第1778号 6/11

カテゴリ:団通信

【今号の内容】

~5月集会特集~

◆2022年5月集会in東京報告 幹事長 / 各分科会及び新人弁護士学習会・担当次長

◆山本龍彦教授講演「デジタル化と憲法」感想  小笠原 里夏

◆5月集会憲法分科会の議論に参加して  中西 一裕

◆貧困社会保障分科会・感想  佐藤 雄一郎

◆団員を国政へ押し上げましょう!!~山添拓(東京)と仁比そうへい(比例)
青龍美和子・舩尾遼 / 池上 遊・堀 良一 /成見 暁子

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●応援ありがとうございます(泊原発稼働差止判決) 市川 守弘

●治安・警察委員会「新人・若手向け弾圧学習会―いざという時、あわてないためにー」に参加して  唐沢 奈穂子

●団100周年大阪支部企画「松川裁判闘争の教訓」をアーカイブでご視聴ください  辰巳 創史

●「戦争」か「平和」かが問われる参議院選挙  大久保 賢一

●「ロシアとアメリカの戦争だ」という松島暁さんの論稿について  木村 晋介

●木村晋介さんと矢崎暁子さんの投稿を読んで  守川 幸男


 

*5月集会特集*

 

2022年5月集会in東京報告

幹事長  小 賀 坂  徹

 本年5月22日から23日にかけ、東京・永田町の町村会館において、2022年5月研究討論集会が開催されました。会場・オンライン、併せて約300名の参加者が全国から集い、各分科会で学び、熱心な討論を繰り広げました。
 詳細はおって団報にて報告しますが、取り急ぎ概略につきご報告します。

【記念講演】
 山本龍彦慶応義塾大学法務研究科教授より「デジタル化と憲法」についてご講演いただいた。
 アルゴリズムやAI(人口知能)が我々の意思決定領域に深く入り込むような時代にあっては、デジタル化は人間のあり方、個人のあり方、国家のあり方を根本的に変容させる。
 そこで求められるのは「デジタル社会における骨太の憲法論」であるはずが、現在わが国の政府内、あるいは立法府内で現在が「憲法の重要な季節」であるとの認識が共有されていないとの危機感が示さ        れた。その上で、デジタル化が個人の尊重原理や民主主義のあり方に重大な動揺をもたらしている現実をリアルに指摘され、情報自己決定権を中核としたプライバシー概念の重要性、そこから内心の自由、表現の自由の再構築の必要性などが述べられた。終始、刺激にあふれた内容で、現在の喫緊の憲法的課題を突きつけられた内容だったと思います。
 私たちがどのように受けとめ、どのように実践していくのかが問われています。

【全体会】
 千葉恵子団員(東京支部)を議長に選出。
 1日目は、ウクライナ問題、憲法審査会の現状、デジタル化の社会にもたらす影響について幹事長の問題提起の後、以下の発言がありました。
1.衆議院憲法審査会の動向と課題
 田中 隆団員(東京支部)
2.守口市学童保育指導員雇止め事件・勝利和解報告
 原野早知子団員(大阪支部)
3.民事訴訟IT化・民訴法改正について
 西田 穣団員(東京支部)
4.最高裁判決を迎える原発事故被害の救済訴訟について     
 馬奈木厳太郎団員(東京支部)
 その後、拡大常幹に切り替え27名の入団承認が行われました。
 2日目の発言は以下の通りです。
1.ロシアのウクライナ侵攻に対する批判と抗議の声を広げるとともに国内の改憲の動きを阻止しよう
 森 孝博団員(東京支部)
2.大垣警察市民監視事件について
 岡本浩明団員(岐阜支部)
3.労働者派遣に関するたたかい
 安原邦博団員(大阪支部)
4.少年法改正の問題点について
 小川 款団員(千葉支部)
 最後に幹事長から「憲法分科会での全国の運動の交流が例年と比べて少なかったように思う。コロナ禍の中で、なかなか運動に踏み出せていないということかもしれないし、現在直面している課題の困難さが影響しているのかもしれない。1日目の問題提起の中で、現在、かつて経験したことのない困難に直面し、直線的に正解にたどり着くことは難しいかもしれないと述べた。しかし、だからこそやりがいがある。団は闘い、実践する組織だ。悩みながら闘い、実践の中で答えをみつけていくことが重要だと思う。目前に迫った参議院選挙も団の総意をあげて闘い抜いていこう」とまとめの発言があり全体会は終了しました。

【分科会】
1.憲法問題分科会(1日目・2日目) 文責:担当事務局次長 岸  朋 弘

 憲法分科会の1日目では、まず名古屋大学名誉教授の松井芳郎先生から、ロシアによるウクライナ侵攻について、国際法の観点からお話しいただきました。ロシアが主張する自衛権の行使やジェノサイドの防止といったものは、国際法上も武力行使を全く正当化しないことがよくわかりました。国連やわが国が果たすべき役割についてのご意見も大変参考になる内容でした。
 講演後は、ロシアによるウクライナ侵攻、そしてそれを契機とするわが国内の軍事拡大にどのように対抗していくべきか、出席者で意見交換を行いました。
 憲法分科会2日目には、改憲の動きにどのように対抗すべきかについて意見交換をした後、沖縄辺野古新基地建設反対の運動、沖縄県知事選に向けた取組み、7月の参議院選挙に向けた各地での野党共闘の状況、全国各地での改憲阻止の取組み等が報告されました。
 互いに刺激を与え合うような内容だったと思います。
2.貧困・社会保障問題分科会 文責:担当事務局次長 大 住 広 太
 貧困社会保障問題委員会では、東京女子大学名誉教授の岩田正美先生をお招きしご講演頂きました。政府の社会保障審議会でのご経験も踏まえ、生活保護制度が十分機能していない現状から、様々なニーズに合わせて充足方法を検討しなければならず、そのためには生活保護制度自体を解体し見直すことが必要であるとのご提起でした。また、委員会で取り組んでいる生活保護のしおりの改善を求める取り組み、各地の活動の報告が行われました。
3.差別問題分科会 文責:担当事務局次長 永 田  亮 
 差別問題対策委員会では、インターネット上で拡散された差別発言に関して、在日コリアンと女性という両方の側面を持った複合差別であるとの認定を判決で勝ち取った李信恵さんとその代理人を務めた上瀧浩子先生を講師にお招きし、苛烈な差別の実態と差別のない社会を目指して弁護士に求められること等についてお話いただきました。また、各団員より、フジ住宅ヘイトハラスメント訴訟、LGBTQに関する訴訟、ベトナム技能実習生孤立出産「死体遺棄」事件など、日本社会における様々な差別課題に対する裁判上の取組みなどが報告されました。
4.労働問題分科会 文責:担当事務局次長 岸  朋 弘
 労働問題分科会では、龍谷大学名誉教授の脇田滋先生にコロナ禍で急速に広がった働き方についてご講演いただきました。
 いわゆる「雇用によらない働き方」やシフト制労働に関する諸外国の規制もご紹介いただき、わが国の法規制を考えるうえでも参考になるお話でした。
 講演後は、各地から事件・活動報告がありました。シフト制労働に関する取組み、労働者性が争点となっている訴訟等の紹介がありました。
5.国際問題分科会 文責:担当事務局次長 安 原 邦 博
 国際問題分科会では、宇都宮大学名誉教授の田巻松雄先生をお招きしご講演いただきました。日本で外国籍の子どもがおかれている状況と教育問題を中心に具体例とともにご報告くださり、この社会で生活する一人ひとりが尊厳をもって生きることの制度構築が重要であることが再確認できました。
 講演後、大坂恭子団員(愛知)及び髙橋済団員(東京)からは、各団員が携わっている現行入管制度のもとでの人権侵害事案をご報告いただきました。在留資格がない、というのは、ただ単にそのような書類上の記号がないということに過ぎず、一人ひとりが平等に尊厳をもった人権享有主体性であることをこの社会の常識にしていくことが必要であると再確認できました。

【新人・若手弁護士学習会】 文責:担当事務局次長 小 川  款
 新人若手弁護士学習会では、前半の1時間を使って早田由布子団員(東京支部)からの講演、後半の1時間を使って、早田由布子団員、朝隈朱絵団員(福岡支部)、伊能暁団員(東京支部)の三名をパネラーとしてパネルディスカッションを行いました。前半の講演では、「自民党改憲草案と若手が作る憲法運動」と題して、改めて、自民党改憲草案から出発して、憲法問題を解説いただくとともに、明日の若手弁護士の会(あすわか)を中心とした若手の活動の意義についてお話しいただきました。後半のパネルディスカッションでは、活動の仕方や仕事の覚え方、活動と仕事と私生活のバランスや工夫など各団員の経験に基づき具体的にお話しいただきました。

【事務局交流会】
 全体会では、「アスベスト訴訟と団事務所の関わり」をテーマに、東京支部の村松曉団員を講師に招いて講演が行われました。
 その後、(1)新人交流会、(2)なんでも交流会 に分かれてグループでの交流が行われました。

【団員有志企画】
ぞえさんCLUB & にひネットとのコラボ企画が1日目の夜に開催されました。

 

山本龍彦教授講演「デジタル化と憲法」感想

静岡県支部  小 笠 原 里 夏

 5月集会にオンライン参加した。昨年5月集会の斎藤幸平氏の記念講演も素晴らしかったが、今年の山本龍彦教授の講演もとても良かった。一言で言うと、「クリエイティブ」な憲法の話という印象で、大いに刺激を受けた。 
 自己情報コントロール権の内容に関する憲法学会における学説の動向、特に自己情報の開示・使用について本人自らが決定・選択できる権利という通説的な概念に対して、若手の学者を中心に、今日の情報ネットワークシステムにおいては、もはや本人が自己情報をコントロールすることは不能であることを前提として、自己情報コントロール権を「適正な自己情報の取扱いを受ける権利」ととらえる見解が主張されているという話はかなり衝撃的だった。このような学説に対して、山本教授ご自身が強い危機感をもって挑まれている様子にも衝撃と感銘を受けた。
 デジタル化が「個人起点」「人間中心」に進むことを確実にするために、個人情報に対する本人のコントロール権は基本的人権レベルで保障されなければならないとの山本教授の見解は、差し迫った切実な課題だと感じた。憲法の人権規定をアップデートしていく必要性を痛感する。
 アテンション・エコノミーと思想良心の自由との関係の話では、デジタル化社会においては、ユーザーのクリックや「いいね」がカネになるため、いかにユーザーのアテンションを獲得するかがプラットフォーマーにとって死活問題となるという構図を前提に、アテンションの「強奪」が行われている様が解説された。その中で、直感的で処理速度の速いユーザーの思考モードを刺激するシステムがアテンション強奪の方法として使われ、我々の民主政治にとって不可欠な論理的、内省的で処理速度の遅い思考モードは介在させられなくなることが指摘された。
 EUでは、個人の意識を超えたサブリミナルな手法を展開することを禁止する内容の法的規制が検討されている。日本でも、デジタル化の進展によって生じる問題点を漫然と受け身の姿勢で眺めているのではなく、ユーザーの立場から具体的に対処する必要性がもっと議論されるべきだと感じる。
 デジタル化に伴って生じている人権問題はこんなに深刻なのかとため息が出る思いだ。ただ、これらの新しい課題に対しては、クリエイティブなアプローチが求められるため、私も含め、はなから腰が引けてしまう弁護士は少なくないと思う。しかし折角、山本教授のように鋭い問題提起をしてくれる存在があるのだから、うまく連動できる運動を展開することも可能ではないだろうか。
 山本教授のお話を聞いていて、普段自分が「人権は、主として擁護するもの。憲法も、護るもの。」という考えに凝り固まっていることに気付いた。新しい社会的な課題に対処するために憲法を創造するということまで、考えが及ばないのだ。その結果、新しい社会の課題に憲法が対応できない、という軟弱な土壌を生んでしまっていないか。そして、憲法を護っているつもりなのに、社会の変化に伴って、既存の人権である思想良心の自由や、民主主義までスポイルされていることへ対処できなくなってしまっているのではないか、そんな思いを抱いた。憲法は守れたが、民主主義は死んでしまった、みたいなことにならないようにしなければならない。
 大切なものを守り抜く姿勢が大事なのは言うまでもない。でも、変化に対応する柔軟性や創造性も同じくらい大事で、我々は、軸足をそちら側にも置くことを意識的にする必要があるように感じる。
 幹事長が、5月集会冒頭の問題提起で、リアルな社会と向き合う必要があること、私たちは時代から自由になることはできないこと、だから1ミリでも2ミリでも時代を前に進める営みが必要と話していた。これはウクライナ戦争を受けて平和主義を守ろうとする私たちの課題という文脈の中で話されていたことだったが、山本教授の話とも見事にリンクした問題提起になっていたことは、鳥肌の立つ思いだった。

 

5月集会憲法分科会の議論に参加して

東京支部  中 西 一 裕

 久しぶりに5月集会に参加した。
 なんといってもこの間のロシアによるウクライナ侵略と今後予想される憲法改正問題について団の議論を知りたかったからだ。
 私自身もロシアのウクライナ侵略に反対する街頭宣伝やデモに参加しているが、いくつか気になる論調がある。それは団の議論でも感じたことだ。2つ挙げる。
①ロシアの侵略が違法不当なのは当然として、その背景にあるNATOの東方拡大は軍事同盟の危険性として強調すべきである。
②軍事力に対し軍事力で対抗するのではなく、世論の力で平和を実現する。
 まず、①のNATO東方拡大批判は、どのように話してもロシアの侵略の動機を「理解」し、その責任を軽減するかのように聞こえる。実際には、ウクライナはNATOに入る希望を表明しただけでNATO側は難色を示していたわけであり、これは侵略の口実であった可能性が高い。また、仮にこれが動機であったとしても、何の侵攻も受けていないのに首都キーウ攻撃を含む全面的侵略を開始し、民間施設も目標とする大量無差別爆撃の戦争犯罪行為を行ったロシアを少しでも「理解」し責任軽減できるわけがない。むしろ、今回の侵略によりロシアの無法国家ぶりが露呈され、NATO拡大の正当性が逆に立証されてしまったといえる。その結果、かつて旧ソ連に侵略されたフィンランドとその隣国のスウェーデンがNATO加盟を申請したのは当然の帰結であり、軍事同盟の拡大と批判することはできない。翻って、旧ソ連の支配と軍事的脅威の下で長年苦しめられた東欧諸国がNATO加盟を選択したことも理解できよう。
 次に、②については、現にロシアの侵略が行われており、これに対してウクライナが抵抗の意思を示して自衛戦争を遂行しているときに、「軍事力で対抗するな」とはどういうことか? ウクライナに対し降伏してロシアへの編入を受け入れろというのだろうか。ウクライナが自衛戦争を闘っている以上、それを支援するのは当然であり、かつ、もっとも求められる支援は武器供与等の軍事的支援である。もとより日本は憲法9条の制約ゆえに軍事支援はできないとしても、欧米の軍事支援を批判する理由はない。
 では、欧米がウクライナに武器供与などの軍事的支援をするのはロシアとNATOの「代理戦争」なのか?
 松井芳郎先生の講演にもあったとおり、ウクライナの要請で武器を供与するのは国連憲章の集団的自衛権行使として正当であり、軍事同盟の代理戦争ではない。ウクライナは侵略に対する自衛戦争を行っているのであり、これに対する支援はかつての日中戦争での援蒋ルートによる英米の中国支援、あるいはホーチミンルートを通じた中ソのベトナム解放戦争支援と同様である。最後に、憲法9条擁護のために今何が必要か? 
 そもそも日本国憲法9条は今回のような事態を想定していない。交戦権の否定はあくまで日本が国際紛争解決に武力を行使しないということである。憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」とは、侵略戦争を違法とする国際法秩序が遵守されることであり、今回のウクライナのように他国から一方的に侵略を受けることは想定外なのだ。
 したがって、まず何よりも国際法秩序が修復され、国際法を蹂躙した侵略が起きないようにすることが重要である。すなわち、乱暴極まりない侵略戦争を開始したロシアが国際的非難を受けて孤立し、経済制裁等で厳しい制裁を受け、さらには軍事的にも敗北してウクライナから撤退することだ。侵略者が報酬を得られず、厳しい反撃を受けることこそが、「台湾有事」を含む今後の平和の保障である。このような侵略は起きないと言えなければ、憲法9条改正論に対抗することは困難だと思う。

 

貧困社会保障分科会・感想

京都支部  佐 藤 雄 一 郎

1 はじめに
 自由法曹団京都支部団員の佐藤雄一郎と申します。自由法曹団5月集会の1日目、貧困社会保障分科会の感想等の寄稿を依頼されたため、私の拙い感想を投稿させていただきます。
2 岩田正美先生のご講演
 生活保護解体論。自身の不勉強を恥じるところですが、そのような議論があること自体を知りませんでした。中々パンチのあるワードですが、内容を見ると、なるほどなぁと思うところも多かったです。
 「解体論」という文言からは、生活保護制度自体を廃案にでもするのかという過激思想が連想されますが(岩田先生的には表現を抑えたらしい)、要するに貧困者が安心して実際に使える制度にしようというお気持ちが込められているのだと思います。コロナ禍で仕事がなくなり、収入が途絶えている人が増加していることは周知のことですが、生活保護制度が「健康で文化的な最低限度の生活」の保障をするための「安全網」であるならば、当然保護率や保護人員は上昇しているはずです。しかし、実際はそうではない。
 また、貧困者のニーズは一人一人違うはずなのに、個人の事情に応じて個別の扶助制度を利用することができる制度設計にはなっていない。他にも諸々制度的な欠陥が多数あり、非正規雇用が増加の一途を辿っている現在、生活保護制度の在り方自体を抜本的に見直すべき時期に来ているということがわかるものでした。
 もう一点、気付きを得させて頂いたなと感じたのは、生活保護制度に対する国民の関心が低いということでした。医療費の自己負担率や、保険料率の改定に関しては、自分の生活に関わることであるため、多少は国民の関心も集めますが、多くの人が利用しないと考えている生活保護については当然関心が低いです。生活保護基準が引き下げられても大半の人にとっては対岸の火事となっているため、国民的な議論として中々盛り上がらない。弁護士としては、貧困者とお会いする機会が比較的多いため、彼らの「健康で文化的な最低限度の生活」が送れるように国民全体で議論し、より利用しやすいように制度の改善(岩田先生的には解体からの再構築)に繋がって欲しいと強く感じました。
3 各地報告
 各地報告でとりわけ目を見張るものだったのが、八王子市生活保護担当職員が精神疾患男性に対して、「自殺未遂をしたからって容赦しねぇぞ」「あなた知能も境界レベルなんでしょ」「頭が足りないと分かっているんだったら、おとなしくして」との信じがたい人格否定をしていたことです。上記の台詞を書いているだけでも気分が悪くなりましたが、生活保護への申請者の背景に対しての想像力が足りていないなと思いました。生活保護制度自体を最終手段として中々認めないという運用実態にも当然問題がありますが、日本の学歴偏重の詰め込み式教育の弊害でもあるのではとも感じました。デジタル社会の普及により、コロナ禍も相まって人と接する機会がかなり減ってしまい、人の表情を見て、感情や背景事情について想像する力が減退しているのではと危惧するところです。日本の将来が心配になりました。

 

団員を国政へ押し上げましょう!!~山添拓(東京)と仁比そうへい(比例)

東京支部  青龍 美和子/舩尾    遼

福岡支部  池上    遊/堀   良一

宮崎県支部 成見  暁子

1 5月集会・トークライブは大成功!
 ありがとうございました(^-^)v
 ぞえさんCLUB・にひネットのコラボ企画として、「山添拓・仁比そうへいトークライブ」を開催させていただきました。参加、ご協力いただいたみなさまには、本当にありがとうざいました。
 新宿での緊急行動に参加する山添拓さんを待つまで、ぞえさんCLUBから四谷姉妹の憲法漫才ライブショーのビデオを上映。5月4日付東京新聞の一面で紹介されたという四谷姉妹のライブに会場が一気に盛り上がります。にひネットからはファミリーの会が作った仁比そうへいのプロフィールビデオ。家族作成ならではの仁比そうへいさんの生い立ちからの秘蔵写真とエピソードが、オリジナル応援ソングのBGMに乗って次々に紹介されます。正義の弁護士、熱血弁護士のルーツはここにあった。それがよく分かる納得のビデオでした。吉田健一団長もかけつけ、連帯のご挨拶をいただきました。
 にひネットからは、にひネットの活動やにひ☆宮崎ネットの独自ニュース発行という地域での取り組みを紹介し、全国に比例は個人名で訴えることが大切だと訴えました。
 山添拓さんと仁比そうへいさんのトークライブは、熱のこもった白熱のライブで、あっという間に時間がすぎてしまいました。
2 戦争する国を許さない!
 できることは全部やりましょう!!
 山添拓さんの再挑戦、仁比そうへいさんの復活を全国の力で実現しようという意気込みを新たにする、熱気に満ちたいい集いでした。
 山添拓さんの東京も、仁比そうへいさんの比例も、情勢は厳しいと言わざるを得ません。しかし!憲法・平和が問われている今、団員弁護士の国会議席はかけがえのない価値があります。全国の団員には、あらためて残りの期間を全力でがんばりぬくことを呼びかけたいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

応援ありがとうございます(泊原発稼働差止判決)

北海道支部  市 川 守 弘

 多くの団員が、全国の原発再稼働の差し止め請求訴訟や仮処分を闘っています。泊原発廃炉訴訟は、廃炉までは認められませんでしたが、再稼働は差し止める判決を得ることができました。これは全国からの熱い応援の結果と皆様にまずはお礼申し上げます。そして、少しでも全国のお役に立てればという思いから、弁護団長としての市川個人から若干のご報告をさせていただきます(弁護団の分析はこれからなので)。
1 廃炉までは認められなかった
 私たちは、①3基の原発の稼働差し止め、②使用済み核燃料の撤去、③廃炉を求めて10年前に提訴しました。提訴当時は廃炉について深くは詰めていませんでした。終盤になって釈明があり、もし裁判所が再稼働を認めず、使用済み核燃料も撤去するようにした場合、いったい廃炉とは何を示すのか、と問われました。結局、廃炉とは残った空の原子炉の撤去なのですが、これによる被害の範囲は??ということになり、あまり詰め切れませんでした。
 使用済み核燃料の撤去は、再稼働について「許可決定がない時点では具体的危険性がない」とされるおそれから使用済み核燃料の保管が重大な被害が発生するとして請求したものです。しかし、これに対しても撤去の場所等について具体的に明らかではない、とされ請求が認められませんでした。
 しかし、再稼働については30キロ圏内の原告に対して1号機から3号機のすべてについて差し止める判決となりました。そこで、以下、この点について述べていきたいと思います。
2 誰が危険性を証明するのか
 原発のように科学的・専門的・技術的に難しい問題については、まず資料を持ち、十分検討しているはずの電力会社が安全性を証明し、次に住民側が具体的に危険であることを証明する必要があります。これは長年の原発訴訟で裁判所が示した判断の枠組みです。
*だから、多くの訴訟では、電力会社の規制基準が合理的であること、規制委の判断が合理的であったことを立証するのです。許可が出ている場合には簡単に規制委がこのように判断していました、とするだけでよいわけです。これに対し、住民側が規制委の判断には間違いがあることを立証しなければならず、「至難の業」だったわけです。規制委は多くの科学者の集団と思ってよく、その判断に少数の学者が異議を唱えてもなかなか相手にされなかったのです。伊方原発の大阪地裁は規制委の判断について行政訴訟の裁量権の判例基準を「ばらつき条項」に当てはめて判断したものです。
3 北電はどうだったのか
 北電は、規制委にすら満足に規制基準をクリアしていることを説明できていません。つまり、国の示す基準に合致しているとはいえない状況なのですから、安全であることを証明できていないのです。
4 何に対しての安全性か
 判決では、地震動、津波、火山、敷地内断層、避難計画の実効性について、の5つを示しています。規制委においてこれら(避難計画を除き)について、規制基準をクリアしているとは認められていません。最近敷地内断層についての結論が出ただけです。地震動も沖合断層(沖合10キロほどの所にある海底断層)が決まらなければ出せませんし、火山などはまだまだで、裁判ではこちらが主張していることにまともに反論もできていません。
 マスコミでは、津波で勝った、かのように言われていますが、津波は、北電が「津波対策をとっていない」ことを一例として判決では述べられました。津波が分かりやすかったからでしょう。どの程度の津波が来るかの基準津波も確定できず、地盤の液状化や揺すりこみも確定できない状況なのですから。
 そんなわけで、判決では、津波対策一つとっても安全性を証明できていないとして、泊原発は危険であると断じたのです。それ以外の4点については論ずるまでもない、としています。
 以上の判断から、裁判所は泊原発の稼働を差し止めました。もし、この判決が確定すれば、北電は将来「請求異議」という別の裁判を提訴する必要があります(諫早湾のように)。
 この判決では30キロ内の原告に限定しました。これは「安全パイ」をとったと思いますが、地震、津波による使用済み核燃料への被害を考えると不十分です。ただ、10年冷却している使用済み核燃料のメルトダウンによる250キロ圏への被害(最悪のシナリオ)を科学的にどう証明するのか、が大きな課題として残っています。

 

治安・警察委員会「新人・若手向け弾圧学習会ーいざという時、あわてないためにー」に参加して

東京支部  唐 沢 奈 穂 子

 74期新入団員の唐沢と申します。6月2日に開催された弾圧学習会「新人・若手向け弾圧学習会―いざという時、あわてないためにー」に参加しました。ハイブリット型学習会でしたが、初めての学習会参加だったので、会場参加しました。
1 開会挨拶
 吉田団長より開会のご挨拶があり、新入団員も自己紹介をしました。新入団員は会場参加とZoom参加が半々でした。
2 講演
⑴  第一部
 森卓爾団員より「公選法の下で市民が自由にできる活動」という題で弾圧事件にかかわる弁護士として知っていなければならない基本知識についての講演がありました。
 「公職選挙法のしくみ(政治活動と選挙運動)」というサブタイトルが示すとおり、選挙の歴史、治安維持法の制定経緯等から紐解いて、基本的な公職選挙法の仕組みをわかりやすく説明していただく内容でした。
 私は今まで選挙運動と政治活動の違いを考えたことすらなかったので、パワーポイントで示された「選挙運動と選挙活動の規制のしくみ」の表に見入ってしまいました。「公職選挙法はべからず選挙法」であり、公選法の基本的な知識を身に着けなければならないことを実感しました。
 最後のまとめは、弁護士の役割と心構えについて、でした。弁護士の役割は、政治活動と選挙運動の自由を守り広げることであり、警察のいかなる干渉や弾圧に対しても毅然と対処することが大事であるとの言葉に、今まで数々の弾圧との戦いを制してきた団員の先生方の熱意と使命感を強く感じました。
⑵  第二部
 続いて、加藤団員より、たすき問題についての講演がありました。東京都選挙管理委員会が示した、平常時における政治活動用文書図画掲示の規制についてという文書には、公職の候補者等の氏名等を記載した「たすき」の着用ができないと記載されていました。確かに同文書は、「公職の候補者等が、個人の政治活動のために上記の掲示できる文書図画以外のものを掲示すること(略)はできません。」と締めくくっていますが、反対解釈すれば、政党の政治活動の一環であれば、たすきを使うことはできることになります。
 基本的におかしいという感覚を持ち、解釈を考え、やれる範囲を見極めつつも自由に戦うことが大切とのお話でした。
⑶  第三部
 最後は、齋藤耕団員による「道警ヤジ排除事件への取り組み」に関する講演でした。
 判決の決め手は映像にありました。学習会では証拠提出された映像の一部を再生して頂きましたが、そこには、警察官がヤジ後ただちに排除行為に及ぶ様子がくっきりと映っており、衝撃を受けました。私は、事件当時、ニュースでこの映像を見た覚えはありましたが、数分にわたる動画を通しで見たのは初めてでした。
 この映像は、入手経緯からすれば、提出に悩む証拠だったということにも驚きました。なぜなら、事件当時に周囲の人物がスマホで撮影したもので、しかも、本件を調べていたジャーナリストに匿名でもたらされたものだったからです。撮影者が不明で捏造等の不安がありましたが、原告本人等が見て捏造のおそれが拂拭されたことから法廷に顕出することができたそうです。
 証人尋問では警察官らは映像と矛盾する証言をするなどをしましたが、裁判所は排斥し、さらには表現の自由、移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権の各侵害についても言及する英断を行いました。
3 質疑応答
 質疑応答では、伊久間団員、山内団員から警察官の証人尋問について質問があり、警察官は組織的に回答を用意していたことや映像との矛盾以外にも獲得目標があったことなどの解説がありました。同じ新入団員でありながら、とても切れ味の鋭い二人の質問に凄いと思いました。質疑応答を通じて、事件の背景事情をよりリアルに想像することができました。
4 感想
 弾圧学習会の案内文には「「道警ヤジ排除事件はテレビで聞いたけど、そもそもどんな事件だったのだろう?」「見守りや接見の要請が来たら、どう対応したらいいの?」などの疑問にお答えします!」と書いてありました。私はまさしく、その状態でした。それでも、基本的な知識をわかりやすく説明していただいた上で、具体的な事件の解説をうかがい、多少なりとも自分なりにイメージを持つことができたように思います。
 帰宅後、道警ヤジ排除事件の映像をYouTubeで探し、HBCテレビ『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~』などいくつかの動画を視聴しました。ヤジ直後、間髪入れずに警察が排除している様子、執拗に警察がついてまわる様子にショックを受けました。
 今年は74期一斉登録日が4月21日にずれ込んだため、弾圧学習会がこの時期になったそうですが、参院選が目前に迫る中で臨場感を持って拝聴することができました。「いざという時、あわてないために」という副題の通り、転ばぬ先の杖となる学習会に参加できてよかったと思います。どうもありがとうございました。

 

団100周年大阪支部企画「松川裁判闘争の教訓」をアーカイブでご視聴ください

大阪支部  辰 巳 創 史

 5月9日、団100周年大阪支部企画として、石川元也団員を講師にお迎えし、「松川裁判闘争の教訓」学習会をリアル+Web併用で開催しました。
 第1部 刑事裁判、第2部 国賠裁判、第3部 松川裁判闘争の教訓、第4部 松川運動継承団体とその取り組み と内容は盛りだくさんでしたが、2時間があっという間に感じられ、石川団員の明晰な論理と記憶力に、改めて舌を巻きました。
 「諏訪メモ」発見の経緯、「7対5」で破棄差戻となった最高裁判決がいかにギリギリのものであったか、松川裁判に対する団藤重光教授と平野龍一教授の対応の違い、など知らなかったことだらけで、驚くことばかりでした。
 詳細はあえて書きません。是非、石川団員の話を直接聞いていただきたく思います。
 当日は、リアルで14名、Webで16名にご参加いただきましたが、ご都合がつかずにご参加いただけなかった団員も多数おられたはずです。また、この団通信をご覧いただいて、関心を持たれた方もおられると思います。
 ご安心ください。自由法曹団の団員専用ページから、いつでも学習会のアーカイブが見られます。
 自由法曹団のホームページを開き、「団員専用ページ」の緑色のバナーをクリックしていただくと、IDとパスワードを入力するウインドが開きます(IDとパスワードがわからない方は、本部に問い合わせてください。簡単なIDとパスワードですが、ここでは書けませんので)。団員専用ページの「お知らせ」欄に、「学習会の録画はこちらからご覧ください」とあるので、それをクリックしたら、あら簡単。過去の学習会の録画が見れちゃいます。
 石川団員も「会心の出来」とおっしゃっている学習会を、是非動画でご覧ください。

 

「戦争」か「平和」かが問われる参議院選挙

埼玉支部  大 久 保 賢 一

 6月22日公示、7月10日投票予定の参議院選挙での最大の争点は、日本を戦争への道と進めるのか、9条の非軍事平和主義を生かして平和への道を進むのかということにあります。なぜなら、米国は、中国との軍事衝突を考えているし、日本はその方針を丸ごと受け入れているからです。もちろん、日々の生活、地球環境、貧困と格差、ジェンダーなど、多くのテーマが争点ですが、戦争が生命と生活を根底から覆してしまうことは、ロシアのウクライナ侵略の現状が雄弁に物語っています。私たちは、いかなる理由があっても、軍事衝突を引き起こしてはならないし、そのための政治体制の構築しなければならないのです。ここでは、米国と日本の対中国政策を概観し、戦争準備ではなく、9条に基づく安全保障政策を考えてみましょう。
バイデン政権の対中国政策
 バイデン政権は「新たな脅威」として中国を筆頭にあげ「中国は安定し開かれた国際システムに継続的に課題を突きつけるために、自国の経済力・外交力・軍事力・技術力を組み合わせる能力を保持し得る唯一の競争相手である」としています。5月16日、ブリンケン国務長官は「米中関係は世界で最も複雑かつ重要な2国間関係」だとしつつ「新たな冷戦は望まない」が「中国は、世界が戦後に構築してきた国際秩序に挑戦している」としています。米国は、中国を「国際秩序に挑戦している唯一の競争相手」として、雌雄を決する姿勢を示しているのです。
米国議会の動き
 昨年、民主・共和超党派によって「米国イノベーション・競争法」が成立しています。その法律には、 対中国制裁・規制強化方針の完全な履行、規制についての同盟国・パートナー国との意見交換の義務付け、中国共産党の影響力への対抗基金の設置、台湾政府への関与などが盛り込まれています。日本に関しては、長距離精密打撃兵器の開発、防空、ミサイル防衛能力への支援、日米豪間での防衛関係の強化などが含まれています。アメリカは、超党派で、対中国「国家総動員体制」を整えているのです。
同盟国日本との意見交換
 その米国の方針に基づいて、日米間で次のような合意が行われています。
 ルールに基づく秩序を損なう中国は、地域及び世界に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な問題を提起している。地域における安定を損なう行動を抑止し、必要であれば対処するために協力する。
 中国を危険国家として抑止し対処するとしているのです。5月23日の日米共同声明は次のようにいいます。
 日米は「同盟の抑止力及び対処力」を強化する。日本は「ミサイルの脅威に対抗する能力を含め、日本の防衛力を抜本的に強化」し、「防衛費の相当な増額」を確保する。
 米国は「核を含むあらゆる種類の能力」で「日本の防衛」に関与する。日米は「情勢が進展する際のあらゆる段階を通じて、二国間の十分な調整」を確保する。
 日米軍事同盟の強化が約束されているのです。
 そして、「台湾に関する両国の基本的な立場に変更はない」、「台湾海峡の平和と安定は重要」、「両岸問題の平和的解決」などとしていますが、「日米で共に戦略を整合させ、 …同盟を絶えず現代化させ、二国間の役割及び任務を進化させ、共同の能力を強化させていく」としており、軍事力対応を優先しているのです。先日、バイデン大統領は、台湾有事に際して米国が関与するかとの問いに「イエス」と答えています。
 更に、両首脳は、欧州やカナダその他の地域の「志を同じくするパートナーとの協力」の重要性を強調しています。これは、世界を二分する発想です。
 日米は、オーストラリアやNATO諸国と連携しながら、中国と軍事的に対抗するとしているのです。日米印豪のクアッドも形成されています。日本は、中国をにらんで日米同盟の下で軍事力を強化しているのです。既に「専守防衛」などではないのです。これが、敵基地攻撃能力や軍事費の増大が言われ改憲が進められている背景事情です。
 日米両国政府は「熱い戦争」を準備しているのです。そのための自衛隊配備や軍事訓練が行われ、辺野古基地移転が強行されているのです。
避けなければならない軍事衝突
 ロシアのウクライナ侵略を目の当たりにして、防衛力を強化したり、核兵器に依存しなければ「攻められる」のではと不安を覚えている人々もいます。その不安は無理もないものかもしれません。けれども、日米両国が進めていることは「志を同じくしない」中国、北朝鮮、ロシアを「仮想敵国」としての軍事力強化なのです。
 このような姿勢が中国の反発を引き起こし、軍拡競争を激しくし、この地域を不安定化することは明らかでしょう。台湾、ウイグル、香港、尖閣などがいわれますが、事態はもっと深刻なのです。中国からすればこの態勢は大きな脅威と映っているでしょう。軍備増強を図り、国内体制の引き締めに入るでしょう。14億人の人民と党員9千万人を超える中国共産党が黙って白旗を掲げることはないでしょう。偶発的な衝突や軍部の謀略が「熱い戦争」の発火点とな ることは歴史的にいくらもあります。日中両国人民に破滅的な被害が発生することを防止するために、軍事衝突は絶対に避けなければなりません。そして、核兵器の応酬は更なる悲劇を招来することでしょう。
対案はある
 国際社会には、二度にわたる世界大戦の惨禍を反省して設立された国際連合があります。東南アジアにはASEANが存在します。ASEAN+日米中などで構成される東アジアサミット(EAS)も存在しますし、ASEAN地域フォーラム(ARF)には中国もロシアも北朝鮮も参加しています。軍事的対応ではなく、これらの既存の機構の活用が工夫されるべきでしょう。今回の日米共同声明にも「ASEAN 一体性及び中心性の重要性を確認」という文言はあります。また、6者協議の復活も図られるべきでしょう。
 国際紛争を軍事力で解決しようすれば、現在、ロシアが行っているように、核兵器使用の威嚇からその使用へとエスカレートすることになります。そして、「核戦争は全人類に惨害をもたらす」 (NPT前文) ことになります。核兵器のいかなる使用も「壊滅的人道上の結末」をもたらすことになります(核兵器禁止条約前文)。世界には1万3千発の核兵器が存在しているのです。
 私たちは、来るべき参議院選挙において、ロシアのウクライナ侵略を糾弾し、停戦を求めることすることと合わせて、日米が進めている「熱い戦争」の準備を暴露しなければなりません。「戦争」か「平和」かは現実的な争点なのです。日本国憲法9条は、全ての戦争と戦力、交戦権を放棄する絶対的平和主義の規範です。今求められているのは「核兵器」ではあません。「平和を愛する諸国民の公正と信義」(憲法前文)です。
 戦争によらない紛争の解決は決して夢物語ではありません。そのためには、核兵器禁止条約の署名と批准、そして、9条の擁護から世界化へと進めることです。参議院選挙をそのための機会としましょう。
(2022年5月30日記)

 

「ロシアとアメリカの戦争だ」という松島暁さんの論稿について

東京支部  木 村 晋 介

ウクライナ戦争は「西側のせい」なのか
 前衛6月号に共産党の志位委員長の報告が掲載されています。ここで志位さんはウクライナ問題について次のように述べています。
 「この問題について、日本国内の一部に、ロシアとウクライナの双方に問題があるとして同列に置く「どっちもどっち」論がありますが、これは道理がなく、国際社会では通用しないものです。(中略)プーチン政権は「NATOへの懸念」を口にしますが、仮に懸念があったとしても、隣国への武力攻撃を正当化するものではありません。侵略国と被害国を同列に置く「どっちもどっち」論は、結局のところ、侵略国を免罪し、二つの世界大戦の惨禍を経て作られた国連憲章にもとづく平和秩序の否定につながる議論といわなければなりません」と述べています。私は、共産党の政策全体については是々非々の立場にありますが、この報告はさすがに100年の歴史を持つ平和政党の矜持が示されていると思いました。
 これに対し本誌1776号に掲載された論稿で、松島さんは、フォーリンアフェアーズに掲載された権威ある論文だ、ということを二度も強調され、その論文をたっぷり引用され、同論文の「ウクライナ危機を招いたのは西側のせいだ」という考えに基本的に賛成するとしておられます。これは、志位さんが批判する「どっちもどっち」論の域を超えて、西側に主たる責任があるという立場だということになります。
 どんな権威のある雑誌に掲載された論文であろうと、その論文の価値を決めるのは、論ずるところに符合するエビデンスがしっかりしているか否かにあります。そのフォーリンアフェアーズに掲載された論文には、NATOの東方拡大さえなければ、ウクライナ危機は絶対生じなかった、と本当に書いてあるんでしょうか。もし書いてあるとすれば、それはどのようなエビデンスによって論証されているのでしょうか。
独裁国家には遠慮した方がいいか
 NATO加盟の方向を目指すか否かは、ウクライナにとって悩ましい問題だったでしょう。加盟しなければロシアから侵略されるかもしれない、加盟すれば危機を招くといっている(結果について何の責任も負わない)学者もいる(例えばジョージ・ケナン)。その中でウクライナは、力による現状変更を続けるロシアの脅威を重く見て、加盟の方向に舵を切りました。これは、何ら国連憲章・国際法に反するものではありません。ウクライナの民族自決の問題です。ちなみに加盟の方向をアメリカがけん引主導したしたという証拠が何かあるのでしょうか(仮にあったとしても、それは国連憲章、国際法に違反するものではありませんが)。また、ロシアが「もし加盟したらただではおかない」という態度をとっていたのだとすれば、それこそ国連憲章・国際法に反することでしょう。
 グルジアのバラ革命、ウクライナのオレンジ革命などがアメリカなどの帝国主義勢力による侵略行為だとプーチンが見ていたということが仮に事実だとしても、いずれの「革命」も基本は民族自決にかかわる問題です。国際社会がプーチンの妄想的認識を忖度し、これに合わせて行動しなければならないということはありません。また、民主主義と人権という共通の価値観で結ばれた国同士が権威主義的な独裁国家の脅威に対応するため、同盟関係を結ぶことは、当然のことだと思います。松島さんの論は、権威主義国家は暴発しやすいので、余りまとまるのはやめておこう、という議論のように思えます。しかし、それで安全保障がなり立つのでしょうか((抑止力のジレンマについては改めて触れますが)。
 少し形は違いますが、松島さんの論稿を読んでいて、第2次大戦前に英・仏がドイツに対してとった宥和政策が頭に浮かびました。英・仏はドイツの侵略政策に直面し、小国を生贄にして一時的な平和を得ようとしましたが、これがかえってドイツの強大化を許し、第2次大戦を招くことになりました。独裁国家との間で安易な妥協をすることは、かえって危険だということをここから学ばなければなりません。松島さん。これが本当のリアリズムというものでしょう。
ロシアとアメリカの戦争なのか
 松島さんは、この戦争が、ロシアとアメリカの戦争だと何度も強調しておられますが、そのような評価は、この戦争の第一線で戦っているウクライナという国家、と国民をプレーヤーから消し去ってしまうことになりませんか。彼らの苦悩をネグレクトすることになりませんか。そこが心配です。いずれにせよ、松島さんが「アメリカが覇権的野心でウクライナを舞台にウクライナ人にロシアと戦争をさせている」という認識ではおられないことを望みます。なお、ロシアの戦争は国連憲章・国際法違反ですが、アメリカのウクライナに対する軍事支援は、国連憲章・国際法にふれるものではありません。
 また日本共産党の話になりますが、先の前衛6月号「志位和夫著『新・綱領教室』のすすめ」の中で、著者の田中悠さんがこう述べています。綱領の立場は“いつでもどこでもアメリカが悪い”とは見ない「弾力的なアメリカ論」に立っていると。前衛には、柔軟になった同党の姿が反映されていて、いつも大変参考になっています。

 

木村晋介さんと矢崎暁子さんの投稿を読んで

千葉支部  守 川 幸 男

 団通信5月21日号で木村晋介さんが、攻められないためにどうするかに関して、私の投稿に意見を書いている。この投稿の表題の設定は正しいと思う。その多くは4月21日号と5月1日号の矢崎さんの投稿に対するもので、矢崎さんはこれに対して6月1日号に「困惑と質問」を投稿した。ほぼ賛同できる。また、ここでの論点ではないが、降伏すべきかどうかについて、命が大事という矢崎さんの心情はわかるが単純ではなく必ずしも意見が一致しないかも知れないが、自分がどうするかと言えば、逃げるという点では一致するかもしれない。
 以下、私の投稿に対する木村さんの感想や疑問について感想や意見を述べておく。
 なお、私の当初の投稿(4月21日号)で、かつて弁護団でご一緒したのが明乳弁護団と書いたが石播弁護団が正しかった。
1 丸腰平和主義者とか私の意見がわからないと いう感想について
 木村さんは私が丸腰平和主義者とわかったと言う。私が軍拡競争と比ゆ的に丸腰とを対置して、どちらが危険かと問題を設定したことを受けてのものである。前者こそ危険だと訴えるべきだと提起したのに、これもわからないと言うのである。「丸腰」と言うと何もしない、無抵抗の響きがあるが、そうでないことは当然である。
 私の意見は、共感した、わかりやすい、問題点が整理されたと、あちこちで言われている。
 すなわち、9条は無力ではなくフルスペックの海外派兵の制約となっている、9条は侵略しないという制約だから日本を守ると直接保証していないが、結果的には守る効果がある、国民の取り組みが重要、軍拡や軍事同盟こそ危険、平和の共同体作りこそ重要など(我々には当然の常識だが)を訴えていくべきだと書いた(小見出しをゴチックにしたのに編集の行き違いか普通字になって読みにくかったとは思う)。
 その前の投稿(3月11号と21日号)や、5月東京集会の特別報告「問題提起—ウクライナ侵略を見る視点」(ほとんどの論点を網羅した学習会レジメである)とあわせて読んでいただけば、それほど意見の対立はないはずだと思う。
2 木村さんの立ち位置について
 木村さんはご自分の立ち位置について「どうやって普通の人に通じる、門前払いされない安保政策論・憲法論を練り、それを語るか」と言う。全く異論はなく、むしろ私は、木村さんは「憲法論でなく政治論として、政治家は国民の不安に対応すべきだと言っているかもしれない」と、主語は異なっても趣旨を善解して正しく指摘していた。そして私は誰よりも早く、細かい知識でなくまさにその点を繰り返し問題提起してきた。
 ただ、私が指摘したのは「価値ある9条を守ろうと言うのか、価値がないから重視しないと言うのか明らかでない」ということである。どちらかと問うたのだから、木村さんには端的に前者だと言ってほしかった。
3 プーチンと安倍晋三の思想が同じかについて
 木村さんは「安易にそういう比喩をするのはどうかなあ」と言う。私はそれほど厳密に分析して、「同じ思想」と言ったわけではない。しかし、力の論理や核抑止力に頼る、立憲主義を理解しない、人の意見を聞かない、意見が違うと怒りだして攻撃する・・・これらは立派な共通点である。木村さんの言う「身内にはウケる」だけでなく、(きちんと聞いてくれる)「普通の人の共感を得られる」とも思っている。
 青年法律家の5月25日号で愛知の鈴木秀幸弁護士は、「安倍元首相は、日本の戦前について反省していないので、彼のイデオロギーは、プーチンと似て極めて危うい」と述べ、軍事力の拡大などを唱える人々についても「プーチンの『力の論理』と同じ思考」と指摘している。私も「思想」と言わず「思考」と言った方がよかったかも知れないが、同感だ。
 あの二人の共通点には、木村さんも含めてあまり異論がないであろう。こういう人物が政権を担う日本の危うさを指摘するのは、法律家や立憲野党の責務だと思う。

TOP