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  辺野古沿岸部の米軍新基地建設阻止に向けて
― 沖縄県の全面的勝訴和解を受けて―(声明)
谷 真介 内閣官房機密費情報公開訴訟
高裁でも開示命令
田川 章次 潜水艦そうりゅう自殺未遂自衛官の家族が国を提訴
齊藤 園生 ノーモア・ミナマタ
第二次国賠東京訴訟について
松島 暁 アポのない文書は受け取れません
―米中大使館訪問記―
佐藤 真理 二・一九奈良県民集会の報告
金 竜介 専業主婦家庭の夫の家事の分担は
もっと問題にされるべきだと思います
飯田 美弥子 マタハラ問題」(ちくま新書)
・「雪の朝」(角川書店)二つの書評
立花 ほの佳 自由法曹団女性部新人学習会の報告
緒方 蘭 日弁連「法曹の収入等の経済状況調査」への回答のご協力のお願い
小池 振一郎 四月国会に向けた総決算
〜刑訴法案を廃案にするために
鶴見 祐策 「松川資料をユネスコ世界記憶遺産に」
登録をめざす運動への参加の呼びかけ



辺野古沿岸部の米軍新基地建設阻止に向けて
― 沖縄県の全面的勝訴和解を受けて―(声明)

 国と沖縄県知事との間で争われていた訴訟(代執行訴訟、執行停止決定「関与」訴訟)について、二〇一六年三月四日、福岡高等裁判所那覇支部で訴訟上の和解が成立した。
 これは、三月一七日の執行停止決定「関与」訴訟の判決、四月一三日の代執行訴訟判決を目前に控えて、敗訴を恐れた国が急遽和解を受け入れて判決の言い渡しを回避した結果である。和解は、利害関係人として参加した沖縄防衛局が審査請求を取り下げ埋立工事を続けないことを含むものであり、沖縄県知事の“全面勝訴”ともいうべき内容である。我々は、沖縄県民とともに同和解が成立したことを喜ぶものである。
 同和解は、「和解」という形ではあれ、沖縄防衛局が行った審査請求及びこれを受けた国土交通大臣の執行停止決定が誤っていたことを明らかにし、国機関の談合による行政不服審査制度の濫用、国の工事強行の違法性を改めて浮き彫りにするものである。その意義は極めて大きい。
 また、同和解は、閣議決定まで行い性急に代執行訴訟を提訴した国の手続上の誤りや、国が地方自治体の意見を強引に屈服させることを企図して制度の趣旨を無視したことを批判する意味をも含むものである。
 同和解により、翁長雄志知事の公有水面埋立承認の取消処分は、その効力を復活し、燦然と輝きを増すものとなった。
 こうして、第一ラウンドは、沖縄県及び県民の勝利で決着がついたが、問題の本質は解決されず、紛争の解決は、第二ラウンドに持ち越されることとなった。
 三月七日、国土交通大臣は、和解を受けて、改めて、翁長知事の公有水面埋立承認の取消処分に対して、地方自治法に基づき「是正の指示」を行った。これに対し翁長知事は、国地方係争処理委員会に対し、「是正の指示は違法である」旨の審査申出を行うことになると思われる。「是正の指示」の違法性判断が同委員会に委ねられ、当面は、同委員会の判断が注目されることとなる。
 同委員会においては、改めて、代執行訴訟と同様に翁長知事の公有水面埋立承認取消処分の適法性が焦点となるが、すでに我々が二〇一五年一〇月二日に公表した意見書で明らかなように、同埋立承認取消処分は適法なものであり、国による「是正の指示」の違法性が明らかになるものと期待している。
 我々は、国からの様々な圧力に屈せず同委員会が中立公正な審査・判断を毅然として行えるように、広汎な関心と注目を集中していく。
 自由法曹団は、引き続き沖縄県及び沖縄県民の闘いと連帯しながら、最終的な勝利を勝ち取るまで奮闘することを表明するものである。
  二〇一六年三月八日

自由法曹団団長    荒 井 新 二
自由法曹団沖縄支部長 新 垣   勉


内閣官房機密費情報公開訴訟
高裁でも開示命令

大阪支部  谷   真 介

 内閣官房報償費(機密費)は、内閣官房長官の政治判断の支出される経費であり、現在年間一四億六〇〇〇万円が予算に計上され、国庫から月約一億円が内閣官房長官に支出されている。内閣官房長官は毎月約一億円、使途を全く明らかにせず、自由に使用できる。
 内閣官房機密費の使途が問題視される発端となったのは、当時の野党の議員団にもたらされた内部資料であった。それは加藤紘一氏が官房長官だった時代の、平成三年一一月から平成四年一二月までの一四か月間の内閣官房機密費の使途を記した「金銭出納帳」なるノートと、この金銭出納帳を月別の収入・支出表や目的別の分類表としてまとめ記した内閣用箋、そして「報償費について」なるものが記載された内閣用箋である。そこには内閣官房機密費の驚くべき使途が記載されていた。例えば、「国会対策費」として「英国屋(背広)」/一六〇万円、「商品券」/三一二万円など明らかに党内対策や野党対策の流用、数約万単位での「パーティ券」、「励ます会」、「出版記念」、「シンポジウム」といった事実上の政治献金としての党略的流用、一六〇〇万円もの「長官室手当」、「秘書官室手当」といった私的費用としての流用を疑われるものなどであった。
 平成一八年、神戸学院大学教授の上脇博之氏(政治資金オンブズマン共同代表)が細田・安倍の両官房長官時代の機密費の使途について示した文書の情報公開請求を行ったが、内閣官房長官から国庫に対する請求書等は開示されたものの、内閣官房の支出に関する資料は全て不開示となった。そこで、平成一九年五月、上脇氏が不開示処分の取消しを求めて大阪地裁に提訴した(一次訴訟。訴訟中に、安倍官房長官分に絞った)。その後、上脇氏やその他の政治資金オンブズマンのメンバーが、河村官房長官分(二次訴訟)、菅官房長官分(三次訴訟)の機密費の情報公開請求訴訟を大阪地裁に提起している。
 一次〜三次訴訟は、平成二四年三月、平成二五年一一月、平成二七年一〇月に、それぞれ大阪地裁において、いずれも内閣官房機密費の支出関係文書について一部開示を命じる判決が言い渡された。三つの判決のいずれでも開示が認められたのは、内閣官房長官が自ら使用し出納を管理する政策推進費にかかる「政策推進費受払簿」、会計検査院に提出する二次資料である「報償費支払明細書」と、出納管理の一覧表である「出納管理簿」の一部(政策推進費に係る部分)であった。一方で、個別の領収書等については、不開示とされた。結論を分けたのは、具体的な使途と支出の相手方が記載されているかどうかであり、開示が認められた文書は全て支出の相手方が記載されていない文書であった。なお、二次訴訟、三次訴訟においては、上記各文書に加え、さらに公共交通機関の交通費の領収書等についても、開示が命じられた。いずれの判決についても、国と原告の双方が控訴した。
 そして、平成二八年二月二四日、大阪高裁で一次訴訟、二次訴訟の高裁判決が言い渡された。同判決の結論は、一次訴訟の地裁判決を維持するものであり、再び一定の支出関係文書について開示が命じられた。高裁での争点であった開示の範囲や部分開示論については特段目新しい判断はなく、二次訴訟の判決で開示範囲が拡がっていた点(公共交通機関の交通費)については開示を命じなかったため、高裁判決は半歩後退ともいえた。しかし、情報公開請求訴訟の鬼門ともいわれる高裁において、一定の開示を守ることができた点は大いに評価できる。これまで内閣官房機密費の支出の全てがブラックボックスとされてきたことからすれば、高裁においても国民の知る権利の立場から、官房機密費の支出関係文書の開示について風穴を空けることができたことは、大変意義がある。国は上告して争いを続けるものと思うが、上告審での審理や三次訴訟の高裁での審理も引き続き手を抜かず、内閣官房という国の中枢機関が国民の税金を機密費として国民の監視下におかず自由に支出することの問題点を投げかけ続けたい。
 (弁護団は大阪支部の阪口徳雄、徳井義幸、谷真介各団員ほか)


潜水艦そうりゅう自殺未遂自衛官の家族が国を提訴

山口県支部  田 川 章 次

 正月休みに、佐々部清監督、市川海老蔵主演の映画「出口のない海」を横山秀夫さんの原作で読んだ。映画では、いま一つ内容等が胸に落ちなかった。しかし、この原作を読んで特攻兵器「回天」と、これを生み、多くの若者を死地に送った旧日本海軍の非人間性、暴力的体質を知り憤ると共に、原作の観点に強い感銘を受けた。
 正月休みの明けたそのような時に、二年前から相談を受けていた宇部の脳神経外科医 坂倉孝紀さんから突然の電話があった。早速会って話を聞くと、潜水艦「そうりゅう」で拳銃自殺未遂となった弟正紀さんの母親が自衛隊の対応が余りに悪いので裁判を起こしたいという気持ちになられたということだった。
 この事件は、二〇一三年九月二日午前五時過ぎ、広島県呉市の海上自衛隊呉基地に停泊中の「そうりゅう」艦内で起きた。破裂音を聞いた機関長が、孝紀さんの弟である坂倉正紀二等海尉が拳銃をくわえた状態でうつ伏せに倒れているのを発見した。その時正紀さんの意識はなかった。搬送先の大学病院で面会した孝紀さんは医師としての直感で「最悪の事態を覚悟した」と振り返るが、緊急処置で一命は取りとめたものの、銃弾の貫通による頚(けい)髄損傷で今も寝たきりの状態にある。
 二〇一四年二月に初めて会った孝紀さんは、自衛隊(国)相手に労災の裁判を起こしたいが、宇部の弁護士にはみな断られたので、是非お願いしたいと要請された。そこで、近い時期に自宅を訪問し、療養中の正紀さん本人とその介護に追われている母の節子さんと面談した。その時には、直ぐにでも裁判をということであったが、翌日にはお母さんの方から当分の間裁判は見合わせたいと電話があった。そのため、私は訴訟提起を断念していた。
 そんな状況の二年後に、冒頭に書いた孝紀さんからの連絡であった。
 この間、家族と自衛隊の話し合いが行われ、この拳銃自殺未遂は、上官の一等海尉の殴る蹴るの暴行によって発生したうつ病に起因するものであることが明らかになり、公務災害の認定も受けている。そして、二〇一五年一〇月には、この上官らに対する懲戒処分等も実施されている。ところが、防衛省は懲戒処分については公表が原則であるのに未発表のまま経過していた。ところが、報道機関より情報公開の申立があったことから、近い内に行われる海上自衛隊幕僚長の定例記者会見で公表される旨本人と家族に対し本年一月八日になされた。その際に、本事件は「暴力を伴う指導」によるものであるとして、暴力・暴言による「いじめ」とは認定していなかった。その結果加害者に対する懲戒処分も極めて軽微なものとなっている。また、これまで公開されなかったのは「家族として公表を望まない」という意向があったからとされていた。しかしながら、家族が公表を望まなかったという事実はなく、また、加害者の処分も軽いものであり、家族としては到底納得し難いという結論になった。そのため、正紀さんの両親が、慰謝料を国家賠償法に基づいて山口地裁に訴求することになり、家族としては、海上自衛隊側が誤った事実を公開する前に、本件の実態を社会に訴えたいと考え、急遽一月一三日に記者会見をしてこの件を公表した。この件は、広く国民の注目を浴び多数の報道機関に取り上げられた。そして、国会でも防衛大臣が処分を公表していなかったことを謝罪した。
 そして、本年二月三日には、母親が二〇〇〇万円、父親が一五〇〇万円の慰謝料を請求する国家賠償請求訴訟を提訴するに至った。この日も新聞テレビで大きく取り上げられた。
 この事件では、今日海上自衛隊が旧日本海軍と同じ暴力体質を有し、不都合な事実は隠すという隠ぺい体質を有している。特に、本件では、安倍政権が総額四兆円強という巨額の契約となるオーストラリアによる次期潜水艦発注をめぐるドイツ、フランスとの熾烈な武器商戦を行うなかで、潜航時間の長さ、ステルス性能の高さなど“世界最高水準”と自慢する『そうりゅう』型潜水艦の売込みにあたり、その艦内で、上官の暴行が原因で幹部の拳銃自殺未遂事件が発生したというのはマイナスイメージであるため、艦長などの懲戒処分公表はなんとしても避けたかったという事実も明らかにしたい。また、本件の前年一〇月に二〇歳の下士官が、同じ潜水艦そうりゅうの艦橋付近でなくなったという不思議な事件についても、広く団員の方々とともにその真相を究明をしなければと考えている。


ノーモア・ミナマタ
第二次国賠東京訴訟について

東京支部  齊 藤 園 生

一 救済されない被害者
 熊本、新潟、大阪、東京の全国四カ所の地裁で、ノーモア・ミナマタ第二次国賠訴訟が闘われている。一次訴訟の結果、水俣病特別措置法が勝ち取られたが、国の行う検診が非常に杜撰であったこと、制度開始から一年数ヶ月の短期間で制度が打ち切られてしまったことから、救済されない被害者が大量に残され、救済を求め提訴したのである。
 東京訴訟は、二〇一四年八月に、第一陣一八名で提訴。二〇一五年二月の第一回弁論から、二ヶ月に一回の割合で、五回の弁論を重ねてきた。原告とサポーターの協力で、毎回東京地裁の大法廷の傍聴席を満杯にしている。また東京民医連の協力を得て、集団検診を重ね、原告は第四陣まで合計六七人に上っている。現在の慢性水俣病患者は、初期の劇症患者とは異なり、外見上は健常者と何も変わらない。しかし検診をしてみると、四肢末梢にとどまらず、全身の痛覚・触覚が低下している全身性感覚障害があったり、片足立ちがほとんど出来ない失調症状があったり、症状ははっきりしているし、かなり重症と言うべき人も多い。まだまだ救済されるべき被害者が数多く残っていると考えられる。熊本では既に原告数は一〇〇〇人を超え、東京、大阪でもまだ原告数は増えている。
二 国のかたくなな態度
 原告らの訴えに対して、被告国は全く解決に乗り出していない。その態度はかたくな、とさえ言える。
 たとえば、国は特別措置法の中での不服申立制度さえ認めようとしていない。特別措置法で、一定の要件を満たせば、「水俣病被害者」と認定され、一時金、療養費、医療手帳などが支給される。当然これは行政処分と言うべきである。被害者と認められなかったら、その処分を争う不服申立制度があって当然である。しかるに、国は「処分ではない」と言い張り、不服申立を決して認めようとしない。新潟水俣病については、新潟県がこの対応を問題視し、独自に非該当者の異議申立を認めた。そして独自の審査をし、非該当の認定を翻し「該当」とした例もある。これに対しても国は「県が勝手にやったこと」と突き放し、国負担分の支払いを拒否している。
 また訴訟でも、原告の主張する水俣病の診断基準や、水俣病と診断した医師の共通診断書について批判を繰り返している。典型的なのは、四肢末梢優位の感覚障害は水俣病以外の疾患でも認められる症状なのだから、他の疾病との鑑別が重要で、そのために各原告の他病院での診療録をすべて出せ、という主張である。延々とした医学論争をし、被害者が死に絶えるのを待っているとでもいうような対応である。
三 公式発見から六〇年
 今年水俣病は公式発見から六〇年目を迎える。六〇年も経過して、未だに被害者救済が完了しないのは、国が、加害者であるにもかかわらず、居住要件や出生時期など、被害者の範囲を決め、被害者を切り捨ててきたからである。この態度は他の公害事件、特に福島の原発事件でも共通の現象ではないだろうか。この国の姿勢を改めさせるために、新たな主張・立証を含め、訴訟で追い詰めたい。


アポのない文書は受け取れません
―米中大使館訪問記―

東京支部  松 島   暁

 今、南シナ海は緊迫しています。中国が岩礁を埋め立てて人工島に滑走路を造成すれば、アメリカは「航行の自由作戦」と称してイージス艦が一二海里内の航行を強行する。すると中国はランクアップされた対抗策、ミサイルの配備を行う。米中は南シナ海で、軍事的圧力と武力による威嚇を繰り返しています。
 このようなエスカレーションがアジアの平和と安定を害することは明らかで、団の改憲阻止対策本部と常任幹事会での議論をへて、米中両国の大使館に「自制」を求める要請書を提出することとなりました。
 要請書には、自由法曹団が平和の実現、憲法擁護の活動を続けてきたこと、近時の南シナ海情勢は、アジアの平和と安定を損ないかねずこれを座視できないこと、軍事的圧力は武力による威嚇ではなく平和的手段によってこそ紛争は解決されなければならず、米中両国に自制を求めたいとの内容(http://www.jlaf.jp/menu/pdf/2016/160225_02.pdf)が書かれています。
 二月二三日、今村幹事長、西田事務局長、それに起案を担当した増田事務局次長と私の計四人で、春節を祝う華やかな特大ポスターが何枚も貼られ中国大使館を訪ねました。
 大使館前で警備中の警察官に、弁護士であることと要請書を持ってきたことを伝えると門扉横の受付窓口に案内される。窓口で来訪の趣旨を伝えると、要請書を持ってくる人などかつていなかったためか、受付担当者があちこちに連絡、しばらくして何者かが降りてきて要請書を逐一読んでいるようでした(受付の窓口が小さいため手元の動きしか見えない)。要請書の最後まで全部読み終わるまでずいぶん待たされた後、西田事務局長が差し出した名刺を受け取り、「申し入れの趣旨は、担当部署にしっかり伝えます」との回答、応対した人は総務の者だとはいったものの、名前は教えてもらえなかった。名刺は受け取ったが要請の文書は返されたので、「あなたがこれを受け取ったことになってしまうとマズイですか」と問うと、「そうだ」と言う。それならばということで「郵送でいいか」「送って下さい」等のやり取りの後、中国大使館を後にした。
 元麻布の中国大使館から、事務所(東京合同)近くのアメリカ大使館にタクシーで移動。大使館に何度か要請に行ったことのある事務所の事務局員によると、以前は要請書を門扉越しに受け取っていたが、最近は受け取りを拒否するようになったし、怪しい者が近づくと赤坂署の警察官がすっ飛んでくるとのこと。はたして私たちは怪しい者と見られるだろうか、と思いながらタクシーを下車すると、早速警察官に誰何される。私たちは弁護士で書類を届けに来た、事前に連絡してある(増田次長が代表電話に電話を入れていいて、住所もしっかり聞いていた)等と答えながら、正門脇の検査場の前まで到達。そこで警備員のさらなるチェック、用向きを伝えるとあちこちに電話、また待たされる。
 待っている間、正門入口の警備の様子を観察、頑丈な車止めが二重に設置され、手前の車止めと奥側の車止めの間に一台づつ誘導、車体を検査し大丈夫となった後に奥の車止めを解放、大使館の中に車が入っていく。爆弾を積んだ車が突っ込んできても車止めで爆発、中までは被害が届かないないよう警備されていた。
 「日本中で爆弾テロの可能性の最も高い場所がアメリカ大使館」「僕らはかなり危険な場所で待たされているわけだ」等と軽口をたたきながら待ちました。
 一〇分ほどして戻ってきた警備員は、「あなたたちが電話したのは代表電話で、話しをしたというのも交換手と話しただけで担当部署とは話してはいません。」「それではアポイントを取ったことにはならないので、文書も受け取れません」という拒否回答でした。まぁ、分かってはいたのですが・・・・。
 中国大使館は西田事務局長の名刺は受け取ったのにアメリカ大使館は名刺も含めて受取拒否の対応でした。
 尚、当日の様子は団のフェースブック(https://www.facebook.com/jlaf.jp/)に投稿されています。


二・一九奈良県民集会の報告

奈良支部  佐 藤 真 理

 安倍内閣による戦争法案の強行「可決」から満五か月の二月一九日夜。総がかり行動実行委員会が、国会前で、「戦争法を廃止へ!安倍政権は退陣を!二・一九総行動」を主催し、七八〇〇人が参加した。このとき、奈良ではJR奈良駅前広場で「手をつなごう。今こそ。戦争法廃止・立憲主義の回復を求める奈良県民集会」が開かれ、八〇〇人が参加し、デモ行進を行った(東京なら八万人集会に匹敵する規模!)
 昨年八月二二日、奈良弁護士会が初めての屋外集会とパレードを二五〇〇人規模で成功させた時、共同センター、一〇〇〇人委員会、九条の会ならの三団体が全面的に支援・参加した。今回は、弁護士会抜きで、共同センターと一〇〇〇人委員会の共同行動が実現できたのである。
 三月一八日には「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合・なら」の結成総会が予定されている。
 私たちは、戦争法案の成立を残念ながら、阻止できなかったが、反対運動は空前の盛り上がりを見せた。この流れを引き継ぎ、戦争法廃止・立憲主義回復の一点での「国民連合政府」構想を共産党がいち早く打ち出し、各野党などに共同行動を呼びかけた。昨年、一二月二〇日には、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が発足し、(1)戦争法の廃止、(2)立憲主義の回復、(3)個人の尊厳を擁護する政治の実現の三項目の協定による野党か無所属の候補の支援を打ち出した。
 熊本では市民・野党統一候補として、阿部広美弁護士が立候補を表明し、各野党が推薦を決めたが、全国的には、野党統一候補の動きは遅々として進まなかった。
 甘利大臣の口利き疑惑、高市総務相の放送介入発言など、閣僚の暴言、失態が噴出しているのに、内閣支持率は下がらない。おごれる安倍首相は、ついに憲法の明文改正まで、公然と唱えはじめ、参議院選挙で、与党とおおさか維新など補完勢力を含めて三分の二の議席を目指すなどと言い出した。
 こういう情勢の下、二・一九の大集会の日に、五野党党首会談で、四項目の合意((1)安保法制廃止と七・一閣議決定撤回を共通目標とする、(2)安倍政権打倒を目指す、(3)国政選挙で現与党と補完勢力を少数に追い込む、(4)国会対応、国政選挙などでできるかぎりの協力を行う)が成立し、同日、五野党は戦争法廃止法案を国会に共同提出した。「戦争法廃止を、野党は共闘を」との市民の声、世論と運動がついに野党を動かしたのである。
 これは、文字通り「画期的」な事態である。市民連合が掲げる前記三項目を実現するために「野党共闘」が大きく前進する情勢が生まれつつある。
 七月の参議院選挙、あるいは、同時選挙となる可能性もあるが、今度の国政選挙が勝負である。安倍政権の改憲策動を阻止し、「戦争したくなくてふるえる」(シールズ)、「だれの子どもも殺させたくない」(ママの会)などの声に代表される、個人の尊厳と平和的生存権を重視する立憲民主主義の政治への「市民革命」が大きく前進できるかどうかの分岐点となる選挙である。
 すべての団員候補の当選を含め、革新政党や野党候補の勝利のために、大奮闘を誓い合いましょう。

(二〇一六年三月一日)


専業主婦家庭の夫の家事の分担は
もっと問題にされるべきだと思います

東京支部  金   竜 介

 笹山尚人さんの論稿(団通信一五五一号)に便乗して、専業主婦家庭での夫の家事の分担について思うことを書いてみます(本論稿は家事に絞って書くことにします。育児も併せて論じると焦点がぼけるので)。
 夫婦共に働いている家庭に比べると専業主婦家庭だと家事分担についての夫の意識ってかなり低いんじゃないかと思うんです(たとえそれが自由法曹団の男性弁護士でも)。低いどころか夫の家事がゼロの家庭とか結構あるような気もします。もちろん専業主婦家庭で平日の日中の家事が妻だけっていうのはありですよ。私が言いたいのは、平日の夜とか休日でも家事を全くやらない男性弁護士が結構いるんじゃないかということです。それで、そういう男性弁護士に「家事全然やらないんですか?」と問うと「うちは専業主婦ですから」みたいな答が返ってきたりするじゃないですか。そういう男は、やっぱりだめですよ。
 専業主婦って日中に家庭で働いているわけでしょ。ですから共働きの夫婦と違うのは、〈平日の日中の家事労働は妻〉という点だけで平日の夜とか日曜日とかは、夫婦の家事の分担ということを語る必要があるはずです。そして、「日曜日でも家事は何もしていません」という夫は批判されてしかるべきだと思います。この点は共働きの夫婦と何ら変わりはありません。
 日曜日って、専業主婦の妻にとっては、家事をしてくれる人が独りじゃないから自分ものんびりできる日となるはずです。でも現実はそうはいかないでしょ。
これは、夫が弁護士のある専業主婦家庭で実際にされた会話です。
「そろそろ起きて。朝ごはんできるよ」
「おはよう。今朝はゆっくりしちゃった」
「たまの日曜日なんだから今日はのんびりすれば」
「そうさせてもらうね。午前中、図書館いってくる」
「もらったハムあるから、あれでお昼ご飯作っとくわ」
「サンキュー、頼むね」
 男性団員が一読するとAが妻でBが夫と無条件で反射的に考えてしまうのでは?実際には、Aが夫、Bが専業主婦の妻でした。
 まあ、〈日曜日には朝起きて夜寝るまで夫婦そろって家事は何もしないと二人で決めました〉というのであれば、他人がとやかくいう問題ではないんでしょうが…。でも、実際には、日曜日に家事はなんにもしない男って、休みの日は三食コンビニ弁当で、掃除していない風呂に入って、洗濯した着替えがなくても絶対に文句を言わない人間かというとそんなことはないわけで。自分は何もしないでおいて、妻が家事をしないと怒りますよ、こういう男は。
 私は、家事をしない夫ってDVだと考えてますし、それは共働きであろうが、専業主婦家庭であろうが、同じことだと思ってます。
でね。共働き夫婦のケースと違って自由法曹団でこういうことがあまり論じられないのはなぜかと考えてみますと。
 この問題に限らず現状で利益を得ている側の人間が現状を否定的に論じることってあまりないですよね。夫婦の家事分担についても積極的に語るのは妻側というのが多くて、夫が積極的に現状を問題にするということはあまり多くないと思います。そうすると妻が弁護士の夫婦で専業主婦家庭というのは少ないので〈専業主婦家庭における家事分担〉について当事者(男性弁護士)があまり話さないことから団内でこの話題が出ないのではないかと感じています。
 本稿は、裏づけとなる統計があるわけではなく、多分に私のイメージで論じています。ですから「専業主婦家庭だからって家事をしない自由法曹団員なんているわけないよ!」って男性弁護士から断言されたら謝ります、すみません。
 こういうことを団内でも話したいとは思うのですが、あまり機会がないのでとりあえず議論のきっかけとして団通信に書くことにしました。


「マタハラ問題」(ちくま新書)
・「雪の朝」(角川書店)二つの書評

東京支部  飯 田 美 弥 子

一 標記二冊の本の紹介をしたい。
 「マタハラ問題」の著者・小酒部さやかさんは、私より年下。子どもを持ちたいと願っている世代の女性だ。「雪の朝」の著者・高倉やえさんは、私より年上。どちらかと言えば、私の親に近い世代の女性だ。
 間の世代の私は、それぞれの本を読んで、「マタハラ」というのはこんなことになっているのか、と唖然とし、会議通訳として国際会議で活躍する高倉さんが経験した、日本政府の女性差別解消に対する(「超」をつけたいほどの)後進性に胸を痛めた。
 それでも、「雪の朝」の主人公・はるかも、無力感を払いのけ、明るい未来を信じて、歩み出そうとする。小酒部さんも、「自分たちがされて苦しんだ問題を、自分の娘に押しつけるなんてできない。」と、社会を変える活動に踏み出した。
 「日本の女性の労働は、女性たちのバトンリレーである。男性並みに仕事をしてくれる女性たちがいてくれたことによって、女性が社会進出できた。そのバトンは今、私たちの手にある。」
 「今後、労働人口が減れば、女性・高齢者・学生の労働力も必要になる。長時間労働や人材をふるい落とすだけの無駄な単身赴任や転勤、出張が横行していては、だれも働き続けることができなくなってしまう。」
 はからずも私もまたそのリレーの中にいることを考えさせられた。
 そして、今、私たちが社会を変えないと、男性もろとも、社会が立ちゆかなくなる危険性を認識させてもらった。
 昨年来、ママの会やレッドアクションなど女性の政治参加が急速に進んだ。岡田知弘京大教授の指摘だが、女性たちが立ちあがるのは生命の危機を感じたときだという。米騒動もそうだった、と(ちなみに岡田先生は富山のご出身)。今もまさにそういうことなのだ。
 男性にも、この危機意識を共有して欲しいと思う。
二 「マタハラ問題」
 前半は、小酒部さんの実体験が語られる。弁護士なら、「証拠残しをしなさいよ」とハラハラするにちがいない。しかし、法的知識のない人であれば穏便にすませようとするのは仕方ないことだ。さんざんマタハラをされ、二度も切迫流産を経験し、傷つきまくって退職する彼女に対し、上司は最終日に「お疲れさま〜」とばかりに満面の笑みを浮かべてハグしようとする。彼女はその人を退け、怒りをぶちまける。「火柱のようなものすごい怒りが湧き上がった」という。私にも火柱が見えた気がした。(訴訟を決意する場面で新村響子弁護士が登場する。)
 後半は、人口問題をも考慮に入れた働き方の提案になる。
 先にも引用したが、育児をする女性の働き方だけの問題ではない。介護離職も増えている。私は幸い仕事を続けていられるが、病気療養による離職もある。学生をブラックバイトで、若者をブラック企業で、消耗させている場合ではないのだ。
 一定期間離職して、復帰する。時短勤務をする。勤務場所の制約を緩める。様々な方策が模索されなければ、労働力は今後、絶対的に不足する。働ける人達を過労死させていては、労働力不足を早めるだけだ。
 いろいろな条件の人が、それぞれの条件の下で働き続けられる社会を作ることが急務である。それは、労働者側の事情に即した働き方のことであって、企業主導の働かせ方の問題ではない。
 同期の笹山さん(首都圏青年ユニオン)、その妻の長尾詩子さん(JALマタハラ裁判)が夫婦でそれぞれに携わっている事件は、違う側面のように見えて、実は表裏の関係にある、とはっとさせられた。より大きな視点からの政策が提唱されるべきだと思った。
三 「雪の朝」
 著者の高倉さんとは、小林節慶大名誉教授主催の「民間立憲臨調」の会合で初めてお目にかかった。小林先生が私のことを指して、「僕をネタに落語をしている弁護士です。」と紹介し、私が小林先生と私の関わり?をひとくさり話した後で、「面白かったわ。」と話しかけてくださったのだ。
 高倉さんは、「国際会議の場で、憲法九条がどれほど尊敬を集めているか、誇りに思って来た。変えることには絶対反対。」と発言されていた。
 会合後の記者会見で、若い記者が「立憲主義を取り戻す、という主張のようですが、立憲主義って今まであったんですか?」と質問したときには、「ああ、恥ずかしい。勉強してないのね。」と顔をしかめておられた。
 思いがけず、高倉さんからこの本を贈られ、小説だというので軽い気持ちで読み始めたところ、その内容に引き込まれた。
東日本大震災、靖国神社の遊就館、昭和館など現に私が経験したことの記述がある。
 私たちにはわからない国際会議での日本代表のお粗末さを知ることができる(「通訳陣の中には悔しさから日本国籍のラベルを剥がす者もいた。」)。
 祖母・母・娘が生きていた時代を描くことで、女性の社会的地位の変化が分かりやすく提示される。
 たとえば、「教授なのにパンを買ってお帰りになるの。朝はゴミも出されるのですって。」と呆れられた、という行がある。
 私の耳に、「子どもを入れてくれる保育園を探すのが大変だったのよ。『夫婦して弁護士なら、お手伝いさんをお雇いになったらいいじゃありませんか?』と言われてしまう時代だったから。」と苦笑した杉井静子弁護士の声が蘇った。
 …遠い昔の話ではないのだ。ちょっと前の現実。
 淡々とした文章の中に、ときどき、ハッとするほど鋭い表現がある。
 女性差別とは、「人類の半分がもう半分の人類を支配して築いた歴史」。
 「女性の代表が少ないときは、男性的な考え方をする女性しか引き上げてもらえない。」…一瞬、高市早苗総務大臣の顔が頭に浮かんだ。
 「『女の子』として扱われたことで、差別される人の気持ちに共感することができた。自分が持つ価値観を女性的という理由で否定されることへの反発は、差別がもたらす社会のゆがみを考えるもととなった。」…私たちは、(望むと望まざるとに関わらず)もう半分の人達より人権感覚が鋭くなる機会に恵まれて生まれてきたのだ。世代を超えて、高倉さんと手を取り合いたい気持ちになった箇所である。
 国際的な視野(横の広がり)と歴史の動き(縦の流れ)を同時に知れる好著である。一読をお勧めする。
 みややっこの口演が新聞で取り上げられたとき、「こういう女性弁護士が現れる時代になった、と感動した」と、先輩女性弁護士がお手紙をくださった。
 私は、「偶々、落語という趣向が受けただけ」と思っていたが、そうではないのかもしれない。女の弁護士を講師にすること自体に抵抗があった時代もあったのだろう。今でも、「九条の会の会員から推薦があったが、一度会ってから、決めようと思う。」という電話をもらったことがある。結局、そこは私を選ばず、小森陽一さんを招くことにしたと聞く。
 女性差別は根深い。先輩から受け取ったバトンを、若い世代につながなくては。五〇代半ばにして、その意識が強くなった私である。


自由法曹団女性部新人学習会の報告

(弁)川越法律事務所  立 花 ほ の 佳

一 はじめに
 自由法曹団の女性部による新人学習会「家事調停について」が二〇一六年一月二九日に開催されるとのお知らせが来て、私はまず、自由法曹団に女性部が存在することに驚きました。そして、既に何件か家事事件を抱えており、なんでも良いから知りたいとの思いと、たまには埼玉から都会に上京したいとのよこしまな思いとあいまって、女性部のこともよく知らぬまま参加することにしました。
二 新人学習会 「家事調停について」
 講師は、一四期の増本 敏子先生でした。弁護士生活五〇年以上とは、その日の時点で弁護士歴三週間の私たち六八期からすると想像のつかない期間です。そんな増本先生から、家事調停についてどんなお話をうかがえるのか、興味津々でした。
 まず、そもそも家事調停は、当事者自身が解決しようという意欲を持って関わることが調停の一番の特色であるとうかがった時点で、家事調停の代理人としての自分の基本的なスタンスが決まったように感じました。
 また、調停委員をされていた増本先生ならではのお話を色々きくことができました。調停委員から代理人弁護士への要望や、困った弁護士の例といった、調停委員の生の声にもたくさん触れることができました。困った弁護士の例として、依頼者本人に調停委員と直接話をさせず自分ばかり話す代理人や、当事者本人の真意がつかめていない代理人、等があげられており、自分も気をつけなければと思いました。
 その他に、長年調停に関わってきた増本先生がみてきた家裁調停委員の考え方の傾向や、代理人弁護士の構成の変化など、家事調停事件の代理人弁護士にとって役立つ情報が得られました。
 そして、特に印象に残ったのは、家事事件手続法に定められた、「子どもの代理人」という新しい制度についてです。制度趣旨や、具体的な活用例をきくことができました。まだ活用例が少ないとのことですが、子どもの真の気持ちを知るために、今後もっと活用されて良い制度とのことです。
三 懇親会
 懇親会では、近くの美味しいイタリアンをご馳走していただきました。諸先輩方の非常にドラマチックな人生についてお話をうかがうことができて、人生観が深まったような気もします。
 こちらは新人にもかかわらず、言いたい放題でしたが、それも受けとめてくださる女性部の先生方の懐の広さに感激しました。
四 終わりに
 新人学習会の増本先生の講義は大変勉強になり、上京してきてよかったと思いました。いただいたレジュメもすでに活用しています。
 懇親会では、女性部の活動の一端を知ることができました。弁護士事務所の中や諸団体の中でも、まだまだ女性に対する不当な扱いがあったり、男性に比べて働きにくさを感じるような状況がある、といったことについて、ざっくばらんに語りあいました。ただ、女性の抱える問題は、女性だけで世の中が成り立っているわけではない以上、同時に男性の問題でもあります。というか、むしろ、男性、女性という区別で考えること自体、性の多様化を認め合う世の中ではナンセンスになってきているかも知れません。もっとも、女性が感じやすい働きにくさ等が、現実にあるのも事実でしょう。新人ながら考えた女性部の役割としては、自由法曹団のなかでも、弱い状況や少数の状況にある団員がまず気づいた問題を、男女問わず団員全体の問題として考えるように促すことなのかな、ということです(違っていたら申し訳ありません。)。
 新人ながら勝手な意見も申し上げてしまいましたが、今後とも、六八期をよろしくお願いいたします。


日弁連「法曹の収入等の経済状況調査」への回答のご協力のお願い

東京支部  緒 方   蘭

 司法修習生に対する給付型の経済的支援の実現に向けて、日弁連が「法曹の収入等の経済状況調査」(対象は第五三期以降になります)を実施することとなりました。
 日弁連の今回の調査は、司法修習生に対する経済的支援を検討するにあたり非常に重要となります。少しでも多くの若手法曹の方々にこの調査の存在を知っていただくために、団通信に連続して調査へのご協力を呼びかけることとしました。前号(三月一日付の団通信一五五三号)の増田悠作事務局次長の投稿と重複しますが、目を通していただけると幸いです。
一 調査の趣旨
 この調査の目的は、若手法曹の経済状況を参考にして、司法修習生に対する経済的支援がどの程度必要であるかを検討することにあります。五年前に実施された同様の調査では、弁護士六年目の若手の収入の平均値が二〇〇〇万円を超え、所得の平均値が一〇〇〇万円を超える旨の結果が出て、この結果が給費制廃止の論拠に使われることとなりました。しかしながら、同調査の回答率はわずか一三・四%に過ぎず、実態が反映されていないとの批判もありました。
 調査の回答率を上げ、実態を反映した結果にすることが非常に重要となります。
二 実施の概要
(1)送付時期・調査期間の変更

 アンケートの送付時期は、当初三月四日(金)ころを予定していましたが、約一週間遅れることとなり、調査期間も三月一一日(金)から同月二八日(月)までとなる見込みです。
(2)概要
・調査対象:第五三期から第六八期まで
・調査目的:修習修了後相当期間を経た法曹の経済状況を把握するため
・調査期間:三月一一日(金)から同月二八日(月)までの予定
・調査内容概要
① 収入・所得調査
※対象は第五三期から第六七期まで
※回答には、確定申告書か源泉徴収票の情報が三年分必要となりますが、手許にない年は回答不要です。
② 奨学金調査
※対象は新第六〇期から第六八まで(新・旧ある期は新のみ)
※法科大学院・大学在学中の奨学金等の借入状況を調査する
・回答方法 Web又は郵送
 調査票には一人ずつIDが割り当てられますので、調査票を捨てないようにして注意して下さい。
 アンケートの所要時間は五分から一〇分程度です。調査票には返信用封筒が同封されています。
三 回答に当たってのお願い
 この調査は、なるべく多くの方にご協力いただき、実態を反映した結果にする必要があります。若手団員の皆様は調査にご協力ください。また、第五二期以前の皆様も、若手法曹の方にお会いする機会がありましたら、調査へのご協力を呼びかけてください。
 現在の法曹養成制度の経済的負担は極めて大きく、受験生や学生が経済的理由で法曹の道を諦めることや、若手弁護士が経済的理由から公益活動に加われないことなど、様々な弊害が出ています。
団員の皆様におかれましては、ぜひ日弁連の調査を広めていただき、給費制の実質的復活に向けてご協力いただきますようお願い申し上げます。


四月国会に向けた総決算
〜刑訴法案を廃案にするために

東京支部  小 池 振 一 郎

 昨年九月継続審議となった刑訴法案がいよいよ参議院法務委員会の俎上に上る。法務省は、現在、この法案を最優先課題として位置付けている。
 参議院法務委員会では、ヘイトスピーチ法案も継続審議となっている。従って、まず、審議途中のヘイトスピーチ法案の先議を求め、さらに、民法改正などの緊急に制定すべき法案の先議を求めることが必要であるが、法務省が刑訴法案を最優先課題としている姿勢を変えない以上、予算審議が終わった後の、三月終盤から四月国会で刑訴法案審議が強行される危険性が強いと見なければならない。そうなれば、ゴールデンウィークまでに刑訴法案の決着がつく可能性がある。
 そこで、参議院法務委員会では、衆議院のように徹底審理を求めるたたかいが重要となる。まだまだ審議し足りない論点は多い。
 例えば、司法取引については、諸外国の状況も参考にしながら徹底したシミュレーションをしないと、大変なリスクを負いかねない。ターゲットは国会議員であり、会社役員であり、組合幹部なのだ。そのために証拠隠滅罪は、この法案で二年から三年に引き上げられている。
 弁護人にも証人の名前を秘匿するような刑事裁判が許されていいのか。これではその証人が警察のスパイかどうか確かめようもない。
 盗聴法の一般犯罪への圧倒的拡大と第三者立会いなしが、チェック機能のない日本の警察で、どれほどの問題を引き起こすか。
 いま裁判員裁判になっている今市の事件のような場合、この法案がどのように活用されるか想像してみよう。検察側は、取調べの録画を証拠に出すといっているようだが、おそらく自白場面を出すのであろう(戦後、えん罪事件で自白の録音テープはかなりとられていた)。そこでの自白場面がどのような印象を与えるか。しかし、軽い罪を認めれば死刑にならない、と言われているところは出てこないだろう。そもそも録画されていないだろう。このような司法取引を録画しなくていいのか。
 供述(自白)が得られそうになければ取調べを録音録画しなくていいという抜け道(「例外規定」)がここで機能するであろう。数あるえん罪事件は、証拠が薄い(もしくは、ない)からこそ無理な自白を強要し、そこで何とかとった自白調書を裁判所に提出し、裁判所は、その調書に飛びつき、有罪にするために採用したのではなかったか。そのような局面で裁判所は、例外規定に当たるから録音録画しなかったという捜査側の弁明を排斥することができるだろうか。録音録画されていないその自白調書の証拠採用を、例外規定に当たらないとして、却下する勇気をもつだろうか。やはり、部分可視化を容認する法案ではダメで、全過程可視化を例外なく義務付ける必要があるのだ。
 日弁連執行部は、このような法案の問題点を全会員に訴え、運動を展開し、法制審の審議に影響を与えただろうか。否、そのような作業を怠った。むしろ、全会員には、意図的に問題点を隠したといっても過言ではない。可視化法案が本当に前進と言えるのか、真摯な検討もしなかった。単に、可視化の法律化が一歩前進だ、と前のめりになるだけで、その中身がきちんと吟味されていない。そのため、法案について、多くの会員がその内容、本質を知らされていない。むしろ、衆議院法務委員会の非法律家の委員たちの方がはるかに深く知っていると言える状況だった。
 そこで、参議院法務委員会では、こういった問題をきちんと審議する必要がある。そのためには、数回の審議日程では足りないはずだ。法案の問題点をマスコミにも訴え、徹底審議を求める必要がある。野党委員は絶対反対、とやる気満々だ。
 ゴールデンウィークを過ぎれば、参議員選挙で足元がおぼつかなくなる。衆議院選挙もあるかもしれない。そうなれば廃案の展望が出てくる。いよいよ総決算だ。四月国会を照準に法律家団体の共同声明を出す動きもある。後掲市民集会などに参加し、廃案に向けたたたかいを盛り上げていただきたい。

三月一八日(金)午後〇時〜一時半 参議院会館B一〇九号室
            団など法律家団体共催
三月二二日(火)午後六時半〜 南部労政会館(JR大崎駅前)
            えん罪被害者らの団体主催
            青木理(ジャーナリスト)、清水忠史・日本
            共産党衆議院議員ら講演
四月二二日(金)午後三時〜五時 参議院会館
            同団体主催
            原田宏二・元北海道警察釧路方面本部長講演


「松川資料をユネスコ世界記憶遺産に」
登録をめざす運動への参加の呼びかけ

東京支部  鶴 見 祐 策

 一月二五日、発起人が集った東京で松川資料の世界記憶遺産登録を目指す会(略称「松川・記憶遺産の会」)が発足した。裁判の地元の福島や宮城でも大きく報道された。
 アメリカ占領軍施政下の一九四九年八月、東北本線松川駅の近くで人為的な列車転覆事件が発生した。警察と検察によって真実の証拠が隠蔽・隠滅され、捏造されたウソの証拠によって、二〇名の労働者が「犯人」に仕立てられ起訴された。一審地裁、二審高裁とも、被告らに死刑や無期を含めた有罪判決を言い渡した。法廷では被告らの無実は明らかであったが、真実の報道が禁止されるいっぽう、占領軍と時の政府の意向に従ったデマ宣伝が日本全体を覆った状況の中で行われた不当判決であった。被告と残された家族たちとその周辺の人々による必死の訴えが駅前や街頭で繰り返されるなかで、歩みを止める人が現れはじめ、その訴えに耳を傾ける人が次第に数を増していった。これが救援運動の原点となった。
 裁判の過程で権力の不正が明るみにされるにつれて、「公正裁判」の大衆的な要求が組織され、一〇〇万人署名運動に発展した。著名な知識人の発言や労働組合の支援決議も世論形成に大きく貢献した。このような救援運動の進展に伴ってマスコミにも変化の兆しが現れた。事件の真相と無実の訴えが広がるにつれて、「無実の者を救え」との無数の人々の声が最高裁の厚い壁を取り巻いた。加えて検察による「諏訪メモ」の隠匿が発覚する事態となり、ついに最高裁も異例の一〇日間の弁論を開かざるを得ない状況に至らしめたのである。そして悪意の一部を除いた裁判官の多数による評決で原判決を破棄、差戻しの最高裁判決が言い渡された。
 この裁判闘争に関わった団の先輩たちの苦闘の歴史は肝に銘ずべきは勿論であるが、仙台の弁護士会をはじめ、全国から大勢の弁護士が、ひたすら正義を愛する立場から、冤罪を絶対に許さないとの一心から、自らの政治信条を超えて松川弁護団にはせ参じられた歴史的な事実も特筆しておかなければならない。先輩たち法曹による気迫に溢れる大法廷弁論には誰しも胸が熱くなる思いがするであろう。
 仙台高裁の差戻審と再上告審の最高裁判決で全員無罪が確定した。さらに権力犯罪を追及する国家賠償裁判で元被告の勝利がかちとられた。政治的な背景を持つ謀略事件で完全無罪の裁判例は世界でも稀であろう。そのうえ国に責任を認めさせた事例は皆無ではあるまいか。
 いま福島大学の新築図書館の一角にこれらの裁判記録も含めて松川運動に関わる膨大な資料(約一〇万点と言われる)が遺漏なく収集され、周到に分類され、大切に保存されている。そして誰でも利用できる状態で公開されている。
 そのなかには前記の「諏訪メモ」や広津和郎氏ら著名人の要請文、無罪を言渡した門田実裁判長の手控え、最高裁の調査官の報告書、それから獄中から支援を呼びかけた被告らの筆跡が残る大量の文書など貴重な記録の実物が保管されている。その永続性を願わずにいられない。
 事件現場に建立の「松川の塔」には「人民が力を結集すると如何に強力になるかということの、これは人民勝利の記念塔」と刻まれている。この松川の資料は私たちが後世へ伝えるべき多くの教訓が刻みこまれた二つとない「記憶遺産」であると言わなければならない。
 「松川・記憶遺産の会」の発足にあたり、呼びかけ人として、大学関係、学者・研究者・文化人・ジャーナリスト、弁護士・法曹関係、市民運動、救援会運動など各方面から多彩な約二六〇名の方々が名を連ねておられるが、さらに賛同者を広げて、世論を喚起して事業遂行の社会的な条件を万全な形で整えていきたいと考えている。そして二〇一九年の登録実現を目標に掲げて活動を進める方針を決めている。
 事業の遂行には財政的な裏付けが欠かせない。「松川・記憶遺産の会」は、概ね二〇〇〇万円の規模を想定している。その方法は、会の趣旨に賛同する参加者の個々人からの浄財の拠出に頼らざるを得ないが、かつての松川運動がそうであったように個々人の自主的な判断と裁量にゆだねることになろう。募金の額としては一口五〇〇〇円を目途としているが、できる限り二口以上で応募していただければと考えている。
 これまでも既に多くの団員が呼びかけ人に加わっていただいているが、この事業の積極的な意義を理解され、より多くの団員がこの会に結集されることを切望してやまない。
 運動の目的と組織の運営を紹介する冊子が団員の各位あてに配布される予定である。その際にはぜひ積極的に受け止めてご検討をいただきたいと思う。
 なおこの運動の事務局(吉田吉光事務局長)は
「松川資料ユネスコ世界記憶遺産登録を推進する会」
〒九六〇―八一〇三 福島県福島市舟場町三番二六号
NPO松川運動記念会内
         電 話 〇二四―五二三―四一八三 
          FAX 〇二四―五六三―一七〇四
          E-mailmatukawa326yo@yahoo.co.jp
 である。
 なお問い合わせは、事務局のほかに、
〒一〇四―〇〇六一 東京都中央区銀座四丁目九番六号
          陽光銀座三原橋ビル七階
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