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角田 京子 税金の使い方〜長崎県裏金問題〜
加藤 雅友 同時多発テロ真相解明の文献紹介
庄司 捷彦 三月二〇日、前進座劇場(吉祥寺)へ
……芝居「生くべくんば…」のご案内
森 卓爾 弁護士による警察への依頼者密告制度
団本部・司法問題委員会 改正刑訴法の下での弁護活動を検証する集会




税金の使い方〜長崎県裏金問題〜

福岡支部  角 田 京 子

一 事件の発覚

 平成一八年一〇月、長崎県の元職員に対し、有罪判決が下されました。被告事実は、背任。県の予算で商品券や電子手帳を購入し、私的に着服した、という事件です。

 この事件をきっかけに、広く長崎県内において、職員が業者と結託し、会計手続上担当者の決済が不要とされる五〇〇〇円以下の金額に請求書を小分けさせ、請求内容と異なる備品等を納入させる、いわゆる「書き換え」という手法が横行していたことが発覚しました。さらに、実際には購入していない物品を購入したかのように装って、代金相当の金員を業者にプールさせる「預け」という手法による裏金の存在も明らかになりました。

二 自由法曹団の対応

 事件の発覚を受けて、長崎県では、弁護士三名及び税理士六名から成る外部調査委員会による調査が行われました。一一月二五日に、その調査報告書が公表されましたが、内容は、最高責任者である金子原二郎長崎県知事の責任に一切言及していない、不十分なものでした。平成一一年に、裏金の存在を知っていたことは、知事自身が認めています。是正するよう指示を出したとのことですが、裏金は今回の発覚に至るまで、長年にわたり存在していました。

 私たちは、今回の長崎県におけるいわゆる裏金問題が、長崎県民にとって、自らの属する自治体のあり方、そこで生活する住民としての権利にかかわる重大な問題であり、「基本的人権をまもり民主主義をつよめ、平和で独立した民主日本の実現に寄与することを目的」(規約二条)として、活動するわたしたちにとって、看過することのできない重要な課題であるとの立場から、去る一一月二四日に要請及び質問書を知事宛に提出しました。

三 有明弁護団との関係

 要請・質問を行った団員の中心は、よみがえれ!有明海訴訟弁護団のメンバーです。

 有明海訴訟は、佐賀地裁に対し、潮受け堤防の撤去を求める本訴に加え、排水門の常時開放や開門調査などを求める仮処分を申し立て、戦い続けています。さらに、長崎県が、干拓農地に五三億円もの税金を投入しようとしている計画を受け、二〇〇六年八月二三日、長崎地裁に対し、この公金支出を差し止める訴訟を提起するという、新たな局面を迎えました。

 裏金問題は、長崎県の財政状況に関する問題であることから、公金支出の不当性を主張するため、有明弁護団としても高い関心を持っており、要請・質問を通じて実態調査に乗り出した次第です。

四 問題点

 知事宛の要請書・質問書に対し、一二月八日に、書面での回答が長崎県から出されましたが、外部調査委員会の報告書や全員協議会における知事の発言を引用しただけの、不十分なものでした。

 私たちは、一二月一五日に再度県庁を訪問し、すでに公にされている説明では不十分だから来たのだ、当の本人である知事自身の言葉で、具体的にきちんと説明されたい旨、厳重に抗議し、回答を求めました。

 そして、一二月二五日の県庁訪問。渡された再回答書の内容は、前回の回答書の「別紙記載のとおり」の部分に、「別紙」(外部調査委員会の報告書や全員協議会における知事の発言)の記載内容を転書しただけのものでした。

 私は、三回にわたる県庁訪問に全て同行しましたが、行くたびに痛感するのは、「お役所」の隠蔽体質の根深さです。こちらの要求の意図は伝わっているはずなのに、のらりくらりの返答で、話が噛み合わない場面もしばしばあります。県民に対する説明責任を全く果たしていないどころか、果たそうという意欲すら全く感じられません。

五 これから

 私たちは、お茶を濁して幕引きを図ろうとする長崎県の対応を、絶対に許しません。知事は、自らの口で、県民の納得を得られる説明をすべきです。県職員に、その旨伝え、再度の訪問と知事への直接の面会を申し入れて、県庁を後にしました。

 問題の根本的な解決のためには、事実を明らかにするまで追及の手を緩めないことが必要です。税金の使い方は、生活に直結する問題であり、誰でも関心を持ってしかるべきテーマです。世論の高まりの後押しを切望します。



同時多発テロ真相解明の文献紹介

宮城県支部  加 藤 雅 友

 アメリカのイラク戦争は泥沼に陥っていますが、「対テロ戦争」の発端となった〇一年九月一一日の同時多発テロについて、イスラム過激派によるものではないという分析が日本語の文献でも出始めていますが、どれもがかなりの説得力のあるものですのでご紹介したいと思います。

 ―番最初に出たものがアメリカのジャーナリスト、デイブ・ヴォンクライストの作成した映像入りの本の日本語翻訳版「九・一一ボーイングを探せ―航空機は証言する(ビデオ・DVD付)」ハーモニクス出版で、九・一一直後に放映された映像や写真をもとに世界貿易センタービルやペンタゴンに突入したのがボーイング七五七型などの民間大型旅客機ではないことを明らかにしています。

 ペンタゴンの壁が火災で炎上し消火作業をしている映像や写真を示し、両翼三八メートル、垂直尾翼の高さ一四メートルの大型旅客機が衝突したにしては壁の穴が小さく(直径五メートル弱)、三万リットル以上のジェット燃料が燃えたにしては大規模な火災が起こらず、周辺には機体の残骸が全くないことが不自然だといっています。巡航ミサイルが命中した可能性が一番大きいようです。

 ニューヨークの国際貿易センタービルの倒壊については、衝突する飛行機の目撃者が窓のない貨物機のようで民間旅客機ではないといういくつかの証言や、消防士や救急隊員が飛行機の衝突のあとにビル解体用の爆薬の爆発のような規則的な多数の爆発音を聞き、そのあとにビルが崩壊したという証言があります。そして、それから八時間後にツインタワーとはまったく離れた区画にある第七ビルが垂直に崩壊する映像を示して、これは高層ビル解体用の爆薬を仕掛けての人為的な解体としか考えられないこと。そしてそのビルに連邦とニューヨーク市の諜報機関の本部が入っていて、そこから航空機を遠隔誘導して無人機を衝突させたのではないかと述べています。航空機の遠隔誘導の技術は早い時期に確立しており、アフガン空爆でもプレデターやグローバルホークという無人機が偵察や攻撃に使われています。

 さらに多くの問題点に触れているのが、ベンジャミン・フルフォード「暴かれた九・一一疑惑の真相(DVD付)」扶桑社があり、日本のジャーナリストの書いたものに成澤宗男「九・一一の謎―世界はだまされた?」金曜日社があります。

 これらの本では、ハイジャックしたとされる犯人、衝突したとされる機体を裏付ける証拠が全く公表されていないという問題点を指摘しています。事件の二日後にハイジャック犯として一九人のイスラム過激派の名前と写真が公表されましたが、その名前は四機の搭乗者名簿の中にはなく、そのうちの六人は公表直後から自分がサウジアラビアやモロッコで働いており、アメリカには行ったこともないと抗議しているのですが、アメリカ政府はこの一九人が四機の民間旅客機に搭乗した事実を証明する何の証拠も公開していません。四機の航空機についても航空機の機体の部品にはすべて製造番号が打ち込まれており、機体の破片の一部でもあれば航空機を特定できるのですが、その破片すら公表されていません。また、フライトレコーダーとボイスレコーダーの入ったブラックボックスは地上の航空機事故の場合には発見されなかった例はないのですが、この四機については予備を含めた八個のブラックボックスが発見されなかったことになっています。ただし、世界貿易センタービル跡で三個のブラックボックスを発見したがFBIに持ち去られ、それを口外するなと言われた消防士の著書が公刊されています。

 ペンタゴンの衝突事故については、この二つの本とも前に紹介した本と同じように大型民間旅客機が三万リットルの燃料を積んだまま衝突したにしてはペンタゴンの損傷があまりにも小さすぎるという点では一致しています。ニューヨークの世界貿易センタービルの倒壊についても、飛行機の突入した階に到着した消防士が火災が二箇所で起こっているが消火可能であると本部に報告したあとにビルの倒壊が起こったという証言や、高層ビルが火災によって完全に倒壊したケースはこの事件以外には全く存在しないこと。ビルの鉄骨の融点は摂氏一六四九度だが、ジェット燃料が燃えても一〇〇〇度を超えることはなく、機体が全焼したりビルが崩壊したりすることはありえない。また、ビルの倒壊前にビルの解体作業のような爆薬の連続的な爆発音が聞こえたことが消防士をはじめとする多くの人々が証言していること。また、ツインタワーの火災の影響を全く受けない場所にあった第七ビルが事故から八時間後に垂直に崩壊したことの不自然さをここでも指摘しており、ビルで大火災が起こった場合には現場保存をして原因解明をするのが常道だが、ビルの鉄骨をはじめとする残骸があっという間にリサイクル工場や廃棄物処理場に捨てられてしまい、ビルの倒壊原因はいまだに不明となっていることなども指摘されています。また、四機の旅客機は正規の進路を外れて一時間前後飛び続けたのですが、アメリカでもっと厳重な対空警戒網が敷かれているワシントンとニューヨーク中心部に飛来した飛行機には、通常なら五分以内にスクランブルがかけられるのに、当日に限って対空警戒措置が何一つとられなかったが、このようなことは、アメリカの国家機関と軍が関与していなければ起こるはずがないという疑問が記されると同時に、アメリカ政府が早い時期から事件の情報を知っていた事実も数多く述べられています。

 これらの本に記された問題点をとても短い文章で要約することは出来ず、これらの本やDVDを見ていただくのが一番よいと思います。

 なお、これらの本で登場してくるアメリカ諜報機関の問題を含めたアメリカの軍事態勢ついては藤岡惇「グローバリゼーションと戦争―宇宙と核の覇権めざすアメリカ」大月書店が最良のものです。イラク戦争もアメリカの膨大な軍事衛星網と精密誘導兵器があったために、大人と子供のけんかのようになったことがよくわかりますし、ミサイル防衛計画の本当の意図についても教えられることがありました。これも一読の価値があると思います。



三月二〇日、前進座劇場(吉祥寺)へ

……芝居「生くべくんば…」のご案内

宮城県支部  庄 司 捷 彦

 各地で平和運動に携わっている団員諸兄は、すでに来春に完成する「日本の青空」という映画をご存知であり、それぞれにはすでにその上映運動の取り組みを始めておられる方もあるのではないでしょうか。当地の「石巻・九条の会」でも、この運動を開始しています。この映画は、日本国憲法の制定に深く関わった憲法学者鈴木安蔵の生涯を描きながら、日本人民の闘いが憲法人権規定を準備し、実現させた過程を描き、横行する「押しつけ憲法」論の欺瞞を暴露する内容なのだそうです。〇七年の憲法改悪反対運動の大きな武器になるものと思います。

 さて、鈴木安蔵氏らと同時代を生き、我が国の人権確立の闘争に大きな足跡を残した自由法曹団の先達の一人に、布施辰治がおります。〇四年秋、韓国政府から「建国勲章」を授与されて話題を呼びました。以来、日本国内でも、いくつもの布施辰治を話題にした企画が催されました。母校明治大学では、本校ばかりでなく仙台でも記念講演会を行いましたし、石巻でも実施しました。〇六年一〇月、仙台のアマチュア劇団が「疾駆る人(はせるひと)・弁護士布施辰治」と題する芝居を上演し、好評を博しました。特に辰治が現憲法の価値について弁じる最後のシーンが大きな感動を呼びました。

 それと前後してビッグニュースが飛び込んできたのです。なんと劇団前進座が〇七年三月二〇日から六日間、弁護士布施辰治を主人公とする芝居「生くべくんば…」(仮題)を、吉祥寺の前進座劇場で上演するというニュースです。前進座から脚本家・演出家の方々が石巻まで取材に来たり、私と大石進さん(辰治の孫)も加わった座談会が前進座の機関紙に掲載されるなど、準備が進められています。どんな芝居になるか、胸躍る思いをしています。

 団員のみなさんにも、この欄をお借りして、大きな声で、呼びかけます。是非、〇七年三月、東京吉祥寺前進座劇場へご参集下さい。団本部が窓口となっていただけるならばと願ってもおります。尚、宮城の救援会では、観劇ツアーも企画しています。この芝居が、明治憲法下で日本人民がどのような権利闘争を展開したのか、そして憲法の人権諸規定を現実化させたのはこの闘争であったことを、学ぶ契機になることは必定です。この芝居観劇を通じて、歴史の歯車を逆行させようとする勢力への怒りを蓄え、世界が渇望している「九条を守る」課題を達成する熱情を熟成させようではありませんか。

 最後に、本の宣伝を!。救援会宮城県本部は「裁判員制度でえん罪はなくなるのでしょうか」と題するブックレットを発行しました。小田中聰樹先生の講演を活字にしたものです。六四頁、一冊三〇〇円、一〇部以上送料無料。注文はFAX〇二二―二二二―六四五〇・救援会宮城県本部宛に。



弁護士による警察への依頼者密告制度

神奈川支部  森   卓 爾

 政府は、今年の通常国会に犯罪収益流通防止法案(仮称)を提出しようとしており、その中で、金融機関や非金融機関である不動産業者や宝石商だけでなく、弁護士など法律・会計専門家についても(1)依頼者の身元確認(本人確認義務)、(2)取引記録の保存義務、(3)疑わしい取引の届出義務を明記して立法化しようとしている。

 従前、ゲートキーパー規制と言われたもので、弁護士にゲートキーパー(門番)の役割を持たせようと意図した規制であった。

 FATA(金融活動作業部会)は、二〇〇三年六月の本会議で新しい勧告を採択し、金融機関に対して適用される本人確認及び記録保存義務は、弁護士が左記の活動に関して依頼者のために取引を準備し、または取引を実施する場合は弁護士にも適用されるとしている。


不動産取引

依頼者の金銭、有価証券その他の資産の管理

銀行預金口座、貯蓄預金口座、証券口座の管理

会社の設立、運転または経営のための出資金の取りまとめ

法人または法的機構の設立、運転または経営、並びに事業組織の売買

 この勧告については、日弁連をはじめ世界各国の弁護士会が反対の態度を表明していた。

 日弁連は、ゲートキーパー問題対策本部を設置して反対運動に取り組んできたが、政府は、二〇〇五年一一月金融情報機関(FIU・疑わしい取引の届出先)を金融庁から警察庁へ移管すると決定した。

 疑わしい取引の届出先を警察庁とすることは、弁護士が依頼者の情報を警察庁へ密告することを意味しており、弁護士制度の根幹を揺るがすものであるとして、日弁連は「弁護士による依頼者の密告制度」の新設に断固反対であるとの態度を決めたのである(二〇〇五年一一月一八日会長声明、二〇〇六年五月二六日日弁連総会決議)。日弁連総会決議は「弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の立法化を阻止する決議」と本件を「弁護士による依頼者密告制度」と定義づけた。

 現在、警察庁が中心となり「犯罪収益流通防止法案」(仮称)の立法化の準備が進められており、警察庁は、弁護士に関して、立法化の内容として、(1)弁護士が講ずべき措置の内容は日弁連の会則で定めることとする、(2)弁護士による疑わしい取引の届出は日弁連に対して行うこととする、(3)政府と日弁連とは犯罪収益等の流通に関し相互に協力しなければならないこととする内容を日弁連に伝えて来ている。

 日弁連は、警察庁の提案を受けて警察庁案の問題点を指摘してこれを受け入れることは出来ないとした上で、日弁連としても弁護士がマネーロンダリング等に関与することが無いようFATFの勧告が求めている冒頭に記載した三つの措置のうち依頼者の本人確認及び取引記録保存の二つの措置については、弁護士及び弁護士法人の職務の適性等を図る上で必要との観点から「依頼者の身元確認・記録保存等に関する規程」を定めることとしている。

 同規程は、依頼者の身元確認(二条)、記録の保存(三条)、現金等を預かる際の適切な措置(四条)、事件受任の際の適切な措置(五条)、事件受任後の適切な措置(六条)の六ヶ条から成っており、事件受任の際は本人確認を公的書類で行うこと、記録の保存を五年間行うこと、事件受任に際しては依頼の目的が犯罪収益流通の実現に関わるものであるか否かを慎重に検討し、そのようなものであるときは受任してならないとし、受任後判明した場合は依頼者を説得し、説得に応じない場合は辞任しなければならないとしている。 弁護士の職務上の義務を定めたものであるが、これで政府(警察庁)が納得するとも思えない。

 日弁連としては、更なる反対運動が必要であり、弁護士制度の根幹を揺るがす制度であるとして国民の理解を求める運動も必要である。



改正刑訴法の下での弁護活動を検証する集会

団本部・司法問題委員会

 改正刑訴法施行一年あまりが経過し、争点整理手続のもとでの弁護活動の変化、問題点を検証する集会を開催します。企画の趣旨・概要についての詳細は、次号以下にてお知らせいたしますが、ぜひ多数の団員のみなさまにご参加いただきたく、日程をお控えください。

  日時 二〇〇七年三月一六日 午後三〜六時

  場所 団本部

  内容 (1)争点整理手続を経験した弁護人による事例報告

      (2)講演 講師=小田中聡樹・東北大学名誉教授