瀕していれば、自衛隊が駆けつけて警護にあたり、襲撃があれば発砲することになる。このことがNGOにどれだけ深刻な問題を投げかけるかは、NGO関係者が懸念を表明し続けているところからも理解できよう。
 停戦監視や検問などの治安維持活動を自衛隊が展開したとき、治安を紊乱する者(勢力)の妨害があれば、排除するために武器を使用することになる。紛争地域の色彩が強まっている派遣地域で、こうした武器の使用は平和を強制する「平和執行部隊」と本質的に変わらない。
 活動の拡大と武器使用の緩和はPKO五原則を崩壊させ、PKOを、積極的平和主義を掲げた「軍事的貢献」の手段のひとつにすることを意味している。
5 グレーゾーン事態への自衛隊の投入
 平時=治安・警察の領域と有事=軍事・戦争の領域は峻別されねばならない。このことは、軍事・戦争では「敵の殺戮が正義」であるのに対し、治安・警察では「いかなる凶悪犯でも逮捕・拘束・訴追が正義」であることを考えれば、直ちに理解されよう。
 だが、「切れ目のない対応」を掲げる戦争法制は、この峻別を突き崩し、治安・警察領域に自衛隊を土足で踏み込ませようとする。
 発令に閣議決定を要する治安出動や海上警備行動については、閣議決定を電話で行って発令を容易にする。自衛隊側は、発令を受けて直ちに展開できるように態勢と準備を整えるだろう。
 治安出動や海上警備行動には警察官職務執行法や海上保安庁法が準用され、船体射撃などの「目的遂行のための武器使用」が許容されている。「離島異変」で発令を受けて急行した護衛艦が、領海侵犯を繰り返す武装不審船に発砲したら・・相手国からすれば「武力攻撃を受けた」となり、「なしくずし的に戦争」となりかねない。
 自衛隊と共同行動をとる米国などの部隊に攻撃があったら、自衛隊法の「武器防護の武器使用」を拡張して、自衛隊が防護にあたる。この発砲の主体は「自衛官」だから、現場指揮官の判断で戦端を開くことができる仕組みになっている。もしこの攻撃が、「国家もしくは国家に準じる組織」によるものだったら、これまた、なしくずし的に集団的自衛権の行使になだれ込むことになる。
三 戦争法制の行き着くところ
 以上のとおり、戦争法制は、「五つのチャンネル」のいずれでも、憲法的制約を離れた自衛隊の活動に道を開き、早期の投入、戦闘への接近を可能にする。「ポンチ絵」風に言うなら、「これまでトゲを寝かせて丸くなっていたヤマアラシが、すべてのトゲを目いっぱいに振りたてた姿」とでも言えようか。
 そのトゲのひとつに刺激が走れば、ただちに発砲され戦闘行動が開始される。どのトゲで開始されても、「切れ目のない対応」によって容易に武力行使=戦争へと拡大する。そして、その戦争は、常に米国あるいは米国の同盟国との共同作戦となる・・。
 その結果、この国は「武力による平和の創設・強制」の道をひた走ることになり、この国の「軍事プレゼンス」は確かに向上する。だが、そのことは、この国が、「民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値」を掲げる陣営の「軍事大国」となり、その「普遍的価値」を共有できない国や社会との関係では、明確な「敵国」「敵軍」として登場することを意味している。
 この道がなにをもたらすかは、「九・一一」から一四年間の世界とこの国の道程が、事実をもって明らかにしている。
 にもかかわらず、それでもその道を征くのか。そうでないもうひとつの道を模索するのか・・これが安全保障戦略再編と戦争法制をめぐる問題の根源的な問いかけである。
 二月二二日の憲法討論集会(奈良)の報告に補筆。広報委員長の立場にありながら、制限字数を大幅に超過していることをお詫びします。事態切迫のゆえとご了解いただければ幸甚です。

(二〇一五年 二月二三日脱稿)


二〇一五・二・二二 憲法討論集会(奈良)問題提起発言要旨

広島支部  井 上 正 信

 私は今年に入ってからの学習会、講演会では「七・一閣議決定、ガイドライン改訂、安保法制改正はこの国と私たちをどこへ導くのか」という「三題話」をしている。それはこのような理由からだ。
 安保法制改正問題は法律の改正であるから、解説がどうしても抽象的なものとなる。閣議決定とガイドラインは、安保法制改正と一体のものだ。閣議決定とガイドライン改訂の中味をしっかり理解すれば、安保法制改正で何を狙っているのかが理解しやすくなる。
 学習会や講演会で与えられた主題や案内チラシを見ると、集団的自衛権だけが問題であるかのような取り上げ方が見受けられる。決してそうではないことを強調している。
 以下は二月二二日の憲法問題討論集会での発言要旨であるが、発言時間の関係から省いた点も書き加えた。
 集団的自衛権行使だけが問題ではない、「戦争をする国造り」の視点からは、三つの分野がそれぞれ独自の危険性を持っている。
(1)国際平和協力の分野、我が国の平和と安全確保分野
 (改正される周辺事態法が適用される事態)

 いずれも地理的限定のない無制限な派兵を目指す法制だ。戦闘現場以外の場所で支援活動。攻撃されれば反撃する(武力行使、交戦権行使だ)。
 集団的自衛権を行使する意味は、自衛隊と米軍とが最前線で肩を並べて戦闘するというのではない。米軍は第二次大戦、その後も現在まで世界中で戦争を遂行しているいわば戦争のベテラン軍隊。自衛隊は戦闘経験が全くないし、海外派遣では「一発の銃弾も撃たない、一人も市民も殺さない」を誇りにしている「奇妙な軍隊」だ。自衛隊が米軍と肩を並べて戦争ができるまでには長年月を要するだろう。このような自衛隊と米軍は最前線で一緒に戦うと、米軍にとっては足手まといだ。米国が期待しているのは後方支援をしっかりやれということだ。後方支援で攻撃されれば集団的自衛権を行使して反撃する。では国際平和協力分野、我が国の平和と安全確保のための後方支援とどこが違うのか。恒久法を作れば、むしろ集団的自衛権行使での海外派兵よりも、国際平和協力での海外派兵の方が機会は多いはず。「戦争をする国造り」という視点から見れば、どちらも危険だ。
(2)グレーゾーン事態での自衛隊の活用
 尖閣を巡る日中の国際紛争が「切れ目なく」武力紛争へ発展する危険性を持っている。中国に対する武力挑発政策だ。歴史認識問題を背景にした非合理なナショナリズムの感情が沸騰してコントロール不可能になれば、本格的な日中間の武力紛争となりうる。日本政府としては絶対にやってはならない政策だ。中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突しただけで日中関係は大荒れになったことを思い出してほしい。
 他国軍隊への侵害行為の際の自衛隊の防護活動(他国軍隊の武器防護のための武器防護)は、現場指揮官の判断で我が国が集団的自衛権行使により他国との武力紛争に加わることになる。国会の承認も総理大臣の命令も閣議決定もないまま自衛隊の暴走を許すことになる。
二「切れ目のない」の隠された意味
 「切れ目のない」は現行防衛法制による自衛隊の活動への制約(憲法第九条の制約だ)を取り払うという意味だ。個別的自衛権と集団的自衛権の「切れ目」、一体化論で他国の武力行使と一体化した活動ができない「切れ目」、非戦闘地域が戦闘地域になりそうになれば活動を中止したり撤退する「切れ目」などだ。「切れ目のない」安全保障法制は、憲法第九条を破壊するための安全保障法制の意味だ。自衛隊に海外で武力行使をさせる意味だ。
 しかし与党協議をみていると、さらに隠されてきた意味が見えてくる。与党協議で公明党の抵抗、消極姿勢を押し切り、自衛隊の海外活動へのすべての制約を取り払うという意味だ。特措法では迅速な対処ができない「切れ目」がある、米軍を防護できて他国軍隊を防護できなければ「切れ目」がある、我が国周辺地域で後方支援するだけではそれ以外のグローバルな地域での事態が日本の平和と安全に重大な影響を与える場合に後方支援できない「切れ目」があるなどである。閣議決定に合意した公明党は「切れ目のない」でノンブレーキとなっている。
 現行防衛法制の基本的な枠組みを知れば、安全保障法制改正一括法案はわかりやすい、批判しやすいのだ。
 現行法制の基本的な枠組みは次のような原則で作られている。第一原則は我が国への武力攻撃の場合に限り武力行使ができる(個別的自衛権)、第二原則は海外では武力行使ができない(武器使用のみ)。これから派生するのが以下の原則だ。(3)他国の武力行使と一体化禁止(4)非戦闘地域、後方地域での支援に限定(5)武器使用は自己保存権に基づくものに限定、任務遂行のための武器使用禁止(6)相手に対する危害射撃は刑法第三六条第三七条に限定(7)武器使用は個々の自衛官に与え、自衛隊の部隊等には与えない(8)海外での自衛隊の活動を後方支援、人道復興支援に限定(警護活動、安全確保活動、船舶検査活動のような危険な前線での活動禁止)(9)PKO参加五原則。(3)以下は第一、二原則を踏み外さないための歯止めという位置づけだ。
 安保法制改正は、これらの原則をすべて覆そうとしている。だから歯止めは取り払われるのだ。今後提起される安保法制改正法案がどの原則をどの様に変えようとしているかという観点で分析すれば解かりやすい。
四 安全保障法制改正法案の国際法違反の論点
(1)
「自衛の措置三要件」は、ニカラグア事件ICJ判決が集団的自衛権に課した要件を無視している。
 その要件とは
    被侵害国が武力攻撃を受けたことを宣言する
    被侵害国が援助を求めている
 これは集団的自衛権が他国防衛であることを明確にしている要件だ。
「自衛の措置三要件」は国民の批判が強い集団的自衛権=他国防衛という本質を隠して、わが国の防衛であるかのごまかしをしたため、上記二つの要件を無視したのだ。
 自衛隊法、武力攻撃事態法改正ではここを重要な争点にしなければならない。
 二月二日参議院予算委員会での安倍答弁はこの危険性を示した。国際法違反の先制的自衛権行使をした国に対しても、自衛の措置三要件に該当すれば集団的自衛権行使をすると述べたのだ。我が国は自衛の措置三要件の下で無法者国家になるであろう。
(2)武器防護のための武器使用を米軍や他国軍隊まで拡大するケース。
 平時に米軍に対して侵害行為があれば、米軍は個別的自衛権行使で反撃する。では自衛隊は警察権行使での米軍の武器防護となるのか。侵害行為を行った相手から見れば、これは集団的自衛権行使だ。しかしニカラグア事件ICJ判決はこのような場合集団的自衛権行使は国際法違反としている。正規軍による越境攻撃のように武力行使の重大な形態を「武力攻撃」とし、この場合には集団的自衛権行使ができるが、これ以外では集団的自衛権行使は違法としている。ニカラグアに対して武力攻撃を行った米国はエルサルバドルへの集団的自衛権行使であると主張した。その理由として、ニカラグアはエルサルバドルの反政府武装勢力への軍事援助を行ったことを、ニカラグアによるエルサルバドルへの武力攻撃であると主張した。ICJ判決は、エルサルバドル反政府武装勢力に対するニカラグアの軍事援助は武力攻撃には当たらないと判断した。
五 交戦権行使になる。
 憲法第九条二項「交戦権否認」は絶対的な否認だ。閣議決定はこの問題には一切言及していない。政府解釈はこれまで絶対に交戦権行使とは言わず、「自衛行動権」で交戦権行使ではないと説明してきた。交戦権は敵国まで攻め込んで軍事占領や占領行政ができる、戦時臨検ができるが、わが国は交戦権が行使できないので、このようなことはできないとした。しかし集団的自衛権行使となれば、交戦権行使でしか説明できない。それとも閣議決定が容認したのは、国際法上の集団的自衛権丸ごと行使ではなく、必要最小限に制限されたものだから、交戦権行使ではないと説明するのか。しかし集団的自衛権行使を行いながら交戦権行使ではないとは言えないであろう。そうすると、自衛の措置三要件で海外で武力行使をすることは、閣議決定にかかわらず依然として憲法第九条違反の問題は残るのだ。
六 自衛隊法の罰則規定を改正するのか。
 自衛隊法上の罰則には軍刑法に相当する規定がある。例えば防衛出動命令下で警戒任務についている自衛隊員が居眠りをすれば七年以下の懲役刑または禁錮刑だ。市民社会の刑法では考えられないものだ。罰則は防衛出動命令、同待機命令、治安出動命令がある場合に限り適用される。自衛隊法は個別的自衛権行使の法制だからだ。他方、国際平和協力活動で海外へ派遣された自衛隊員には適用されない。怖くなり任務を放棄して帰国した場合でも離脱罪や抗命罪には問えず懲戒解雇しかできない。
 安保法制改正で自衛隊員は海外で危険な任務に就くことになる。一発の銃弾も打たなかった、一人の市民も傷つけなかったことを誇りにする自衛隊から、わが国の平和と安全、国際社会の平和と安定のため、他国市民を殺傷することを任務とする軍隊になる。自衛隊員を重罰で規律しないと自衛隊は部隊としての任務遂行はできない。
 この点はまだマスコミ報道では全く報道がなされていないが、法律家としてはその可能性も念頭に置く必要がある。
 安保法制改正で憲法の明文改正への圧力が強まる。
 日米同盟の強化と防衛法制の改正、自衛隊の海外活動の拡大が憲法改正への衝動の震源地であった。安保法制の改正は、この圧力を一層強めるであろう。
(1)危険な任務を遂行するため、自衛隊員に対して厳しい罰則で 統制する必要は高まる。
 さらに軍事法廷の要請が強まる。これは明文改憲でしかできな い。自民党改憲草案第九条の二だ。
(2)実態は武力行使であるが、改正安保法制でも「武器使用」と説明せざるを得ない。武器使用である以上、例えば他国市民を殺傷すれば、違法性が阻却されるということはあるにしても刑法上の犯罪を構成する。武力行使とすれば、国際法違反(国際人道法に反する戦争犯罪)にならなければ刑事上の責任は問われない。これは国際平和協力での自衛隊が武力行使できる法制にしなければ解決ができないが、憲法第九条の改正が必要だ。
(3)海外での自衛隊の活動実態は交戦権行使でありながら、交戦権が否認されたままだ。
 これも第九条の改正が必要だ。
八 マスコミ報道の問題
 マスコミ報道は、政府がどのような安保法制を考えているか、与党協議で何が問題になっているかについての報道はあるが、安保法制改正で我が国はどうなるのか、私たちの生活にどのような影響があるのかについての報道はほとんどない。その結果、市民は安保法制改正に漠然とした不安感はあるが、問題を抽象的にしかわからない。団と団員が想像力を働かせて、戦争をする国造りがどのようなものになるのか(安倍政権の積極的平和主義のリスク)を市民に訴える必要があるし、マスコミへの働きかけが必要だ。
(1)我が国が中国との不測の事態で武力紛争に巻き込まれ、戦争の被害を受忍しなければならなくなる。
(2)七〇年間戦争をしない平和国家として確立してきた我が国の国際的立場を失う。
(3)テロとの戦争に加担することで、私たちの安全が脅かされる。
 人質殺害事件は積極的平和主義の持っているリスクを示した象徴的な事件だ。
(4)今後軍拡、防衛予算の増大を招き、福祉が一層削減され、増税となる。
(5)五兆円の防衛予算を使いながら自衛隊が外征軍として姿を大きく変え、もはや後戻りできなくする。
 冷戦終結後主権国家間の戦争という「伝統的脅威」がなくなり、西欧の軍隊は大幅に削減された。他方で大量破壊兵器と運搬手段の拡散、国際テロリズム、破たん国家の内戦など「新たな脅威」へ対応するため緊急展開軍化した。しかしわが国では、中国・北朝鮮脅威論の中での安保法制改正であり、「伝統的脅威」への対応と、「新たな脅威」への対応という両面での軍事力強化を迫られている。とりわけ今回の安保法制改正は、中国の軍事的脅威への対抗という側面を持っているので、今後の軍拡は避けられないであろう。そのことは増税と社会福祉の削減となる。


*盗聴法拡大・司法取引制度導入阻止特集*

盗聴法拡大・司法取引制度導入阻止のために全国で取り組みを強めよう!

東京支部  加 藤 健 次
盗聴法・司法取引阻止対策本部事務局長

一 こんな法案を成立させるわけにはいかない!
 盗聴法の拡大と司法取引導入を内容とする盗聴法(通信傍受法)と刑事訴訟法「改正」案が一括法案(「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」)として、三月中旬にも国会に提出されようとしている。
 盗聴法は、反対運動の高まりの中で、対象犯罪をいわゆる組織犯罪の四類型に絞った上、通信事業所で職員等の立会のもとに行うという限定付きで成立した。ところが、今回の「改正」では、盗聴範囲を通常犯罪にまで広げた上、立会等の要件をなくして、「使いやすい」法律にすることが狙われている。これによって、盗聴という捜査手法が「日常化」し、膨大な量の会話やメールが本人の知らない間に捜査機関に収集されることになる。他方で、一九八六年に発覚した日本共産党の緒方国際部長(当時)宅盗聴事件について、警察は、謝罪はおろか、盗聴の事実を認めることすら拒否し続けている。このような警察に、「使いやすい」盗聴法を渡すわけにはいかない。
 司法取引制度は、他人の犯罪立証に協力することを条件に、刑事責任を免れたり、軽くするというものである。この間、自分の罪を軽くするという動機に基づく「引っ張り込み」証言によって、多くの冤罪が生み出されてきた。司法取引制度の導入によって、冤罪が増える危険性がある。
 また、盗聴の拡大と司法取引制度が、民主団体や市民の運動に対する弾圧の手段として悪用される危険が大きいことも直視しなければならない。
 秘密保護法とあいまって、情報統制・監視・密告の「戦争へ向かう社会」をもたらす法案を絶対に成立させるわけにはいかない。
二 法案をめぐる情勢…このままでは危ない!
 法案の内容は、どれをとっても、一つひとつ十分な吟味が必要なものばかりである。にもかかわらず、法務省は、「一括法案」という形で、十把一絡げにして審理し、成立させようとしている。日弁連が法制審答申に賛成の立場をとっていることもあって、国会では、法案の危険な内容が知らされておらず、「対決法案」となっていないのが現状である。率直にいって、このままでは、まともな審理がされることなく法案が成立してしまう危険性が高いといわざるをえない。
 しかし、その一方で、盗聴法拡大と司法取引制度は、法制審において十分な検討がなされないまま政治的妥協の産物として答申に盛り込まれたものである。まして、国民的な合意があるとはとうていいえない。
 したがって、われわれが盗聴法拡大と司法取引導入の危険な内容を国民の中に明らかにしていけば、反対の世論を急速に広げることは十分に可能である。
いまこそ、団の出番である。
 全国の団員の皆さんに対し、盗聴法拡大と司法取引導入の内容を広く知らせ、反対の世論を結集していく取り組みに直ちに立ち上がることを心から呼びかける。
三 法案成立阻止のために直ちに行動に立ち上がろう!
(1)盗聴法拡大、司法取引導入の問題点、危険性を広く知らせていこう!
 労働組合、民主団体そして多くの市民と共同して、盗聴法拡大・司法取引導入の危険な内容を伝え、反対の声を広めていこう。
パンフレット「秘密・監視・密告の社会はごめん!」を大いに普及しよう。
 ※別紙注文票の活用を。(頒価は一部一〇〇円。多数注文の場合は大幅に割引があります。詳しくは救援会に問い合わせを。)
労働組合、救援会などと協力して学習会や集会を行おう。
請願署名を広く集めよう。
 ※三団体で呼びかけた二つの署名(「盗聴法(通信傍受法)の改悪と共謀罪の新設に反対する請願署名」「冤罪をなくすための刑事司法制度の改革を求める請願署名」)を集めよう。
団の意見書を活用して、マスコミに対し法案の危険な内容を知らせていこう。
 ※各地で、地元マスコミへの要請や頭書などに取り組もう。
(2)弁護士会の中での運動を強化しよう!
 日弁連執行部の姿勢にかかわらず、弁護士会の中で、盗聴法拡大、司法取引導入に反対する運動を組織し、広げていこう。
単位会での学習会や集会、反対の声明などを追求し、実現しよう。
弁護士会内有志による宣伝や集会など、反対の取り組みを進めよう。
(3)国会議員への働きかけを強めよう!
 法案の上程を許さず、上程されても廃案を勝ちとるために、国会議員、とりわけ衆参の法務委員会所属議員への働きかけを強めていこう。
各地の出身議員に対して盗聴法・司法取引導入の危険性を訴えていこう。
三月一九日(金)の院内集会、国会議員要請行動(次頁案内参照)に全国から参加しよう。
(4)対策本部会議に参加しよう!
 全国各地から対策本部会議に参加し、経験交流と運動の強化を行おう。


治安パンフレット「秘密・監視・密告の社会はごめん!」を活用下さい。

事務局次長  横 山   雅

 安倍内閣は、一三年の秘密保護法の強行成立に始まり、一四年七月一日の集団的自衛権を容認する閣議決定と着々と「戦争をする国づくり」を進行させています。今通常国会では、安保関連法案とともに、盗聴法(通信傍受法)の対象犯罪拡大と立会人を廃止する手続きの簡易化、他人の犯罪の密告を奨励する「司法取引」の導入を含む刑事訴訟法等の改正法案が提出される見込みです。
 同刑事訴訟法改正法案は、現時点では対決法案にすらなっておらず、国民的議論もないまま成立してしまうおそれがある状況です。
 盗聴法の拡大・簡易化と司法取引の導入が招く監視・密告社会の危険性を広く国民に知らせることが重要です。
 そこで、団は、全労連と国民救援会の三者で秘密保護法・盗聴法の拡大・簡易化と司法取引の導入を平易に分かりやすくまとめたパンフレット「秘密・監視・密告の社会はごめん!」を作成しました。
 同パンフレットには、今通常国会では提出が見送られた「共謀罪」についても触れられていますので、しばらくは利用できる内容になっております。
 是非とも市民団体等の学習会にご利用いただき、警察権力を肥大化させ、秘密・監視・密告の社会がもたらす危険性を宣伝するのにご活用下さい。
 なおパンフレットの取り寄せは、日本国民救援会に御連絡下さい。
※注文書は、今号の最終ページのものをご活用下さい。
【注文先】
 〒一一三―〇〇三四 東京都文京区湯島二―四―四 平和と労働センター五階
 電 話 〇三―五八四二―五八四二 
 FAX 〇三―五八四二―五八四〇
 ※頒価は一〇〇円ですが、まとめて注文いただけば安くなると思いますので、救援会にお問い合わせ下さい。


「戦争への道―秘密・監視・密告の社会はゴメン!二・一三集会」のご報告

東京支部  山 田 大 輔

 私は、二月一三日に行われた、「戦争への道―秘密・監視・密告の社会はゴメン!二・一三集会(全労連、国民救援会、自由法曹団共催)」に参加しました。六七期の新人として、この集会に参加した感想のご報告と決意表明をさせていただきます。
二・一三集会及び現状の概要
 二・一三集会では、自由法曹団盗聴法・司法取引阻止対策本部の加藤健次事務局長の基調報告、警察による盗聴被害を受けた緒方靖夫氏のご講演、会場からのご報告がなされました。
 本年三月中旬に、司法取引の導入、通信傍受法の要件緩和・対象範囲の大幅な拡大、取調べ過程のわずかな可視化等を内容とする刑事訴訟法等の改定案(以下、「本法律案」といいます。)が、衆議院に提出される見込みです。
 司法取引は、過去に冤罪を発生させてきた取調べ手法と同じ手法の導入であり、今まで以上に冤罪が作られることは間違いありません。
 通信傍受法の要件緩和・対象範囲の大幅な拡大は、弾圧手法として使われることが予想されます。現在、倉敷民商事件や全生連への強制捜査事件など、一般国民の要求実現のための素朴な市民生活、市民活動や表現活動が、国家機関などから敵視され、刑事事件の捜査、起訴という体裁をとって、弾圧される事件が起きています(二・一三集会では、全生連の方からの真に迫ったご報告もありました)。
 しかも、警察は、民事裁判で盗聴の事実が認定されたにもかかわらず、緒方靖夫さん宅に対する盗聴の事実すら認めていません。
 国民一人ひとりの要求が実現される社会を作るためには、国民一人ひとりの素朴な感性に基づく、国家、政府に対する要求活動や、国民の要求に反する国家の行動に対する対抗活動が不可欠です。
 本法律案は、冤罪を作り出すとともに、捜査機関による盗聴を用いた、国民の要求活動や対抗活動に対する介入・弾圧を容易にする、危険性が高いものです。
決意表明
 本法律案は、本年三月中旬には衆議院に提出される予定です。しかし、現在のところ、国民に、これらの危険性が周知されていません。さらには、市民活動に関わっている方々にも、周知されているとは言いがたい現状です。
 国民的議論とならなければ、本法律案があっさりと可決される可能性も十分にあります。
 私も新人ではありますが、一人の自由法曹団員として、先輩、同輩の先生方や全労連、救援会などの市民活動に携わっていらっしゃる方々と一緒に、本法律案の問題点を多くの国民の皆さんに知っていただくために、街頭や学習会などで訴えたいと思います。
 そのためにも、本法律案の問題点をどういう切り口で発信することが、国民の皆さんに一番伝わるのかを早急に考えています。
 また、団員の先生方は、各先生方が力を入れていらっしゃっている分野での活動があると思います。
 各分野の市民活動は、それぞれ、本法律案によって生じる具体的な問題や、具体的な弾圧の現れ方が異なると思います。ぜひ、各先生方が、各分野の市民活動に携わる国民の皆さんに、本法律案でその市民活動に生じる具体的な問題点をお伝えいただければと思います。
 そうすることで、市民活動に関わる国民の皆さんに、本法律案の問題性が、皆さん自身の問題であると実感してもらい、本法律案反対運動の主体となっていただくという流れを作ることが重要だと思います。
 私自身も、わずかな活動分野ではありますが、この分野で本法律案の問題点を知っていただくために活動したいと思います。
 法律案が成立してから後悔することのないよう、全力で活動したいと思いますので、ぜひ、ご一緒にがんばりましょう。


東京電力・福島第一原発事故から四年 ―二〇一五年三月原発関係企画の紹介

東京支部  柿 沼 真 利
団原発問題委員会事務局次長

三月八日(日)
 0308 NO NUKES DAY反原発★統一行動
 〜福島を忘れるな!再稼働を許すな!〜
三月二二日(日)
 安倍政権 NO! ☆ 0322大行動
 民主主義を取り戻せ!
三月二七日(金)二八日(土)二九(日)
 日本科学者会議創立五〇周年記念行事 国際シンポジウム
 「移行:原子力から再生可能エネルギーへ」 │

 二〇一五年三月、あの東京電力・福島第一原発事故から丸四年が経過します。現在、同原発事故の被災者に対する救済は充分に行われず、新たな集団訴訟、集団ADR申立てなどが行われています。また、放射能汚染水漏れの問題も未だ解決していません。にもかかわらず、現安倍内閣は、九州電力・川内原発、関西電力・高浜原発等の原発の順次再稼働を目論み、さらに原発の海外輸出をも画策しています。
 そこで、この三月、原発関係企画に参加し、「声」を上げ、また、学びましょう。日本は、現在、原発稼働「ゼロ」状態が、二〇一三年九月以降、一年五ヶ月以上継続しています。これは、我々の国民が「声」を挙げてきたこの成果であると確信しています。
一 0308 NO NUKES DAY反原発★統一行動 〜福島を忘れるな!
 再稼働を許すな!〜

【日  時】 二〇一五年三月八日(日)
【場  所】 日比谷野音(大音楽堂)・国会議事堂周辺
【呼びかけ】 首都圏反原発連合/さようなら原発一〇〇〇万人アクション/原発をなくす全国連絡会
【タイムテーブル】
<<第一部>>
13:00〜 大集会 *場所:日比谷野外音楽堂
14:00〜 巨大請願デモ/国会大包囲 *日比谷公園出発で「請願デモ」と「国会包囲」を同時に行います。
主催:首都圏反原発連合/さようなら原発一〇〇〇万人アクション/原発をなくす全国連絡会
<<第二部>>
15:30〜17:00 国会前大集会
主催:首都圏反原発連合
〈登壇者・二月一九日現在〉
ジンタらムータ+リクルマイ&The K
(大熊ワタル(クラリネット)、こぐれみわぞう(チンドン太鼓)、河村博司(ベース)、服部夏樹(ギター)、リクルマイ(ヴォーカル)、The K(ギター))
菅直人(衆議院議員 元内閣総理大臣)
吉良よし子(参議院議員 日本共産党)
福島みずほ(参議院議員 社民党)
三宅雪子(元衆議院議員 生活の党と山本太郎となかまたち)
香山リカ(精神科医)
神原元(弁護士)
小熊英二(社会学者/慶應義塾大学教授)
雨宮処凛(作家)
高田久代(国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
ATS(ラッパー)
(敬称略・順不同)
▼呼びかけ
 二〇一一年三月一一日の東日本大震災、福島第一原子力発電所の過酷事故からまもなく四年。事故収束の目処も立たず、いまだに一二万人もの人々が満足な補償も受けられないまま避難生活を余儀なくされています。
 自民党は何十年にもわたり、与党として原発政策を推進してきました。安倍政権は原発事故から何の反省もなく、エネルギー基本計画で民主党政権が打ち出した「二〇三〇年代原発ゼロ」を撤回し、原発を「重要なベースロード電源」と定め、政官財などの一部の利益のために、川内原発を皮切りに原発再稼働へ躍起になっています。しかし、このような暴政の中においても、脱原発の世論は衰退するどころか圧倒的な多数派を形成しています。
 二〇一五年三月八日の『0308 NO NUKES DAY 反原発★統一行動 〜福島を忘れるな!再稼働を許すな!〜』と、三月一一日前後の全国のとりくみをつなぐ『NO NUKES WEEK』を呼びかけます。福島第一原発事故と被害を風化、忘却させないよう、政府に圧力をかけるべく脱原発の世論を可視化し、原発のない未来を一日でも早く実現するために、全国からの大結集をお願いいたします!
二 安倍政権 NO!☆ 0322大行動 民主主義を取り戻せ!
 原発/集団的自衛権/憲法/沖縄米軍基地/秘密保護法/TPP/消費税増税/社会保障/雇用・労働問題/農業・農協改革、それぞれのイシューに取り組む団体やグループが連帯して開催します!ご参集を!団も実行委員会参加団体になっています。
【日時】 二〇一五年三月二二日(日)
      13:00〜 集会 日比谷野音(大音楽堂)
      14:00〜 請願デモ/国会包囲(請願デモと国会包囲を同時に行います) 
●予定は変更の場合があります。HPにて詳細をご確認ください。
【主催】安倍政権 NO! ☆ 0322大行動 実行委員会
(事務局:首都圏反原発連合/原発をなくす全国連絡会/PARC NPO法人アジア太平洋資料センター)
▼呼びかけ
 第二次安倍内閣が発足して以降、日本は戦前に戻る方向に進んでいると、多くの人々が指摘しています。イスラム国による人質事件を契機に、自衛隊の海外派遣を策動しています。イスラム国・テロをなくす取り組みでも、軍事を前面に出し、人命を重んじる姿勢が弱かったのではないしょうか。また、地方切り捨てや経済政策による格差や貧困層の拡大、国際的に批判をされている人権擁護・ヘイトスピーチ対策への無策など、「平和で安心して暮らせる社会」という市民の願いとは逆方向に突き進んでいます。
 「原発」「集団的自衛権」「憲法」「沖縄米軍基地」「秘密保護法」「TPP」「消費税増税」「社会保障」「雇用・労働法制」「農業・農協改革」等の多数のイシューにおいて、安倍総理は一部の人々の利益や利権などの都合を重視し、民意に逆らい独裁的な方法で政策を進めています。この政権は全ての問題に立ちはだかる障壁になっていると言っても過言ではなく、問題の解決のためにはまず政権を打倒する必要がある事は、多くの人々の意識にある事でしょう。
 今こそ安倍政権に異議を、そして私たち主権者の意志を突きつける時です!四月の統一地方選を見据えたタイミングで、首都・東京から大きく「安倍政権NO!」の意志を可視化するため、独裁政権から民主主義を取り戻すため、三月二二日は日比谷野音に大結集しましょう!
三 日本科学者会議創立五〇周年記念行事 国際シンポジウム
「移行:原子力から再生可能エネルギーへ」

日程:二〇一五年三月二七日(金)午後、二八日(土)午前・午後、二九日(日)午前
会場:横浜国立大学・教育文化ホール(二七日、二八日、二九日)
資料代:会員・一般一〇〇〇円、院生・学生五〇〇円
言語:日本語/英語(通訳、翻訳資料)
共催:INES(International Network of Engineers and Scientists for Global Responsibility)
 今回、一貫して原発安全神話と闘い、福島原発事故以降「原発と我々は共存できない」との立場から原発の廃止を求める国民的運動と連帯している日本科学者会議(JSA)と、原発の廃止・再生可能エネルギーの普及で先進的な経験をもつ欧米で活動するINES(科学者・技術者・市民活動家の集団)とが共催で、市民とともに考える国際シンポジウム「移行:原子力から再生可能エネルギーへ」を開催します。多くの研究者・学生・市民の方がたのご参加をお待ちしています。
第一日目(二〇一五年三月二七日(金))13:00〜18:00
13:00開会の辞
〈基調講演〉
13:10-14:10
From nuclear power to renewable energy Economic/Energy Policies, Experiences in Germany:J?rgen Scheffran (INES, Professor of Climate Change and Security at the Department of Geography, University of Hamburg)
14:10-14:40 JSAの原発即時廃止の決断と国民的運動への連帯:米田貢(JSA全国事務局長)
〈講演・パネル:原子力発電と再生可能エネルギーをめぐる国際情勢〉
コーディネーター:萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)、山本富士夫(福井大学名誉教授)
14:40-15:20 韓国:Kim Hee-jong (Korean Federation for Environmental Movement)
15:20-15:40 中国:明日香壽川(東北大学教授)
(コーヒーブレイク)
16:00-16:40 アメリカ:Dr. Subrata Ghoshroy
16:40-17:20 ドイツ/ヨーロッパ:Reiner Braun (Program Director, INES)
17:20-18:00 討論
18:30 懇親会(大学生協内レストランPORTY)
第二日目(二〇一五年三月二八日(土))10:00〜16:40
〈報告・パネル:「Fukushima」以降の原子力災害の現状と原発廃止をめぐる国民的運動〉

コーディネーター:萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)、山本富士夫(福井大学名誉教授)
10:00-10:20 東北地方太平洋沖地震と日本の原発:立石雅昭(新潟大学名誉教授)
10:20-10:40 福島第一原発事故の経緯:舘野淳(核・エネルギー問題情報センター事務局長)
10:40-11:00 放出放射能量と放射能汚染・除染・放射線被曝の現状:野口邦和(日本大学准教授)
11:00-11:20 島原発事故から四年、被災者町民のくるしみ−原発と人類は共存できない:馬場績(浪江町議)
11:20-11:40 汚染水問題の現状:本島勲(元電力中央研究所)
11:40-12:30 討論
(昼食)
〈報告・パネル:再生可能エネルギーへの挑戦〉
13:30-14:10 The Current Situation of Renewables:Juergen Scheffran
14:10-14:50 Lessons learnt from the "German Energiewende:Reiner Braun
14:50-15:10 エネルギー転換への可能性−日本のモデル:歌川学(産業技術総合研究所)
15:10-15:30 環境経済の観点での低炭素型経済発展・方向性について:氏川恵次(横浜国立大学教授)
15:30-15:50 政策転換のための政策、制度:上園昌武(島根大学教授)
15:50-16:40 討論
第三日目(二〇一五年三月二九日(日))10:00〜12:30
〈ポスターセッション:神奈川県内・国内の市民・企業・研究者・学生との対話、欧米との比較〉

10:00-10:45 各出展者による全体向けのプレゼンテーション
10:45-12:30 ポスターセッション
Report on history and actual struggles of citizen's movement in Germany:
Lucas Wirl(Program Director, INES)(予定)
昼食会(予定)


福島原発おかやま訴訟第一回口頭弁論(二月三日)

岡山支部  石 田 正 也

 表記の題で団本部から団通信に投稿依頼がきた。書かないといけないかなと考え、ふと団通信に書くのは久しぶりだなあーと前はいつだったかと考えるが思い出せない過去である。
 おかやま訴訟は、原発事故により福島から岡山に避難した人々が立ち上がった訴訟である。原告九六名(三四世帯)である。岡山には、東北・関東から一〇〇〇名を超える人々が避難してきている。西日本最大である。福島からの避難者は三〇〇名を超えて、中四国最大である。岡山弁護士会は、震災当初震災避難者支援PTを立ち上げて、無料相談などをしてきた。その中で、原発相談が増えてADR申立の相談もあるようになったので、弁護団を立ち上げた。そして、私に団長の依頼があった。そうこうしているうちに国や東電相手の訴訟が全国ではじまり、東からその波が兵庫まできた。そうすると岡山でもということになり、原告九六名があつまった(追加提訴準備中)。二〇一四年三月一〇日提訴した。その後、その波は西にいき、広島、愛媛、福岡と続いている。訴状において「岡山訴訟も遅ればせながら、この全国各地の訴訟の一翼を担い、原発被害者の救済と二度とこのような事故が起きないことを求めて訴訟提起したものである」と書いた。
 このようにして提訴したが、なんと第一回は一年がこようとする二〇一五年二月 三日となった。この原因は、訴訟救助問題であり、被告らとの期日調整が難航したためである。しかしながら、第一回弁論は法廷に入りきれない人々があつまり岡山の大法廷は一杯となり、訴状をパワーポイントでわかりやすく説明し、原告の若い母親が子供を守るための避難行動など被害をせつせつと意見陳述した。マスコミも大きく報道した。なにより傍聴した多くの原告が元気になった。支援のサポーター組織もうまれ、いよいよ始まるとの意識付けになった。私も団長という肩書きでの初めての意見陳述をした。二度の福島訪問でのJR富岡駅の周辺の写真をしめし、又除染活動の状況、その市長村の範囲を示し、原発の安全とはどう考えるかべきかを訴状責任論冒頭で書いたことなど本件訴訟のあるべき考え方を提示したつもりである。
 私にとって集団訴訟(事件)は、倉敷水島公害、豊島産業廃棄物、ハンセン国賠、中国残留孤児国賠に続くものとなり、団長という肩書きは初めてとなった。同期が、群馬と新潟の団長のようである。そういう年代になったかと思いながら、岡山弁護団は実働二〇数名であるが、大半が一〇年未満、一年から五年が多い若い弁護団である。原告は幼い子供をかかえた父親や母親が中心である。この若さのエネルギーで訴訟を進めたいと思っている。訴訟としては全国の後ろを走り出したが、きたるべき先行訴訟の勝訴判決を受け、全面解決に貢献できるように原告団の団結と県内世論をもりあげ、訴訟を確実にすすめたいと思っている。


教科書学習会(二月一二日)の報告

神奈川支部  林   裕 介

 二月一二日、自由法曹団本部において、講師に「子どもと教科書全国ネット21」事務局長である俵義文さんをお招きし、教科書学習会が開催された。この学習会において、俵さんは次のようなご講演をなさった。
一 安倍政権による「教育再生」の目的
 第三次安倍政権がめざす国家は、(1)憲法九条を改悪してアメリカと一緒に「戦争をする国」、そして(2)「大企業が世界で最も活動しやすい国」である。そして安倍政権は、このような国家を支える「人材」、すなわち国家や大企業に奉仕する、愛国心・道徳心を備えた「人材」の育成を目的として、教育再生という政策を掲げている。
 そして安倍政権による教育政策には、具体的に次のような問題点がある。
二 道徳教科化の問題点
 まず、道徳の教科化に伴う問題点である。中教審の答申(二〇一四年一〇月二一日)を受け、政府は、二〇一八年度からの道徳の教科化に舵をきっている。現在においては、道徳の教材については教員の自由であり特に指定はなく、道徳に関する成績が子どもたちに付けられることもない。しかし、道徳の教科化により、授業において検定教科書の使用が義務付けられ、また、子どもの道徳心について、評価がなされるようになる。
 この教科化により、子どもにどのような影響か生ずるのであろうか。まず第一に、教科書検定を通った、すなわち国の意向を酌んだ教科書の使用が義務付けられる。現在、文科省が出している道徳教科書には、愛国心や全体主義的な内容が、「道徳」として盛り込まれている。このため、検定教科書も、おおむね同様の内容になるおそれがあり、愛国心や全体主義的な考えが子どもたちに教え込まれることになる。第二に、子どもの道徳心について評価がなされるようになる。このため、子どもたちは、教科書の内容(愛国心や全体主義的な考え)に従わざるをえなくなる。
 以上により、国家や企業に奉仕する愛国心や全体主義的な心が、子どもたちに強制されてしまうのである。
三 教科書検定基準の改悪
 次に、教科書検定基準の改定である。これは、二〇〇四年に既に改訂されてしまったが、次のような基準が盛り込まれた。まず、政府の統一的な見解又は最高裁判例に基づいた記述をしなければならない。また、未確定な時事的事象については強調してはならない。さらには、通説的見解がない数字などの事項については、通説的見解がないことを明示しなければならない。このような検定基準は、政府見解や最高裁判例を至上のものとすることへの危うさにつき全く配慮がないし、未確定な事象や通説的見解とは、曖昧な基準である。結局は、国・政府に都合のよい検定がなされてしまう。
 そうすると、現政権は、先の戦争における日本の侵略・加害の歴史に否定的であるため、このような政権下での検定教科書は、戦争を美化し、愛国心ばかりを強調する内容となるおそれがあるのである。
四 育鵬社版教科書の問題点
 次に、育鵬社版教科書の問題点である。先に述べたような検定基準改悪により、戦争の美化・愛国心の醸成に記述を割く教科書が多くなるおそれがあるが、既にそのような内容を掲載している教科書が存在する。それが、つくる会系の教科書(育鵬社版等)である。本年は、中学校の教科書採択の年であるが、特に育鵬社版の教科書が、年々採択を増加させている状況にある。この教科書は、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」、すなわちアジア解放のための戦争であるとし、侵略の歴史を覆い隠す内容となっている。また、明治憲法を高く評価し、一方で日本国憲法については押し付け憲法であると批判している。
 このような育鵬社版の教科書は、戦争における日本の過ちを隠し、これにより愛国心を醸成するという、安倍政権における教育再生の目的に沿う内容となっているのである。
五 教育委員会制度の改悪と首長による介入
 また、二〇一四年の地方教育行政法の改悪により、首長が教育委員会による教科書採択に一定の影響を及ぼすことのできるようになった。この状況を利用して、「育鵬社版教科書採択をめざす教育再生首長会議」に参加する首長らが、育鵬社版教科書採択を狙っている状況にある。
六 今後の取り組み
 このような状況に対抗する取り組みとしては、(1)教育委員会へのはたらきかけ、(2)街頭宣伝やリーフレット・チラシを活用した宣伝行動、(3)教科書展示会でのアンケート記載、(4)学習会の開催などがある。そして、子どもの教育に最も関心のある、子どもの保護者たちに、この運動を広げていくことが非常に重要であるといえる。
七 最後に
 俵さんのご講演により、安倍政権が自己の思惑・目的のために、子どもたちを利用しようとしていることが明らかとなった。安倍政権のこのようなやり方を、絶対に許してはならない。
 また本学習会の最後には、教科書PTが結成された。未来の子どもたちの教育を守るべく、このPTへの団員の皆様方の結集を切にお願いする次第である。


審査段階での労災認定事例の報告

長野県支部  武 田 芳 彦
同      一 由 貴 史

 本年一月七日、労働保険審査会において、過労自殺が労災認定されました。
 三重県内の大手持帰弁当店店長が、二〇一一年七月に自殺した件につき、長野県内の遺族が労災申請を行ったところ、労基署長による不支給処分を受けたため(労働保険審査官への審査請求も棄却)、労働保険審査会への再審査請求で、不支給処分が取り消されました。
 被災者は、入社後一年程度で負担・責任の大きい店長職を命じられ、二〇一二年一二月の新規店舗立ち上げ準備業務を任され、その一店舗のみでもエリア有数の繁忙店であったにも関わらず、翌年四月からはさらにもう一店舗の店長を兼任させられ、死亡三ヶ月前の時間外労働時間数は、平均一七七時間という異様な長時間労働(当方主張)で苦しみ、ついに自殺したという事案でした(被災者はその数日後の子どもの出産を楽しみにしていましたが、力尽きてしまいました。)。
 労基署、審査官は、会社側の主張を批判的に検討せず鵜呑みにした上で、「手待ち時間が一日数時間あったはずだから、労働時間として認めない」「労働密度が小さい」という不合理な認定を行い、労災を認めませんでしたが、審査会では、そのような主張は一蹴され、長時間の時間外労働があったことを認定し、被災者の自殺が業務上であると認定しました。
 本件では、労災申請前に、勤務店舗における裁判所の証拠保全手続きを実施し、労働時間等の労働実態を明らかにする資料を収集できたこと、被災者が帰宅前に遺族に送信していたメールもある程度残っていたこと、店舗の元従業員の一部が快く協力し、被災者の労働実態を話してくれたこと等などの事情がありました。
 当時は多忙なため報告できませんでしたが、二〇〇七年一月一八日、労働者の交通事故死について労働保険審査官による不支給処分の取消がありました。
 事案は、会社から車で往復七〜八時間を要する現場での作業に従事した被災者が、作業終了までの数日間の泊まり込みであることを知らされずに日帰りの予定で現場に行き、そこで初めて泊まり込みであることを知り、作業終了後宿泊先で同僚たちと夕食をし、今後の作業を考えた末、作業着等の着替えと自分用の工具類を取りに会社と自宅に戻ろうとし、その途中交通事故により死亡したという事案でした。
 労基署長は、わざわざ夜間に遠距離の会社や自宅へ着替えや工具を取りに戻らなくても同僚から借りたり、ある物を使えばよいのであって、被災者の行為は業務遂行上の必然性、合理性がなく私的行為であって業務上とは言えないとするものでした。
 しかし、若くまじめで仕事熱心な青年が、まだ、数日間泊まりでの作業が続くときに、同僚に迷惑をかけないようにし、使い慣れた工具類で作業をしたいと考えることは、ごく自然であり、まじめで律儀であればある程そう考えるのであって、これを無用なことだと言うのは常識にはずれるものです。
 このことを口頭でも書面でも審査官に丁寧に訴えた結果「被災者は、明日以降の現場作業に対応するため、何としても、その態勢を整えようと会社、自宅に向かったものと推認され、この行為は普通の者でも大方の者がとると思われる行為で・・・・・業務上の行為である」との決定がなされました。
 参与四名中三名が同意見で、これが審査官の心証形成に大きな役割を果たしました。
 過労死、過労自殺に限らず、労災事故はまじめで仕事熱心で人一倍責任感の強い労働者ほど被災者になるという特徴があります。こういう労働者を救済しなくて良いのか、非常識ではないかという訴えが効果的です。「労働保険審査官及び労働保険審査会法」五条及び一三条の「関係労働者及び関係事業主を代表する者」の意見は、労働審判員と同様に審査に市民の常識を反映させるもので、救済率の低い審査官の審査を変えるためにも参与を意識した主張や資料の提出(事実と道理だけでなく、常識と人情により判断者の心に訴えるような)が必要だと思います。
 言うまでもなく労災の認定と不認定では遺族の(多くは妻と未成年子)にとって天と地ほどの差があります。取消訴訟は膨大な時間と手間を必要とします。そのためにも審査段階での認定を勝ち取る方策を練り上げる必要があると思います。私たちは労災認定事件については門外漢ですが、この二つの事件を通じて、その思いを強くしました。


郵政六五歳非正規定年制無効裁判 判決日は五月一三日!

東京支部  萩 尾 健 太

 先日、団通信に掲載された郵政六五歳非正規定年制無効裁判の続報です。二月四日に弁論終結を迎え、最終準備書面を提出しました。以下は、私の最終弁論の内容です。
一 本件の基本的争点
 郵政では、民営化以前は非常勤職員、民営化以後は期間雇用社員と、名称は変わりましたが、同じ非正規雇用労働者が職場を支えてきました。
 しかし、郵政民営化に際してこっそり盛り込まれた就業規則によって、六五歳を超えた期間雇用社員は、退職金も無く雇い止めとされました。本件では、この「六五歳定年」による非正規労働者の使い捨てが許されるのか、を争ってきました。
二 六五歳定年制の公序良俗違反性
 本件の尋問を通じて浮かび上がってきたのは、この雇止めが、そもそも不当な脱法を意図したものだ、ということです。
 民分化時に就業規則策定を担当していた証人鈴木(本社総務課長)は、民分化後は、裁判例等によると、雇い止めが難しくなるから更新限度を設定する必要があった、一般の雇い止めの条項だけでは「かなり重大な支障が生じてなければ雇い止めができなくなる」と露骨に述べました。これは、裁判例で確立された、有期雇用労働者への解雇権濫用法理の類推適用を潜脱しようという脱法的意図の自白です。
 解雇権濫用法理の類推適用を排斥する目的で不更新条項を用いることに対しては、各方面から痛烈な批判や疑問が呈されています。たとえば、西谷「労働法」四四八頁は、不更新条項自体が公序(=憲法秩序)違反で無効となるべきであると批判しています。
 そもそも、有期雇用は本来臨時的、一時的労働です。その先達を防ぐための解雇権濫用法理の類推を更に潜脱するための不更新条項は、二重の脱法であり重大な公序違反です。
 被告は、六五歳定年を正当化するため、高齢者はミスが多い、と主張しましたが、証人鈴木を始め、各管理者証人は、高齢者だからミスが多いとの認識はない、ミスの調査もしていない、と口々に述べました。六五歳定年の理由は全く成り立ちません。
三 就業規則の実質的周知の欠如
 さらに、被告は、この六五歳定年について、周知した、と主張します。しかし、導入に際して、六五歳定年については、全く説明されていないことが明らかになりました。説明資料もありません。就業規則の置き場所も、説明されていないのであり、到底、周知したとは言えず、無効です。
 被告は、二〇一〇年八月に、この施行を半年延期することを説明した、と主張します。しかし、原告辻、大倉、齋藤などは、その説明を受けていません。原告濱、石澤は、当初の雇止め対象者ではなく、個別の説明を受けていないことを、被告も認めています。
 さらに、実質的な周知義務を果たしていないとして一旦は無効と判断された就業規則の内容が、単に適用を延期するのみで有効になるとの解釈は困難です。本件では『周知内容の適切性』が欠けているからです。
 荒木尚志『労働法 第二版』三四七頁でも、周知内容の適切性という項目で「周知対象となる情報が適切・的確であることが要請される。これは、使用者の提示する労働条件、労働契約内容について労働者の理解を深めるべきことを定めた労契法四条一項の要請でもある」として、中部カラー事件判決を引用しています。いくら就業規則を掲示しても、その内容が正しく理解できないようであれば、実質的周知ではないのです。
 「期間雇用社員の皆さんへ」に記載された、雇用を継続する場合の文言は、就業規則とも労働協約とも異なり、その具体的な基準は説明されていません。そのもとでは、実質的周知とは言えません。
四 解雇権濫用法理の類推適用
 そうした状況では、人員不足の職場で、超勤も厭わず熟練労働者として職場の業務を担ってきた原告らが、自分については雇用が継続される、と期待するのは当然であり、合理的です。
 しかも、雇用更新の手続は、労働者からの申込も署名押印も不要な、極めて形骸化したものでした。よって、解雇権濫用法理が類推適用されます。
 その場合、まさに、鈴木証人が述べたように「かなり重大な支障が生じてなければ雇い止めができなくなる」のです。
 たとえば、被告が解雇回避努力義務を果たさなければ、解雇権濫用法理における社会的相当性の要件を欠くことになります。
 この解雇回避努力義務の観点かれすれば、原告らの所属していた職場で後補充の必要性がある場合はもちろん雇用を継続しなければなりません。その支店の他の職場で人員不足が生じるなら、そこへの配転による雇用継続の検討・提案、さらには、近隣他支店・配送センターへの異動による雇用継続の努力がなされなければ、到底、解雇回避努力義務を果たしたものとは言えません。
 さらに、原告丹羽、深尾、辻、大倉、石澤など、ストライキに参加したり、分会長の肩書きを持つ、或いは、組合の支援を得て苦情申立や裁判をした者については、こうした解雇回避をせずに不当労働行為意思で雇止めをしたと考えざるを得ません。
五 労働協約締結手続の瑕疵
 原告らが所属する郵政ユニオンには、本件就業規則と似た労働協約九一条を会社と交わしています。
 しかし、この締結交渉の過程で、日本郵政はユニオンに対して雇用が継続される場合の基準を具体的に説明せず、郵政ユニオンは誤解したまま協約を締結しました。そのため、協約締結手続に瑕疵があり、組合員が労働協約九一条について組合に授権したとはいえません。
六 最後に
 生活に困窮し、泣き寝入りを強いられてて裁判に立ち上がれなかった一万数千もの雇い止めされた労働者のためにも、原告らは裁判を闘ってきました。長年の功労を報いられず、一片の紙切れで使い捨てにされた原告らの怒りを受け止める公正な判決をなされますよう、強く要望するものです。
 前回掲載以降、少なくない団員の方にカンパを頂きありがとうございました。引き続き、皆さんの、物心両面での御支援をお願いしたい。
 左記口座まで、カンパをよろしくお願いします。
☆ゆうちょ銀行振替 口座
口座記号番号 〇〇一九〇-七-七六六三五七
加入者名 65歳 解雇裁判支える会


「労働法制改悪阻止・労働裁判闘争勝利をめざす全国会議二・六」のご報告

京都支部  谷   文 彰

一 概要
 二月六日午後一時、文京シビックセンターにて、「労働法制改悪阻止・労働裁判闘争勝利をめざす全国会議二・六」が開催されました。京都支部からは中村和雄団員が報告のために参加することになっていましたが、労働法制をめぐる情勢に照らして複数名が参加すべきであるとの議論が支部内で行われ、もう一名、私が参加することになった次第です。
 本会議には全国から七六名が参加し、活発な意見交換が行われました。その様子は自由法曹団のホームページやフェイスブックでも紹介されています。
二 第一部:労働法制改悪の現状と阻止の展望
 最初に団長や労働法制中央連絡会議代表委員・全労連副議長によるあいさつ、日本共産党衆議院議員高橋千鶴子さんによる国会情勢報告の後、第一部として「労働法制改悪の現状と阻止の展望」に関する報告や討論が行われました。
 三浦団員からは「日本の長時間労働の実態」と題する報告があり、日本と諸外国とを比較すると、正社員に限れば日本の労働時間は先進国の中で顕著に長いこと、とりわけ労働者からの申告に基づいた統計によれば正社員の年間労働時間は二四〇〇時間近くになること、しかも、労働時間の長さや土日・休日出勤の多さは裁量労働制が採用されている労働者ほど長くなっていること、他方で固定残業代などを口実に残業代が違法に支払われない場合が非常に大きいこと、過労死・過労次子の労災申請件数が増加していること、相対的貧困率は二〇一二年で過去最高の一六・一%となっていることなどが、具体的データをもとに明らかにされました。安倍政権が行おうとしている労働法制改悪の問題点を把握する上で、こうしたデータをもとに実態を正確に理解することは非常に有意義であったと思います。
 続いて竹村団員から、「厚労省報告書骨子案批判」について報告がありました。「高度プロフェッショナル労働制」に関して厚労省のいう「成果で評価される働き方」というフレーズが詭弁であること、対象労働者が拡大していくであろうこと、長時間労働防止措置に実効性がないこと、全体として現状の残業代不払いという違法状態を合法化するものであることが明らかにされ、裁量労働制の見直しに関しても対象の広さや手続きの簡素化などの問題点が指摘されました。三浦団員の報告と合わせ、違法な現状を何とか合法化したいという政府・財界の意図がさらによく理解できました。
 そして、中村団員からは、「ホワイトカラー・エグゼンプションに関するアメリカ現地調査報告」がありました。日弁で行った調査の概要を報告頂いたものですが、労働法制が改悪されてしまうとどのような事態が起こるのか、実際の調査・聞き取りを踏まえており、非常に説得力のあるものでした。これからの運動にも大いに活用できる示唆に富んだ内容だったと思いますが、詳細については日弁からの報告をご覧頂ければと思います。
 労働時間法制以外のテーマでは、労働者派遣法「改正」に関して田井団員から、女性の労働実態と女性活躍推進法案に関して近藤団員から、それぞれ報告がありました。
三 第二部:全国の裁判闘争の現状と経験交流
 休憩を経て、第二部として「全国の裁判闘争の現状と経験交流」に関する報告と議論が行われました。鷲見団員からの報告や各地で裁判闘争に取り組む団員・原告などからの発言がありましたが、中心はやはり、正に二月六日当日、そして前日の二月五日に最高裁判所による上告棄却・上告不受理決定が相次いで出されたJAL不当解雇事件に関するものでしょう。最高裁の決定は、高裁判決から半年、上告理由書等の提出からはわずか四ヶ月で下されたもので、記録をきちんと検討したとも思えず、正に三行半の判決で、事件に真摯に向き合おうという姿勢は全く見られませんでした。
 裁判所の姿勢やJALの対応に怒りが渦巻く中、原告の方々が「勝つまで闘います!」と宣言されたときには、この日一番の盛り上がりとなりました。運動の大切さを再認識するとともに、裁判所での闘いに勝利するべく、弁護士として新たな決意を持つことができました。
四 本会議をこれからの運動と裁判闘争の糧に
 第一部は各報告が有機的に関連しており、相互に説得力を高める非常に有意義なものであったと思いますし、第二部では各地での闘争に大いに励まされました。安倍政権の進める労働法制改悪については、二〇一四年一〇月一〇付の二つの団意見書でも詳細に批判がされておりますので、是非ご確認頂き、これからの運動・裁判闘争に役立てていきましょう。


労働全国会議感想

東京支部  関 本 正 彦

 東京支部の関本正彦です。六七期の修習を終えて入団したばかりですので、まずはこの場を借りてご挨拶をさせていただきます。これからどうぞよろしくお願いいたします。
 二月六日、東京の文京シビックセンターで開催された「労働法制改悪阻止、労働裁判闘争勝利を目指す全国会議」に参加しました。
 特に印象深かったのは、会議の直前に最高裁決定が出たJAL関連の事件についてのやり取りです。客室乗務員訴訟・パイロット訴訟の両事務局長から「今年に入って大阪でも勝訴判決が出ているし、余剰人員について高裁でも述べて怒りをぶつけてきた。最高裁の自殺行為だ」「最高裁が記録をすべて読んでいるわけがない。短い期間で決定を下した。批判や世論の輪が広がる前にさっさと片付けよう、という姿勢」などの発言がありました。また、裁判での勝敗にかかわらず運動を続けて勝利解決を目指すんだ、そうしなければ人生が進まないという言葉もあり、不当な判決を受けた方々の率直な声を聴くことができました。
 弁護団からも「一般的な整理解雇法理からすれば勝たなければならない事案だが、最高裁は、会社を更生する(管財人の思ったとおりにする)のが合理的であるとして、更正計画・国家利益を第一に、労働者や個人の権利・生活を後回しにしている」「国が、日本国憲法ではなく、国家の利益や経済を優先する自民党新憲法草案の考え方になってきている。このたたかいは、日本国憲法を守るたたかいと位置づけられる」という報告があり、今この国が置かれている状況の深刻さを実感して焦りを感じると同時に、日本国憲法の価値を再確認することができました。
 また、問題提起の中にあった「労働法制と裁判対策(東京地裁・東京高裁・最高裁)が車の両輪だ」ということの意味も分かった気がします。
 これまで心のどこかで、「最高裁で勝負がついたら、もうできることはない」と思っていたところがありましたが、多くの人と団結すれば、裁判所の内外で、また、裁判の前後を通じて、やれることはたくさんある、そう感じることができた会議でした。
 この他にも、政府の進める過労死促進・残業代ゼロ法案、派遣法改悪問題、貧困の問題などについての討議、法廷外での運動も活発に行われているというメトロ関連、自動車関連の事件の報告などがあり、とても活発で充実した会議だったと感じています。
 一つだけ悔やまれるのは、所用により会議後の懇親会に参加できなかったことでしょうか。次の機会にはぜひとも参加して、先輩方とお酒でも飲みながらゆっくりお話しできたらいいな、と考えております。
 繰り返しになりますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


二・六労働全国会議に参加して

東京支部  塚 本 和 也

 皆様はじめまして、塚本和也と申します。私は、昨年一二月に六七期司法修習(福島配属)を終えて弁護士登録をし、東京東部法律事務所に入所いたしました。これからは、福島原発事故問題をはじめ、様々な人権問題に積極的に取り組みたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 今回、初めて自由法曹団の集会に参加しましたので、感想を書かせていただきます。二月六日の午後一時から五時まで、文京シビックセンターにおいて行われた、「労働法制改悪阻止・労働裁判闘争勝利をめざす全国会議二・六」に参加しました。
 まず、平日の昼にもかかわらず参加者がとても多く、活発に挨拶や発言をされていたことが印象的でした。
 第一部の「労働法制改悪の現状と阻止の展望」では、五人の先生から、日本の長時間労働の実態、厚労省報告書骨子案批判、ホワイトカラーエグゼンプションに関するアメリカ現地調査、労働者派遣法「改正」法案に関する問題点、女性の労働実態と女性活躍推進法案について、報告がありました。どの報告も充実した内容で、時間があっという間に過ぎていったと感じました。大量の資料がレジュメの中で図や時系列に整理されて示されており、理解しやすかったです。日本の労働実態は過酷であり、それをさらに悪化させる改正案の成立は絶対に阻止しなければならないと思いました。そしてそのためには、今回の会議のように、事実をしっかりと学び、伝えていくことが大切だと思います。
 第二部の「全国の裁判闘争の現状と経験交流」では、会議の前日と当日に最高裁から不当決定が届いたJAL事件の原告団の方々が、「これからも戦い続ける」と熱く宣言していたことが印象的でした。また、他にもたくさんの事件の当事者・支援者の方々から発言があり、様々な観点から議論をしているのを聞いて、団結して戦うことの大切さがよくわかりました。
 今回の会議に参加して、自由法曹団の先生方が、法制度や社会の状況を深く勉強し、数多くの事件で戦っていることがよくわかりました。これからは様々な会議に参加して、先輩方の経験や姿勢などを受け継ぎたいと思いました。そして、私も自由法曹団員として、法制度や社会の問題点を多くの人にわかりやすく伝えたり、事件を解決したりできるように頑張ってまいります。皆様、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。


八法亭みややっこのマネージャー

八王子合同法律事務所  松 本 華 子

 一昨年から始めた八法亭みややっこ。昨年一月に新聞で取り上げられてからは全国からお声がかかるようになりました。
 今日まで今年の予約は四二件。北は北海道から南は鹿児島まで。「今からの予約は九月以降にしてください」、といった感じです。
ほぼ毎日、申し込みの電話や確認の電話があります。
 当初は飯田弁護士自身が管理をしていたのですが、とても間に合わない。そこで「マネージャー」をすることにしました。
 みややっこ公式Facebookを立ち上げ、高座の依頼の電話に対応し、チラシのチェックをします。当日の予定の確認から交通手段・宿泊の予約などなど。日々の法律事務の合間にマネージャー業務をしています(専任マネージャーだと思われている節があります)。
 最近、電話で申し込みを受けた際に「なるべく一〇〇人以上の参加で」とお願いしたところ大変驚かれ、「町の九条の会だからそんなには集められないよ」と言われてしまいました。
 「近隣の九条の会などに声かけ、共催で開かれては?」を提案しました。「なるほど」と納得された様子でした。みややっこは一人ですし、土日が主な活動日です。やはり限界があり、出来る限り一回の高座に大勢の方に集まっていただきたい、と思います。
 高座の予定は、前記フェイスブックで随時公表しています。(次の高座はいつどこか、という、問い合わせの手間を省く意味もあります。)
 フェイスブックで知るのか、主催者の予想を超えたところから、わざわざ足を運んでくださる参加者もいるようです。(新宿・歌声喫茶「ともしび」での高座に、仙台からいらっしゃった人がいたそうです。)
 椅子不足・資料不足・スリッパ不足、みややっこ本の売り切れなどの事態があちこちで起きているようです。
 埼玉県の旧鳩ヶ谷市(現川口市)や同県杉戸町の団体には、「がんばって一〇〇人集めるから、どうか来てください。」と粘られて根負けしました。
 先日の鳩ヶ谷での高座では、構成員六〇名ほどの主催団体のところに、一四〇人が集まり、主催者は資料が足りなくなったことを謝ったそうです。
 みややっこの高座を運動と連携を広げる機会と位置付けて、ぜひ近隣に声をかけ、広く大きく開催してください。そして近隣とのつながりを強め今後の力にしていただきたいと思います。


自由法曹団女性部新人学習会の報告

東京支部   小 峰 将 太 郎
神奈川支部  足 立   悠

一 はじめに
 二〇一五年二月六日、自由法曹団本部において、女性部による新人学習会を開催していただきました。テーマは、「ビジネスレターの書き方と電話応対の仕方」でした。
 大学からそのままロースクールに入り、社会人経験がないままに弁護士になってしまった新人にとっては、またとない機会だと思い参加しました。今回、新人については、男性も参加できるとのことで男性も二名参加しました。
 講師は、川崎北合同法律事務所の湯山薫先生と松本育子先生でした。お二人は社会人経験を経たのちに弁護士になられているので、ビジネスマナーを軸とした日本人としての礼儀を教えてくださいました。
二 湯山先生の「ビジネスレターの書き方」講座
 まず、前半は、湯山先生による「ビジネスレターの書き方」講座でした。文書の構成・形式から言葉遣い、チェックの仕方に至るまで、見本や体験談を交えて教えてくださいました。その場で間違い探しの実践があったことで、今後注意できるようになったと思います。特に、「〜させていただく」は敬語ではないことを知り、大変驚きました。耳当たりが良いので、ついつい使ってしまいがちなので、注意したいと思いました。もっとも、大半の人が使うようになれば、それが辞書に載り、「正解」になるだから、そう神経質に考える必要はないということも勉強になりました。また、手紙の書き方の作法を知ることは、私たちの仕事の大半が書面に頼ることからすれば、非常に有益なものでした。何よりも湯山先生の語り口がとても面白く、楽しく学ぶことができました。
三 松本先生の「電話応対時のマナー」と「英文ビジネスレター」の講座
 次に、後半は、松本先生による「電話応対時のマナー」と「英文ビジネスレター」の講座でした。電話対応については、場面に分けたうえでなぜそういう対応をすべきなのか、なぜしてはいけないのかの背景や理由まで教えてくださり、とても勉強になりました。電話では相手の表情が見えないため、ゆっくり、丁寧に、礼儀正しく、かみ砕いて話すことが重要であると教えていただきました。電話に出る前に一呼吸おいてそのことを心がけようと思いました。
 英文ビジネスレターについては、何よりも「自分の職責で可能な範囲を見極め、無理をしない」ことが重要だとのお話には、はっとさせられました。確かに、簡単な英文のやりとりならできると意気込んで、安易に返信してしまうことで思いもよらない法的効果が生じることがあるのだから、絶対に気を付けなければならないと思いました。そのうえで、頻出表現の例を一覧性のある形で示してくださり、とても勉強になりました。英語の仕事は多くはないとしても、今回のレジュメは、手の届くところに置くのにとても良いものだと思いました。
四 全体の感想
 会社員であれば、日々当たり前のように行っているこれらのことを、まったく教わる機会がないままに来てしまったので、本当に勉強になりました。今回のレジュメは常に机の前においておきたいと思います。
 ビジネスマナーを気にすることはもちろん大切かもしれないけれど、相手を不快にしないためのことが「マナー」であるのだから、些末なところを気にするよりも相手のことを考えて行動することが一番だということも大変勉強になりました。
 懇親会では、男性の新人参加者も含めて、いかに女性に対する不当な扱いが横行しているかについて、熱い議論を伺うことができました。
 女性部の活動の中には男性にとっても有益なものがあると思います。今後とも団の男性は女性部と手をとりあって、弁護士としての能力の向上に努めたいと思いました。
 今後とも六七期をよろしくお願いいたします。