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荒 井 新 二 今市事件弁護団へのカンパ要請について
西 田   穣 「平成二八年(二〇一六年)熊本地震」
救援義捐金の御礼
柿 沼 真 利 鹿児島県知事は九州電力・川内原発の稼働に対し何ができるのか、の検討
藤 岡 拓 郎 一一・二一後藤道夫先生による貧困問題
学習会を開催します



今市事件弁護団へのカンパ要請について

団 長 荒 井 新 二

 一木(明)・今村(核)両団員から八月常幹、九月一日号団通信で標記カンパの呼びかけが行われました。その後重要な変更がありましたので報告させていただきます。
 ひとつはこれまでの国選弁護人と私選弁護人の三人混合チームから七人の私選弁護人に変更され、団員が過半となる弁護団編成となったことです。新しい弁護団は多方面での鑑定などをめざし、無罪をかちとるべく既に精力的な活動をはじめています。他方で国選ではなくなったために、国からの弁護費用の支弁がなくなりました。このためカンパの必要性は上記の訴えの時点よりもさらに高くなりました。
 冤罪事件のカンパ活動はこれまで経験のないことですが、この事件で無罪判決をとることは、個別裁判の問題だけにとどまらず、刑事訴訟法改悪に対する有効な反撃となるものです。
 団としては刑事訴訟法改悪の反対運動の延長としてこの事件活動を位置づけ、弁護団を激励しながら資金面から応援するカンパ活動をあらためて全国的に訴えていきたいと考えます。
 すでにカンパは全国から続々とお寄せいただいておりますが、カンパ運動がすすむなかでカンパの目やすを教えてくれとの声も寄せられてきています。現下の裁判の緊急な状況からも早急に有効な弁護活動を迅速にとる必要もあります。
 そこで団本部三役で検討したうえ、九月一七日の常任幹事会でご確認いただいたので、ここにカンパ額の一応の全体的/個別的な目標をお示ししたいと思います。
 この団の全国的なカンパ活動を成功させるために出費のなにかとの多い折に大変恐縮ですが、以上のような諸事情を推察いただき、ご検討のうえご是非ともご協力のほどをお願いいたします。

一 目標額 団独自で三〇〇万円

二 各目標額
団員              一万円
常任幹事           一万円 〜二万円
支部長・幹事長       一万円 〜二万円
団本部三役経験者     二万円 〜三万円
特に「刑事訴訟法改悪阻止」に強い思いのある方  
                 三万円 〜五万円

三 カンパ先

 足利銀行本店営業部 普通預金 口座番号五一四四七七九
 名義  今市事件弁護団 会計 梅山哲也
  (イマイチジケンベンゴダン カイケイ ウメヤマテツヤ)


「平成二八年(二〇一六年)熊本地震」

救援義捐金の御礼

事務局長 西 田   穣

 二〇一六年四月一四日及び同月一六日に発生した平成二八年(二〇一六年)熊本地震につき、自由法曹団・熊本支部に向けた義捐金にご協力いただき、深く感謝、御礼申し上げます。
義捐金呼びかけ後、約三ヶ月の間に、延べ六八の支部、事務所または弁護士(団員)から、総額二〇三万二〇〇〇円の義捐金のご協力をいただきました。お振込みいただいた義捐金は、すべて自由法曹団・熊本支部に対し、被災者の人権を守り、一日も早い復興実現のための活動に寄与していただくべく、寄付させていただきました。
 被災地では、震災後に続いた自然災害等により、復興がままならない状況が続いております。全国の団員のみなさんには、今後も、被災地の支部の皆さまを激励していただくとともに、一致団結して具体的な活動にご協力いただくようお願い申し上げます。


鹿児島県知事は九州電力・川内原発の稼働に対し何ができるのか、の検討

原発問題委員会事務局次長 柿 沼 真 利

 本年七月一〇日、あの参議院通常選挙と同時に、鹿児島県知事選挙が行われ、その結果として、九州電力・川内原発を停止し、点検するよう九電に申し入れることを公約に掲げた、三反園新知事が誕生した。そして、その後、同知事は、九電に対し、熊本地震による川内原発の安全性の確認のため、川内原発の停止、及び、安全性の点検を行うことなどを要請している(これに対し、九電側は、拒否しているが・・・)。
 そこで、原発問題委として、このような原発の稼働に関し、立地自治体は電力会社に対しどのようなことを求められるのかを検討してみた。
 まず、全国各地の原発については、それぞれ、原発の運用などについて、立地自治体と電力会社の間で、「協定」が締結されている。
 川内原発に関しても、立地自治体である鹿児島県、薩摩川内市と九電との間で締結された、「川内原子力発電所に関する安全協定書」、及び、「川内原子力発電所に関する安全協定の運用に関する覚書」が存在する(鹿児島県のHPに掲載されている)。
 上記「協定書」及び「覚書」は、「発電所周辺地域の住民の安全の確保及び環境の保全を図るとともに、発電所の安全性に対する県民の信頼を確保する」ことを目的とし、協定は全二〇箇条、覚書は全一一箇条のものである。また、その締結は、いずれも、昭和五七年六月一二日で、最終改定は、平成二五年七月八日である。
 協定の内容を見ると、停止している原発の再稼働それ自体について、明文で、鹿児島県等の「同意」等を要件とするような条項は存在しない。
 また、「事前協議」等に関する第六条も、その協議の対象事項を、「原子炉施設及び復水器の冷却に係る取放水施設を増設又は変更しようとするとき」、並びに「新核燃料,使用済核燃料及び放射性廃棄物の輸送計画(輸送上の安全対策を含む。)を策定しようとするとき」に限定してしまっており、「停止した原発の再稼働」などについては、明文上では記載されていない。
 ただし、第九条一項により、鹿児島県等は、異常時(第八条に定められた、「原子炉施設の故障」等の一一項目の異常事態)や、平常時でも「発電所周辺地域の住民の安全の確保及び環境の保全のために必要と認めた場合」等については、原発敷地内の「立入調査」することが認められ、かつ、一〇条一項により、その「立入検査」の結果として、「発電所周辺地域の住民の安全の確保及び環境の保全のために必要があると認めた場合には,丙(九電のこと)に対して直接又は国を通じて適切な措置を講ずることを求める。」とされているのである。
 なお、その「適切な措置」に、「原発の稼働停止」などは明確には記載されていない。
 しかし、川内原発「以外」の原発について見ると、例えば、東京電力・柏崎刈羽原発に関する、新潟県等と東電との間の協定では、「立入調査等の結果、特別の措置を講ずる必要があると認めたときは、国を通じ、丙(東電のこと)に対し原子炉の運転停止を含む適切な措置を講ずることを求めるものとする」(第一四条第一項)と規定されていることや、関西電力・大飯原発等に関する、福井県等と関電との間の協定でも、一定の場合、福井県側が、関電に対し、「原子炉の運転停止を含む原子炉施設等の使用制限、施設および運用方法の改善その他適切な措置を講ずることを求めることができる」(第一〇条)と規定されているのである。
 このようなことからすれば、鹿児島県等と九電の上記協定の「適切な措置」についても、「原子炉の停止を含む」と解釈することも可能である。
以上からすれば、鹿児島県知事は、今後、九電に対し、川内原発の安全性に関し、「立入検査」を申し入れ、これを実施し、その結果に基づき、「発電所周辺地域の住民の安全の確保及び環境の保全のため」の「適切な措置」として、「原子炉の運転停止」を求めることができる、と考えられる。
 さらに言えば、同協定は、第一九条で、「協定の改訂」条項を置き、そこでは、「この協定に定める事項について改訂すべき事由が生じた」ときは、鹿児島県等及び九電の「いずれからもその改訂を申し出ることができる」とされ、かつ、この場合においては、当事者らは、「誠意をもって協議する」と定められており、このことからすれば、鹿児島県知事としては、率直に、「停止中の原発の再稼働」に関しては、「立地自治体の承諾」が必要である旨明記するよう、協議を求めることも可能である、と考えられるのである。


一一・二一後藤道夫先生による貧困問題

学習会を開催します

事務局次長 藤 岡 拓 郎

 安倍政権は、「自助自立を第一とし、共助と公助を組み合わせる」(二〇一三年施政方針演説)として、社会保障の基本方針に「自助自立」を据え、社会保障の切り捨てを強行、憲法二五条が定める国の責任を後退させてきました。
 来年には、医療、介護、年金などさらなる社会保障の改悪を進めることが予定されています。
 この度、このような情勢を踏まえて、新自由主義を批判し新たな福祉国家構想を提起するなど、社会保障・貧困問題の研究で著名な後藤道夫先生(都留文科大名誉教授)をお呼びして学習会を企画しました。
 後藤先生には、憲法二五条生存権を基礎に現状の問題点とあるべき社会保障像について講義いただくと同時に、今日の経済社会の現状と展望、それに関連して改憲の動きとどう切り結んでいくなど大きな情勢と展望についても自由に語ってもらいます。なお、学習会終了後に懇親会も予定しています。
 皆様の参加を心よりお待ちしております。

(学習会)
「社会保障・貧困の現状とこれからの課題(仮)」
講師:後藤道夫(都留文科大名誉教授)
日時:一一月二一日(月)一七時〇〇分〜一九時〇〇分
場所:自由法曹団本部会議室