<<目次へ 団通信1052号(4月1日)


篠原 義仁 二〇〇二年 三重五月研究討論集会のご案内 @ 志摩賢島・五月集会にふるって参加しましょう
石坂 俊雄 美し国志摩にお越し下さい
中野 直樹 有事法制阻止闘争の押し出しと共同の広がり
井上 洋子 付け焼き刃講師を助く意見書に、理解を深める意見交換
笹山 尚人 コスタリカ−日本が目指すべき社会
河内 謙策 アルン・ガンジーとの七問七答
中西 一裕 「実践的である」とは−松島団員の投稿に対して
吉田 健一 緊急出版!「有事法制−だれのため?なんのため?」ブックレットを大量に活用しよう!
齋藤 園生 タブロイドニュース「WHAT'S ユージホウセイ」を活用しよう

二〇〇二年 三重五月研究討論集会のご案内 @

志摩賢島・五月集会にふるって参加しましょう


幹事長  篠 原 義 仁


 桜前線の北上が早そうです。

 さて、団八〇周年記念行事も全国各地の団員のご協力で成功裡に終わることができました。改めてお礼申し上げます。

 それから半年、早いもので二〇〇二年の五月集会の参加を呼びかける時期となりました。

 有事法制の国会提出へ向けて、政府内討議があわただしく進んでいます。有事対応の枠組みを規定する包括法案と、個別法としての安全保障会議設置法改正案、自衛隊法一〇三条に関連しての改正案、米軍の行動に関する特別措置法案の四法案一括提出が有力視されています。

 一方、九・一一の同時多発テロを契機に強行突破して成立したアメリカへの戦争協力法(テロ特措法)に基づいて、自衛隊のインド洋への派遣が行なわれ、今でも日本の戦争加担行為が継続しています。

 「テロにも反対、報復戦争にも反対、ましてや自衛隊の参戦には絶対反対」の声を大きくして自衛隊の戦争行為の中止、即時撤退を求め、同時に憲法違反の有事法制の策動を許さない闘いは、きわめて緊要となっています。

 本年一月には、アフガン調査が行なわれ、また一月常幹では、こうした緊急に対処するため、「有事法制阻止闘争本部」が結成されました。

 闘争本部では、意見書作り、出版活動、ビラ、リーフ作りを行なうなかで、アフガン調査と結合しての学習会、集会、友好団体との共同行動、街頭宣伝、国会要請行動を組織し、同時に全国各地での同様の取り組みの要請を行いました。この要請にこたえて、あるいは自主的に全国各地でビラ配布、街頭宣伝、共同行動、学習会が短期間のうちに多角的、多面的に企画され、その反撃の体制を整えつつあります。

 憲法調査会をめぐる動向も依然として予断を許しません。地方公聴会は仙台、神戸、名古屋とつづき、近々には沖縄公聴会が予定されています。

 憲法問題と連動して、昨年成立した教育関連三法につづき、本年に入り教育基本法改悪の動きも急をつげています。

今年の五月集会は、有事法制・憲法問題に焦点をあて、基調講演(浅井基文明治学院大学教授)とともに分科会運営を充実させ、団の闘いとその実践の検討を行なうこととしています。

 司法改革の問題もひきつづき重要な課題となっています。司法改革推進法の成立にともなって昨年一二月一日に発足した司法改革推進本部(本部長小泉首相)は、私たちが危惧したとおり事務局主導型で、しかも事務局の主流を占める官僚中心主義の様相を呈しています。顧問会議、とりわけ一〇の検討会における討議の尊重、重視と、徹底した情報の公開が強くのぞまれています。ちなみに三月七日に公表された「司法改革推進計画」案は、司法改革審最終意見の枠組みを前提に、その検討課題に序列をつけ、その結果「裁判の迅速化や財界の要求」寄りにその議論を誘導しようというもので、きわめて危険な内容をはらんでいます。

 国民の側からの真に司法改革に値する制度設計と具体的対案を提示しての取り組み、推進本部への働きかけがきわめて重要となっています。団は、こうした観点から一月に裁判員制度、三月に労働裁判、四月に裁判官改革の「徹底討論」を行い、少くとも前二者については団としての「制度設計」基本案を作成し、五月集会の討論に提供する予定でいます。

 労働法制の改革問題が、またまたもち上がり、一方、現場の実態をみてみるとルールなきリストラ「合理化」の嵐が吹きあれています。昨年の五月集会では民間の現場に重点をおいた討議が深められましたが、リストラ「合理化」は民間、官公を問わず進行しています。そのなかでNTTのリストラ「合理化」に反対する取り組みが進行し、この四月、五月に闘いの大きなヤマ場を迎えるところとなっています。五月集会では、この労働問題にも焦点をあて討議を深めることとしています。

 この外、各戦線分野の分科会としては、第一日目に金融、警察改革の分科会が、第二日目には公害環境の分科会が予定されています。

 五月集会の前日には、新人学習会が企画され、また、事務局交流会も同交流会の世話人との協議に基づき、例年どおり開催されます。新人学習会は、例年と異なり、約半年の実務経験をふまえてのそれぞれの問題意識をもったなかでの企画で、講演ののちの活発な質疑、討論が期待されています。事務局員の交流会は、世話人からの要望もあり「自由法曹団はどのような志で何をしてきたのか」という趣旨で経験豊かな団員の話を聞き、それをうけて事務局員の各地、各分野での運動の経験交流を行なう、という内容で予定されています。

 各地、各事務所での新人及び事務局員の五月集会参加への格別の配慮を重ねてお願い致します。

 最後に、団結成八〇周年を経た今、そして司法修習生の大幅増の現状に照らし、団事務所と団の組織的発展のために「これからの自由法曹団を考える」(仮題)との前日企画を予定しました。後継者問題等を柱に討議する予定ですが、それにふさわしく、支部・ブロックの役員、大学での講師経験者、ロースクール講師申込者、国際問題委員会メンバー、司法民主化推進本部メンバーとともに後継者問題等に取り組む若手団員の参加をえて、五〇人から一〇〇人規模で開催することとしています。

 その企画の成功を収めるための事前準備を充実させ、とりわけ各地(事務所)アンケートの実施と集約に力を入れてゆきたいと考えています。予め、そのご協力を要請する次第です。

 相変わらずの忙しい日程です。そして、課題の多い五月集会です。しかも、有事法制の闘いが急をつげています。

 闘いのなかでの五月集会の成功を祈念して、五月集会参加の呼びかけと致します。


美し国志摩にお越し下さい


三重支部 石 坂 俊 雄


1 皆さん、五月には志摩へ

 風薫る五月には、美し国(うましくに)三重県は志摩賢島(かしこじま)に是非お越し下さい。

 美し国とは、美しい景色と美味い食べ物を懸けた言葉です。志摩地方は、この言葉のとおり、美しいリアス式海岸と魚介類、お肉の美味しいところです。ホテルから見る景色は、日頃の疲れを癒し、豊かな気持ちに皆さんをさせてくれると思います。

 五月集会で議論していただく問題は、有事法制や労働者・市民の権利問題等多岐にわたりますが、穏やかな気持ちで大いに語っていただきたいと願っております。

 三重支部の団員・事務局一同全国の皆さんのお越しをお待ちしております。

2 旅行について

 旅行は、一泊旅行を計画いたしますが、半日旅行は、帰りの時間を考え支部としては設定いたしません。そこで各自で出かける場合のおすすめコースを以下に紹介します。一泊旅行は人数が集まらないと催行できなくなりますので是非一泊旅行に参加してください。

(一泊旅行については後記参照)

半日旅行おすすめコース

@ 賢島駅から三〇分→鳥羽駅下車して
 徒歩一〇分の鳥羽水族館で約二時間、いろいろな魚・ジュゴンなどを見て地球環境を考えて見たらいかがでしょうか。その後、ミキモト真珠島で約一時間光り輝く真珠と海女の演技を見てください。鳥羽駅から→名古屋まで一時間三〇分・大阪まで二時間です。

A 賢島駅から四〇分→五十鈴川駅下車して
 タクシー又は徒歩三〇分で伊勢神宮内宮です。難しいこといわずに見る価値があります。そして、宇治橋手前のおかげ横町へ、ここは特におすすめです。赤福の本店をはじめ、三重県の美味しいもの何でもあります。所要時間約三時間、時間のある人はバス・又はタクシーで伊勢神宮外宮へ→宇治山田駅又は伊勢市駅→名古屋まで一時間二五分・大阪まで二時間二〇分です。

B 賢島駅から一時間→松阪駅下車して
 徒歩一〇分で本場松阪肉を食べてください。少し高いが、美味しいことは間違いありません。有名なお店は、和田金・牛銀・三松です。食後に本居宣長記念館・旧武家屋敷跡である御城番屋敷等を約一時間かけて見学してはいかがですか。


有事法制阻止闘争の押し出しと

共同の広がり


事務局長  中 野 直 樹


 自由法曹団は、二月一五日の全国会議で、全国の団員に、有事法制阻止の闘争に立ち上がることを呼びかけました。これに応えて、団が準備したチラシ五万枚が全国に運ばれ、約三〇ヶ所で街頭宣伝がなされています。地域レベルでの学習会もセットされはじめています。別途紹介されている緊急出版ブックレットそして出来たてのタブロイド版ニュースも活用して網の目の学習会を組織していきましょう。

 団は、三月一六日の常任幹事会において、第二波の行動を確認しました。
 @四月一日から一〇日までをいっせい宣伝行動旬間として、全国で街頭宣伝に取組む。
 A四月一八日 午後一時〜五時 全国の団員で国会要請行動をやる。

 行動予定の確保をお願いします。

 三月二二日夜、「有事法制は許さない!中央集会」が日比谷野外音楽堂で開催されました。あいにくの冷たい雨降りでしたが、会場は傘をさした参加者でうまりました。憲法会議の発言枠で、篠原幹事長が壇上に立ち、アフガニスタン調査以降の団の取組みを報告し、全国の団員が全力でたたかうことを決意表明しました。法案提出前の雨天としてはよく集まったとの感想をもちました。傘がじゃまをしてよく見えなかったのですが、団からは三〇名近い参加でした。

 宗教者(日本山妙法寺および平和を実現するキリスト者ネット)と陸・海・空・港湾労組二〇団体が接着点となり、有事法制反対の一点での幅広い共同行動のネットワークがつくられつつあります。当面次の行動を行うことが確認されました。

  四月三日(水)午後一二時一五分〜一時過ぎ 国会前路上集会
  四月一九日(金)午後六時三〇分〜日比谷野音
         「STOP!有事法制4・19集会」

 さまざまなチャンネルで輪をひろげる模索と努力がなされています。団も法律家団体の一員としてこの事務局に参加しています。


付け焼き刃講師を助く意見書に、

理解を深める意見交換


大阪支部  井 上 洋 子


 三月一八日に有事法制の所内学習会を約一時間半かけて行いました。弁護士五名事務局一三名でざっくばらんな意見交換をしたおかげで(この意見交換でどれだけ学習会が深まったことか。うちの所員はえらいなあと尊敬することしかり。)、わかりやすくストンと胸に落ちるなかなかに有意義な学習会になったと自負しましたので事務所の自慢も兼ねてご報告します。

 まずは不肖私めが有事法制の基本報告をしました。講師をするにあたり常任幹事会で得た資料や各種新聞記事に目を通し付け焼き刃勉強をしましたが、何だかごちゃごちゃしていて頭にすっきり入ってきません。しかし三月常幹で入手した団意見書を読んで、その明快さに感動し、急に頭が整理されて「なんだ、簡単なんじゃん。」と大船に乗った気持ちになりました。司法改革でも何でも団の意見書は要点がまとまっていて頼りになるなあと感謝の念がわいてきました。(注:現職次長だからヨイショして言っているのではない。私が弁護士になって以来拡声器規制条例だ小選挙区制だと地域の学習会に行くにあたりいつも胸には団の意見書を抱ていたというのが実感なのです。)レジュメは、自衛隊法一〇三条と政令との関係、第一分類、第二分類、第三分類の要点と例を抜き書きしただけの簡単なものを作りましたが、すっきりしている分かえってわかりやすかったようです。

 基本報告のあと、「知事命令に代わる師団長ってどのくらいの地位の人?」「師団って兵隊何人くらい?」「一個師団はどのくらいの範囲を統括するの?」「大阪では師団はどこにおいてあるの?」などと軍隊基本情報を、明治以後の日本軍にも自衛隊にも造詣の深い大雑学者坂田宗彦弁護士の解説のもと、具体的に感じていきました。

 「誰が有事だと認定するの?」「軍隊を持っている外国に有事法制はあるの?」「外国では軍隊をどうやってコントロールするの?」という難しい質問にも坂田弁護士と横山精一弁護士が悩みながらも回答を与えてくれました。しかし旧日本軍にはいいかげんでめちゃくちゃな人物が一杯いたという話になって、関東軍参謀で戦後国会議員になった辻政信の例で盛り上がったりしました。

 印象的だったのは、「歯科医師も業務従事命令の対象だけど、有事だからインプラントや保存治療なんてまったくしてもらえなくてすぐに歯を抜かれるんだろうね。」という一事務局のつぶやきが妙に真実味をもって迫り、思わず歯がむずむずしてきたことです。

 さらに「学生の時自衛隊見学したけど戦闘機なんか格好いいと思いますよね。」「子どもの学校でも見学があるけれど、自衛隊を当たり前の存在として慣らされていっていますよね。」「修習生にも見学があるんですよ。」などと自衛隊が生活に入り込んでいる実態を再認識しました。

 「どうしてアメリカは日本の有事法制をほしがるのか?」については坂田弁護士が浅井基文「集団的自衛権と日本国憲法」(集英社新書)の要点をわかりやすく解説して下さり、おまけに不審船問題についても説明してもらいました。

 最後に、「先日子どもの卒業式だった。最初に『起立』と言われるので立ち、その後国歌斉唱だと言われて嫌なら座るという流れだった。一度立ってしまうと座りにくい。座っている人は少なかった。」「自分が正しいとわかっていても、人数が少ないと気分が悪いよね。」と国旗国歌法の現場の状況と少数者の悩みが開陳されました。

 そして、「だからこそ、有事法制も法案が通ってしまう前にくい止めなければならないね。」ということになったのです。

 そして、街頭宣伝を定期的にすること、大阪からは遠いけれど三月二二日の日比谷野音の集会に一、二名参加してもらうこと、建設労働者・運輸労働者など依頼者層は有事法制と密接な関係があるので地域で学習会を開いていこう、ということになったのです。


コスタリカ−日本が目指すべき社会


東京支部  笹 山 尚 人


 「平和とは、決意を伴った行動です。」コスタリカ共和国の、元大統領であったフィゲーレス氏の夫人、カレン女史の言葉である。

 有事法制の導入の危険が日増しに高まっている。なぜ有事法制がいけないのか。有事法制は戦争をする体制であり、戦争がもたらす悲劇は団のパキスタン調査団が鮮明に明らかにしてくれたところであるからである。では、私たちはどのような社会を目指すべきなのか、有事法制を目指す勢力に対して、どのような社会を対置すべきなのか。その答えがコスタリカにある。

 去る一月三〇日から二月七日まで、私は、青法協が企画したコスタリカ調査団の一員としてコスタリカ視察に参加した。藤原団員の団通信原稿を読まれた方もおられると思うし、コスタリカがどういう国かということは、そこでも紹介されているのでここでは省略する。

 コスタリカから感じることは、平和と人権・民主主義が相互に前提的なもので、かつ一方が他方の結果という関係を現出させているということである。そして、このような社会を維持するために、コスタリカは大変な努力をはらっている。他国の侵攻を避けるために、コスタリカは、米州機構に依存しながら、侵攻の口実を摘み取ることを積極的に推進する。すなわち、まずコスタリカ自身が決して侵略的行為を行わないことを示す。また、米州機構の裁判所や、国連平和大学の誘致を行い、外から攻めにくい環境を整える。そして、近隣諸国で紛争が発生した場合は(一九八〇年代のニカラグア紛争が典型)、その仲裁に自ら乗り出して解決の提案を行って火種を消して歩く。「平和とは決意を伴った行動である。」とは、なるほど体現してきたからこそ言える確信である。

 コスタリカがこのような社会を努力によって実現する原動力は何なんだろう。調査でわかったことは、命の尊重に対する絶対的な姿勢である。命を大切にするからこそ、医療は無料で提供されるし、命を育む自然を大事にする。教育は、相手の尊厳を大切にするからこそ、対話を基本にして行われる。

 こういう調査でわかったことだけでなく、生命への絶対性は、肌で感じた気もする。調査で講演を聞いたり、質問を浴びせたりした後、思い返してみてジーンと感じ入ったのだが、コスタリカの人々は、何とも率直なのである。意地悪い質問にも、都合が悪いから隠すという感じがない。「そこは悩みです。」「確かにそう言う問題はあります。」。こういう姿勢に、ごまかしたり、嘘を付いたりすることがいかに人間関係を不実なものにし、相手の尊厳を軽んじることになるかを体で理解している、生命の尊厳への発露を見た思いがするのである。何気ない態度からにじみ出すことだけに、すごいと思った。

 こういう彼らだから、武力を持たない理由は極めてシンプルである。戦争は生命をふみにじるから。何と爽快なことか!

 日本が有事法制を導入して実現しようとしているのは正にこれとは対極にある社会である。戦争をするということは、相手の生命を軽んずることではあるが、自らの生命をも軽んずるということである。生命を軽んずれば、人権や民主主義をやである。

 私たちが平和憲法を守れという時の、具体的な社会の有り様は、コスタリカの社会から学んで得られるところでずいぶん描けるように思う。

 繰り返すが、パキスタン調査でわかった悲劇を起こしては行けないから、戦争に反対し、有事法制に反対する。そして私たちは、コスタリカの社会を学び、目指すべきである。


アルン・ガンジーとの七問七答


東京支部  河 内 謙 策


 私は、二〇世紀の最も偉大な人物はマハトマ・ガンジーであると考えています。そのガンジーの孫のアルン・ガンジーが、アメリカのメンフィスで、非暴力の旗を高く掲げて活動していると聞き、一月に会いに行きました。以下は、アルン・ガンジーの私の質問に対する文書での回答を、私が翻訳したものです。有事立法反対運動の中でも、有事立法が必要かどうかという問題を議論するときに役に立つと思います。なお、アルン・ガンジー「テロリズムと非暴力」の日本語訳が必要な方は河内まで(kenkawauchi@nifty.com)、またアルン・ガンジー「二一世紀における非暴力」が掲載された『日韓教育フォーラム』第一三号購読希望の方は大東文化大学教授尾花清まで(obana@ic.daito.ac.jp)、それぞれご連絡ください。

 【質問】貴方は、いつインドで生まれましたか。貴方がアメリカに来ることを決意したのは、いつですか。貴方は、なぜ活動の拠点としてアメリカ南部を選んだのですか。
 【答】私は、一九三四年四月一四日、南アフリカのダーバンで生まれました。インドに移り住んだのは、一九五六年一二月三〇日です。インドで私は結婚し、三〇年間活動しました。一九八七年に、私は南アフリカ、インド、アメリカの人種的・民族的偏見について研究して本を書き、ミシシッピー大学のフェローの資格を得るために渡米し、レイシズムについて勉強しました。

 その時に、多くの人がマハトマ・ガンジーの生涯や非暴力の哲学に関心を寄せていることを知り、アメリカの地に骨を埋め、非暴力を教える研究所を開設しようと考えたのです。

 【質問】研究所開設の目的とこれまでの活動について説明してください。貴方は、これまでの活動が大きな成果を収めたと考えていますか。
 【答】私は、講義、セミナー、会議やワークショップを通じて非暴力を教えてきました。しかし、多くの人たちの目覚めには至りましたが、物理的暴力を完全になくするにはまだまだ不十分です。物理的暴力は、私たちが悩んでいる心の暴力(inner violence)の外部に現れた結果に過ぎないからです。心の暴力の問題に対処しなければ、物理的暴力が繰り返されるということになるでしょう。

 【質問】貴方の祖父であるマハトマ・マガンジーについては、どう思っておられますか。
 【答】彼は、慈愛に満ちた人でした。彼は、毎日一時間を私と一緒にすごし、いろいろ貴重なことを教えてくれました。

 【質問】非暴力の哲学のエッセンスを教えてください。
 【答】非暴力のエッセンスは、それが、愛、思いやり、敬意、憐れみに根をおろしているということです。したがって私たちは、それを内面化し、それに基づき毎日毎日、一瞬一瞬を生きていかなければならないのです。それは必要と思われるときには持ち出され、不用と思われると捨てられるという政治的戦略ではないのです。非暴力の哲学が今日適切かどうかを問うということは、愛、思いやり、敬意、憐れみが適切かどうかを問うことなのです。もし私たちがこの問いにノーと答えるならば、人類は破滅に向かうことになるでしょう。

 【質問】九月一一日の事件については、どう思われますか。アメリカのアフガニスタンに対する戦争は正しいのでしょうか。
 【答】いいえ、アメリカは正しくありません。もちろん、アルカイダも正しくありません。九月一一日の事件を、それだけを取り上げて考察することは正しくありません。それは、長年にわたる無視と搾取のクライマックスなのです。(私の論文「テロリズムと非暴力」を参照してください。)アメリカがアルカイダを爆撃するときには、罪を負うべき人が逃れ、罪なき多数の人々の命が失われているのです。罪なき人々はアメリカに対する潜在的なテロリストです、なぜなら彼らは仕返しをしたいと考えるからです。暴力のサイクルには終わりがありません。

 【質問】人類の将来については、どのようにお考えですか。
 【答】人類の将来は、人類の手に握られています。もし人類がこれまで犯した誤りを見つめ、それに学んで誤りを正すならば、人類は生きのびるでしょう。しかし、もし人類が歴史の教訓を無視し、復讐とか正義の名の下に暴力を継続するならば、人の命が失われる度に人類の将来も失なわれていくことになるでしょう。そしていつの日か私たちは再び未開人にもどり、私たち自身を完全に破壊することになるでしょう。

 【質問】平和のために奮闘している日本の法律家たちにメッセージをお願いします。
 【答】日本の法律家の皆さんにも、市民の皆さんにも、私たちが非暴力に基づく社会をつくりあげるまでは真の平和がもたらされない、ということを強調したいと思います。戦争や殺人や喧嘩の際の暴力を問題にするのでは不十分です。暴力は、別に人殺しなどが行われなくても、複雑な、あるいは単純な方法で毎日実践されているのです。私たちはあらゆる暴力を認識し、私たちの日常生活と市民社会からそれを根絶するように努めなければならないのです。私たちが燃料となるものを撤去したときに初めて、私たちが物理的暴力という火を消すことが出来るのです。私たちが物理的暴力という火の中に抑圧、差別、搾取などの燃料を注ぎ続ける限り、火は猛威を振るい続けることでしょう。


「実践的である」とは

−松島団員の投稿に対して


東京支部  中 西 一 裕


 アメリカのアフガン報復戦争の無法と残虐に憤り、他方、日本における反対運動の低調さを憂うのはほとんどの団員の心情であろう。ところで、松島団員はこの問題で九・一一同時多発テロの衝撃を論じるのは「評論家的」であり、実践と切り結んでいないと批判している(団通信一〇五〇号)。松島氏のこの分野での実践にはかねて敬意を払うものであるが、私自身テロの衝撃を語った者として(『法と民主主義』二〇〇一年一二月号)、一言弁明することは許されるだろう。

 まず、この場合の「実践」とは何を指すのか。日米同盟に反対する左翼勢力の結集と動員をはかることであろうか。しかし、一歩踏み出して幅広い世論に訴えようとするなら、九・一一に対して否応なく態度表明を迫られるのではないか。報復戦争に至る事態の発端が九・一一であり、米国民が未曾有のテロによる被害を受けたことは明らかなのだから、テロについて語らずに報復戦争批判のみを語ることは逆立ちした議論としか思えない。それゆえ、報復戦争に反対する多くの人たちが、好むと好まざるとに関わらず、テロについて語っているのである。

 これに対し松島氏は、九・一一は「客観的評価」としてはヒトラーやスターリンの例ほどではないというが、こうしたまさに「評論家的」議論でどれだけ世論を説得できるのであろうか。

 団通信一〇三七号で松島氏は「今回のテロに対する怒りがわいてこない」、「なぜ彼らが絶望的反応をとるに至ったかを問うことなし」に糾弾するのは「空疎」であるとも述べている。松島氏だけではない。テロ直後に私が議論したある団員は、「内心ではいい気味だと思った」とまで語っていた。このような感性に私は全く共感できないし、団員がこうした発言をすることに大きなショックを感じる。

 今回の団の『有事法制に反対する意見書』の中にも、「テロリズムは差別と貧困の中で生まれた呪詛の結晶のようなものであり、その差別や貧困を克服しない限りどこにでも土壌は生まれてくる」との一文がある。あまりに観念的なテロリズムの美化と容認論であり、団の意見書にこのような表現があることに驚く。現実の国際テロは多数の民衆を標的とする卑劣な組織犯罪であって、「呪詛の結晶」などというロマンチックな形容を冠すべきではない(なお、意見書はこうしたテロ容認論の裏返しとして、テロ後の世界は「戦争ヒステリー」に陥ったと決めつけているが、これも不適切・不穏当な表現である)。

 数千名の犠牲者を出した卑劣なテロに対し、我々はアメリカのアフガン空爆に対してと同様に、「本気で」憤り、無条件に糾弾すべきである。報復戦争反対の「枕詞」のように「テロ糾弾」をいうべきではない。それがテロと報復の連鎖を断ち、非暴力平和をめざす実践の前提であろう。

 我々自身がテロに「本気で」憤らず、内心で容認するものが少しでもあるのなら、いくらアメリカの討伐戦争反対を叫んでも運動が広がらないのは当然ではないだろうか。


緊急出版!

「有事法制−だれのため?なんのため?」

ブックレットを大量に活用しよう!


東京支部  吉 田 健 一


 今国会での有事法制の立法化に向けて、政府・与党の動きがいよいよ本格化してきました。自由法曹団では、提出が予定されている有事法制について解明した内容をわかりやすくブックレット(A五版・八〇ページ)にまとめ、三月二五日、学習の友社から緊急出版しました。

 今なぜ戦争のための有事法制が提出されようとしているのか、アメリカが現に行っているアフガニスタンでの戦争や日本の参戦、新ガイドラインやブッシュ政権の要求などについても検討し、有事法制の経過や問題点を具体的にわかりやすく解明した手軽な読み物として緊急出版したのがこのブックレットです。

 このブックレットでは、有事法制が軍事を最優先して国民を戦争に動員し、国民の生活や人権を侵害するとともに、行政や自治体の本来の機能をマヒさせ、地方自治をはじめ民主主義制度そのものを破壊する危険性を具体的に明らかにしました。また、アメリカの無法な戦争の実態に対して、いまこそ日本が日本国憲法の立場にもとづく平和の役割を積極的に果たすべきことを提起しています。ここには、有事法制についての中間報告はもとより、国家機密法から周辺事態法・報復戦争参加法に至るまで、自由法曹団が平和と人権のために一貫して取り組んできた成果が凝縮されています。

 さらに、自衛隊法や国連憲章、アーミテージ報告など必要な資料も適宜引用し、活用できるよう簡潔に組み込んであります。有事法制について知りたいという方から学習会の資料などにも最適です。有事法制を許さないために、全ての団員、法律事務所事務局のみなさんがご購入いただき、お読みください。あわせて、関係団体・労組ほか依頼者やお知り合いの方々にも、大量に普及し、広くご活用ください。

【主な内容】
1 有事法制ってなに?
2 なぜ急ぐ?立法化
3 有事法制ーホントのねらいはなんだ
4 平和の道ー対話と社会的公正の追求を
5 もっと知りたい有事法制Q&A

【定価七〇〇円(本体価格六六七円ー送料別)】

【団内注文割引】
 団本部まで注文いただくと、以下の部数に応じて割引となります。
  一〇〜一九部 送料無料
  二〇〜二九部 一割引+送料無料
  三〇〜  部 二割引+送料無料

【注文方法】
 注文部数と注文主・送付先(住所・電話)を書いて団本部までFAXで申し込んでください。
 専用の注文用紙もありますので、団本部までご連絡ください。
(団のHPでも画像で本を紹介しています。ご覧ください。)


タブロイドニュース

「WHAT'S ユージホウセイ」

を活用しよう


担当事務局次長  齋 藤 園 生


 有事法制関連法案が、国会に提出されるのも間近と言われています。有事法制の危険性について、今広く国民に訴え、有事法制反対の声を大きくすることが大変重要になっています。

 有事法制阻止闘争本部では、簡単でかつわかりやすく、有事法制の危険性を訴える宣伝・学習資料として、緊急にタブロイドニュース「WHAT’S ユージホウセイ」を作成しました。タブロイド版両面だけのシンプルな資料です。表面は大阪の五四期の新人成見暁子団員が描いたイラストで、有事法制の危険性をわかりやすく訴えています。裏面では、今有事法制推進勢が推進の理由に挙げている、「備えあれば憂いなしだ」とか「テロや不審船問題があるから有事法制が必要なんだ」、「憲法の枠内だからいいんだ」等の議論にたいして反論し、国民の権利や自由を奪うだけでなく、アメリカの戦争に日本が積極的に加担していく、危険なものであることを訴えています。

 大量に購入し、手軽な学習会・宣伝資料として活用して下さい。

一部一五円で、一〇〇部単位でのまとめ買いをおねがいします。なお、五〇〇部以上の購入については一部一〇円にわりびきします。(送料別)ご注文は団本部までお願いします。