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PKF本体業務への参加凍結を解除し、武器使用基準を緩和するPKO法「改正」に反対する意見書

2001年11月
自 由 法 曹 団

目次

一  はじめに
二  軍事活動の地理的範囲の無限定な拡大
  1 悪質な便乗
  2 アメリカの要求への応諾
三 PKO法「改正」案は明白な憲法違反
  1 「弁解」を重ねたPKO法の成立経緯
  2 「武力行使」を構成要素とするPKF本体業務への参加
  3 「武力行使」に直結する武器使用の拡大
四 おわりに


一 はじめに

  政府は、11月20日、「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(通称「PKO法」)の「改正」案を閣議決定し、臨時国会に提出した。
 「改正」案は、1992年のPKO法成立当時から凍結されていた国連平和維持軍(通称「PKF」)の本体業務への自衛隊の参加を可能にすること、及び、同法によって海外に派遣される自衛官の武器使用の範囲を大幅に拡大することをその内容としている。この法案が先の「テロ対策措置法」(報復戦争参加法)の強行に引き続き、自衛隊の海外派兵の枠組みをさらに広げようとするものであって、憲法の平和原則のさらなる蹂躙であることは明らかである。
 もともと、PKO法は、1992年6月,自民党に加え、当時の民社党、公明党の賛成を得て辛うじて成立した法律である。私たちは、PKO法自体について、武装した自衛隊を軍事要員として海外派兵するものであって、当然に違憲であると考えている。
 PKO法の成立に際しては、PKF本体業務の活動が海外での武力行使に及ぶおそれの強い活動であるとの指摘を考慮し、これを凍結することとした経緯がある。今回の「改正」案によるPKF本体業務への参加凍結の解除は、PKO法成立の経緯に照らしても、違憲の法「改正」であることが明らかである。
 しかも,政府・与党は、「改正」案を今国会中に成立させることを明言しているが、今国会の会期は12月7日までであるから、実質的な審理の期間はほとんどない。憲法の平和原則の根幹に関わる重大な法案を、PKO法成立時における国会での論議との整合性を吟味することもなく、国民の意見をきくこともなく、このような短期間で審理、成立させなければらならない緊急性はまったくない。政府・与党の姿勢は,異常というほかなく、国会の審議をあまりに軽視するものである。かかる無謀な審議しかされないこと自体、「改正」案の正当性を失わせる。
 私たちは、今回の「改正」案によって,自衛隊が国連のPKF本体業務に参加することは、明白な憲法違反であって断じて許されないと考える。
 以下で、「改正」案のねらいとその違憲性について述べることとする。

二 軍事活動の地理的範囲の無限定な拡大

1 悪質な便乗

 政府は、「テロ対策特別措置法」(報復戦争参加法)に連続して、PKO「改正」案を提出した。これは、同時テロ、アフガニスタンへの報復戦争という事態を格好の機会として、自衛隊の海外派兵の枠組みを際限なくひろげようとするものである。
 アメリカは、9月11日の同時多発テロ事件の報復として、10月8日、アフガニスタンへの空爆を開始し報復戦争に突入した。米軍は、英軍とともにテロ容疑者の逮捕のみならず、その引き渡しを拒否している勢力としてタリバン政権打倒をも戦争の目的とし、人道に反する爆弾も使用しながら軍事攻撃を続けている。
 このアメリカの報復戦争に対して、日本政府は、いち早く支持・支援を表明し、10月5日には、米英軍の報復戦争に日本の自衛隊が参戦することを内容とする「テロ対策措置法」(報復戦争参加法)案を国会に提出し、10月26日には、同法の成立が異例のスピードで強行された。この法律に基づく基本計画により、自衛隊の補給艦2隻及び護衛艦3隻がアラビア海に展開する米軍空母艦隊へ燃料等を補給・輸送すること、また、航空自衛隊の輸送機等8機が日本(横田基地等)とグアム島、シンガポール、ディエゴ・ガルシア島間などを空輸すること等が実施に移されている。自衛隊は、いずれも米軍等の戦闘行為に組み込まれて活動し、今後、米軍等の武力行使と一体の活動を展開することになった。
 今回提出されたPKO法「改正」案は、日本がアフガニスタン国内へ軍事的に関与することを目論むことを含め、武装した自衛隊が世界どこででも軍事活動ができるようにすることを目指したものである。

2 アメリカの要求への応諾

 日米安保共同宣言(1996年4月)、新ガイドライン(1997年9月)において、アメリカは日本に対し、自衛隊の活動範囲を「アジア・太平洋地域」に拡大することを要求し、さらには、「地球的規模の問題についての日米協力」にも自衛隊がその役割を果たすことを求めている。これらを受けて、1999年5月には周辺事態法が成立し、日本の周辺有事の際に出動する米軍が海外で行う戦争に、日本の自衛隊が参加する仕組みができた。
 そして、PKO参加に関しても、日米安保共同宣言では、「両国政府が平和維持活動や人道的な国際救助活動等を通じ、国際連合その他の国際機関を支援するその他の協力を強化する。」としており、新ガイドラインでも「日米いずれかの政府又は両国政府が国際連合平和維持活動又は人道的な国際救護活動に参加する場合には、日米両国は,輸送・衛生・情報交換・教育訓練等における協力の要領を準備する。」との合意をしているのである。これらは、日本の自衛隊が国連の平和維持活動(PKF)に参加することを当然に予定している。
 2000年10月に発表された「アーミテージ・レポート」は「日本による集団的自衛権の禁止は米日間同盟協力にとって束縛となっている。この禁止をとり払えば、もっと密接で、もっと有効な安保同盟になるだろう」、「米国と英国のような特別な関係が米日のモデルだと、われわれは思う」としたうえで、日本に「PKFの参加凍結解除」を要求している。
 そして2001年3月に発表された自民党国防部会報告では「PKF本体業務の凍結の解除」が打ち出され、2001年5月22日に発表された防衛戦略研究会議の「報告文書」は、この「アーミテージ・レポート」への返書と自らを位置付け、まず「PKFの本体業務への参加凍結解除」を優先課題だとしている。
 今回のPKO法「改正」案による自衛隊海外派兵の範囲の拡大は、こうした日米間の軍事的合意の実行でもある。
 「アーミテージ・レポート」によれば、いまアフガニスタンに軍事攻撃をしている集団的自衛権で結ばれた米英関係が、今後の日本とアメリカの同盟関係のモデルだという。自民党国防部会報告も防衛戦略研究会議報告も、このモデル論を受け入れている。
 そして,このような政府の自衛隊海外派兵への志向は、今回の改悪だけでは満足せず、今後、PKO法のさらなる改悪を行うとともに(次期の通常国会には,PKO参加5原則の変更が予定されているという)、自衛隊のPKF活動の実績を作るとともに、他方では、米軍を含む多国籍軍への参加を視野に入れていると考えられる。 

三 PKO法「改正」案は明白な憲法違反

1 「弁解」を重ねたPKO法の成立経緯

 自衛隊の海外派兵が憲法上許されないことは,参議院が1954年に行った「自衛隊の海外出動をなさざる決議」などで繰り返し確認されてきた。このことは、自衛隊の合憲性を根拠付けるため、憲法9条2項は「自衛のための必要最小限度の実力」を保持することまで禁止していない、すなわち、個別的自衛権の行使は憲法上許容されていると解する政府の憲法解釈からも、当然に導かれる結論である。
 ところが、政府は、日本の国際貢献・国連への協力を口実に、あくまで自衛隊の海外派兵を実現しようと1992年6月、PKO法の成立を強行した。
 その際に、政府が憲法9条との整合性をはかるために持ち出した論理は、PKO法による自衛隊の海外派兵は、海外「派兵」ではなく、海外「派遣」である、憲法の条文に即して言えば、憲法9条1項に規定されている「武力の行使」と「武器の使用」は同一の概念ではないというものであった。すなわち政府は、「武力の行使」と「武器の使用」を次のように説明した。
 「(1)一般に、憲法9条1項の『武力の行使』とは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいい、法案24条の『武器の使用』とは、火器・火薬類・刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械・器具・装置をその物の本来の用法に従って用いることと解される。
  (2)憲法9条1項の『武力の行使』は,『武器の使用』を含む実力の行使に係る概念であるが、『武器の使用』がすべて同項の禁止する『武力の行使』に当たるとはいえない。例えば、自己または自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然的権利というべきであるから、そのための必要な最小限の『武器の使用』は,憲法9条1項で禁止された『武力の行使』には当たらない。」(1991年9月27日政府統一見解)
 このように、政府は、「武力の行使」と「武器の使用」の概念の使い分けをし、PKO法上、自衛隊の海外派遣で予想されるのは、「武器の使用」であって「武力の行使」ではないから、自衛隊の海外派兵にはならないと説明したのである。
 しかしながら、このことは裏を返せば、政府見解によっても、「武力の行使」を伴うPKOへの参加は憲法上許されないということである。
 PKFは、後に詳しく述べるとおり、軍事要員が武器を携行し、紛争地域で抗争する勢力の間で停戦状況や武装解除の監視などをし、攻撃を受けた場合には任務遂行のために武力を行使することが予定されている活動である。
 政府自身もPKFに武力行使を伴う場合があることを認め、PKO法成立当時、内閣法制局長官は、憲法上「PKF的なものへの参加は困難」と答弁せざるを得なかった。現在PKO法においてPKFの本体業務への参加が凍結されているのは、このような審議の結果を踏まえてのことである。
 また、現在のPKO法には、以下のようなPKO参加5原則が定められている。
  (1)紛争当事者間の停戦合意
  (2)受け入れ国を含む紛争当事者のPKOと日本の参加についての同意
  (3)PKOの中立性の厳守
  (4)以上の(1)〜(3)の原則が満たされない場合の自衛隊部隊の撤収
  (5)武器の使用は、自衛隊員の生命・身体防護のために必要最小限に限ること
 このPKO参加5原則も、前述の政府見解を前提に、自衛隊のPKOへの参加が海外での「武力行使」に至らないように、政府みずからが課した制約である。
 とりわけ、(5)の武器使用に関しては、政府は、武器使用は自衛隊員の生命・身体を防護するための個人的な反撃であって、組織的なものではないから、「武力の行使」にはあたらないと繰り返し説明してきた。
 ところが、そのような政府の説明にもかかわらず、政府は1998年のPKO法改正において、「小型武器又は武器の使用は、当該現場に上官があるときには、その命令によらなければならない」として、上官の命令による武器使用を認めてしまった。上官の命令によって組織的に武器を使用することは、部隊としての応戦すなわち「武力の行使」を認めることである。したがって、この1998年の法改正において、すでに政府見解のなし崩しが始まっている。
 そして、今回の「改正」案は、自衛隊のPKFの本体業務への参加を認め、それにともなって、上記PKO参加5原則の武器使用の要件を大幅に緩和しようとするものである。これらが自衛隊の海外での武力行使に直結するものであることは後述する。
 それにしても今回の法「改正」案は、PKO法成立の際の政府の憲法解釈からも合理的な説明がつかない。それは政府がPKO法の違憲性を回避するために自ら課した制約を取り払うものであり、違憲の法「改正」というほかないのである。

2 「武力行使」を構成要素とするPKF本体業務への参加

 すでに指摘したように、現行PKO法の成立にあたっては、PKF活動の本体業務への参加は凍結されてきた(現行PKO法は、輸送などの後方支援活動に限って参加を認めている)。
 PKO法で凍結されたPKF本体業務は次のイからヘまでの活動である(3条3号,同法附則2条)。
 イ 武力紛争の停止の遵守の監視または紛争当事者間で合意された軍隊の再配置
   若しくは武装解除の履行と監視
 ロ 緩衝地帯その他武力紛争の発生防止のために設けられた地域における駐留及
   び巡回
 ハ 車両その他の運搬手段又は通行人による武器(武器の部品を含む。ニにおい
   て同じ)の搬入又搬出の有無の検査又は確認
 ニ 放棄された武器の収集、保管又は処分
 ホ 紛争当事者が行う停戦線その他これに類する境界線の設定の援助
 へ 紛争当事者間の捕虜の交換の援助
 今回の「改正」案は、このPKFの本体業務を凍結していたPKO法附則2条を削除して、その凍結を解除しようとするものである。
 ところで、国連のPKO(PeaceーKeepingーOperations)は、従来、「紛争地域の平和の維持もしくは回復を助けるために国際連合によって行われる、軍事要員をともなうが、強制力をもたない活動」(国連「ブルーヘルメット」)で、紛争当事者の合意と協力を基盤とするものといわれてきた。
 そして、PKOの活動は、通常、(1)平和維持軍、(2)停戦監視団、(3)選挙監視の三つに分類される。(ただし、常にこの三者が明確に区別されているわけではなく、これらを兼ね備えた組織も存在する。)
 このうち、平和維持軍の主たる役割は、平和の回復あるいは維持のために紛争地域において、紛争の再発防止、兵力の引き離し、あるいは兵力の撤退の監視を行うことにある。このような平和維持軍の特徴は、その構成員が通常武器を携帯した軍事要員であるということであり、さらには、ときとして武力行使を行うということである。
 次に、停戦監視団は、その構成員が軍事要員である点は平和維持軍と同じであるが、平和維持軍と異なるのは、その任務が停戦の監視にあり、兵力の引き離しなどはしないということである。また、原則として武器を保有せず、武力行使も行わないということである。ただ、これには例外がないわけではなく、武装の軍事要員で構成され、自衛のための武力行使が認められることもありうる。
 選挙監視は、一部軍事要員も含まれているとされるが主体は文民である。
 以上の分類の上で、日本においてPKFと呼ばれているのは、(1)の「平和維持軍」である。
 そして、平和維持軍は、先の特徴でもふれたとおり、ときとして武力行使を行うことがある。具体的には、その活動について、軽武装が許され、武器の押収、検問所突破の阻止や特定の任務に対する妨害の排除など、厳密な意味での自衛の範囲を超えた強制力の行使を認可される場合がある。
 1964年に提出された国連事務総長の国連キプロス平和維持軍(UNFICYP)に関する報告書の中では、最小限の武器の使用が許されるケースとして、PKO部隊が、(1)彼らの司令官の指示で占拠している陣地からの武力による立ち退きを強要された場合、(2)武装解除を強要された場合、(3)司令官から命令された任務の遂行を武力で阻まれた場合等を挙げている。
 軽武装といっても、120ミリ迫撃砲・対戦車ロケット砲・自動小銃・重機関銃・装甲車などが使用されているのであるから、かなりの装備である。そして実際に、コンゴ国連軍による戦闘機による爆撃をはじめとして、過去にたびたび戦闘行為も発生している。
 さらに、指摘しなければならないことは、冷戦終結後1990年代の国連PKO活動の量および質の変化である。
 湾岸戦争が終わった後の1992年、国連ガリ事務総長は、「平和への課題」という報告書のなかで、侵略が予想される場合、すなわち、従来前提とされた停戦協定などがなくとも、国境にPKO部隊を配置する「予防展開」や、PKOより重装備で停戦合意の履行の確保など限定的な目的に限って武器の使用が認められる「平和執行部隊」の創設を提唱している。
 この提唱をきっかけとして、その後の国連PKOは、従来の任務を拡大して展開されてきた。カンボジア暫定統治機構を経て、ユーゴスラビア、ソマリア、ルワンダなどで展開されたPKOは、国内問題へ本格的に関与し、停戦の維持や武力衝突の回避だけでなく、強制的な武装解除や軍隊の解体にまで及ぶ活動が任務とされた。そのため投入される兵力の規模も飛躍的に拡大した。
 また、旧ユーゴスラビアに展開された国連防護軍は、限定的ながら武力行使の権限が与えられ、さらにそれを支援するため、加盟国にも国連憲章7章のもとで「必要なあらゆる措置」をとることが許可された。これはいわゆる「平和維持活動」と「強制措置」の融合である。
 しかも、必ずしも武力紛争が終結しているとはいえない状態で派遣されるので、停戦合意があったとしてもそれが遵守されるとは限らず、そのために、従来のPKO活動に比べて強力な任務を要請され、これまでPKOには参加していなかった国連常任理事国などの軍事大国が参加するようになっている。国連PKOのこのような傾向は、PKOそのものの当事者化を招き、PKO活動の中立性を損なう事態にもなっている。
 例えば、旧ユーゴスラビアでは、安全地帯に展開していた国連防護軍に対して攻撃を加えたセルビア軍に、NATO所属の米軍戦闘機が出撃する事態となった。ソマリアでも、国連PKOによる武器の押収に抵抗する勢力からロケット弾などによる本格的攻撃が行われ、PKO部隊との間で銃撃戦が展開され戦争状態となった。
 このような内戦へ国連が軍事介入することについては、権力闘争を不安定なまま固定し、事態の根本的な解決を妨げかねないとの指摘もなされている。
 そして、以上のような国連平和維持軍の活動等において、参加した要員の死者は、PKO法成立の1992年以降、2001年9月15日までに845人もの多数に及んでいるといわれる。
 以上から明らかなとおり、現在の国連PKO(PKF)の活動は、軍事要員による組織的な武力行使を伴うものであることが当然の前提となっている。これに自衛隊が参加することは不可避的に自衛隊の海外での「武力行使」となり、憲法9条1項に違反することは明白である。

3 「武力行使」に直結する武器の使用の拡大

 現行PKO法は、24条において、派遣された隊員の武器使用について、「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命又は身体を防護するためやむを得ない」場合に限定していた。また現行法は、武器等の防護のための武器使用を認める自衛隊法95条の規定を適用しないとしており(24条8項)、武器等の防護のための武器使用を禁止していた。要するに、隊員の武器の使用は、隊員本人とその現場にいる同僚の自衛隊員の防護に限られていた。
 このように武器の使用に限定を加えたのは、先に指摘したとおり、政府自身が「自己または自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは、いわば自己保存のための自然的権利というべきであるから、そのための必要な最小限の『武器の使用』は,憲法9条1項で禁止された『武力の行使』には当たらない。」として、現行PKO法の違憲性を回避しようとしたからに他ならない。
 ところが,今回の「改正」案では、まず「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員」に加え、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」を防護の対象としている。そして、この「自己の管理の下に入った者」に関しては、11月22日の衆議院本会議での政府答弁において、武装した他国の隊員も「不測の攻撃を受け自衛官と共通の危険にさらされた」場合は、防護の対象となりうるとの考えが示されている。(しかし、先に成立した「テロ対策措置法」にも、同じ「自己の管理の下に入った者」という文言がある。政府は、その例として、傷病兵・被災民・他国軍隊の連絡要員を挙げたが、他国部隊は含めていなかった。条文上、同じ文言を用いながら,今回の改正案では,武装した他国部隊の隊員も含む場合があるとする政府の条文解釈は,極めて恣意的で、法により武器使用を規制することをないがしろにする不当な姿勢である。)
 同時に、自衛隊法95条の規定を適用しないとしていた24条8項を削除し、自衛隊の武器・弾薬・艦船・航空機・車両などを防護するための武器使用も認めている。
 このような武器使用の大幅な緩和は、PKFの本体業務の凍結を解除するのに伴って、自衛隊が、紛争地域で抗争する勢力の間で停戦状況や武装解除の監視などをし、武器の使用の予想される任務が増加することや、そのような任務を他国の軍隊と共同で遂行するところに身をおくことを想定してのことである。しかも、1998年の改正によって、すでに、武器の使用は、上官の命令によって組織的になされることになっている。
 そうすると,今回の「改正」案と政府解釈によった場合、例えば、自衛隊と行動を共にする他国の軍隊が、現地の抵抗勢力に攻撃を受けた際には、それが日本の自衛官に対する「共通の危険」であるとされて、自衛隊が他国の軍隊とともに部隊として応戦し銃撃戦を繰り広げる危険も十分にあることになる。そのような事態は、どうみても戦闘状態であって「武力行使」そのものである。
 以上明らかなように、今回の武器使用基準の大幅拡大は,これまでの政府見解からしても,違憲というべきである。PKFの本体業務の凍結解除とあいまって,日本の自衛隊の海外での「武力行使」を容認するものであるから,その違憲性は明白である。自衛隊の武器使用の基準を国際基準に合わせるという必要性論が語られているが、それこそまさに国際基準において「武力の行使」とされていることを自衛隊に行わせるということであり、憲法9条に正面から反することである。

四 おわりに

 日本国憲法は、過去幾多の侵略戦争の反省の上に、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」「陸海軍その他の戦力は、これを保持しない。」「国の交戦権はこれを認めない。」と明確に規定して、一切の戦争を放棄し、戦力の不保持を宣言しているのである。したがって、日本の自衛隊の存在自体が違憲であり、その自衛隊を国連PKOの軍事要員として派遣することも当然に違憲である。
 しかし、今回のPKO法「改正」案は、これまで述べたとおり、PKO法を合憲であると取り繕ってきた従来の政府見解を前提としても、憲法9条1項に反し違憲といわざる得ない。
 そもそも、憲法の本質は、国家権力による国民の自由・人権の侵害を防ぐために、憲法によって国家権力の行使を縛ることにある。したがって、憲法の解釈にあたっては、厳格な論理解釈がなされなければならない。そうでなければ、ときの為政者の気分・感情によって憲法自体がゆがめられ、憲法の規範力・存在価値が失われてしまうからである。 
 しかるに、今回のPKO法「改正」案は、テロ問題を口実に、憲法を全く無視して、いとも簡単にPKO法を改悪しようとするものである。このような法案が国会で成立するとしたら、もはや日本は立憲主義国家ではない。
 私たちは、このPKO法「改正」案は、廃案にするしかないと考えるものである。

PKO本体業務への参加凍結を解除し、武器使用基準を緩和する
PKO法「改正」に反対する意見書


2001年11月 編 集  自由法曹団沖縄・改憲問題特別対策本部
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