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西 田   穣 共謀罪の危険性を訴える学習会に取り組んでください!
鈴 木 亜 英 「私たちのオデュッセイアNLG大会参加を
重ねて金沢・菅野昭夫さんへの手紙」
杉 島 幸 生 自由法曹団は、何を核として部落差別解消法案に取り組もうとしているのか
藤 盛 夏 子 平成二八年団女性部総会・氷見 参加の感想
西 田   穣 出産・育児休暇期間の団費免除申請の方法について



共謀罪の危険性を訴える学習会に取り組んでください!

事務局長 西 田   穣

一 過去三度にわたって強い反対を受けて廃案になった共謀罪法案が、今秋の国会に提出されるとの報道がありました。現時点の提出は見送られたとのことですが、略称を「テロ等組織犯罪準備罪」と変えて、二〇二〇年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けてのテロ対策であることを前面に押し出していることから、安倍政権が、近い将来に成立を目論んでいることは明らかです。私たちは、この共謀罪創設を断固阻止しなければなりません。
二 今回提出が見送られた法案は、廃案となってきたこれまでの法案と比較して、適用対象を単に「団体」としていたものを「組織的犯罪集団」(目的が四年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体)」とし、犯罪の主体を犯罪の「遂行を共謀した者」から「遂行を二人以上で計画した者」へ変え、実行行為につき「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件を加えて、これまでの共謀罪法案に対する批判を踏まえた「限定」を付したかのように見せかけています。
 しかし、「組織的犯罪集団」の範囲は明確ではなく、捜査機関の恣意的な判断で対象が拡大するおそれがあるうえ、その対象犯罪は六〇〇以上にも及んでいます。また、「準備行為」要件を付したと言っても該当する行為に限定はないので、処罰の限定要件になりません。そして、「計画」は結局「共謀」の言い換えに過ぎないことからすれば、本法案も、これまで廃案になった共謀罪法案と変わらない危険性を有しています。共謀(意思の連絡)を処罰するため、捜査対象も、室内会話、電話、携帯電話、FAX、電子メール、フェイスブックやツイッター等広く及び、「内心」の調査目的での違法・不当捜査が横行する危険性があります。盗聴法拡大により国民の日常生活が広く盗聴され、司法取引により密告が奨励され、意思の連絡だけで処罰することを可能にすることで自由な意見を封殺する、といった監視・密告社会化が進んでいるといっても過言ではありません。
三 こういった情勢を受けて、全労連、日本国民救援会、自由法曹団は、共謀罪の危険性を広く訴えていくことになりました。具体的には、全国各地で、全労連、日本国民救援会が、広く市民に共謀罪の危険性を訴える集会を企画・提案し、そこに自由法曹団の団員が講師として参加し、共謀罪の危険性を説明・解説するという取り組みを率先して行うということで一致しています。
 共謀罪は絶対に成立を阻止しなければなりません。団員の皆さまの個々の取り組みが、全国における共謀罪反対の大きな声となります。是非、各支部、各事務所への講師要請に対しては、率先してお引き受けいただき、全団員を挙げて共謀罪成立を阻止しましょう。
 なお、本法案の問題点については、現在、治安警察問題委員会において意見書を作成中です。学習会開催にあたっては、ご参考いただければ幸いです(一一月発表予定)。よろしくお願いします。


「私たちのオデュッセイアNLG大会参加を

重ねて金沢・菅野昭夫さんへの手紙」

東京支部  鈴 木 亜 英

 菅野さん、お元気のことと思います。とは言え、無理はなさらないで下さい。週四日程度の勤務と伺いました。今の働き方がベターなのでしょうね。私もいまは週のうち一、二日はベンチウォーマーです。
 さて、私は現在、かなりホッとしています。この気持ちを伝えたくて、団通信と云う貴重な紙面を活用させて頂くことにしました。
 今夏のナショナルロイヤーズギルド(NLG)総会はニューヨークで開かれ、九人もの団員が参加してくれました。若い人を中心に有意義な時間を過ごすことができました。参加した団員の通信記事を読まれましたか。一言でいえば、頼もしい限りで、国際問題委員会の将来性も捨てたものではないと云う思いでいっぱいです。
 アーサー・キノイさんに初めてお会いするということで私たち二〇期と二一期の団員八人が渡米したのが、二五年前の一九九一年でしたね。以来私たちは全米で最も進歩的とされる弁護士集団NLGとの交流を絶やしませんでした。それはマッカーシー旋風が吹き荒れた時、日本では松川事件が起こったように、日米の戦後史は、ひとつの軌跡を歩んだにもかかわらず、そうした暴虐に民衆が共同して闘った経験を持てなかったことに小さな衝撃を受けたからではないでしょうか。
 阪神淡路大震災を受けて、サンフランシスコ・ロスアンゼルス地震の教訓を学びに大勢で出かけました。陪審制度導入論議の時、陪審裁判を随分傍聴させてもらいましたよね。えひめ丸事件では米国政府を相手に共同弁護団を組みました。イラクの戦場にいる米兵の離隊支援も取り組みました。数え上げれば、まだまだあります。NLGのメンバーは、学びたい、知りたいと云う私たちにいつも真剣に対応してくれましたよね。記憶にとどめるべきは彼らが常に民衆に依拠して不当、不正な権力とは果敢に闘っている姿です。
 菅野さん、それにしても、垣間見の域は出ませんが、私たちは四半世紀、アメリカと云う巨大な国を見続けてきました。
 最初に渡米した一九九一年五月は湾岸戦争の直後でしたね。この戦争、多国籍軍を率いたアメリカは多数の死傷者を出しながら、短期に戦争を終結させました。ワシントン公園広場では戦勝を誇示するかのように、戦闘機が所狭しと陳列されていました。この頃アメリカは「世界の警察官」の頂点にあったのではないでしょうか。
 それから一〇年後の二〇〇一年一〇月、私たちは九・一一同時多発テロで甚大な被害を受けたニューヨークの街中にいましたね。星条旗が溢れていましたが人々は戸惑いを隠せないようでした。「これは戦争だ」と叫ぶブッシュの政治力がまさに問われていました。
 そして、それからさらに一〇年。二〇一一年、秋「ウオール街を占拠せよ」の合言葉で始まった99オキュパイ運動は富裕層への優遇措置への強烈なプロテストで全米に波及しました。私たちはオキュパイされた市役所広場などの無数のテントに目を見張りました。配られたチラシには大学を卒業しても就職先のない若者たちの無策政府に対する厳しい要求が見てとれました。
 こうしてアメリカ社会を毎年垣間見て来た私たちですが、長い間の軍事覇権主義は財政難も災いして次第にその力を失い、好景気になっても解決しない経済矛盾が国内には動かし難く沈澱しているのが今日のアメリカだと思うに至りました。様々な政策が内向きとならざるを得ない状況に直面しているのです。
 菅野さん、御存知のとおり、いま熾烈な大統領選が展開されています。
 ここからは私見です。私はこの大統領選にこれまでと異なる変化を見ます。ひとつはバニー・サンダース候補の根強い支持に着目したいのです。もうひとつはマスコミや世論に叩かれ、剰ヘ共和党内から離反が起ころうとも、左程支持率を減らさないドナルド・トランプ候補の「健闘」です。
 ご存知のとおり、アメリカ社会はヒスパニック系の台頭から、白人比率は五割を切り、白人高所得者の所得シェアが低下して来ています。ヒスパニック系に職を奪われていると考えるアフリカ系黒人層や他の要因で落ち込みの目立つ中間所得層がトランプ候補の支持率を押し上げています。他方、低落する中間所得層は、最低賃金の引き上げ、高所得者層への増税、国民皆保険制度導入、公立大学の授業料無償化などの政策を掲げるサンダース候補への支持基盤を確かなものとさせ、そうした点で明確性を欠く、クリントン支持率の伸び悩みに繋がっています。オキュパイ99運動のエネルギーは脈々と続いています。
 菅野さん、私はアメリカ社会に、誰も否定できない、静かではあるが、しっかりとした社会変化が起きていると思います。先日の民主・共和両候補のテレビ討論会ではクリントンが「労働者支援」を、トランプがTPPなど「自由貿易政策を批判」を訴えました。ディベイトの方向があきらかに、社会政策重視に向かっています。私はどちらが勝つにしろ、中間所得層の経済低落を止めない限り、大統領としての成功はないところに来ていると感じています。
 菅野さん、今年のNLG訪問が成功に終りました。この成功までキノイさんの著書「ライツオントライアル」の副題ともなっているオデュッセイア(長い遍歴)を私たちなりに体験しました。この一文を書いたのは苦労を厭わず努力されたことに心からのお礼の意を伝え、菅野さんにも、胸を撫で下ろして頂きたいと思ったからに外なりません。気の緩みからか昔を顧みて、今のアメリカを語る気持になったことをお許し下さい。


自由法曹団は、何を核として部落差別解消法案に取り組もうとしているのか

大阪支部 杉 島 幸 生

一、今、なすべきは法案に反対すること
 先の国会に提出された「部落差別の解消の推進に関する法案」は現在継続審議となっています。私たちがまず考えるべきは、これをこのまま成立させていいのかということではないでしょうか。私や団声明は、この法案は、「部落差別を固定化・永久化」させ、かつ、「過度の糾弾や不公正な同和行政」を再現させるものと考えています。今、団としてなすべきことは、この法案に反対することなのだと思います。
二、やっぱり「部落民」を特別扱いすべきではないと思います。
 同じものは、同じに扱う。これは民主主義社会の基本原則だと思います。ある一群の人たちを特別扱いするためには、そうではない一般市民も納得するだけの特別な理由が必要です。しかし私には、現在旧同和地区出身者を特別扱いする特別な理由が思い当たりません。というより私には、旧同和地区に昔から住んでいる人々と、そうでない人々の間になにか特別な「違い」があるとは思えないのです。「違い」がないにもかかわらず、特別扱いを継続することは、それ自体が「差別」であるとともに、「旧部落」に対する誤解や偏見、新しい差別意識を助長、拡大、固定化させることにつながるのではないでしょうか。やはり「部落民」を特別扱いすべきではありません。在特会の事件や、「全国部落調査」出版差止事件のようなものに対しては、それぞれに必要な対応をすればいいのであって、旧同和地区出身者を特別扱いすること、ましてや恒久法を制定する理由になるとは思えないのです。
三、たしかに部落差別はなくなっていません。
 私自身は「被差別部落出身者への差別が現存しない」などと考えたことはありません。また解放同盟が暴力的糾弾をしたこと、利権あさりや行政の私物化をしてきたことのみを強調したつもりもありませんでした。もし私の意見をそうしたものとして理解されているのであれば、それは誤解です。この法案が成立、施行されれば、解消されつつあるとは言え、現在も存在する「旧部落」に対する誤解・偏見、因習的な差別意識が、あらためて助長、拡大され、固定化されていくと思うからこそ反対しているのです。
四、反差別運動は他者への配慮を欠くものであってはなりません
 他方、私は、解放同盟の暴力的糾弾や、利権あさり・行政の私物化をしてきたことを抜きにして「部落問題の解消」を考えることはできないとも感じています。
 それは、「糾弾」などのように他者の人権に対する配慮を欠いた反差別運動などあってはならず、そうした反差別運動は、結局は、市民の共感を得らず失敗せざるをえないだろうと思うからです。とりわけ解放同盟により引き起こされた弊害の大きさを考えるとき、これをどう克服するかの議論をぬきにした運動は、市民の支持を受けることのできない極めて狭い活動に終わらざるをえないと感じています。仮に、そうした誤った運動が恒久法の制定により永続化すれば、部落差別の解消も永久に先延ばしされることになっていくのではないでしょうか。
五、今回の法案には多くの「地区」出身者も反対しています。
 今回の法案には、かつて解放運動をになった全国地域人権運動総連合も断固反対を掲げています。彼・彼女らは突然の法案提出に「驚き」、「怒り」、「悲しみ」ながらも、今旺盛に学習会を行い、地域的な反対運動の主体をつくるべく努力しています。まさに問題の当事者であった人たちが、この法案によりあらためて「部落民」として特別扱いされることに強い憤りと不安を感じておられるのです。ぜひ、そうした人たちの気持ちにも思いをはせてあげてください。
六、自由法曹団は何を核としてこの法案を止めようとしているのか
 最後になりましたが、「自由法曹団は何を核としてこの法案を止めようとしているのか」という問いかけへの私の回答を述べたいと思います。それは「基本的人権の擁護」につきるのではないかということです。旧同和地区の出身であると自覚している人の人権も、そうではない人の人権も、ともに尊重しなければなりません。私は、今回の法案は、その両方を侵害することにつながると考えています。自由法曹団は、基本的人権の擁護を核としてこの法案を止めようとしている。これが私の回答です。

以上


平成二八年団女性部総会・氷見 参加の感想

千葉支部 藤 盛 夏 子

一、はじめに
 平成二八年九月九日、一〇日に富山県の氷見市で女性部総会が開催され、三〇名弱の女性部員が参加しました。私は今年から女性部の運営委員に入りましたが、女性部総会への参加は初めてでした。本文にて参加の感想等を述べさせていただきます。
二、講演―イタイイタイ病弁護団の活動について―
 富山支部事務局長の水谷敏彦先生にイタイイタイ病弁護団の活動についてご講演いただきました。公害訴訟の訴訟戦略はもちろん、真の意味での原状回復を目指した活動について、例えば公害防止協定に基づき現在でも原因企業に立入調査を行っていることなどを知ることができ、原発訴訟という公害訴訟に少し関わっている私としては非常に勉強になる講演内容でした。
三、憲法問題についての討論
 憲法改正を巡る情勢は悪い方向にめまぐるしく変わっていきますが、女性部員も全国で学習会の講師活動やデモ参加などの活動を行っており、各人から活動報告がなされ、団女性部としてどういう活動ができるかなどについて熱い議論がなされました。特に、憲法二四条及び関連する前文の改正について、強い危機感を抱いている女性部員が多く、憲法二四条に焦点をあてた学習会をすること、憲法二四条に重点をあてたリーフレットを作成すること、憲法二四条改正に反対する活動に参加することなど女性部らしい具体的な活動の提案がありました。
四、議案書の内容、女性弁護士の働き方についての討論等
1 議案書の内容についての討論
 自由法曹団本部の議案書とは別に、女性部でも議案書を作成しています。内容としては、女性差別問題に関する国際情勢や雇用改革と働く女性の状況、家族法改正の課題など女性差別問題に焦点をあてた内容が多く、女性差別問題の最新の情勢を正しく理解できる内容となっており、総会でも簡単に報告がなされました。
2 女性弁護士の働き方について
 子育てや家事については自由法曹団員間でも女性の役割であるという性別役割分業の考え方が強いこともあって、産休の悩みや、育児と仕事の両立の悩みを抱えている部員は多く、女性弁護士の働き方について、現状の報告や対策についての議論がなされました。
 先輩弁護士からアドバイスがなされるとともに、現状の報告がなされて問題の深刻さを部員が理解し対策案を一緒に考える機会を持つことができ、現在子育てをしている私にとって、貴重な経験になりました。対策として、女性部内に相談窓口をおくことや男性弁護士の意識改革をする必要性があることから、女性部員だけではなく男性部員も参加する形での女性差別撤廃PTを団本部内に設置し、活動していくことなどが提言されました。
五、今後の活動
 前述したように、憲法二四条に焦点をあてたリーフレットの作成、女性差別撤廃PTの設置など今までにない活動をすることが決定され充実した総会になりました。また、近く女性部五〇周年を迎えるため、五〇周年企画に対する準備事項についても確認がなされました。
六、最後に
 今回の総会では夫が単身赴任中で、日頃一人で子育てをしていることもあり、一〇カ月の息子を連れて参加しましたが、今回の総会では子供を連れて参加した方も多く、子育て中でも参加しやすい雰囲気を作っていただきとてもありがたかったです。自由法曹団は女性差別撤廃についてはまだまだ活動が十分になされているとはいいがたい面があると考えますので、今後も女性部員として男性部員とともに女性差別撤廃問題に取り組んでいきたいと考えています。女性部の今後の活動にご注目頂くとともに、活動へのご協力をよろしくお願いいたします。


出産・育児休暇期間の団費免除申請の方法について

事務局長 西 田   穣

 自由法曹団(本部)には、出産・育児休暇期間につき団費免除の規定があります。該当者につきましては、後記フォーマットを利用して(なお、ホームページの団員ページにも掲載しています)、団本部まで申請してください。

(出産期間) 
  団費免除期間 四ヶ月(多胎妊娠の場合七ヶ月)
  要      件 申請(休業の有無は問わない)
(育児休暇期間)
  団費免除期間 休業した期間
  要      件 申請(但し、休業した期間に限る、男女は問わない)
 以上については、申請を受理したときから将来に向かって適用しますので、休業期間と団費免除期間の一致を希望される方は、前もって申請してください。