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  二〇一八年 鳥取・米子 五月集会特集
〜 その二 〜
笹本 潤 改憲阻止・特集*
韓国憲法と日本の九条加憲論
玉木 昌美 特定秘密保護法の危険性を学ぶことの重要性。
伊須講演のおすすめ。
津田 二郎 ノーモア・ミナマタ東京訴訟
東京地裁民事第一〇部鈴木正紀「エスパー」
裁判官らを忌避
深井 剛志 三月二三日「安倍『働き方改革』一括法案の提出断念を要求する緊急院内集会」報告
伊藤 嘉章 「消費税を上げずに社会保障財源三八兆円を生む税制」(大月書店)を購読した。(上)
林 裕介 小学校での教科化された道徳の授業が始まるにあたって



二〇一八年 鳥取・米子 五月集会特集

〜 その二 〜

 今号では、プレ企画と全体会・各分科会の詳細・特別企画のご案内をいたします。
 四月一日号団通信同封の申込用紙に必要事項をご記入のうえ、富士国際旅行社までFAXにてお申し込み下さい。
 参加申込締切は、四月二七日(金)となっております。

プレ企画 五月一九日(土)
     いずれも午後一時〜五時

1 新人弁護士学習会
◎講演(前半)
・岡邑祐樹団員(岡山支部)六三期
「倉敷民商弾圧事件報告〜未曾有の弾圧事件に弁護士はどう対処すべきか(教訓も含めて)〜」
・竹村和也団員(東京支部)六五期
「労働組合とともに取り組む労働事件〜日本航空の一連の弁護団事件を担当して〜」
・高木野衣団員(京都支部)六六期
「原発避難者京都訴訟〜私たちが大切にしてきたもの〜」
◎パネルディスカッション(後半)
 今回の講師である三人の若手団員が、新入団員からの団活動に関する質問に答えます。
 新入団員・若手団員の皆さんは、労働事件、原発訴訟、弾圧事件等様々な人権課題に取り組まれている、もしくは、これから取り組んでいかれると思います。
 今回の五月集会では、倉敷民商裁判、JAL整理解雇裁判・マタハラ裁判、原発避難者京都訴訟に取り組んでこられた三人の若手団員から、それぞれの裁判の内容、裁判に取り組む中での苦労話・弁護団事件のやりがいなどについてお話していただきます。また、弁護団活動以外にも、憲法・労働法学習会の講師活動等幅広い団活動についてもご講演いただく予定です。
 倉敷民商事件は、倉敷民商の事務局員のうち事務局長と事務局次長が税理士法違反,事務局員の禰屋町子さんが法人税法違反(脱税)幇助と税理士法違反に問われた事件です。法人税法違反の正犯とされた建設会社は一日も勾留されなかったのに対し、幇助犯とされた事務職員禰屋町子さんは四二八日も勾留されました。裁判は現在も進行中です。そもそも、倉敷民商は、自主計算・自主申告の方針のもとに中小業者の生活と経営を守るために活動する民主団体であり、その団体の職員を長期間身柄拘束し、強引な捜索差押えを実施することは、弾圧にほかなりません。岡邑団員は、この裁判の事務局長として裁判対策をはじめ諸支援団体との調整、弁護団全体の業務の調整や広報で活動しました。岡邑団員は、倉敷民商弾圧事件以外にも岡山県内の産業廃棄物処理場弁護団、倉敷市の官製談合事件にも中心的にかかわり、労働組合などでの憲法学習会の講師活動も積極的に行っています。
 JAL整理解雇裁判は、客室乗務員・運航乗務員に対する大量の整理解雇が争われた裁判です。竹村団員は、弁護士一年目からこの裁判の弁護団に参加しました。また、竹村団員は、日本航空の客室乗務員に対するマタニティハラスメント訴訟弁護団の主任を担当し、労働組合と連携しながら、訴訟内外での活動を奔走しました。同訴訟では、会社の制度を抜本的に改善する勝利的和解を獲得しました。竹村団員は、現在、労働法制改悪反対の問題にも取り組んでいます。
 原発避難者京都訴訟は、福島原発事故で京都に避難した者が、国と東京電力に慰謝料等の損害賠償を求めている訴訟です。同種訴訟が約三〇件ある中、政府による避難指示等の区域外に居住していた者が原告の大半を占める京都訴訟で、本年三月一五日に言い渡された判決は、原告五八世帯中五五世帯に、国の定めた指針を上回る損害賠償を命ずるものでした。高木団員は、弁護士登録から弁護団に加わり、争点の一つである因果関係(避難の相当性)・損害班の中心を担っています。高木団員は、弁護士会の法教育委員会に所属し、事件活動の傍ら、憲法や労働法の講師活動にも力を注いでいます。
 後半は、新入団員の皆さんからの質問に、講師の団員が公演でお話しいただいた事件に関する内容以外にも、団活動について「何でも」答えるパネルディスカッションを行います。今回の講師である三人の団員は、それぞれ、三者三葉、様々な団活動を行っていますので、弁護団活動以外にもバラエティーにとんだ団の活動を知ることができます。また、多忙ななかでどのように「ワーク・ライフバランス」をとっているのかについてもお話しいただく予定です。入団して数か月たった今だからこその悩みや・団活動のやりがいについて、考える機会にしたいと思います。

2 支部代表者会議・将来
 法曹志望者数、司法試験合格者数の減少から、近年、新入団員の数が減少しています。修習生が団事務所を含む人権課題に取り組む事務所にアクセスできないまま、早期にその他の事務所の内定を得てそのまま入所するという傾向が強まっています。このような状況が続けば、団員の事務所が将来先細りの状態に陥る恐れがあります。
 また、各地の団事務所では、入所した若手弁護士が定着せずに悩んでいるという声もあります。昨年、団給費制対策本部で実施したアンケートでは、若手が将来の事務所の経営について不安を感じている声が多く寄せられましたが、上の世代まで若手の声が届いていないという指摘もあります。
 今回、支部代表者会議では、一部の時間を将来問題の議論にあてることにしました。修習生や若手弁護士の実態を把握し、新入団員の確保や若手弁護士の定着について議論する予定です。

3 法律事務所事務局員交流会
[ 全体会 ]午後一時〜三時

 事務局交流会は、全国の団事務所の事務局の方々と一同にお会いできる年一回の貴重な機会です。また、今年の五月集会は戦後最大の憲法の危機が叫ばれる中で行われます。ぜひ多くの事務局の方にお集まり頂き、一緒に学び、交流したいと思います。。各事務所、諸事情等で事務局の参加が難しくなっていると聞いておりますが、五月集会に参加する意義を議論していただき、事務局の参加の確保をお願いします。
 事務局交流会の全体会では、東京支部の白神優理子団員(八王子合同法律事務所)に、「憲法の原点(基礎)と九条改憲でどうなるか?」と題してご講演頂きます。また、講演後には、同じく東京支部の舩尾遼団員と一緒に「九条改憲に関わる争点ごとにディベートをして学ぶ」と題してディベートを行っていただきます。

事務局交流世話人
深澤 亮(東京東部法律事務所)

[ 分科会 ]午後三時一五分〜五時
●新人事務局交流会

 新人事務局員のみなさん、こんにちは。日々の業務には慣れましたか?自由法曹団の団員が在籍する事務所は、一般事務や法律事務以外に、事務所として活動する運動にも参加することもあるので、「はじめて」の事に遭遇する方も多いのではないでしょうか?
 日々奮闘されている新人事務局員同士で意見を交換し、業務のやりがいや活動の魅力を感じてもらい、今後の仕事や運動にいきいきと取り組んでもらいたい。そんな交流会にできればと、計画中です。(そのためにも、事前にお送りするアンケートの回答にご協力ください。)
 全国の団事務所の事務局員が顔をあわせる機会はそうありません。しかも「新人」として参加できるのは、最初だけです。
 ぜひ、新人事務局交流会でお会いしましょう。

事務局交流会世話人
八田 由美子(八王子合同法律事務所)

●憲法運動交流分科会
  森友問題に関する決裁文書の改ざんにより安倍政権に対する不信が高まっていますが、それにも関わらず安倍首相は改憲に一層執念を見せ、改憲派が国会で多数を占めている今のうちに改憲を成し遂げようと躍起になっています。私たちとしては何としても改憲を阻止しなければなりません。
 事務所での活動や労組での活動等、とりわけ今は三〇〇〇万署名に取り組まれている事務所も多いと思いますが、そうした様々な活動に取り組む中で、工夫していること、悩んでいること、成果をあげたこと、失敗したなどを率直に交流できればと考えています。他の地域の事務局の方と交流する機会はそう多くなく貴重なものです。今後の活動の参考になるような分科会にしたいと思いますので、ぜひご参加下さい。

事務局交流世話人
北原 新(東京法律事務所)

第一日目 五月二〇日(日)
     午後一時〜五時一五分

●全体会 (午後一時〜三時)
 一日目の全体会では、自民党安倍政権の憲法改悪阻止にための全国での取り組み、今後の運動、成果等について議論・討論をします。

事務局長 西 田  穣

●分科会一日目(午後三時一五分〜五時一五分)
(1)憲法・平和分科会(一日目)

 この間、安倍政権は、北朝鮮の核開発とミサイル発射実験に対し、「対話のための対話は意味がない」として、トランプ米大統領とともに軍事的対応を強調し、軍拡を進めてきました。しかし、その後朝鮮半島情勢に関しては、対話と外交による解決を求める国際的な世論のもとで、南北首脳会談、さらには米朝首脳会談が開催される見通しとなりました。安倍政権は、国際的にも孤立を深めています。
 このような情勢の激変にもかかわらず、安倍政権は、年内に改憲発議を行う姿勢を変えていません。「安倍九条改憲NO!全国市民アクション」の三〇〇〇万人署名をはじめ、九条改憲反対の声を全国の津々浦々に響かせることによって、改憲案の国会提出を断念させ、安倍政権を退陣に追い込む運動を強化する必要があります。自由法曹団も、署名に具体的な数値目標を掲げて、市民運動と一体となって活動しています。
 憲法・平和分科会では、憲法改悪阻止についての団の活動、全国の団員の活動の報告を通じて、この間の情勢認識を共有化し、「安倍九条改憲NO!」をどのように訴え、共感を広げていくのかを議論します。参加いただき大いに運動の経験を交流し、議論を深め、今後の取り組みにつなげましょう。

事務局次長 星 野 文 紀

(2)労働・格差・貧困分科会
 昨年に引き続き今年も、一日目は労働、貧困合同で分科会を行います。藤田和恵氏(フリージャーナリスト)のご講演をいただく予定です。二日目は労働と貧困・社会保障に分かれて分科会を行います。
 低賃金・不安定な働き方の広がりと綻びの多い社会的セーフティネットの欠陥により、貧困問題が深刻化してきました。しかし、貧困問題を克服する責務を負う国は、貧困に陥ったのは怠け者だからであり、個人で克服できる問題だという見方を煽り、企業の利益のための労働法制改悪と社会的弱者を切り捨てる社会保障の抑制を進めています。私たちは、働き方と社会保障のあり方の両面から、これに対抗する取り組みを進める必要があると考えます。
 そして、そのためには私たちが貧困に陥る背景や生活困難の実態、当事者の思い等を知り、我がことと捉えて考えることが必要だと考えます。
 そこで、一日目は、週刊東洋経済に「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」を連載しているジャーナリストの藤田和恵氏に、数多くの取材を重ねて見た貧困の実態、その背景にある事情、当事者が考えていること等をお話しいただき、労働法制と社会保障制度にそれぞれどのような欠陥があり、あるいは私たちがどう取り組みを進めるべきかを考える機会にしたいと思います。

事務局次長 酒 井 健 雄

(3)原発分科会(一日目)
 今年の五月集会では、両日ともに原発分科会を開催します。
 一日目は、今年三月に京都地裁、東京地裁、福島地裁いわき支部で相次いで出された、福島第一原発事故の損害賠償訴訟の判決の分析を中心に、福島原発事故の損害賠償訴訟の現状及び今後のたたかい方に関する議論を行います。
 昨年三月の前橋地裁判決以来、国の責任を認める判決は四件に上り、もはや、福島原発事故における国の責任は明確になったといえます。
 しかしながら、被害者に対して命じられた損害賠償の額について、原子力損害賠償紛争審査会の定めた中間指針の金額を超える判決は見られるものの、まだまだ、被害者の苦悩を十分に反映したものとはいえません。長期にわたる避難生活により受けた被害を解決するには、根本的な損害論の見直しが急務です。
 当分科会では、今後の福島原発損害賠償訴訟におけるたたかいをより充実させるために、立命館大学の吉村良一教授をお招きして、これまでに出された判決の損害論の分析、及び今後のたたかいにおけるポイントを講義いただき、今後の損害賠償訴訟における損害論における戦いを中心に、議論したいと思います。
 また、京都地裁、福島地裁いわき支部の訴訟の各原告にもお越しいただき、被害の実像及び判決の内容に関する想いを語っていただきます。
 今後の損害賠償訴訟において、ぜひとも完全賠償を実現させるためにも、ぜひとも多くの団員の参加と活発な議論をお願いいたします。

事務局次長 深 井 剛 志

(4)教育分科会
 二〇一五年六月に選挙権年齢が一八歳以上に引き下げられたことをきっかけに少年法についても適用年齢を現在の二〇歳未満から一八歳未満へ引き下げることの是非が法務省において検討されています。二〇一六年三月から始まった法務省法制審議会の「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪処遇関係)部会」では、現在、少年法の適用年齢引き下げの是非の議論を留保したまま、少年法の適用年齢が引き下げられた場合に導入すべき新たな処遇制度の検討がなされています。しかし、導入が検討されている新たな処遇制度のなかには、不起訴処分の前提として被疑者に一定の遵守条件を設定し、検察官が主体となって一定期間監督・指導する制度(起訴猶予に伴う再犯防止措置)など、訴追官であり、一方当事者である検察官に大きな権限を与えるなど、当事者主義からみて問題のある制度も含まれています。
 少年法に基づく手続は、少年に対するきめ細やかな調査、少年の性格や生育歴、生活環境等、少年の非行行為の背景を考慮した処分、処遇が行われています。もし、適用年齢が引き下げられれば、一八歳、一九歳の者がこうしたきめ細やかな教育・福祉的対応から外されることになります。
 今年の五月集会では、少年事件の現場から、一八歳・一九歳が少年法の対象外となることの問題点の報告を話していただき(家庭裁判官調査官を予定)、その後、少年法適用年齢引き下げを巡る法制審の議論状況の報告と、今後の取り組みについて討論します。

事務局次長 遠 地 靖 志

第二日目 五月二一日
     午前九時〜一二時三〇分

●分科会(午前九時〜一一時)
(1)憲法・平和分科会(二日目)

*一日目をご参照下さい。

(2)労働分科会
 労働分科会二日目は、以下のテーマについての討論を行います。
・「働き方改革」一括法案(高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の拡大、残業の上限規制、パート法・労働契約法・派遣法の「改正」問題、雇用の請負委託化等)に関する情勢と改悪阻止に向けたたたかい
 安倍首相は、労働時間のねつ造問題・異常データ問題を受けて、今年三月一日の参院予算委員会で、一括法案から「裁量労働制にかかわる部分は全面削除する」と表明しました。しかし、一括法案の内、裁量労働にかかわる部分以外は、国会に提出予定です(二〇一八年四月二日現在)。提出予定の一括法案の中には、過去に広範な世論の反対により、廃案となった高度プロフェッショナル制度、パート法・労働契約法・派遣法の「改正」問題、雇用の請負委託化等の様々な問題もあり、一括法案の問題点は、裁量労働制だけではありません。働き方改革一括法案は、今国会で廃案に追い込むため、全国各地の反対運動の報告と討論を行います。
・労働契約法二〇条裁判、無期転換前の雇止め撤回裁判等、全国各地の裁判闘争の報告
 全国各地で、労働契約法二〇条の「不合理な差別」をめぐる裁判のたたかいが行われております。特に、長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件は、最高裁において弁論が開かれることが決定しており、結論が注目されます。
 労働契約法の改正により、有期労働契約が繰り返し更新されて通算五年を超えたときは、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換できることになりました。無期転換ルールの施行日は、二〇一三年四月一日であるため今年の四月一日が、無期転換のスタートになります。しかし、多数の職場において、無期転換ルールの適用を逃れるため、五年で雇止めを行うというケースが報告されています。このような雇止めに対する、全国各地の取り組みの報告と今後のたたかいを中心に、各地の事件報告及び闘争のための議論を行います。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。

事務局次長 深 井 剛 志

(3)貧困・社会保障分科会
 二日目の貧困・社会保障分科会では、藤田さんにオブザーバーとしてご参加いただいて適宜ご意見をいただきながら、藤田さんの前日のご講演に基づき、生活扶助・母子手当の引き下げをはじめとする諸問題を討議し、また、各地で取り組まれている事件や運動の報告等もあわせて、私たちの今後の取り組みの方針を打ち出したいと考えています。
 また、相談者の生活困難を知った場合に、弁護士や事務局員としてどう対応するべきかという観点から、簡単なミニ学習会も予定しています。
 幅広いご参加をお願いいたします。

事務局次長 酒 井 健 雄

(4)原発分科会(二日目)
  原発分科会の二日目は、各地における脱原発の裁判の状況の報告・展望及びエネルギー基本計画、原発ゼロ基本法など、脱原発に向けた政策の議論を行います。
 昨年一二月一三日、広島高裁は、四国電力の伊方原子力発電所三号機(愛媛県)に対し今年九月末まで運転差し止めを命じる仮処分を下しました。高裁において原子力発電所の運転の差し止めを認める決定がなされたのは初めてのことであり、大きな意義のある決定でした。
 しかしながら、今年に入り、大間原発、玄海原発、高浜原発において、相次いで差し止めを認めない判決及び決定が出されており、脱原発を巡るたたかいは、厳しい状況にあります。
 本分科会では、各地の弁護団からの状況と展望につき報告いただき、これからの脱原発の裁判をいかにたたかうかにつき、議論を深めたいと思います。
 また、脱原発後のエネルギー問題について、島根大学教授の上園昌武教授に講演いただきます。上園昌武教授は、ドイツなどEU諸国の環境・エネルギー政策、日本の地球温暖化防止政策の制度設計を研究されており、クリーンエネルギーに基づく環境政策の立場から、脱原発の必要性について講演いただく予定です。
 多くの団員の参加をお願いいたします。

事務局次長 深 井 剛 志

(5)LGBT分科会
 LGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダーの略で、性的マイノリティの総称)は、これまで社会の中で見えない存在とされ、偏見や無理解から生じる差別、中傷、侮辱、揶揄、嫌悪の対象となってきました。そればかりでなく、職場で、公的制度の利用の場で、民間サービスの利用の場で、多くの差別的な取り扱いがあります。個人の有する性自認や性的指向を理由にした差別は、個人の尊重と幸福追求権を保障する憲法一三条や法の下の平等を定める憲法一四条の趣旨に反するものであり、もはや基本的人権の侵害というべき問題です。
 今回の分科会では、以下の内容で、そもそもLGBTと呼ばれるのはどんな人たちなのか、差別の事例としてどんなものがあるのかを共有しつつ、今後の取組みを討論します。
・LGBTに関する基本的な知識
・職場におけるLGBTの処遇に関する諸問題
・同性パートナーに対する犯罪被害者給付不支給問題
・同性国際カップルの在留資格問題 
・婚姻の平等に関する問題―日弁連への人権救済手続きなどの報告も含めて 
・報告内容への質疑応答
・差別解消に向けた取り組みのあり方について、討議―差別禁止の法制度や、同性カップルの法的保護の在り方など
 LGBTのことをよく知らないという先生方にも多数お集まりいただきたいと思います。ぜひこの分科会をきっかけに少しでも問題を知ってください。

東京支部 水 谷 陽 子

●特別企画
 五月二〇日(日)
 (夕食懇親会後〜 予定)

@給費制企画(午後九時〇〇分〜予定)
 現在修習を受けている七一期の代から修習の費用が支給され、給費制が部分的に復活することになりました。しかし、支給額は不十分なものですし、残念ながら新六五期から七〇期までの元修習生らに対する遡及適用は予定されていません。本年七月からはついに新六五期の修習貸与金の返済が始まってしまいます。また、給費制廃止違憲訴訟も佳境に入りました。
 各地の団員が五月集会に集まる機会を活かして、問題を共有し、今後の給費制復活に向けた運動について自由に話し合います。

事務局次長 緒 方  蘭

A女性部企画(午後九時〇〇分〜予定)
「ワーク・ライフ・バランス」
〜家庭と仕事を両立についておしゃべりしましょう。

 五月集会特別企画のお知らせです。
 今年も、恒例のゆるカフェを開催します。
 女性部も今年で創立五〇周年。女性弁護士の働き方はこの五〇年で大きく変わってきたと思います。
 でも、悩みは変わらないと思います。いわゆるワーク・ライフ・バランスです。
 みなさん、お仕事忙しいですよね。でも、家庭も大切にしたいですよね。
 妊娠、出産、育児、介護とか、色々な問題がありますよね。先輩達はどうやって対応してきたんでしょうか。また、今まさにその問題に直面している人は、どう対応しているのでしょうか。
 仕事と家庭の両立は、女性だけでなく、すべての人が抱える問題だと思います。
 みんなで意見交換をしませんか?
 女性部員に限らず、全団員のみなさま、自由にご参加ください。
 お食事の後、まったりと飲みながらお話ししましょう。

女性部事務局長 湯 山  薫

◆書籍販売について
 前号でご案内の通り、書籍販売をご希望の方は、左記の書店さんと連絡をお取り頂いた上で、五月集会の会場宛に『自由法曹団五月集会・販売委託書籍』と明記してお送り下さい。
 書籍を送る際の必着日等についても、左記書店さんに直接ご確認下さい。
 出版社から書籍の取り寄せをお願いする際は、取り寄せに一定の時間がかかるため、四月二一日申し込み締め切りとなるそうです。

*かもがわ出版(担当・営業・三井さん)
 電 話 075-432-2868
 FAX 075-432-2869
 email takashi@kamogawa.co.jp

 尚、例年通り各自での書籍販売コーナーのスペースも設けます。ご希望の方は、ご自身で販売していただいて結構です。
※売上金の管理・釣り銭等の準備は各自でお願いします。
※個人での書籍販売を希望される場合は、左記会場宛に『自由法曹団五月集会・個人販売書籍』と必ず明記してお送りください。(各自販売コーナーに寄せておきます。確認のため、当日は受付に一声お掛け下さい。)

★会場・宿泊先
 皆生グランドホテル・天水
 〒683-0001 鳥取県米子市皆生温泉
 電 話 0859-33-3531
 FAX 0859-33-3607
 配布資料については、現地での資料セットの都合上、五月一八日(金)必着でお願いします。

★宿泊・交通等 問い合わせ先
 富士国際旅行社(担当・小野寺さん・谷藤さん)
 電 話 03-3357-3377
 FAX 03-3357-3317

★五月集会の参加申込書・交通案内・旅行案内について、ホームページの団員専用ページにもアップしてありますので、ご活用下さい。

多くの団員・事務局の皆さまのご参加お待ちしております


改憲阻止・特集*

韓国憲法と日本の九条加憲論

東京支部  笹 本   潤

 自由法曹団沖縄支部と韓国の民弁米軍委員会の軍事基地問題に関する交流会が二〇一八年三月四日に沖縄で開催された。今年で一一回目だそうであるが、私は今回初めて参加させていただいた。昨年一〇月の交流会が台風で順延になり、IADL(国際民主法律家協会)のミコルサビア弁護士はさすがに今回は参加できなかった。個人的には、二〇〇五年ころに沖縄の自由法曹団の総会に参加したシム弁護士にも一〇年ぶりに再会できてよかった。
 今年の交流会は、日韓ともに朝鮮半島での戦争の危険性にどう対応していくか、という共通の問題意識があった、と沖縄支部の人から伺った。
 民弁側の発表としては、文在寅新大統領を誕生させたろうそく革命、北朝鮮を想定した軍事訓練に対する法的規制のあり方、サード配備違憲訴訟に注目した。日本側では、九条改正に向けた日本の政治全体の動きや、辺野古新基地建設を阻止するための岩盤破砕行為差止訴訟などが目新しかった。私と井上啓弁護士の方からは、国際活動として、COLAP(アジア太平洋法律家協会)、IADLの世界の米軍基地による支配、朝鮮半島に対する声明、平和への権利、マーシャル諸島の米軍基地、横須賀の米軍基地の実態を報告した。
 アメリカは第二次大戦以前から、戦争を起こす度に、敗戦国や支配した地に米軍基地を建設し、それを世界支配の道具にしてきた。第二次大戦後の沖縄の米軍基地や、朝鮮戦争時の韓国の米軍基地も同じ歴史的文脈で語ることができる。そういうアメリカの軍事支配の政策に対する反対の声も上げる必要があるだろう。アメリカが北朝鮮に対して核廃棄を求める姿勢も、支配しようとする国に対して武装放棄を迫る一環である。アメリカは、インド、パキスタン、イスラエルには、北朝鮮のように核廃棄を迫っていない、イランに対する核合意も核兵器による武装を放棄させるための一環である。現在ではトランプは核開発さえも放棄させようとしている。最近は、アメリカは現地での基地反対の世論や費用がかかるため、米軍基地の建設に代えて国軍との共同使用や駐留の協定を締結する柔軟路線も同時に展開している。カエルが蓮の葉を飛ぶのをイメージして「リリーパッド(蓮の葉)」と呼ばれる。その一つであるフィリピンは、米軍基地を一九九〇年代に国民の反対運動もあり撤去したが、その後の行政協定で、米軍が駐留できるようになり、現在では国内の紛争にも介入している。
 日本の九条加憲論との関係では、韓国の憲法解釈の経験が参考になった。
 民弁米軍委員会委員長のハ弁護士の報告では、韓国のほとんどの憲法学者は、韓国憲法五条一項で侵略戦争の禁止を定めているものの、同時に二項で戦争遂行が可能な軍隊の保有と訓練を仮定しているために、軍隊の維持と訓練、予防的防衛は憲法上根拠があるという解釈をしているとのことである。また、韓国の憲法裁判所は、「侵略戦争か防衛戦争かの区別があいまいなため、(軍事訓練を)侵略戦争だと想定して防衛行為を妨げようとするのは、非倫理的で、敗戦の残酷性を見落としている」として、侵略戦争を想定した軍事訓練さえも憲法違反とは言えないとしている。昨年JALISA(日本国際法律家協会)で取り組んだ、韓国の憲法学者イキョンジュ先生の講演でもほぼ同様のことが語られていた。
 ここに一つの日本の九条加憲論に対するキーポイントがある。
 敵国を想定した軍隊の規定が憲法にあれば、侵略戦争禁止の憲法規定は容易に潜脱され、侵略のための戦争も行われうるということである。韓国の憲法裁判所がいうように、「軍隊による防衛」を憲法が想定している以上、敵国からの脅威があるとみられる場合には、そのための軍隊による対処が優先され、「侵略戦争を想定しているのでは」「加害的な面があるのではないか」などの点は後景に退いてしまう点だ。
 日本の憲法九条加憲の提案が具体的にどのような条文になるかわからないが、自衛隊や軍隊を憲法に書き込む効果が、これだけ端的に表れている実例はないのではないだろうか。


特定秘密保護法の危険性を学ぶことの重要性。

伊須講演のおすすめ。

滋賀支部  玉 木 昌 美

 滋賀弁護士会は、二〇一八年三月三〇日、特定秘密保護法の危険性について市民学習会を開催した。伊須慎一郎弁護士(埼玉)を講師に招き、「あらためて特定秘密保護法の危険性を問う」と題してご講演いただいた。自衛官情報漏洩えん罪事件を題材に熱のこもった、中身の濃い話に参加者は大いに学習できた。
 伊須弁護士は、冒頭、公文書管理法の目的や情報公開法の目的の条文を読み上げられたが、森友学園問題での公文書の保管や改竄が問題となっているだけに新鮮であった。公文書等が「国民共有の知的資源として」云々とあり、国民主権の理念のもと、情報が国民の共有財産であることを法律が明言していることに感動した。そして、その理念が大きく歪められていることに憤りを感じた。
 自衛官情報漏洩えん罪事件は、幕僚長が米高官に新ガイドライン・安保法制の成立を約束したことが問題となり、その会談の議事録についての事件である。参議院で追及されたとき、政府は「そのような文書は存在しない。」と答弁したが、この文書を漏洩したとして、情報本部の三等陸佐が自衛隊法違反の疑いで捜査を受けた。自衛官は、存在しないはずの「秘密文書」の漏洩をしたと疑われ、嫌疑不十分で不起訴となったものの、違法捜査は許せない、と国賠請求している事件である。
 伊須弁護士が防衛省・自衛隊が口裏を合わせて文書の存在を認めず、その隠蔽体質は南スーダンの日報問題と共通であると指摘された。「同一のものは確認できなかった」とうそぶくその口裏合わせのやり方の下劣さには目を被うばかりである。そして、参議院で戦争法審議の大詰めの段階で、国会や国民世論の追及が強まることを恐れて強引に口裏合わせをしたことも許せない。この事件のことをあまり知らなかったが、国民が情報を把握できないで憲法違反の法律が強行されたわけである。
 伊須弁護士は、特定秘密保護法の問題点についても、具体的に展開された。磯崎陽輔首相補佐官の国民の知る権利を無視した発言や石破茂氏のデモをテロ行為よばわりする発言にも改めて憤りを覚えた。提供いただいた資料には、上記幕僚文書やイラク違憲訴訟での米兵を運んだ「週刊空輸実績(報告)(自発報告)」の墨塗付きと墨塗なしのそれぞれがあり、唖然とさせられた。また、大垣警察署との意見交換議事録の内容もびっくり仰天であった。警察が露骨に風力発電反対の市民運動を敵視し、それを抑えるために、電力関係会社と「今後情報をやりとりし、協力をお願いする。」としている。
 選挙のたびに自公が圧勝する結果に、民意を反映しない小選挙区制のもとだからと思いつつもどこかで国民はアホかとがっかりしている。しかし、国民にとって判断の前提となる必要な情報が与えられていない中では、まともな判断をすることができない。
 伊須弁護士は、「鍵は国家が握る不都合な真実を私たちが入手できる術を有することである。」と強調された。「秘密保護法に対する最大のカウンターアクションは国家が隠している秘密を暴くこと」(金平茂紀)、「自由で拘束されない新聞のみが政府の欺瞞を効果的にあばくことができる」(フーゴ・L・ブラック判事)の言葉にあるとおりである。ツワネ原則にある、国民の情報にアクセスする権利を制限する正当性を証明するのは政府の責務、という点も重要である。
 安倍首相や自民党を忖度する大手マスコミの悲惨な現状、情報公開のお粗末な現状は民主主義の根幹にかかわると改めて痛感した。
 伊須弁護士の講演の企画は他の全国の弁護士会においても実施すべきである。特定秘密保護法の危険性を絶えず国民にアピールしていく必要があるだろう。


ノーモア・ミナマタ東京訴訟

東京地裁民事第一〇部鈴木正紀「エスパー」

裁判官らを忌避

東京支部  津 田 二 郎

 東京支部のニュースには報告済みですが、団通信への投稿を求められたので、東京支部の皆さんには重複するのですが、ノーモア・ミナマタ東京訴訟の状況をあらためてご報告いたします。
 ノーモア・ミナマタ第二次国賠東京訴訟は、第一陣原告が二〇一四年八月に、第二陣が二〇一五年二月、第三陣が同年五月、第四陣が同年九月にそれぞれ提訴したあと、第五陣原告九名が二〇一七年四月に提訴し、原告の総数は合計七六名となりました。
 審理は、第一陣から第四陣までの手続は併合され、総論の主張・立証を整理している段階であり、弁護団としては本年中に証拠調べに入ることは困難だと考えています。
 しかし二〇一六年一二月に代わった鈴木正紀裁判長は、「自分が判決を書くためにはこれ以上原告を増やすことはできない」などとして、第五陣原告九名を先行事件に併合しないという態度を頑なにとり続けました。その結果第五陣原告の第一回口頭弁論期日は提訴後一年が経過しようとするのに、現在なお開かれていません。
 二〇一八年一月一七日の口頭弁論期日において、鈴木裁判官は、第五陣原告を併合しないとする態度を変えなかったほか、併合しない理由は述べず、その態度をただそうとした原告団長、原告代理人の発言を遮り発言を妨害すらしました。そこで原告弁護団は、法廷で、鈴木裁判長ほか二名の合議体に対して、忌避申立を行ないました。
忌避事件は、当初の弁護団の見込みに反して、裁判所の判断に時間がかかり、一月一七日に申立、一月一九日に理由書提出、一月二五日理由補充書の提出を経て、判断が出たのは二月二日になってからでした(二月五日受領)。結果は残念ながら却下でした。
弁護団は、この判断を受けて、二月九日に即時抗告を申し立てましたが、三月一四日、東京高裁は棄却決定を出しました(三月二二日受領)。
 そこで弁護団は、三月二七日、特別抗告とともに抗告受理申立を行いました。舞台は最高裁に移っています。
 鈴木裁判長らの問題は、単に第五陣原告を先行事件に併合しない理由を述べなかったにとどまりません。原告団長及び原告代理人の発言を遮り認めないという作為を行ったこと、その理由として「発言しなくとも分かる」と述べたこと、原告代理人が「発言しなくても分かるならエスパー(超能力者)か」と述べたのに対して「そう考えてもらって構わない」と放言した、という点です。
鈴木裁判官は、進行協議期日において、部に滞留事件が多いこと、それを自分が在任中に一掃するという希望をもっていることを明らかにしていましたから、本件において追加提訴した第五陣原告(九名)を併合しないという訴訟指揮はもっぱら裁判所の都合であることは明らかです。
 原告多数が想定され、順次提訴が避けられない公害・薬害事件、消費者事件、労働事件等に与える影響が甚大なこの訴訟指揮は、ノーモア・ミナマタ訴訟において熊本地裁(一一陣一二〇〇人超)でも大阪地裁(九陣一三〇人)でも、現時点で追加提訴した原告は問題なく先行事件に併合されていることと比較しても異常です。
 鈴木裁判官の「(エスパーと)考えもらって構わない」との発言は、刑事訴訟法の基本書で「私は神様だ」という供述から精神異常を推認することがあるとされる(田口守一「刑事訴訟法第五版」〈弘文堂〉三八三頁)のと同等の発言であって、それ自体不適切であるばかりでなく、真剣に基本事件を審理する意思があるのかを疑わせ、不公平な裁判がされるであろうとの懸念を起こさせる客観的な事情であることは間違いありません。
 「エスパーだから話を聞かなくても分かる」と法廷で放言する裁判官に公平な裁判が期待できるわけがないのです。
 三月二八日に予定されていた口頭弁論期日は、中止になりましたが、裁判所は、三月末に六月一日の期日の指定をしてきました。忌避事件に決着がつかない中、格別「急速を要する行為」(民訴法二六条ただし書き)でもない期日指定をしてきたことも異常です。
 自由法曹団東京支部の皆さんには、忌避事件代理人就任要請を行わせていただき、FAXニュースに掲載していただいたほか、個別的にも依頼の連絡をさせていただきました。おかげさまで二〇一八年三月二七日現在で一二〇余名の方に(復)代理人に就任いただきました。ありがとうございました。


三月二三日「安倍『働き方改革』一括法案の提出断念を要求する緊急院内集会」報告

東京支部  深 井 剛 志

 三月二三日(金)、自由法曹団は衆議院第二議員会館において、「安倍『働き方改革』一括法案の提出断念を要求する緊急院内集会」を開催しました。集会では、労働法制改悪阻止対策本部が作成し、三月二〇日に発表した「『働き方改革』一括法案の国会提出の断念を要求する意見書」の内容が解説されました。
 冒頭、加藤幹事長が挨拶し、労働法制改悪阻止のための自由法曹団の意見書を紹介し、活用を呼びかけました。その後、労働法制中央連絡会の伊藤事務局長から、連帯の挨拶を頂き、意見書の解説を行いました。
 意見書のうち、労働時間法制の部分の解説は、今村幸次郎団員が行い、「裁量労働の拡大について先送りさせことは画期的なことだが、まだ断念はしていない。また、全く労働時間の規制をしないという労働法の最も基本的なルールを破壊する高度プロフェッショナル制度はとんでもないものだ。また、月四五時間を超える残業は、健康被害の発生の恐れが高まると厚労省も認めているのであるから、月四五時間を残業の上限規制とすることが必要である」と労働時間法制の改悪は許してはならないと訴えました。
 続いて、鷲見賢一郎団員が、同一労働・同一賃金にかかわる法改正、雇用対策法の改正の問題について解説しました。鷲見団員は、これらの法改正は、格差の固定化を加速させるものであり、今後の雇用問題に重大な悪影響をおよぼすもので、撤回を要求したい。雇用対策法の改正による雇用の請負・委託化は、「労働時間と賃金のリンクを切り離す」という点で、他の労働時間法制の改悪とつながっている。要するに、労働者ではなく、自営業者となるので、いくら働こうが、賃金には反映させないということとなる」と、危険性を訴えました。
 国会議員も多忙の中参加いただき、団員でもある山添拓参議院議員は、「安倍政権は、いまだ一括法案を閣議決定できないでいる。これは皆さんの運動と国会での野党の奮闘で押し込んだ到達だ。私は、過労死をなくすために国会に来た。全力でたたかいたい。」と決意を述べておられました。
 その後、会場からの発言が行われました。会場からは、神奈川支部の川岸卓哉団員が担当した「グリーンディスプレイ青年過労事故死事件」の原告の渡辺淳子さんが発言された。渡辺さんは、事故の概要、裁判の審理の状況、裁判官からの和解勧告の内容などを涙ながらに読み上げ、「息子の残業時間は一〇〇時間未満と認定された。政府案の一〇〇時間の上限規制では過労死は起きる。不十分だ」と、働き方改革法案の労働時間法制の問題点を厳しく批判しました。
 その後、青龍美和子団員の埼玉新都心郵便局自死事件についての報告や、各組合からのたたかいの報告、京都支部の中村和雄団員からの日弁連のアメリカにおける労働時間法制の調査の報告がなされ、現在の職場が抱えている労働問題について、認識を共有し、働き方改革法案の問題点がさらに浮き彫りになりました。
 最後に、私から、法案提出を断念させるために、意見書を利用した学習会、議員要請を行うなどの行動提起を行い、船尾徹団長から閉会の挨拶がありました。船尾団長は、「各分野からの報告をうかがった。一九四七年に労基法が制定されて七一年目。今日の時代に求められる、私たちの目指す「働き方改革」については、渡辺さんご遺族のお話しにもあるとおり、長時間労働の抜本的な規制、それから格差是正が必要だ。政府の方向は、長時間労働の抜本的な規制、格差是正という私たちの目指す働き方改革とはまったく反対である。現在、国会は潮目が変わってきている。森友問題、原発問題、核廃絶運動などで市民との共同が広がっている。その運動に、自由法曹団も、ともにたたかう決意だ」と締めくくりました。
 改正案からの裁量労働制の削除を達成し、いよいよ改正法案が国会に提出されようとしている中、大変タイムリーで、かつ中身の濃い集会となったと思います。
 今後、政府は法案提出を予定していますが、我々の運動で何とか断念に持ち込むよう、全国の団員の行動を求めます。


「消費税を上げずに社会保障財源三八兆円を生む税制」(大月書店)を購読した。(上)

東京支部  伊 藤 嘉 章

一 本書の骨子
 大企業向けの減免税、金持ち優遇の税制を指摘し、消費税の増税は法人税の減税にあてられてきたという仕組みを論じています。
 所得税、法人税の合計額は、一九九〇年度には四四兆円あったのに対し、二〇一七年度では三〇兆円にすぎない、一四兆円も減っているという。
 そして、著者はいいます。「税収が減った主な原因は、大企業に対する法人税の優遇と富裕層に対する所得税の優遇です。消費税を増税することと、大企業や資産家の税負担を減らすことは表裏一体なのです。さらに消費税の不況が追い打ちをかけます。そのため、消費税の増税によって、税収は減ることになるのです。」と。
 そこで、著者は言います。「反対に、消費税をなくして所得税や法人税の税率を見直し、不公平な税制をただして、支払能力のある大企業や高額所得者が、その能力に応じて負担しさえすれば、消費税を廃止しても、社会福祉建設のための財源を十分に確保することができるのです。」(二九頁)と。
 ここまでは、全面的に同意します。
二 三八兆円の捻出について
 そして、福祉建設の財源として三八兆円を見積もり、その捻出方法として、不公正な税制をなくすことを掲げている。
 具体的には、まず、大企業の法人税の税率適正化、高額所得者の税率適正化によって約一一兆円の増税となるという。そして、不公正税制の廃止、是正を含めると、合計約三八兆円の税金が捻出できるという(一〇〇頁から)。  
 大筋において賛成であるが、各税制にはそれぞれ導入した理由があったはずである。ある税制を廃止すれば、その廃止がどのような経済効果を、特にマイナスの経済効果はないのだろうか。検討の必要はないのか。
 それとも、三八兆円の財源を得てこれを福祉の費用としてばらまけば、すべての支出はかならず誰かの収入になるのだから、その収入を得たひとがこれを使えば、乗数効果をともなって社会に金が流れていき、経済が活性化する。企業の売り上げが増え、個人の収入も増えていく。その結果、国庫に入る租税収入もさらに増大するのである。ある税制の廃止によるマイナス効果など考える必要などないと開きなおるのであろうか。
三 不要・不急の大型公共工事について
 著者はいう。「東京外環道をはじめ三大都市環状道路、リニア新幹線、国際コンテナ港湾などの巨大公共事業に税金をばらまく予算を見直す必要がある」と(一〇〇頁)。
 これでは、かつての民主党政権のあの「コンクリートから人へ」のスローガンと同じではないか。
 また、二八頁では、「二〇一七年の予算で公共事業費は五兆九七六三億円になっています。このうちダム関係費、道路関係費、港湾・空港・鉄道関係費、都市環境整備費についてその二分の一を削減すればおよそ一兆五〇〇〇億円の財源が確保できます。」という。
四 松本清張の「砂の器」から
 「砂の器」の今西刑事が東京から島根県の亀嵩に出張するにあたり、午後一〇時三〇分発の急行「出雲」に乗り、現地に着くのは、翌日の午後八時ころという。二〇時間以上を要したのである。今西刑事は翌日の午後五時一一分、松江でおりて、旅館に泊まることにした。松江からさらに亀嵩駅に行くには、山陰本線で穴道まで約二〇分乗り、穴道から木次線に乗り換えなければならない。現在の時刻表によると、亀嵩駅に行く電車は一一時一八分にならないと来ない。木次線の備後落合まで通じる電車は、一日に三本しかない。今西刑事は、亀嵩駐在所を管轄する三成署がある出雲三成(亀嵩駅の一つ手前)で下車したとある。ここまで、二泊三日の旅である。
 いまでは、サンライズ出雲を使うと東京から約一二時間である。 また、東京から午前六時三〇分に新幹線のぞみ号に乗り、岡山で特急やくも号を乗り継ぎ、木次線に乗り入れれば、亀嵩駅には、当日の一五時二四分に到着するのである。さらに、東京駅を午前六時に出て、羽田発の午前七時二五分の飛行機で出雲空港まで行き、そこからバス、電車を乗り継げば、当日の一二時三九分に亀嵩駅に到着するのである。この間の六時間三九分という所要時間は、今西刑事が出張に要した時間の何分の一であろうか。
 今まで、空港、新幹線を作ってきたから、現在では、このように時間短縮で行動できるようになったのです。(続く)


小学校での教科化された道徳の授業が始まるにあたって

神奈川支部  林   裕 介

 新年度が始まり、いよいよ小学校にて、教科化後の道徳の授業が始まります。この道徳教科化は、学習指導要領から明らかなとおり、愛国心教育の一環です。道徳が教科化された後の授業においては、検定教科書(≒国定教科書)の使用義務が生じます。また教師も、子どもの「道徳」心につき評価をする義務を負うこととなります。国が設定した教科書記載の「道徳」につき、子どもたちがきちんと身につけられているかどうか、教師が評価する。まさに、子どもたちの内心の自由、個人の尊重、及び学習権の危機といえます。
 先日、現職の小学校教員の方からお話を伺った際、次のようなことが印象的でした。まず、「子どもたちは教科書に記載されていることを完全に信じてしまう」ということ、そして、「子どもたちは教師から褒められたいと常に思っている」ということです。そうすると、子どもたちは、教科書に記載されていることのみを信じ、また教師から褒められようと教科書に記載されていることに一層迎合しようとすることは明らかです。すなわち、道徳の教科化によって、子どもたちがそれぞれ自分なりに考えたうえでの多様で自由な意見を持つという機会が奪われてしまうのです。
 小学校での教科化された道徳の授業はまだ始まったばかりであり、また、来年度からは中学校でも教科化後の授業が開始される今、反対の声をあげていくことが重要なときであるといえます。
 以前団通信にてご紹介させていただきましたとおり、神奈川支部では、道徳の教科化に反対するリーフレットを作成し、お配りしています。残り少なくはなってきていますが、ぜひご活用くださいますと幸いです。よろしくお願い致します。
◆「小中学校の『道徳のじかん』が変わる。」リーフレットのお知らせ
・価格 一部一〇円(送料別) 
    ※一〇〇部以上のお申し込みの場合、一部八円
・@お名前、Aご送付先、Bお申込部数、Cお電話番号
を添えて、左記までご連絡ください。
(団神奈川支部のHPもあわせてご覧ください。)
・お問い合わせ 川崎北合同法律事務所 担当:林
電 話 〇四四―九三一―五七二一
FAX 〇四四―九三一―五七三一

【リーフレットの表紙】