第1729号 / 1 / 21

カテゴリ:団通信

【今号の内容】

●「人類と核の関係」を考える-核兵器も原発もない世界を実現しよう  大久保 賢一

●札幌弁護士会「捜査関係事項照会に対する公立図書館等の対応に関する意見」について
                                   小野寺信勝 / 齋藤 耕 / 桝井 妙子
●コロナ禍における整理解雇に対する仮処分決定のご報告  長沼  拓

●京都市は団体交渉に応じよ!~福祉保育労学童保育児童館支部の闘い  大河原 壽貴

●それは一本の電話から~主基田抜穂の儀参列等違憲住民訴訟  諸富  健

●ヤサカ交通株式会社による不当労働行為  佐藤 雄一郎

●法制審民訴法(IT化関係)部会、パブリックコメントへの対応を(前編)  正木 みどり

●新春ニュースに学ぶ(その1)  永尾 廣久


※渡辺正雄団員を偲んで

井上 幸夫 /上条 貞夫 / 柳澤 尚武 / 小木 和男 / 今野 久子

*新入団員紹介特集
○新入団員ご挨拶  桐山 圭悟
○ご挨拶  守屋  典

●映画「レッド・パージ(仮題)」-制作支援協賛金のお願い  新宅 正雄

 


 

「人類と核の関係」を考える-核兵器も原発もない世界を実現しよう
                               埼玉支部  大 久 保 賢 一

二〇二一年という年
 二〇二一年一月二二日に、核兵器禁止条約が発効する。そして、三月一一日で、福島原発事故から一〇年を経過することになる。今年は、「人類と核の関係」を考えるうえで、大きな画期となるであろう。
 核兵器禁止条約は、核兵器の使用はヒバクシャに「容認しがたい苦痛と被害」をもたらしたし、人類社会に「壊滅的人道上の結末」をもたらすとしている。そして、それを免れるためには核兵器の禁止と廃絶が必要だとしている。この条約が法的な効力を持つ意義を確認しておきたい。
 核兵器は無差別、残虐、大量殺傷を目的とする「最終兵器」であり、原発は電気エネルギーを確保するための装置である。その違いを忘れてはならない。けれども、そこには人類が対抗策を確立できていない放射能被害という共通テーマが伏在している。
 フクシマ原発事故により、直接的あるいは間接的死傷はもとより、生業や故郷の喪失、家族の離散など重大な被害が発生し、現在も継続している。原発事故による被害の特徴は、放射線に起因するがゆえに、被害が広範囲で深刻になることである。そして、その対処方法が物理的にも時間的にも制約されることにある。フクシマ原発事故に起因する苦痛と被害も容認しがたいし、「非人道的側面」を否定できないのである。
 原発は、核分裂物質と核分裂反応を利用する装置であるがゆえに、放射能という本質的危険を内包している。そして、間違いを犯さない人間も故障しない機械もありえないので、重大事故の発生は避けられないのである。更にいえば、電気エネルギーを安全に確保する代替手段は存在するのであるから「地獄の業火」に依存しなければならない理由もない。原発の存在にはリスクを伴うが、その廃止にリスクはないのである。
 そして、原発のリスクを解消できないとすれば、核兵器のリスクも解消できないことになる。原発稼働の結果発生するプルトニウムは核兵器の原材料となるからである。原発は核兵器同様、可及的速やかに、人類社会の負の遺産として、退場させなければならない。

政府と電力会社の姿勢
 政府は、福島原発事故は収束している。原発はベースロード電源である。安全性が確認できた原発から再稼働するとしている。電力会社も、原発の廃止をその方針としていないし、一刻も早い再稼働を狙っている。加えて、損害賠償額は徹底的に争っているし、賠償費用を電気料金に上乗せしようともしている。そこには反省も恥じらいもない。無責任と強欲が透けて見える。要するに、彼らは、原発事故などなかったかのように振る舞っているのである。
 更に、政府は、核兵器禁止条約に署名も批准もしないと断言している。アメリカの「核の傘」によってわが国の安全保障を確保しているのだから、核兵器禁止などは論外だというのである。加えて、米国の核兵器先制不使用政策には反対し、敵基地攻撃を企画している。自衛のためには核兵器に依存するし、場合によっては、外国領土での武力行使を行うというのである。原爆被害の実相も憲法九条の非軍事平和規範も無視されているのである。
 ここに見られるのは、過酷事故を含む原発の危険性の無視と核兵器の容認である。その背景にあるのは、「利潤追求」と「力による支配」の貫徹である。人々の生命や生活よりも、資本の利潤と国家の暴力が優先されているのである。「我亡き後に洪水は来たれ」という声が聞こえるようである。核兵器や原発の廃止を求めることは、政府と巨大資本の方針と正面から対峙することを意味している。一筋縄では太刀打ちできない権力との対抗であることを忘れてはならない。

核兵器と原発の廃止の可能
 けれども、絶望も悲観も不必要である。核兵器も原発も人間が作ったものだからである。コロナも含め疫病の蔓延や気候危機は、人間の営みに起因している側面があるけれど、人間の製造物以外の存在がかかわっている現象である。それらに比べれば、核兵器や原発は人間の知恵と技術の産物であるから、その対処は容易であろう。
 当面、核弾頭をミサイルから取り外せばいいし、原子炉を停止すればいいだけの話である。核弾頭は九ヵ国の一万三千発強だし、稼働中の原発は三一ヵ国の四四二基 (日本原子力産業協会HP) である。核弾頭は、ピーク時には約七万発あったけれど、現在はその二割程度に減少している。原発を止めることなど造作もないことであろう。現に、日本の原発すべてが停止していたことがある。やる気になればできるのである。政府と電力資本にやる気がないだけの話である。
 政府の方針の転換は選挙で議会の構成を変えれば可能である。電力会社は法律によってコントロールできる。要するに、私たちが、誰を国会に送り出すかということにかかっているのである。逆にいえば、人々がその選択をしない限り、その日は来ないことになる。

まとめ
 「この時代のこの国では、国民の感情が全てである。それがあれば、何も失敗することはない。それに反しては、何も成功できない」とリンカーンは言ったそうだ。この言葉のとおりであるとすれば、「国民の感情」にどう働きかけるかがポイントとなるであろう。このポイント(分岐点)は、資本主義的生産様式を転換しようということではない。核兵器に頼らない国家安全保障政策を考えよう、核分裂反応に頼らないで電気エネルギーを確保しようという提案である。
 核に頼っていては、「壊滅的人道上の結末」の危険性から解放されないし、その危険性が現実化すれば、私たちの日常が根底から転覆されてしまうことになる。
 核兵器と原発は別のものではあるが、両方とも危険で不要なものである。だから、核との決別は喫緊の課題である。それを阻む政府や資本との対抗も不可欠である。二〇二一年をそういうたたかいの年にしなければならない。(二〇二一年一月七日記)

 

 

札幌弁護士会「捜査関係事項照会に対する公立図書館等の対応に関する意見」について
           北海道支部  小 野 寺 信 勝 / 齋 藤   耕 / 桝 井 妙 子

 二〇二〇年一二月二三日、札幌弁護士会は、砂子章彦会長名で、「捜査関係事項照会に対する公立図書館等の対応に関する意見」を発表した。
 同意見書を発表する契機となったのは、二〇一七年四月、苫小牧市立中央図書館が苫小牧警察署の捜査関係事項照会に応じ、特定の図書館利用者の情報提供していたことが地元苫小牧民報の報道で明らかとなったことである。
 その後の北海道新聞の記事では、警察署から同様の照会を受けた公立図書館は複数あり、その対応は、各図書館によって異なっているとのことであった。
 このような報道を受け、札幌弁護士会憲法委員会(藤本明委員長代行)では、図書館が警察署の捜査関係事項照会に応じ、市民の図書館利用者を任意に提供することは、利用者のプライバシー等を侵害するもので、問題ではないか、との議論を開始した。
 議論の中では、(残念ながら)現状、捜査機関が、捜査関係事項照会を濫用的に利用しているケースは多くみられ、図書館情報のみを問題にする必要があるのか、などの意見もあった。
 しかし、捜査機関による濫用的な捜査関係事項照会の利用に警鐘を鳴らす意味があること、さらには、日本の図書館を代表する総合的な全国組織である日本図書館協会が公表した「図書館の自由に関する宣言」(一九五四年採択、一九七九年改訂)に、「すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。この権利を社会的に保障することは、すなわち知る自由を保障することである。図書館は、まさにこのことに責任を負う機関である。」(日本図書館協会)などと謳われていることからしても、図書館が捜査関係事項照会に安易に応じることは看過し難い問題であるとの結論に至った。
 そこで、憲法委員会内に、担当PTを設置し、事実関係を調査し、日本図書館協会の担当者のアドバイスを得ながら、質問事項を整理し、二〇二〇年三月、札幌弁護士会管内の各自治体(の図書館)、大学図書館合計一〇二館にアンケートを送付した。
 結果、同年五月末までに合計四三館から回答を得た。
 回答結果を整理すると、これまで、地元警察署から、捜査関係事項照会書に基づく照会を受けた図書館は合計一〇館あり、そのうち、五館が警察署に回答したとのことであった。
 アンケート回答からは、警察からの照会を受けた際、どうすればよいのか、悩んでいる職員がいることが確認できた。
 こうした結果を受け、札幌弁護士会としての見解を発表する準備を始め、憲法委員会での議論を経て、意見書を作成し、常議員会での承認を経て、公表されたのが、表題の意見書である。
 意見書は、アンケートの送付先の外、北海道警察、さらに、他の地域でも同様の問題があると考えられたため、警察庁にも送付し、記者発表も行った。
 共同通信が記事を発信し、北海道新聞にも大きく記事が取り上げられ、国立国会図書館のサイトで紹介された。
 反響は、予想以上にあり、弁護士会事務局に対し、意見書の内容についての問い合わせの電話等が複数あった。
 その内容としては、弁護士会としてこのような意見書を発表してもらったことで、今後、警察からの照会等があった場合、安心して、回答を拒否できると言ったものであった。
 同様の問題は、全国の図書館で生じている可能性が高い。
 そこで、全国の単位会等で、同様の調査をしていただければ、と思い、団通信に報告させていただいた。
 (同様の調査をされる単位会において、必要があれば、札幌弁護士会で作成したアンケート事項を提供することは可能と思われる。)

 

 

コロナ禍における整理解雇に対する仮処分決定のご報告  宮城県支部  長 沼   拓

一 事案概要
 二〇二〇年四月三〇日、タクシー会社である株式会社センバ流通(以下「センバ流通」)がタクシードライバーである組合員八名を解雇した。この八名はセンバ流通における組合員全員であるが、組合員以外の従業員の大半も解雇された。
 解雇理由はコロナ禍における休車による営業収入の低下によって、雇用を維持できないというものであった。
 解雇された組合員のうち四名が仙台地裁に対し、賃金仮払いと仮の地位を求めて仮処分を申し立てた。この債権者四名については、いずれも六〇代から七〇代であり厚生年金を受給していた。
 仙台地裁は本件解雇を無効と判断するも、支払われるべき賃金額については最低賃金額の六割とし、さらにその金額のうちの一部についてのみ保全の必要性を認め、加えて債権者一名については約一二〇万円の預貯金を有していることを理由として保全の必要性を否定した(以下「本決定」)。
 保全の必要性が否定された債権者一名については、即時抗告を申し立てたが、本決定後、裁判外において債権者らとセンバ流通の間で和解(和解の内容は非公開)が成立したため、即時抗告を取り下げた。
 以下では、本決定の内容とその問題について報告する。

二 本件の主要な争点
 ①本件解雇は無効か
 ②本件解雇が無効だとして、完全歩合制が採られている中で、休業中の債権者に支払われるべき賃金額はいくらか
 ③労働契約上の地位の保全の必要性があるか
 ④賃金仮払いの保全の必要性はあるか

三 本決定の内容
(1)争点①について
ア 本決定は、本件解雇が整理解雇の四要素をいずれも充足しないものとして、本件解雇を無効とした。
イ 人員削減の必要性については、センバ流通が債務超過に陥っていることや新型コロナの影響がいつまで続くか不明確な状況にあることを指摘し、人員削減の必要性及びその必要性が相応に緊急かつ高度なものであることについて疎明があったとしつつも、雇用調整助成金を利用することにより賃金の大半を填補することができることや、臨時休車措置等をとることによって経費削減の余地があること、関連会社や金融機関から融資を受ける余地があったこと等の理由から直ちに整理解雇を行わなければ倒産が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性があったことの疎明があったとはいえないと結論付けた。
ウ 解雇回避措置の相当性については、センバ流通が本件解雇に先立ち、雇用調整助成金の申請や臨時休車措置の活用をしていないことを指摘し、これらの措置を利用することが強く要請されていたとして、解雇回避措置の相当性は相当低いと結論付けた。
エ 人員選択の合理性及び手続きの相当性については、いずれも低いと結論付けた。
(2)争点②について
 債権者らはいずれも完全歩合制であり、歩合給が最低賃金に満たない場合は最低賃金額が支払われるという雇用契約になっていることを指摘したうえで、現時点では、債権者らが稼働を継続していた場合に令和二年一月から三月までの平均賃金相当額を得られることの疎明がないとして、平均賃金の計算期間を五月~七月(休業後の期間)としたうえで、最低賃金額の六割(労基法二六条)の限度で被保全権利が認められると結論づけた。債権者らが得られることが疎明されている賃金の金額は最低賃金額に勤務時間の平均値を乗じた額であるとした。
 本件決定は、さらに、センバ流通が休業を命じたことについて民法五三六条二項の帰責事由がないという理由で、上記最低賃金で計算された賃金の六割(労基法二六条)の限度で被保全権利が認められると結論づけた。
(3)争点③について
 賃金仮払いが認められている以上地位保全の必要性を認める特段の事情はないと結論付けた。
(4)争点④について
 債権者らの陳述書で記載した支出のうち仙台市の標準生計費より過大なものは標準生計費によるという基準によって、債権者三名に対しそれぞれ月額五万円、三万円、一万二〇〇〇円の限度で、一年間に限り、賃金仮払いの必要性を認めた(この三名の債権者はいずれも厚生年金を受給しており月に十数万円の収入がある)。
 一方、債権者一名については、年金収入に加えて約一二〇万円の預貯金額があることを理由として賃金仮払いの必要性を認めなかった。

四 本決定に対する評価
(1)解雇無効について
 この点については概ね評価できる。
(2)被保全権利として認められた賃金額について
 本決定が、平均賃金ではなく、最低賃金の六割の限度でしか賃金請求権を認めなかったことについては大きな問題がある。
 労基法二六条は、「平均賃金」の六割以上の手当てを支払うことを義務付けているにもかかわらず、本決定は休業中であることを理由に、平均賃金の計算期間を決定直前の五月~七月とし、「最低賃金で計算した賃金」の六割を支払えば足りると判断したが、これは明らかに労基法第一二条の「平均賃金」の算定方法を誤ったものである(労基法一二条における算定事由発生日は、「休業した日」であるから、休業前の三か月の六割で計算する必要がある。)。
(3)保全の必要性について
ア 債権者一名について、月十数万円の年金と預貯金が一二〇万円程度あることを理由として賃金仮払いの必要性すら認めなかったことについては大きな問題がある。年金だけでは従前の生活を維持していくことは当然できず、預貯金を切り崩しながら生活していかなければならないが、このような状態で本案の訴訟を維持していくことは事実上困難である。
イ さらに保全の必要性が認められた債権者らについても、認められた金額はそれぞれ月額一万二〇〇〇円、三万円、五万円であり、各債権者が毎月十数万円の年金を受給していたことを考慮したとしても、その金額はあまりにも僅少である。
ウ 以上のように保全の必要性を極端に厳格に判断する運用に対しては、厳しく批判していく必要があり、これからの重要な課題である。

 

 

京都市は団体交渉に応じよ!~福祉保育労学童保育児童館支部の闘い
                                                                                               京都支部  大 河 原 壽 貴

一 京都市の学童保育事業と職員処遇実施要綱
 学童保育は、小学生の放課後の学びや遊び、そして生活の場としての役割を担っています。とりわけ、共働き世帯などにとっては欠かせない施設であり、児童福祉法においても、市町村が自ら、あるいは、事業者と連携して学童保育事業を担うことが位置づけられています。
 京都市は、指定管理ないしは事業委託のかたちで民間の団体や法人に委託して学童保育事業を営んでいます。そして、委託にあたり、京都市は、職員処遇実施要綱を定め、委託先となる団体や法人に対して、それを示して守らせてきました。職員処遇実施要綱では、学童保育所・児童館職員の賃金について、京都市職員の俸給表に準拠する俸給表が定められ、昇給に関する措置や手当等についても詳細に定められてきました。また、職員処遇実施要綱によって算出された職員の賃金相当額については、京都市から各団体・法人に支払われる委託料として算定され、各団体・法人の持ち出しとならないようにされてきました。このような制度によって、学童保育所・児童館の職員の賃金・労働条件が確保されてきたのです。

二 京都市に団交を応諾させた三〇年前の闘争
 学童保育所・児童館職員の給与は、もっぱら職員処遇実施要綱によって定められてきました。そのため、学童保育所や児童館を運営する団体・法人と、そこで働く労働者が団体交渉をしても、職場環境の改善などは交渉事項になっても、給与や勤務条件になると、「要綱で定められているので」という回答しか得られず、実質的な交渉ができない状況が続いてきました。
 そのような中で、福祉保育労学童保育児童館支部に結集する労働者は、賃上げや勤務条件の改善を求めて、職員処遇実施要項を定める京都市に対して団体交渉を求めました。一九八九(平成元)年のことです。これに対して京都市は、直接の雇用関係にないことを理由に交渉を拒否しました。
 そして、一九八九(平成元)年三月、福祉保育労学童保育児童館支部等は、京都地方労働委員会(当時)に対し、京都市の団体交渉拒否について不当労働行為救済申立てを行ったのです。
 不当労働行為救済申立事件の審問手続きを経て、和解協議が進められていた同年九月七日、京都市は、京都市長名で「団体交渉の申入れについて(回答)」を出し、団体交渉に応じることを自ら認めたのです。
 その後、二〇一九(令和元)年に至るまでの三〇年間、京都市は福祉保育労学童保育所児童館支部等との団体交渉を毎年行ってきました。

三 京都市の団体交渉拒否
 二〇二〇(令和二)年四月三〇日、京都市は、何らの交渉も打診もなく、「職員処遇実施要綱」を「人件費算定基準に関する要綱」とする変更を一方的に行ってきました。「職員処遇実施要綱」の第一条で要綱の目的として定められていた「職員の労働条件の確立」との文言も一方的に削除されました。そして、かかる要綱の変更にあわせて、学童保育所や児童館を運営する団体・法人へ支払われる委託料の算定方法の改悪も同時に行いました。まさに、職員の労働条件に直結する改悪が、労働組合との協議もなく行われたのです。
 福祉保育労学童保育児童館支部はこれに対して、抗議と団体交渉の申し入れを即座に行いました。しかしながら、京都市の回答は、まるで三〇年前に遡ったように、直接の雇用関係にないため、団体交渉に応じる義務はないとの回答でした。

四 不当労働行為救済申立、再び
 確かに、京都市は学童保育所や児童館で働く労働者の直接の雇用者ではありません。しかしながら、京都市は職員処遇実施要項を定め、それを各運営団体・法人に守らせることで、労働者の労働条件を実質的に決定してきました。
 そして、三〇年前の闘争の過程で、京都市は自ら団体交渉に応じることを認め、以後、三〇年に渡って、実際に団体交渉を行ってきたのです。その内容も、職員処遇実施要綱の改定があれば、その度に交渉が行われ、また、福祉保育労学童保育児童館支部からの要求が出され、団体交渉を経て要綱の改定がなされたこともあるなど、実質的な団体交渉の内実を伴っていたのです。
 労働組合法第七条に定める「使用者」は、決して形式的な雇用契約上の使用者に限られるわけではありません。京都市は、学童保育所や児童館で働く労働者の労働関係に実質的に強い支配力や影響力を有しており、雇用主と同視できる立場にあり、労働契約法上の「使用者」として、団体交渉に応じるべき立場にあるのです。京都市の団体交渉拒否は不当労働行為にあたります。
 二〇二〇(令和二)年一二月二三日、福祉保育労学童保育児童館支部等は、京都府労働委員会に対して、再び、不当労働行為の救済を申し立てました。

五 京都市は学童保育所・児童館職員の労働条件に責任をもて
 京都市が、学童保育所や児童館を運営する団体・法人に対して、職員処遇実施要項を定め、そこで働く労働者の労働条件を定めてきたことは、学童保育事業に責任を持つ地方自治体として当然のことです。そして、このことは、地方自治体が委託する事業について、そこで働く労働者の労働条件を定めるという、公契約条例の考え方を先んじて行ってきたものとも言えます。
 今回、京都市が、職員処遇実施要綱やその運用を改悪したことは、全国で進められている公契約条例とそれに基づく労働者の労働条件の底上げという流れに逆行するものと言わざるを得ません。さらには、コロナ禍の中で、学童保育所・児童館職員も含めたエッセンシャルワーカーの役割が改めて見直されている中で、その労働条件の切り崩しにつながる改悪を行ったことは到底許すことはできません。
 京都市に対して、再び団体交渉に応じさせ、学童保育所・児童館職員の労働条件に責任を持たせるよう全力を尽くします。ご支援をよろしくお願いします。この事件は、中村和雄団員、塩見卓也団員(市民共同)、秋山健司団員、藤井豊団員、谷文彰団員、大河原(京都第一)が担当しています。

 

 

それは一本の電話から~主基田抜穂の儀参列等違憲住民訴訟  京都支部  諸 富   健

 二〇一九年一〇月初旬、大学時代同じゼミに所属していた大阪の弁護士から事務所に電話がかかってきました。曰く、「主基田(すきでん)が京都に選ばれたよね。その件で、住民監査請求をしたグループがいるんだけど、もうすぐ監査結果が出るらしい。ついては、僕は忙しくて担当できないんだけど、住民訴訟は京都地裁になるし、引き受けてくれないかな。」……。
 私も忙しくないわけではなかったのですが、所属する京都のオンブズマンの一つ「市民ウオッチャー・京都」でも話題にしていましたし、憲法問題も取り組んできていて関心もありましたので、とりあえず請求人の代表者と一週間後に会うことにしました。ところが、もうすぐどころか弁護士からの電話の直後には棄却決定が出て、代表者と会った翌週には請求人グループ及び大阪の弁護士との会議。その間に「市民ウオッチャー・京都」所属の弁護士に声かけをして、二週間後にもう一度会議。一一月四日に提訴して記者会見と、あれよあれよという間に渦中に飛び込むことになりました。
 と、前置きが長くなってしまいましたが、今回の住民訴訟は、政教分離原則違反を問うど真ん中の事件です。ご周知のとおり、二〇一九年の天皇代替わりにより、様々な儀式が挙行されましたが、そのうち、毎年一一月に行われる宮中祭祀の新嘗祭を天皇代替わりの年に初めて行うのが大嘗祭です。大嘗祭では新穀を供えるのですが、新穀の産地は亀甲を焼いて行うという呪術によって東西二つの地域から選ばれます。東を悠紀(ゆき)地方、西を主基(すき)地方と言うのですが、今回の主基(すき)地方に選ばれたのが京都府でした。九月に米を収穫する儀式「主基田抜穂(すきでんぬきほ)の儀」、一〇月に新穀献納の儀、一一月に大嘗宮の儀(とりわけ「悠紀田供餞の儀」「主基殿供餞の儀」)及び大饗の儀が行われ、それぞれ京都府知事らが参列しました。これらの儀式の参列のために給与や旅費が支出されたことの違憲性を問うのが本件住民訴訟です。
 実は、約三〇年前の天皇代替わりの際にも、主基田に占定された大分県で本件と同様の住民訴訟が提起されましたが、住民の訴えは認められませんでした(最三小判平成一四年七月九日・集民二〇六号六〇五頁)。住民の請求を阻んだのは、いわゆる目的・効果基準です。最高裁は、主基田抜穂の儀が宗教上としての性格を有することは認めながら、①主基田抜穂の儀が皇室の伝統儀式としての性格を有すること、②宮内庁から案内を受けて、主基田抜穂の儀に参列して拝礼したにとどまること、③この参列は、開催地において重要な公職にある者の社会的儀礼として、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の即位に祝意、敬意を表する目的で行われたものであること、という理由を挙げて、政教分離原則違反を否定しました。
 しかし、絶対的な権力を持つ天皇制の下、国家神道がその精神的支柱となり、悲惨な戦争へと突き進むことになった戦前の痛苦の反省に立ち返れば、政治と宗教の関わり合いを安易に認めるべきでないことは明らかです。秋篠宮が、二〇一九年一一月の記者会見において、大嘗祭について「宗教色が強いもので、国費で賄うことが適当かどうか」と疑問を呈しましたが、当を得た指摘と言えるでしょう。
 原告団は、宗教学者、政治学者、歴史学者、女性問題研究者、在日朝鮮人など、様々なルーツを持った一二名、弁護団は政教分離原則違反を争う裁判に関わってきた大阪の弁護士六名と京都の団員弁護士四名(大河原壽貴団員、奥村一彦団員、中島晃団員、当職)の計一〇名です。安直な天皇賛美につながりかねない目的・効果基準の採用をいつまでも許しておいてよいのか、新たな闘いのスタートです。全国の団員の皆様、是非ご注目ください。

 

 

ヤサカ交通株式会社による不当労働行為  京都支部  佐 藤 雄 一 郎

 ヤサカ交通株式会社(以下、「ヤサカ交通」という)といえば、京都でも屈指のタクシー会社であり、外を歩けば、同社のタクシーを見かけない日はないほどである。そんなタクシー業界における最大手ともいえるヤサカ交通が、暴挙とも言える不当労働行為に及んだため、拙稿ではあるが以下で報告する。

 ヤサカ交通には、ヤサカ交通労働組合(以下、「ヤサカ労組」という)とヤサカ交通総合労働組合(以下、「総合労組」という)の二つの労働組合が存在する。ヤサカ労組は、ヤサカ交通に古くからある労働組合であり、総合労組は比較的新しくできた労働組合である。本件で問題となったのは、総合労組に対する不当労働行為である。
 総合労組には、事務方のトップとして委員長のI氏と書記長のY氏が就任しており、ヤサカ交通の経営や労働条件に関して、会社側と長年是々非々の交渉を続けていた。そのような折りに、ヤサカ交通の営業部長としてT氏が着任することになったのが、T氏は様々な問題のある人物で、総合労組はT氏の営業部長着任について断固反対の立場をとっていた。結局、このT氏の営業部長就任の件は、ヤサカ交通の判断で営業部長職に就任したのであるが、ここからT氏の総合労組に対する私憤が募っていき、総合労組を標的とした不当労働行為が行われていった。

 二〇二〇年九月中旬頃、総合労組の書記長である上記Y氏に対し、「懲戒事案」と題する書面がY氏宛に送付された。この書面には、Y氏が社内掲示板に、ヤサカ交通に無断で嘘の掲示物を貼り付け、会社を混乱に陥れたとして、ヤサカ交通就業規則の服務規律違反(根拠条項は不明)に該当するため、懲戒解雇処分をする旨の記載がなされていた。Y氏は懲戒解雇処分の根拠が不明であったため、解雇通知書と解雇理由書の交付を要求したものの、T氏によって拒絶されている。
 上記「懲戒事案」との書面に記載された「Y氏が社内掲示板に、ヤサカ交通に無断で嘘の掲示物を貼り付け、会社を混乱に陥れた」との部分は、以下のような経緯によるものであり、ヤサカ交通(主にT氏)の主張するような懲戒事由該当行為に当たるものではない。すなわち、同年八月下旬に、確かにY氏は「公開質問状」というタイトルの掲示物を掲示板に貼り付けている。しかし、この掲示物は総合労組の掲示板であって、ヤサカ交通の承諾など不要なものであるし、内容面もT氏が導入した新給与規程が労働者の給与を一方的に削減するものであることへの批判など労働条件が改悪されている現状に対して、総合労組の書記長としての立場から、組合員への周知も兼ねて掲示したものであった。個人名の掲示であったものの、総合労組委員長I氏の事前同意も得ていたものであり、何ら法的に問題のない掲示であった。ただ、同掲示物には、文中にT氏が一度ヤサカ交通を解雇された旨の記載があった(後に事実と相違があったため、書面で撤回している)。Y氏への懲戒解雇処分の理由は、上記掲示物を貼り付けたことのみであり、他に理由はない。本件懲戒解雇処分は、戒告や減給などといった軽い処分の検討もされず、T氏主導で碌な手続保障もなく進められた異常ともいえる懲戒解雇処分であったため、T氏による私憤を晴らすため、総合労組書記長のY氏を標的にしたものとしか思われないものであった。
 さて、紙幅の関係上、本件について更に詳細に報告することはできないが、Y氏の懲戒解雇処分、ヤサカ交通の従業員N氏への自宅待機命令(詳細は別の機会に譲る)、総合労組の掲示板の利用等について、Y氏の地位確認訴訟を提起する前に団体交渉に臨み、一定の合意に至っていたが、結局反故にされるなど本件についてはまだまだ報告すべきことが多いが、本稿ではひとまずここで報告を終えたい。前時代的な不当労働行為を改めさせるべく、今後も弁護活動を継続していく。

 

 

法制審民訴法(IT化関係)部会、パブリックコメントへの対応を(前編)
                                                                                             大阪支部  正 木 み ど り

一 民訴法改正に向けた中間試案のパブリックコメントが実施される
 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会で、昨年一二月二五日、民訴法改正に向けた中間試案のたたき台が提出された。法制審部会のホームページで公開されている。この中間試案たたき台には、【P】と書かれた項目がいくつかある。それは、議論が積み残されていた項目であり、部会資料一〇の「和解に代わる決定」と、部会資料一一である。これらについても一二月二五日の部会で議論されたので、一月二二日の部会に提出される中間試案たたき台改訂版に書き込まれる(この改訂版もホームページで公開される)。
 そして、二月一九日の法制審部会で中間試案が確定し、パブリックコメントが実施される。期間は三月末までと想定されている。時間がない。
 本稿は、一二月二五日時点の中間試案たたき台の情報で主な内容を報告する。この時点の内容でも、検討し動き出すことができる。

二 日弁連意見書(案)の意見照会がなされる(会内の合意形成の 重要性)
 日弁連は、このパブリックコメントに日弁連意見書を提出するため、意見書(案)を作成し、会内(各弁護士会。日弁連関連委員会も対象の可能性がある)に意見照会する予定である。パブリックコメントの期間が三月末まで(想定)なので、間に合わせるため極めて短期間になる。一月二一日、二二日の日弁連理事会を経て、実質一か月にも満たない短期間の回答期限になるはずである。それらの回答状況をふまえて、必要な修正があれば修正し、三月一八日、一九日の日弁連理事会で日弁連意見の承認を求め、パブリックコメントに提出することになる。
 さらに、日弁連意見書は、法制審部会にも参考資料として提出されるので、法制審部会で、弁護士委員・幹事や日弁連は、日弁連意見書の内容と異なる意見・対応は困難になるだろう。
 つまり、日弁連意見書がどのようなものになるのかは、極めて重要な意味を持つ。中間試案は、多岐にわたる重要論点が目白押しで、その検討いかんが、国民の裁判を受ける権利、民事訴訟制度、司法や弁護士の在り方、非弁問題や地域司法問題(支部機能の一層の引き上げの懸念)等々に大きな影響を及ぼす。にもかかわらず、日弁連意見書(案)の意見照会に対して、短期間で回答しなければならない。多様な観点からの意見が必要である。日弁連意見書(案)に、国民の裁判を受ける権利等の観点から不十分な内容や問題点があった場合、そのことを指摘し修正を求める意見が寄せられる必要があるだろう。
 この点、ぜひ、自由法曹団意見書(国民の裁判を受ける権利の後退を許さない二〇二〇年一二月二二日付)を見ていただきたい。
 また、各地の弁護士会でも、重要論点にしぼってでも、意見書をパブリックコメントに出すことも大切だと思う。

三 パブリックコメントへの対応を
 一人一人が、パブリックコメントに意見を出していただくことが大切だと思う。さらに、国民の裁判を受ける権利の後退を許さないという観点から、関わっているさまざまな団体や当事者・関係者、周囲の方々などにも、状況を知らせて、パブリックコメントに意見を寄せてもらえるよう、対応や働きかけをすることが求められていると思う。
 なお、「中間試案たたき台」は、提案事項ごとに「説明文」がついているので、内容が理解しやすいが、パブリックコメントに付される「中間試案」そのものは、「説明文」が付かないので、それだけでは分かりにくい。同時に公表される説明文書もセットで読んでいただきたい。
 パブリックコメントに提出する際には、まず、意見の結論部分を明記する(例えば、甲案、乙案が提案されていれば、「甲案に反対する」とか「乙案に賛成する」等を記載する。注がある場合には、注に対する意見も記載する。結論に条件をつける場合は、この意見部分に書いておかないと、意見集約の際には反映されないので注意を要する)。その上で、「理由」を記載する、ということが重要である。結論部分を書かないと分類の際には「その他」扱いになってしまう。
 以下では、中間試案たたき台の、いくつかの項目にしぼって、報告する。

四 オンライン提出の義務化(「第一 総論」)
 甲案は、全面義務化である。例外は「電子情報処理組織を用いてすることができないやむを得ない事情があると認められるとき」だけである。
 乙案は、訴訟代理人にオンライン提出を義務化するもの。例外はない。
 丙案は、「電子情報処理組織を用いてしなければならない場合を設けない。」
 これは、国民の裁判を受ける権利に直結する問題である。
 IT化が進んでいる諸外国の例を見ても、最初は訴訟記録の電子化から、それも一気にではなく、相応の期間をかけて段階的に整備・拡充してきたものである。また、日本の議論と異なり、e法廷から開始した例は皆無である。まずは、信頼性(セキュリティを含め)・安定性・利便性の確保されたシステム作りから開始されるべきである。諸外国では、専門家についても、義務化(強制)ではなく利便性での誘導で定着を図っている。一部の国(ないし連邦国家での一部の州もしくは一部の種類の裁判所)で専門家に義務化している例はあるが、トップダウンではなく、相応の期間をかけてシステムに対する信頼性を確保し定着してから、いわば確認的な状況下での専門家への義務化である。まして、本人訴訟の本人にオンライン提出を義務化している国は、資料を見る限りではシンガポール以外には見当たらない。
 日本では、いつ、どのようなシステムが作られるのか、そのシステムは、信頼性(セキュリティを含め)・安定性・利便性がどう保障されるのか、こういったシステム内容さえ未知数の段階で、全面的なIT化の民訴法改正作業が先行しており、順番がさかさまである。
 以上のとおり、オンライン提出の義務化は、その必要性が乏しい上に(利便性で誘導すればよいだけである)、国民の裁判を受ける権利の侵害となるものであるから、その導入には反対である(丙案)。
 詳しくは、自由法曹団二〇二〇年一二月二二日意見書(ホームページ公表)を読んでいただきたい。
 なお、特に甲案は、国民の権利侵害に直結するもので取りえないと思うが、日弁連の二〇二〇年六月の意見書(日弁連ホームページ公表)との関係で、今回の中間試案に対する日弁連意見がどうなるかという問題がある。日弁連二〇二〇年六月意見書は、段階的にとして様々な条件を述べているので、少なくとも今次の民訴法改正では条文で甲案を入れるべきではない(せいぜい将来の課題)という結論になるべきだが、この点、特に注意して日弁連意見書(案)をチェックし、内容に応じて意見照会で意見を述べる必要があると思う。

五 訴えの提起、準備書面の提出(第二)
 オンライン提出について、本人確認の方法や、ID及びパスワードの付与、アカウント発行等、まだ検討が充分なされないまま議論が突き進んでいるが、なりすましや非弁問題等、重要な問題である。なお、このことは、オンライン提出だけでなく、e法廷でのなりすましや非弁問題にも関連する。

六 送達(第三)
 システム送達(電子情報処理組織を利用した送達)。ここでは、通知アドレスに通知したにもかかわらず、そのファイルを閲覧しない場合は、一定期間が経過したらみなし送達の規律が提案されている。しかし、電子メールの信頼性には限界がある。すべてを対象にすべきではない。
 さらに、訴状までシステム送達できる場面を拡大したいという思惑の「注」があるが、予期せぬ訴状送達の場面、訴訟詐欺や消費者被害の誘発、拡大につながる危険性が高く、反対である。

七 口頭弁論(第五)
 遠隔地要件を外し、裁判所は「相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて」ウェブ会議等を用いて口頭弁論の期日を行えるとするもの。この改正案は、当事者が異議を述べたとしても、裁判所の判断でウェブ会議等の方法による口頭弁論期日の開始を決定することを可能とするものである。これに後述のウェブ会議による人証調べを組みわせることもできる。
 しかし、口頭弁論が果たす役割の重要性は、私たちは実感してきているのではないか。大衆的裁判闘争の果たしてきた役割は大きいが、モニター越しになったとき、大きく減殺される。直接主義、口頭主義、公開主義といった訴訟原則の長所を減殺し、ひいては裁判を受ける権利を後退させるものである。
 直接主義も公開原則も、形式的に判断すべきではない。裁判官が法廷にいて、傍聴人が傍聴できれば、法廷のモニター越しのやり取りであっても憲法の「公開原則」は充たす、という形式論でいいとは思わない。
 また、この口頭弁論に限らず、中間試案の全体を通じて、裁判官が当事者等と直接会わずに済ませようとする方向性でいいのだろうか。ただでさえ、日本の裁判官は市民的自由もないのに、ますます裁判所の中にこもることになるのではないか。画面越しやシステム(電子情報処理組織)利用が中心になって、生身の人間に接しなくなっていいのだろうか。(続)

 

 

新春ニュースに学ぶ(その1)  福岡支部  永 尾 廣 久

 コロナ禍のもと、あわただしく去っていった一年でした。今年は一刻も早くおさまることを願っています。
 正月は午後から、うららかな陽差しのもと、庭仕事に精を出しました。いつものようにジョウビタキが「何してんの?」と近づいてきて、まとわりつくように周囲をまわります。愛敬のいい小鳥です。まだチューリップの球根が残っていましたので、雑草を抜いて植えつけました。広い庭のあちこちに合計三〇〇本も植えましたので、来る春が今から楽しみです。

離婚後に第三の氏
 「あべの総合」のニュースに森野俊彦団員による「離婚後、婚氏を続称していた女性の『第三の氏』への変更が認められました」という記事があり、驚きました。DV夫から子を連れて逃げ出した妻が離婚したあと、とりあえず結婚したときの氏を名乗っていた。しかし、元夫の氏は使いたくないので、第三の氏を名乗って三年半たったから、氏の変更を家庭裁判所に申立した。すると、「一〇年以上の使用実績が必要」と言われた。そこで、本人も子どもも大変な不便・不自由を受けていると力説して、ついに「第三の氏」への変更が認められたというのです。さすがの粘り勝ちです。
 もう一つ。中森利久団員は、大阪都構想の是非を問う住民投票のとき、大阪市内に居住する外国籍の人に投票権が認められなかったのはおかしいと強調しています。そのとおり、当然ですよね。すでに住民投票のとき外国籍の人にも投票権を認めた実例はあるわけですし、地方公共団体の選挙については最高裁も投票権を認める方向にあるわけですから、まして住民投票のときには当然、認めてよいと思います。これも私の知らない話でした。

宮司による不当解任
 「奈良合同」のニュースの弁護士四人のエッセーは、みんな参考になりました。吉田恒俊団員は、神社のワンマン宮司から不当に解任された責任役員の依頼を受けて裁判を起こし、解任を無効とする判決をもらって、ついに宮司を追放できたという話を書いています。追放された前宮司から五〇〇万円をこえる損害賠償金を得たといいますから、たいしたものです。
 佐藤真理団員のNHK受信料をめぐる裁判は一審判決は請求棄却でしたが(控訴中)、大学教授ら証人五人、原告本人五人の尋問を実現したこと、「法律上の争訟」であることを裁判所も認めたことは意義があるとしていますが、まったくそのとおりです。
 松本恒平弁護士は刑事国選弁護事件を二ヶ月間に六件も受任したというのです。これには驚きました。私も、常時一件は被疑者か被告人国選弁護事件を担当しています。国家権力との不断の緊張関係を保つためにも刑事弁護は欠かせません。
 大久保陽加弁護士は、不倫の相談のなかには、配偶者が同性の相手と肉体関係をもっているようだという相談も少なくないとのこと。私は、まだそういう経験はありません。

うつ病で三千万円の賠償
 「大分共同」のニュースで古田邦夫団員が、職場でのいじめによるうつ病発症に対して裁判所が三〇〇〇万円をこえる損害賠償を命じたことを報告しています。保育園でいじめ事件があったようです。労災認定になり、また同僚も同じようにいじめられて病気になったことから、一一年分の休業補償の不足分四割や入通院慰謝料などが認められたのです。後遺障害分はこれから別訴として請求するとのことです。娘の古田奈々団員と二人で担当して、「娘の弁護士としての能力が高いことを知っ」たと、親としての喜びが紹介されているのはほほえましく思いました。
 玉木正明団員は、解雇無効とあわせて賃金支払命令を勝ちとったが、そのとき休業手当の不払いにも付加金の適用があるので、この付加金も支払えと申立したところ、裁判所は認容して、「一・六倍返し」に成功したというのです。私は、そんなことができるなんて、ちっとも知りませんでした。「大分共同」のニュースは、いつも大変勉強になります(写真がもうひとつですが…)。

労災認定で逆転三連勝
 「横浜」の笠置裕亮団員が、労災認定で逆転三連勝をかちとったとのこと。すごい偉業です(パチパチパチ)。労働保険審査会は年間六〇〇件近くの受理・裁決をしているところ、原処分取消(逆転裁決)は六%以下、業務上かどうかでは四%以下といいます。ところが、笠置団員は昨年中になんと三件もの逆転裁決を得ました。これは宝くじにあたったかのようなものだと、本人が書いています。
 うつ病から長期療養になったケースや遺品のなかから過重労働の実態を裏付けるものを丹念に掘りあげたとか、なんとかして救済しようという必死の執念を感じました。そして、労災事件で裁判になった相手方の弁護士から、こんなの労災認定になるわけがないので安心しなさいと会社にアドバイスしていた、ところが認定され、立証の状況をみてみると、なるほどと思った。そのように話しかけられたということです。相手方の弁護士から、賞賛されるというのは、めったにあることではありません。すばらしいです。

トラック運転手の過労事故死
 「広島」の佐藤真奈美団員がトラック運転手の過労事故死について損害賠償請求したケースを紹介しています。私も同種の裁判を担当しましたが、会社の主張は似たようなものです。事故を起こしたのは仮眠の仕方が悪かったから、高速道路を使うように推奨していたのに使わなかったため長時間業務になっていた…。
 高速道路の利用料金を労働者に負担させていながら、高速道路を使わないのが悪いだなんて、とんでもない言い分です。長距離トラックで高速道路を使わないのは、その料金負担のほか、渋滞に巻き込まれて延着(遅刻)する心配から、下道のほうが安全・確実というのを聞いたとき、私は本当に驚いてしまいました。
 福山から広島まで往復運転していて、夜に出発して翌日の昼ころに戻るというスケジュールを週に六回もしていました。往復しないのは土曜の夜から日曜にかけてのみ。土曜日だって、積み荷のために出勤することがありました。こんな超過重労働のなかでも追突事故を起こして重傷となり、死に至ったのです。
 裁判所は証人尋問のあと、和解をすすめ、会社が再発防止を約束し、解決金を支払うという内容の和解が成立したとのこと。裁判官は、それなりに実態をみきわめて和解を勧告したそうです。(続)

 

 

渡辺正雄団員を偲んで

                                                 東京支部  井 上 幸 夫
                                                   東京支部  上 条 貞 夫
                                                   東京支部  柳 澤 尚 武
                                                   東京支部  小 木 和 男
                                                   東京支部  今 野 久 子

 二〇二〇年一一月一七日、渡辺正雄団員が永眠されました(享年九〇歳)。

一 渡辺正雄団員について(三〇期 井上幸夫)

 渡辺先生は、近年は自宅で療養されており、詩集を発行し、ブログで詩やエッセイを書かれるなどしてお元気でしたが、亡くなる数日前に体調を崩されて入院し、癌性胸膜炎により、ご家族に見守られて永眠されました。渡辺先生の優しい笑顔は忘れられません。
 以下、渡辺正雄団員について、ご自身が事務所ホームページの弁護士紹介で書かれていた内容を紹介します。
 一九三〇年一月二日、宮城県登米市登米町で生まれ、旧制第二高等学校に入学し、東北大学法学部を卒業。旧制二高時代は、陸上競技部で中距離選手でした。
 司法研修所第九期で、一九五七年四月、東京法律事務所(当時は黒田法律事務所、弁護士は黒田寿男、小島成一、平井直行、尾山宏の四名)に入所しました。
 入所後の約三〇年間は、主として組合結成・職場活動・争議などに関わる労働事件に取り組みました。金属、化学、全国一般などの中小企業の事件のほか、私鉄総連、国労、全専売、食品労連等々の多くの事件で全国各地をかけ廻りました。
 王子製紙争議、エスエス製薬争議、野村証券争議など、多くの組合潰しや解雇事件の解決に関わり、刑事弾圧事件も多く、山陽放送東京地区連事件では、地裁・高裁で無罪判決をかち取りました。八戸鋼業争議の刑事事件は二件を無罪としました。
 総評弁護団(一九八九年から日本労働弁護団)では、副会長として様々な活動に取り組み、会社更生法や民事執行法の改正時には労働者の権利の観点から不適正な条文の削除・変更を実現しました。
 一九八九年に心臓手術を余儀なくされて回復した後は、担当する仕事を一般市民法関係の相談・裁判等の分野へ移し、宗教法人関係事件の最高裁勝訴判決や相続事案の難件処理にも当たってきました。

二 渡辺正雄さんの思い出(一〇期 上条貞夫)
 生前の渡辺さんの姿は、宮沢賢治の詩の世界と重なって見える。そばに居ると気持ちが安らいだ。そして本当に頼もしかった。
 弁護士になったばかりの私が力不足で一審敗訴した、山恵本材・地位保全仮処分事件の高裁審理に渡辺さんが参加して、主張立証を鮮やかに巻き返した腕前の凄さ。おかげで逆転勝訴。これが後々まで私の励みになった。
 渡辺さんの、労働弁護士の優れた数々の実績は、歳月の経過とともに知る人が少なくなった今、ここで是非、歴史に残る一件を紹介したい。それはストライキ労働者の争議拠点を脅かす民事執行法の衆議院通過後、参議院段階でそこに歯止めをかける修正を実現した運動の、理論的ブレーンとして大奮闘したこと。あのときの渡辺さんの姿は、熱血の剣士を思わせた。 
 晩年の渡辺さんは、何回も入院手術を繰り返しながら、時折、事務所に顔を出すときは優しい笑顔を絶やさず、志を一つに未来を見据える思いは、いつも変わらなかった。しかも心暖まる一連の詩作を遺した。
 今は昔、まだ事務所が小さかった頃、いつも忘年会で度辺さんが得意のフランス語で歌ったシャンソンを、ふと懐かしく思い出す。

三 川中島バス転落事故(二四期 柳澤尚武)
 長野県の戸隠と信濃町を結ぶ山間部の路線バスがありました。信濃町を出発するとすぐ山道となり、曲がりくねった道を上っていくと、やがて右は黒姫山、左は五〇メートルの深い谷となる。ここでバスが谷へ転落する事故が起きました。死傷者多数の大惨事でした。警察は運転手のミスだとして起訴。運転手が私鉄総連の労働組合員であったところから、顧問弁護士であった渡辺先生に弁護の依頼となりました。
 一九七二年、私は弁護士になったばかりでした。渡辺先生は、君の郷里で土地勘もあるから、やってみるか、と声をかけました。それから戸隠通いが始まりました。
 先生の方針は、「何をおいても現場をよく見ること。働く仲間の労働者の意見を聞いて教えてもらうこと」でした。仲間の労働者は大変熱心で、彼らの確信は、まじめなベテランの彼が運転ミスをするはずはない。道路がおかしい、と。道は砂利道、いわば林道と同じ。整備もなく、道に見えて実は道端の笹の根に砂利が積もっている。谷側へロープでおりて見ると道路下には空洞もある。警察は、運動場にバスを持ち出し運転手にハンドルを左(谷)側に切らせて、「運転ミス」だと自白させる。
 私たちは学者に道路の陥入試験を依頼。仲間の労働者は運動場に谷に見せる穴を掘り、わざと脱輪させる、しかしバスが穴には転落しない。……そして、高裁で無罪。
 懐かしい事件となりました。労働者の仲間を信頼して闘う姿勢を学ばせようと、渡辺先生は思ったのかも知れません。新人弁護士のその後の活動の第一歩となりました。

四 七〇年代の事務所と渡辺団員(二八期 小木和男)
 一九七〇年代は、六〇年安保、革新自治体の昿大、学生運動の高揚、七〇年安保などを通じて、「革新」勢力の連合政権構想、毎年一〇〇名以上の青法協加人など、賑やかな時代でした。渡辺団員が所属していた東京法律法事務所(当時は小島成一法律事務所)も、毎年、数名の人所と同時に別の事務所建設のために転所も数名出るという時期でした。その中で渡辺団員は、団員ではありますが、総評弁護団の中心として幅の広い法律家の中で活躍し、団の付き合いが希薄な鉄道、バス、食品などの単産・単組と事件でも日常的にも交流していました。
 また、若手弁護士との関係では、二つのことが思い出されます。ひとつは、当時の革新都政を応援するため、労働組合の協力を得ながら全都の同期弁護上に当たりきろうという若手中心の弁護士のとりくみがありましたが、渡辺団員からは、陰に陽にと、総評弁護団ならではの情報や各種の法律事務所像・人物像を知る機会をいただいたことです。おかげで、総当たりという難題でも楽しさもある活動になりました。いまでも感謝です。
 もうひとつは、事務所の中堅・若手所員の出入りの激しさを述べましたが、渡辺団員は、こうした所員の分け隔てなく、自宅に数名を呼んでは自由な議論の場を設けていただいたことです。特に自家製のパンが出されることもあり、非公式な事件討議、政治討議を一層活発にしました。野党連合政権のことが現在話題にはなりますが、当時の民主的な連合政権の話題は具体的で、幻想的ではあっても、新法務大臣は誰か?検察庁の改革のため役職人事構想は?所員も検察官受験か?などまで話が盛り上がりました。このことも心から感謝です。

五 詩人でもある渡辺先生(三〇期 今野久子)
 渡辺先生が手術を受けてからも、野村證券労働組合の不当労働行為事件や女性差別事件で声をかけていただき、私は弁護団に入れていただきました。先生は、組合員が二〇代のときから定年後まで共にたたかってきたのです。順子夫人のお話では、棺の中に野村証券の組合員と一緒の写真を入れたとのことです。
 五年位前までは市民事件なども担当されて、依頼者のお宅に出かけてはゆっくりお話しをうかがい、なにげない会話の中から事務所での打ち合わせでは得られなかった事実を話していただき、そして優しい一言で励まし、さすがベテランの「聴く力」は違うと思ったものです。
 渡辺先生は、詩人でもあります。事務所のご自分のプロフィールにも、出版物として詩集を載せていました。現役を退かれてからは、八十代半ばでブログを始め、ご自分の経験から戦争や平和について書かれたエッセイ(先生は「散文」といっておられました)や詩をのせておられ、多くのファンが楽しみにしておりました。
 渡辺先生は、フランス語が得意とうかがっていましたが、カタカナ語は殆どつかわず、読んでいると、いつのまにか、東北の静かな森や海辺にいたり、パリの街中で暮らしている人々と一緒にいるような気持になります。宇宙や大自然を詩っている流れに任せて読み進むと、大展開してこれまでの人生で出会ったであろう人の苦難を想い、いたわる言葉に、深い愛を感じます。また、ときには、ご自分の「足の裏」に、ご自分や友人たちの戦争体験を語らせるなど、ユーモアで包みながら鋭く事実に切り込んだり・・・・。もう、渡辺先生の新しい詩を読むことができないと思うと、とても寂しいです。
 昨年五月の「まさおジイジ」の「コロナのおたより―ポエムを外れて」では、遺伝子配列が変異して尖悦なウイルスになるのではないかと鋭く指摘し、すべての社会領域で、大変革が求められているのではないか、と呼びかけています。
 そして、最後は、「私は、皆さんの健康保持といっそうのご活躍を期待しつつ、暫くは、ご一緒に『上を向いて歩く』ことと致しましょう。」と結んでいます。
 渡辺先生、天空からみていてください。私たちは、上を向いて歩いていきます。

 

 

*新入団員紹介特集
新入団員ご挨拶  静岡県支部  桐 山 圭 悟

 皆様初めまして。七二期の桐山圭悟と申します。二〇一九年一二月より静岡法律事務所にて執務しております。
 今回、「新入団員」として自己紹介させていただけることになりましたが、入団後あっという間に経過した一年の活動について、感想を中心に書かせていただきます。
 二〇二〇年を振り返ってみると、普段扱う事件においてもコロナの影響は大きかったと感じます。労働事件や倒産事件はもちろん、一般民事の金銭請求事件の背景にコロナによる減収があったり、家事事件における婚姻費用や養育費の算定にあたってもコロナ減収の主張がよく見られました。弁論準備手続や尋問手続等における手続や傍聴に関する裁判所の取扱いも模索され、二〇一九年に修習をした頃とは、その是非はともかく、裁判手続の風景もかなり変わったという印象です。公私にわたりコロナとどう向き合うか、弁護士としてどうあるべきか考え続けた一年でした。
 そのようなコロナ禍中、安倍政権はどさくさ紛れで検察庁法改正を強行しようしたため、私も、せっかく弁護士になったのだからと、弁護士共同アピールに参加させていただきました。また、事務所所長の大多和先生が、急遽静岡市で検察庁法改正についてのサイレントスタンディングをされるとのことで、それにも参加させていただきました(その様子については団通信一七一〇号五頁目をご覧下さい。写真の横断幕の文頭を持っているのが私です)。ご承知の通り、当該法案は国会での成立が見送られ、廃案にまで至りました。社会を動かす活動に加われたことに感動を覚えた私は、前々から気になっていた「桜を見る会」の告発にも加わりました。こちらについては、結局、配川秘書のみが政治資金規正法違反で略式命令されたにとどまる結果になってしまったのが残念ですが、それらの活動の積み重ねが安倍政権の幕引きにもつながったと思いたいところです。もっとも、その後の菅政権が学術会議問題等の暴走を始めてしまったのは残念でなりません。
 また、私は、年金裁判と旧優生保護法裁判の弁護団の末席を汚させていただいてもおります。それらの弁護団の先生方の熱気には毎度圧倒されます。全国メーリスでも、とても示唆に富む内容の文章が飛び交っており、人権擁護の意識には深い感銘を受けます。さらに、原告団・関連団体の皆さんもすごく熱心で、いずれも大変な事件ですが、各弁護団の期日後の報告会では、もっと頑張れと背中を押され、とても勇気づけられます。
 自由法曹団が関係する活動には、社会そのものを動かすことのできる活動が数多くあると実感した一年でした。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願いいたします。

 

 

ご挨拶  静岡県支部  守 屋   典

 皆様、はじめまして。静岡合同法律事務所の守屋典と申します。
 おかげさまで、一年間弁護士として生き残ることができました。日々、自分の知識や努力の足りなさに情けなくなるとともに、それでも「少しずつは成長しているかな」という実感を四対一くらいの割合で感じ、充実した弁護士生活を送らせていただいております。
 私が弁護士になって驚いたことは先輩方が弁護士という仕事に誇りと責任を持ち、努力を継続されていることです。
 決して弁護士の仕事をなめていたつもりはありませんが、自分なりに「新人なんだから、人一倍努力しなければ」と思い励んでいた事柄について、自分より一〇年、二〇年先輩の先生がより一層力を入れて取り組んで入らっしゃることを知る機会がよくあります。
 実はこれを知ったときに自分の至らなさを感じることが一番多いです。
 どの先輩方についても、その仕事ぶりを拝見させてもらうとタイプや分野は違えど、「どれ程のことをしたら、ここに至れるのだろうか」と差を思い知らされます。
 二〇二〇年は新型コロナの影響で、先生方と接する機会は限られていました。むしろ、事務所外の先生方と接する機会はほとんどなかったと言ってもよいかもしれません。
 そんな中、外部の先生方と会える限られた機会の一つが自由法曹団での活動でした。二〇二一年になっても新型コロナの影響は収まる様子がみえません。今年もまた自由法曹団の活動は先輩方の働きぶりを見聞きする貴重な機会となると思います。
 人と接する機会が限られている昨今ですが、広く先輩方の取り組みを見聞きし、自分の至らなさを痛感し、少しでもその差を埋めてやろうというモチベーションを作出するために、自由法曹団の先生方には大変お世話になるつもりでおりますので今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

映画「レッド・パージ(仮題)」-制作支援協賛金のお願い  東京支部  新 宅 正 雄

 六名の研究者の方が日本学術会議会員に任命されませんでした。
 その理由は明らかにされていませんが、安保法制や共謀罪に反対した研究者が排除されたと言われています。これは「レッド・パージ」及び治安維持法に繋がる動きであり、これに抵抗する多くの人たちが、民主主義の確立のための運動を進めてきました。これらの運動の根源には戦争の記憶があると思われます。記憶が運動の生命的根源であり、記憶のために記録が必要です。「レッド・パージ」の記憶も、民主主義を確立する運動の生命的根源となるものです。それだけに記録映画「レッド・パージ」の完成が急がれます。自由法曹団の皆さんのご協力をお願いいたします。
 郵便振替 〇〇一三〇―四―二六三三九一
 加入者名 レッド・パージ反対全国連絡センター
※通信欄には「映画協賛金」とご記入ください
 事務局は〒一一四―〇〇二三
     東京都北区滝野川三―三―一―四〇二
     レッド・パージ反対全国連絡センター
     電話・FAX:〇三―三五七六―三七五五 

 

 

 

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