第1775号 5/11

カテゴリ:団通信

【今号の内容】

●【書評】「(増補改訂版)裁判の中の在日コリアン」(在日コリアン弁護士協会編著、現代人文社)を薦める  神原  元

●委員会活動へのお誘い  平 井 哲 史

●労働問題委員会  中村 和雄

●将来問題委員会  緒方  蘭

●「早大学費闘争の記録」が出版されました  広田 次男

●岡村親宜先生追悼出版記念 シンポジウムのご案内  徳住 堅治

●100周年記念「年表」の第2刷ができました  荒井 新二

■次長日記(不定期連載)

■幹事長日記(不定期連載)


 

【書評】「(増補改訂版)裁判の中の在日コリアン」(在日コリアン弁護士協会編著、現代人文社)を薦める。

神奈川支部  神 原  元

 自由法曹団の団員に、どうしても購入し一読してほしい一冊。「(増補改訂版)裁判の中の在日コリアン」(在日コリアン弁護士協会 現代人文社)。これ一冊で在日コリアンを巡る人権状況、その背景と本質が全て明らかにされ網羅されている。
 本書を読んで、まずわかることは、在日コリアン差別の根源に、サンフランシスコ条約発効に伴う朝鮮人の日本国籍剥奪問題があるということだ。すなわち、1952年4月28日、日本政府は、サ条約発効と同時に法務省民事局長通達を発し、当時まだ日本人であった、日本に居住する在日コリアンから、日本国籍を一方的にはく奪してしまったのだ。差別主義者達は外国人差別を指摘されると「国籍の有無による区別は差別ではない」等と言う。その理屈自体誤りだが、少なくとも在日コリアンには当てはまらないことが明らかだ。植民地独立の際、植民地出身者に国籍選択権を与えるのは世界の常識であった。ところが日本は朝鮮人に国籍の選択権を与えないどころか、一片の通達で一夜にして全ての朝鮮人を「外国人」にしてしまった。それだけでなく、在日コリアンの在留資格を不安定なものとし、指紋押捺を強要する等徹底的に管理・排除の対象としたのである。これは、「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」と定める憲法10条に反する暴挙だった。その背景には、日本が朝鮮半島を違法に植民地支配したことに対する反省のなさがある。その悪質な姿勢こそ、現在も残る、在日コリアンに対するあらゆる差別の根底にあるのだ。
 この関係で重要なのは、国籍剥奪の是非を問うた宋斗会氏の民事・刑事裁判(1969年~1980年)。そして、日本で唯一の大規模な公民権運動というべき「指紋押捺拒否運動」(1980年~1999年)である。後者の担い手であった崔チャンホ牧師が、前者の裁判(刑事)で述べた意見陳述が本書で紹介されているが、実に感動的だ。これとは別の、趙健治さんが原告となった日本国籍の確認を求める裁判で、裁判所は、判決理由の中で、朝鮮人の法的地位に関する立法政策の誤りを理由中で認めている(広島高裁1990年11月29日判決)。
 一片の通達で朝鮮人を「外国人」に追いやった日本政府は、在日コリアンからあらゆる公民権を一方的に剥奪した。とりわけ、公務就任権の問題は深刻だ。日本政府は、1953年3月25日付け法制局第一部長の回答にしめされた「当然の法理」を根拠に、教育や研究、福祉分野などありとあらゆる分野において在日コリアンの公務員就任権を否定してきた。この関係で重要なのは、「当然の法理」の是非を問うた東京都管理職裁判(原告鄭ヒャンギュン氏、高裁勝訴、最高裁2005年1月26日判決で逆転敗訴)と、在日コリアンの修習生採用問題(金キョンドク弁護士、1976年司法試験合格)だ。本書には、後者に関する金キョンドク氏の最高裁に宛てた「請願書」が全文掲載されているが実に圧巻だ。私はこれを読んで何度も何度も涙した。金氏があえて韓国籍のまま弁護士になろうとした気持ちを理解し、是非、金氏の後輩たちの仲間になってほしい。
 このように朝鮮人差別の根源には朝鮮半島に対する植民地支配があり、侵略戦争の歴史がある。過去を徹底的に反省し、ナチ犯罪を自ら裁いたドイツと異なり、日本は過去を一切反省していない。この関係で、本書に取り上げられたものとして、従軍慰安婦訴訟(1991年~)、BC級戦犯訴訟(1991年~)、群馬の森追悼碑事件(2014年~)が重要だ。一連の訴訟で裁判所は全て在日コリアン側を敗訴させている。日本の司法は、常に歴史修正主義に加担してきたのだ。
 権力が差別するなら、国民もそれに倣う。在日コリアンは、今日も生活のあらゆる局面において差別に苦しんでいる。この関係で特に重要なのは、日立 就職差別事件(1970年~)と朝鮮学校襲撃事件(2009年~)だ。前者の原告である朴チョンソク氏の思想遍歴には学ぶところがある。後者の記載の筆者はウトロ出身の具弁護士。具弁護士は学校が公園を使用した問題がひっかかり「具さん、これは公園の問題ではなく差別の問題なんだ」という弁護士の発言に、「はっ」としたという。具弁護士の戸惑いの背景にあったものはなにか。日本人こそ真摯に考えるべきだ。
 植民地支配と侵略戦争の狭間に落ち込んだ歴史の狭間に、朝鮮人集落がある。京都のウトロや川崎の池上町だ。本書はウトロの歴史と住民の闘いを記載する。ウトロは、2021年、放火という最悪のヘイトクライムの標的にされた。ヘイトクライムを野放しにする日本の姿勢は、過去の植民地支配を反省しない姿勢とも重なっている。ヘイトクライム規制は待ったなしの、現在進行形の課題だ。
 その他、本書は、戦後すぐの二つの刑事事件(小松川事件、金嬉老事件)から、昨年高裁判決のあった大阪ヘイトハラスメント裁判まで、在日コリアンに関する裁判を全て網羅している。自由法曹団の全団員は、本書を今すぐ購入し熟読してほしい。そして、日本政府による、あまりに出鱈目な在日コリアン政策に共に怒り、これに扇動された在野の愚かなレイシストたちに対しも、共に怒ってほしい。
 在日コリアン差別を解決する義務は、在日コリアンではなく、私たち日本人にある。私はいつも書くのだが、自由法曹団の創設者は、布施辰治。大日本帝国憲法下、朝鮮独立運動の若者らを弁護して韓国から建国勲章を受けた人物だ。布施辰治の志を引き継ぐ自由法曹団の我々こそ、大日本帝国の遺産というべき、在日コリアン差別と正面から闘うべきである。本書はその重要な入口になることが期待される。
 よって、全団員に本書をお勧めするものである。

 

委員会活動へのお誘い

事務局長 平 井 哲 史

 自由法曹団の組織は本部と支部からなり、毎月の常任幹事会でおおまかな方針確認をして各地での活動を展開しています。その活動は多種多様で、そのときどきの中心課題については本部・支部それぞれの執行部で取り組みの呼びかけをし、かつ、先陣をきって動きます。
 とはいえ、全部の課題を執行部が追いかけるわけではなく、15ほどの専門委員会・対策本部・PT(以下、「委員会等」と言います。)があり、そこにおいてそれぞれの分野の課題を見出し、取り組みを進めています。言ってみれば、この委員会等の活動が「団活動」のバロメーターと言えます。
 各委員会等には執行部との連絡役として本部次長が入りますが、委員会の運営は委員長・事務局長を中心に自律的におこなわれており、ここに結集・参加する団員の数が多く、またエリアが広いほど、委員会活動は活発となります。
 今号から、委員会等の紹介をおこなっていきます。リアル参加が前提ではなくなった今、全国どの地域からもzoomにより参加が可能となっておりますので、どうぞ積極的にご参加ください。

 

労働問題委員会への活動参加のお願い

労働問題委員会委員長  中 村 和 雄

 新年を迎えオミクロン株感染の急拡大が進んでいますが、新型コロナウイルスの感染拡大は、わが国の雇用のありかたの問題点を顕在化させました。歴代政権の新自由主義政策によってわが国に広く蔓延したシフト制労働や非正規雇用、さらにはいわゆる「雇用によらない働き方」など、きわめて不安定な働き方で就労してきた者たちが、職を失い、職があっても低賃金で極めて過酷な労働条件のもと、充分な規制や保障がなく働かされています。いまこそ、憲法が保障する「勤労の権利」を再確認し、すべての働く者にとって安心して安定して人間らしく働き続けられる制度を構築していくことが求められています。
 労働問題委員会は、この間、新自由主義推進政策の中で次々と打ち出されてきた労働法制の規制緩和に対抗するために、自由法曹団としての意見書や声明発表の提案と起案やシンポジウムや学習会の開催、調査研究活動などを展開してきました。また、全労連などと連携して学習会を開催し、講師活動や街頭宣伝活動に参加し、意見交換会を実施したりしてきました。
 最近では、「雇用によらない働き方」について、団員に広く実態報告のアンケートをお願いし、それらを基にして団内学習会を2回開催しています。また、労働事件に対処するための心得を経験豊富なベテラン団員から学ぶ機会として、ZOOによる連続学習会「先輩に聞く〜労働事件をどうたたかってきたのか、これからどうたたかうのか」を企画し、現在までに豊川団員(大阪)、上条団員(東京)、今野団員(東京)から貴重な経験に基づく興味深い教訓を具体的にお聞きすることができました。この企画は、今後も継続する予定です。各地からぜひ講師(「今こそ聞くべき」「今しか聞けない」)の推薦にご協力ください。
 こうした委員会活動の企画は、月に1回程度開催している労働問題委員会の会議で相談して遂行しています。労働問題委員会の会議は、月1回2時間程度の時間でおこなっています。この会議では、労働法制や労働事件の情勢について確認するとともに、各地での裁判や運動の情報の交換も行っています。従前は、東京の本部事務所でリアル会議で実施していたのですが、コロナ禍でZOOM会議に切り替えています。ZOOM会議ですので、全国各地からの参加が可能となっています。私も京都からの参加です。全国のみなさんの声を活動に反映させるためにも、コロナが収束した後も基本的にZOOM会議での参加方式は続ける予定です。
 全国の団員のみなさん、労働問題委員会のメーリングリストにご参加頂き、各地の活動などを積極的に発信していただくことをお願いいたします。そして、ぜひ、労働問題委員会ZOOM会議にもご参加ください。労働問題委員会(ZOOM会議)の日程及びアドレスは、団本部の団員専用ページの日程表に記載しております。また、同日程表から直接会議に参加いただけます。とりあえず試しにちょっと覗いてみようという方、大歓迎です。お待ちしています。

 

将来問題委員会の紹介

将来問題委員会   緒 方  蘭

 将来問題委員会の現在の目的は、一言で言うと、学生・ロースクール生に働きかけて団員になってもらうことです。このほか、不定期で団事務所の経営基盤に関する交流会も行っています。
 ここ5,6年ほど、合格者数の減少、就職難の緩和、就職活動の前倒しなどが進み、団事務所に入る方が減る傾向にあります。多くの受験生、修習生が人権課題に取り組む弁護士が存在することを知らないまま、目についた中で条件のいい事務所に入所しています。地道な作業になりますが、学生・ロースクール生の段階から人権課題に取り組む弁護士が全国にたくさんいて、こんな課題ややりがいがあって…というお話を伝え、少しでも多くの方に興味を持っていただくことが大切だと考えています。
 委員会は、現在、Zoomを用いて、1か月半に1回のペースで実施しています。メンバーは。若手と執行部経験者です。内容がセンシティブですので、会議内容や議事録は非公開です。
 主な活動内容は、月1回程度の若手による予備試験受験生向け学習会、年2回の学生向け企画、年1回の地方事務所説明会、不定期で事務所づくり交流会です。事務所づくり交流会は、5月集会と総会の際に広く問題提起や意見交換する場を設けたり、定期的にホームページによる集客の方法・可能性、民主団体との付き合いなど特定のテーマで意見交換を行ったりしています。73期がコロナ禍で修習を思うように受けることができなかった時は、修習中に刑事弁護の学習会を実施したり、弁護士登録直後に東京支部に頼んでフォローアップ講座をやっていただいたりしました。
 色々書かせていただきましたが、要は、学生・ロースクール生に団を知って興味を持っていただく活動、若手団員にとって有益になる活動、団事務所の経営基盤に役立つ活動を機動的に幅広く行っています。
 様々な視点とアイディアが必要になりますので、期と地域にかかわらず、興味のある方は東京支部・緒方までご連絡ください。
 よろしくお願いいたします。

 

「早大学費闘争の記録」が出版されました

福島支部  広 田 次 男

 K(元家永教科書訴訟専従事務局長)は、1965年66年の2期に亘り、早大法学部自治会委員長だった。5年位前からと思う、Kが「あの事を本にしよう。俺達の遺言書替りだ」と言い始めた。
 「あの事」とは、1966年1月18日から150日間続いた早大・全学ストライキ闘争の事だ。
 「半世紀以上も前の事を今更、無理だ。」というのが、半世紀以上に亘り、つき合いの続いている全学ストライキの中核を担った連中の大半の意見だった。
 一昨年の12月、Kは山梨県北杜市に引っ越した。
 北杜市は、退職した活動家が「終の棲家」を都会から次々と移転させて、その数100軒にも及ぶと言う。
 北杜市のKの自宅は、築110年の古民家を改造したもので、快適なリビングルームから眺める南アルプスの眺望は「絶景」の一言だった。
 その引っ越しの荷物整理の際、全学連の早大ストライキ闘争の正式な総括文書が見つかった。これがKの出版意欲を更にかきたてた。
 結局Kの熱意に押されて、10人余の白髪頭が約1年に亘り、会合を重ねて、全244頁(花伝社 定価1980円)の出版に漕ぎつけた。
 私は、1964年に早大法学部に入学し、その年の12月に全学連が再建された。
 当時の早大は、正に「思想の市場」と言える状況で、行動右翼の民族主義学生同盟から、トロツキスト諸派は全て顔を揃え、アナーキストも大きな黒旗を掲げ、急進的労働組合主義者(アナルコ・サンジカリスト)とされた社青同解放派も精強を誇っていた。
 入学当時の学生運動は、全く訳の分からない世界であった。
 何を目的にし、どのようなルールで、どんな人々が参加しているのか、全く不明であった。学生集会を、少し離れた所に立って聴いていても、マイクをかじるようにして、言葉を短く切った独特の口調の話は、理解できなかった。
 集会で配られるチラシも独特の字体で「専門用語」が並び理解は難しかった。
 そのなかで、法学部自治会の集会と、再建全学連のチラシは異質であった。
 集会は、普通の話し言葉で進行し、チラシの内容も平易なものであった。
 即ち、目的は平和と民主々義、運営ルールは、非暴力・多数決と単純化できた。
 但し、そんな明解な目的とルールをもった集団が、何のルールもなく、暴力も陰謀も何でもありのトロツキスト集団等のなかで現実に運動を展開できるのか、大きな疑問であった。
 正に再建全学連の実践的存在が試されたのが、早大闘争であり、その教訓が明治、日大、東大と承継された。
 1966年2月23日、夜「早大全学連連絡会議」避難先の東京教育大学(文科省によれば現筑波大の前身)における集会は、緊張感が張りつめていた。
 その日の早朝の機動隊との激闘の興奮を引き摺り、明日は全員が逮捕されるかもしれないとの緊張感もあった。
 そこに、逮捕された場合の心得を説明するために、弁護士が登場した。
 今から思うと憲法・刑事訴訟法の黙秘権などの話だったと思うが、全く記憶にない。今でも憶えているのは、以下のような話だけである。
 「諸君は、歌舞伎の仮名手本忠臣蔵に登場する天野屋利兵衛なる人物を知っているか」「吉良邸の討入に使われたユニフォーム、武器などの一切を提供した赤穂四十七士のスポンサーだ」「後に事が露見して、捕縛され、全てを正直に話せと言われたが『天野屋利兵衛は男でござる』と言って、口を割る事はなかった」「即ち、憲法や刑事訴訟法のあるなしに関らず、言いたくない事を言わないのは万代不易の男の権利だ」だから「明日、逮捕されても一切、口を割るな」という結論であった。
 この話は、参加者の緊張をほぐし、全員が『よしヤルゾ』という気持になったのが手に取るように感じられた。
 私は深く感動した。
 この時「何時の日か、このような場所で、このような話のできる弁護士になろう」と決意した。
 弁護士になって四三年、未だ努力の日々が続いている。
 以上が本書における私の記載の最後の部分である。
 今更、この記載に変更を加える気は全くない。
 しかし、ジェンダーの観点が全くない事は指摘されるまでもない。
 学生時代から理論家であったY(現労働者教育協会々長)は、学生運動の壊滅の原因と経過を論じ、その再建は極めて困難であると本書のなかで明解に分析にする。
 今の私は、その後の体験からジェンダー平等の観点を欠いた運動は必ず壊滅すると断言できる。本書の少し前に、「私の東京教育大学」が出版されている。
 同大学の闘争を題材にした小説であり、一読してひどく感激した。正に青春の迸りを感じた。
 そして、昨年東京教育大学闘争史が編纂された事を知った。
 あの時代に青春を闘った人間は、人生の第4コーナーを廻り切った今になって、自らの青春を振り返る気持は共通のようだ。
 それにしても、本書も「私の東京教育大学」も目映いばかりの青春である
 「若さとは、若い奴らにはもったいない特権である」(ジャン・ピエール・サルトル)
 (購入希望の方は、当職までご一報下さい。著者割引が利用できます。)

 

岡村親宜先生追悼出版記念シンポジウムのご案内

岡村先生追悼記念出版シンポ実行委員会 実行委員長
東京支部  徳 住 堅 治

 初夏の候 みなさま方におかれましてはご健勝のことと存じます。
 昨年11月30日に、敬愛する岡村親宜先生が病にて逝去されました。 
 岡村先生が生前にほとんど原稿を完成させていた新著「過労死・過労自殺と労災補償・賠償」が今夏、旬報社より出版される予定となっています。同書は、労災職業病・過労死等の理論実務に関する遺作となります。
 つきましては、同書の出版を記念して下記のとおりシンポジウムを開催したいと存じます。多くの皆さまのご参加をお願いいたします。

日時:7月26日(火)午後5時30分 受付開始/午後6時 開会/午後8時 閉会
会場:連合会館2階大会議室
東京都千代田区神田駿河台3-2-11(電話03-3253-1771)
※最寄駅 JR御茶ノ水駅 聖橋口 徒歩5分
地下鉄千代田線 新御茶ノ水駅・丸の内線
淡路町駅 B3出口 徒歩3~5分
開催形態:対面の集まりとします。ただし、可能な範囲で、会場の模様をインターネットにて視聴できるように検討中です。
参加費:2000円(会場使用料等)
内 容:当日は、岡村先生と交流の深かった各界の方々から、先生の業績・ご活動等についてご発言いただく予定です。
 なお、本シンポジウムは、日本労働弁護団(会長:井上幸夫弁護士)ならびに過労死弁護団全国連絡会議(代表幹事:松丸正弁護士・川人博弁護士)の有志が中心となって構成する実行委員会が主催します。皆さまからの追悼文集も作成して当日配布いたしますので、よろしくご協力のほどお願いいたします。
連絡先 本シンポ担当事務局 川人法律事務所
電 話 03-3813-6908(本件専用電話)
〒113-0033東京都文京区本郷2-27-17 ICNビル2階

 

100周年記念「年表」の第2刷ができました

東京支部  荒 井 新 二

 赤い本の自由法曹団百年史年表は、幸いなことに好評裡に迎えられました。先日アメリカのハーバード大からの注文がありました。出版社の努力のお蔭ですが、年表序言で世界に冠たる法律家団体と豪語した成果かも知れません。さすがグローバルな大学は世界に目を光らせて違うな、と思うばかりです。
 百年史年表初版1刷(2300部)は、今日10部ほどしかに残っておりません。このことを予知し昨年12月の団常幹で2刷300部の刊行が決められました。昨夏の初版直後から、改訂に向けていた点検作業を、今年になって本格化させ4月25日に出版に至りました。
 2刷ではありますが、1刷とは外観は全く同じですが、内容的には必要な変更を大幅に行いました。1刷に未登載の事項を可能な限り収録しました。国鉄弘前機関区事件、佐賀県教組事件、長野電鉄争議、朝日放送最高裁判決、寺西労災、9条世界会議など合計25個所です。また既存収録を、その後得られた知見に基づき補充しました。詩人尹東柱が間島出身であるとか、現規約2条の条文などです。字句の修正、整理も一層の簡潔を期して随所で試みました。もちろん初版の誤記述の訂正をしています。昨年10月末迄の分について団通信1758号(2021年11月11日号)で正誤表を掲載しましたが、これに加えて後掲の第2次正誤表が主な内容です。
 頁数は増やさず、索引で引いた頁を変更しないという条件下での編集のため、十二分とはいきませんでしたが、必要な改訂はほぼ果たすことができたと思います。巻末の索引もさらに増補し、引用も整理・追補しました(典拠にひとつだけ新版「自由法曹団百年史1921~2021」を加入)。
 初版1刷をお持ちの方は恐縮ですが、前回に引き続き後掲正誤表を団年表に貼付する等をしていただきたい。そんなことは面倒だとお思いの方、もしくは年表に格別の愛をお感じの方は、どうぞ2刷版をお買いもとめください(定価は1800円【税込み1980円】)ですが、団員割引を検討中です)。
 今回の2刷の普及方法としては、団員はもとより、公共・大学図書館や弁護士会で活用してもらうほか、毎年団に加入する新人団員に贈呈することにします。団の伝統・歴史を新人によく知ってもらうという方針です。団各支部は、新入団員に対する歓迎・教導等の一環としてお使いください。支部が団本部から無償で取り寄せるか、団本部から直接新人団員に送るか、を選択ください。その際、赤い本の団年表のほか、白い本「団百年史」も贈呈される予定です。赤・白相俟っての歴史本は、またとない入団のお祝いとなるでしょう。
 この原稿を書いているのは、5月3日の憲法記念日です。明治憲法が制定されてから132年です。まがりなりにも我が国の立憲主義がそれから始まりました。普通選挙運動の昂揚の中で誕生した団の現在に至る100年の歩みは、その132年間の4分の3と重なり合うことになります。このことについて皆さんはどのような感慨をもつでしょうか。
 いま世界は重大な岐路に立っています。歴史に学び、過去から明日の生きる勇気をもらいましょう。

 

次長日記(不定期掲載)

千葉支部  小 川  款

 次長日記とはということを伺った際に、自由に書いていいというようなことを言っていただいた気がしましたので、少しソフトな話題を。(あくまでも紙面の都合で急遽作成したものですのでお許しください。)
 弁護士になって以降、本を読む機会が減ったなと思っていたのですが、近年、知り合いの弁護士から声をかけられ、「SFの会」なる秘密結社に参加しています。メンバーは50期代~私(70期)までバラエティあふれる弁護士で、本を交換したり、夜な夜な感想を肴にお酒を飲んだりしています。名称に反して、読む本は多種多様。SFだけでなく、ミステリーや漫画本(手塚治虫等)、海外作品から国内作品まで様々なジャンルの感想が飛び交い、読んでいない人がいると「ここからはネタバレだから言えないなぁ(にやり)」みたいなやりとりが続きます。会の代表である弁護士は忙しい中いつ読んでいるんだろうと思うほど本を読んでいらっしゃり、「小川君、これ読んだ?」なんて聞かれながら、薦められるままに本を読む(むしろ読書しないと罪悪感すら感じる)そんなちょっと面白くも刺激の多い会です。
 その会で、私は、ジョージオーウェルの「1984」に出会いました。今更と思われるかもしれませんが、恥ずかしながら初めて読みました。ご存じの方には説明をするまでもありませんが、その物語は、ある党が人々のあらゆる行動を監視し言語も思想も管理する世界の物語です。人々は、居室内での行動まで監視され、少しでも党への忠誠を疑わせる行動があればすぐに検挙されてしまいます。情報はすべて管理統制され、体制に都合の悪い情報・統計はゆがめられ、その真実に気づいた者は次々と・・・(ここからはネタバレ(以下略))。とにかく徹底した監視社会のもとに作られるディストピアとはこのことだといわんばかりの作品です。私は文学に詳しいわけではないのですが、読者が世界観を自然に理解できる文章力なのでしょうか、読みだしたら手が止まりませんでした。
 読後感としてまず感じたのは、この作品が1949年に刊行されたということに対する驚きです。まるで予見したかのように現代の情報管理・監視社会の恐怖を浮き彫りにしている、そんな気がしてならなかったのです。しかし、よく考えてみれば言うまでもなく、いつの時代も情報の統制・改ざんというのは権力者における常套手段であるということでしょうか。そんな1949年に刊行された本を読みながら、2022年に生きる私たちは「情報」とどう向き合っていかなければならないのか、ふと不安になりました。70年以上経過してもぬぐいえない「情報」との向き合い方に悩み、まして、個人情報に対してあまりにも鈍感な日本社会において、どうすれば現状を少しでも改善することができるのだろう、悩みながら5月集会の全体会「デジタル時代の憲法論」を迎えたいと思っています。

 

事長日記 ⑩(不定期連載)
青空とチャッピーとエスパルス、そして「特別報告集」

小 賀 坂  徹

 5月3日の憲法記念日、神奈川支部では3年ぶりに街頭宣伝を行った。昨年、一昨年と憲法記念日での街宣ができなかったのは、もちろんコロナ禍の影響だったのだが、それでも神奈川支部は「おうちで憲法集会」というオンライン集会を続けてきた。こうした取り組みは全国にも誇れるものだと思っているが、それでも青空の下で憲法について訴える心地さにはかなわない。
 今年のゴールデンウィークは、関東地方は初日から大雨、その後も梅雨のようなぐずついた天気が続いていてすっきりしなかったのだけど、5月3日は朝からカラっとした快晴で、青空が美しかった。みなとみらい地区の入口でもある桜木町駅前広場はカップルや家族連れなど多くの人で賑わっており、久しぶりに活気づいていた。こうした平和で穏やかな春の日が、1日も早くウクライナに訪れるよう願わずにはいられない。
 今年は参議院選挙を控えていることもあり、駅前広場では共産党、公明党、維新の会などが代わる代わる演説を繰り返していた。公明党は山口代表が訪れるという力の入れようだ。
 そうした合間を縫って、我が神奈川支部でも午前11時から憲法記念日宣伝を行ったのだが、そこに最近恒例となっているチャッピーにも登場してもらった。子どもの夢を壊してはならないが、言ってしまえばチャッピーとは耳の垂れた犬のモコモコした着ぐるみで、ここに自由法曹団のたすきをかけて宣伝隊に加わってもらっている(神奈川支部の100周年動画の最後の方に登場するので、是非団本部のHPでご覧いただきたい)。「中の人」は長らく永田現本部事務局次長が担ってくれていたが、この日から代替わりして川崎合同の長谷川さんが2代目「中の人」となった。
 くたびれた大人からみるとチャッピーはただの犬の着ぐるみでしかないんだけど、ここに信じられないくらい子どもたちが寄ってきて戯れている。いや本当に信じられないくらい寄ってくるのだ。猛ダッシュしてチャッピーに抱き着く子もいれば、恐る恐る近寄ってきて私たちに促されて漸くチャッピーと握手する子もいて、それぞれの個性がまた可愛らしい。もう1回いうけど、チャッピー人気は信じがたいほど凄くて、一体何十人の子どもが戯れたのだろうと思うほど。正直めちゃくちゃ嫉妬した。でも子どもたちがチャッピーと笑顔で戯れている様子は、誰が見ても本当に可愛くて微笑ましい。自然とみんなも笑顔になるのだ。だから保護者の方々も躊躇なく近づいて写真を撮ったりしている。そして保護者にはちらしを、子どもたちには風船を渡し(この風船の威力も絶大だ)、そこで対話が生まれることもある。少なくともその時撮った写真にはしっかりと「自由法曹団」のタスキが写っているはずだ。そうした光景をみながらマイクを握り、そしてウクライナの事などを話していると、先ほどいったようにウクライナにもこんな穏やかな日常が1日でも早く訪れて欲しいという思いが去来し、思わず声にも力が入る。そんな穏やかで少しばかり幸せな気分となった憲法記念日宣伝だった。ありがとうチャッピー、そして準備してくれた支部執行部を始めとする皆さん。憲法情勢は厳しさを増してきているけど、こうした日常に溶け込んだ対話やふれあいみたいなものが、最終的にはものをいうのではないのかなどいうことを考えながら桜木町広場を後にした。
 通常だと午後から開催される憲法会議主催の集会に参加するのだけど、まだ厳格な人数制限があってこれから行っても入れそうにないので、事務所に戻って一仕事することにした。そして午後3時キックオフのJ1リーグ清水エスパルスvs湘南ベルマーレ戦を観戦するため平塚に向かった。祝日で、かつ気持ちのいい青空の日の試合とあってチケットは完売となり、ここにも大勢の人が詰めかけていた。静岡からのエスパルスサポーターもホームチームに負けないくらい訪れていて、多数のオレンジのユニホーム姿が美しかった。試合は4-1で我がエスパルスの久しぶりの快勝。実は連休初日の4月29日にも、静岡の母親のもとに顔を出すついでに、土砂降りの雨の中、エスパルスのホームゲームを観戦していたのだが、2度リードするも、その都度追いつかれ結局ドロー。激しい雨の中、本当に心が折れていたので、この日の快勝の喜びは格別だった。ありがとうエスパルス。こうして終始幸せなまま今年の憲法記念日は暮れていったのだった。めでたしめでたし。
 なんて呑気なことをいってられないのが辛いところではある。まじかに迫った5月集会では、憲法問題についても大いに議論を尽くしていきたい。
 その5月集会の「特別報告集」がそろそろ皆さんのお手元に届くころだと思う。多くの団員の力作ぞろいで読み応えのあるものになっている。「特別報告集」における幹事長の役割は、冒頭の問題提起(情勢の特徴と私たちの課題のようなもの)を書くことである。これは総会議案書も同じである。昨年は新型コロナウィルス感染症のパンデミックを巡る様々な問題、今年はウクライナ情勢を冒頭に書いたのだが、どちらも経験したことのない問題で「お手本」のようなものも存在していない。だから相当に荷が重く、私の手に余る仕事だ。しかも原稿の締め切りは4月中旬なので、目まぐるしく動いている情勢の中では、皆さんのお手元に届くころには賞味期限切れとなっているのではないかという不安もある。そうした中、何とか捻りだすように書いたものなのだ。だから不十分さは否めないし、異論のある方もいるだろう。でも少なくとも私なりに課題と誠実に向き合い格闘した果実であることは間違いない。私もこれまでそうだったように「特別報告集」を最初のページから読み込む人は少ないと思う。でも「問題提起」とはなっていると思うので、目を通していただけると嬉しい。もちろん、私以外の原稿もだけど。

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