第1818号 8/1

カテゴリ:団通信

【今号の内容】

●名古屋自動車学校事件最高裁判決の報告  中 谷 雄 二

●ヘイトスピーチを巡る川崎の2つの訴訟  神原 元

●離婚後の共同親権に反対する  大森 典子

●「立法府を形骸化する政省令委任の拡大を憂う」の朝日社説  莇 立明

●事務局長日記 北海道支部総会に参加して  平井 哲史

●「新人・若手向け『弾圧学習会』〜公安警察って何?

大垣警察市民監視事件と道警ヤジ排除事件〜が開催されました」  久保木 太一

●国家防衛戦略(NDS)の反撃能力は台湾有事での対中国軍事作戦のためだ(下)  井上 正信

●広島ビジョンに対する反核法律家協会の声明  大住 広太

●「第6回「原発と人権」全国研究・市民交流集会 in ふくしま」  柿沼 真利

●花トレッキング―佐渡島(後編) 中野 直樹


 

名古屋自動車学校事件最高裁判決の報告

愛知支部  中 谷 雄 二

1 本年7月20日、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)で、定年後再雇用労働者の賃金と定年前賃金との格差を旧労働契約法20条違反だとして争っていた名古屋自動車学校事件の最高裁判決がでました。
 この事件では、一審、二審とも定年前賃金と定年後賃金の格差について、基本給の60%以下、賞与についても基本給の60%に支給率を掛けた額以下の一時金の支給及び精励手当の格差、残業代の格差(基本給で違法とされた額に対応する割増賃金)を違法として、損害賠償を認めました。名古屋高裁判決に対して、双方が上告及び上告受理申立を行い、最高裁は会社側の上告受理申立のみを受理し、双方の上告は却下し、労働者側の上告受理申立は受理しないとの決定を行いました。この日の判決は、会社側上告受理申立に対する判決でした。
2 会社側の上告受理申立は、基本給と賞与に関して、高裁判決が、基本給や賞与はこれまでの最高裁判決(長澤運輸事件、大阪医科薬科大学事件)で旧労働契約法20条の不合理性判断の対象となっていないので最高裁判決違反であるとし、一審・二審が命じた60%以下という基準は何ら根拠がないとし、これらを「重要な法律事項」だというものです。
 私達弁護団(上告審は、私と岐阜の仲松大樹弁護士)は、これまでの最高裁判決はいずれも事例判断であり、それを不当に一般化できない。正確に判決を理解すれば、基本給も賞与も不合理性判断の対象になることを認めている。この事件は、業務の同一性も責任範囲も定年前後で全く同一であることについて、双方が一致しており、定年後で高齢者継続雇用給付金や老齢年金の報酬比例部分が支給されていると言っても、制度趣旨が異なるものであり、就労の実態に全く変化がない場合に、それを理由として減額の合理性を根拠づけることはできない。老齢年金も年齢に着目したもので、その支給を理由に賃金減額の合理性を根拠づけられないと主張しました。また、60%という数字は、地裁及び高裁判決があまりの低賃金に労働者の生活の安定という趣旨を考慮して、上記年金等を加算した場合に賃金の総額を水準に保つために結果から導き出した数字にすぎず、不合理性判断をした場合に割合的に救済することは旧労働契約法が認めており、これまでの最高裁判例も認めている。むしろ、定年前後において同一業務であること、責任範囲に変更がないことを前提とすれば、定年後の賃金について差額の100%が支給されるべきであると反論しました。
3 最高裁は、基本給と賞与について原判決を破棄し、差戻しの判決を出しました。判決理由は、基本給を原判決は勤続給のみと捉えているが、職務給、職能給の可能性もあるので、基本給の趣旨・目的を明らかにするべきである。労使交渉の結果しか原判決は判断していないが、交渉の経緯や内容も判断すべきだ。これを明らかにしないまま不合理と判断した原判決は違法だというものです。
 一部勝訴していた原判決を破棄して差戻されたのですから、労働者側敗訴の判決と受け止められたと思います。当日の記者会見でも、最高裁の判決を前提とすれば、差戻審では前進を勝ち取れる可能性のある判決だと評価した私に、「前へ進むという意味ですか?」と質問した記者もいました。
 最高裁は賃金体系について判断する材料がないと考え、労使交渉もされたと想定したのでしょう。原審の審理が足りないと感じ、原判決を破棄し差戻したのでしょう。この会社には、体系といえる賃金体系がないということを最高裁は思いつきもしなかったのでしょう。労使交渉は労働者が申し入れても一切拒否され、交渉などありません。最高裁がどのような思惑で判決を下したかはわかりませんが、この判決を前提にすれば、この会社の基本給には職能的要素などほとんどなく、職務給に勤続的要素がわずかに加味されただけの実態だったこと、労使交渉も最高裁が想定しているようなやりとりがなかったことが明白になります。そうなれば、差戻審において、基本給及び賞与の格差の不合理性の認定はもちろん、損害額もアップさせる筋道が見える筈だと信じています。
4 高裁判決で、労働者側が一部勝訴し、会社側のみの上告受理のみを受理するという最高裁の姿勢からマスコミも含めてこの日の判決を注目していたものは、全て厳しい判決も想定していたと思います。しかし、さすがの最高裁も、全く同一の仕事をしながら、定年後基本給を8万円に下げた事案で、不合理性はないと自ら判断できず、高裁に差し戻さざるをえなかったのだと思います。差戻審では、最高裁が違法とした基本給の法的性格と労使交渉の経緯について、事実を徹底して明らかにし、再度の労働者側勝訴を勝ち取ることは勿論、損害額を増加させる覚悟で臨みます。最高裁が会社側の上告を受理すると決定してから、激励をいただいた全国の団員の方々にお礼申し上げます。引き続きのご支援をよろしくお願い致します。

 

ヘイトスピーチを巡る川崎の2つの訴訟

神奈川支部 神 原  元

1 はじめに 
 川崎でヘイトスピーチを巡る二つの裁判について報告する。一つは勝利判決確定の報告であり、一つは結審の報告である。
2 背景
 私が弁護士としての人生を送る川崎市、その臨海部は、戦前から、在日コリアンと呼称される在日韓国・朝鮮人が多数居住する地域であり、特に川崎市川崎区桜本地区はその集住地域であった。ここにヘイトスピーチを伴う「ヘイトデモ」が来襲したのは、2013年頃のことだ。
 「行動する保守」と称する一団は、2013年から2015年6月にかけて、川崎市内で合計10回のデモを行った。2015年11月8日、彼らは、在日コリアンが集住する臨海部・桜本をターゲットにして、「川崎発!日本浄化デモ」デモと称するデモを始めた。住民の呼びかけにより、市内外から約300名の人々が集まり、桜本の街の入り口でデモ隊に立ちふさがって、桜本へのデモの侵入を止めた。
 2016年1月23日、「行動する保守」の一群は、再びデモを強行、桜本に近い富士見町公園で、「朝鮮人は出て行け!朝鮮人は出て行け、ゴキブリだ!ゴキブリ朝鮮人は出て行け!」「敵に対してぶち殺せというのは当たり前でしょう。敵の人権を守ろうなんて馬鹿はいませんよ。敵はぶち殺していくべきです。」等と演説する事態になった。
 ここで、川崎市民は「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」を結成。その中心にいた在日コリアン3世の崔以江子さん(現「川崎市ふれあい館」館長)は国会で意見陳述を行い、その陳述が議員たちの心を動かし、2016年5月24日、衆議院本会議にて、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(所謂ヘイト・スピーチ解消法)が成立した。
 それでも、「行動する保守」側は、「川崎発!日本浄化デモ第三弾」を実施すると予告した。団員らは、ヘイトデモ禁止仮処分で対抗。6月2日、横浜地方裁判所川崎支部は、デモ側に、桜本地区(半径500メートルの円内)の近隣を徘徊し、大声を張り上げる等してはならないという、接近禁止仮処分命令を発令した。それでも、デモ側は、デモの場所を桜本地区から川崎市の中原平和公園前に出発地点を変更し、デモを強行した。崔江以子さんは、現場にかけつけ、デモの主催者に「共に生きよう」と書かれた手紙を渡して中止を呼びかけた。デモ隊の眼前の路上には、再び大勢の市民が立ちふさがり、ついにデモは中止に追い込まれた。
3 川崎ヘイトデモ裁判
 ところが、路上で敗北したデモ主催者らは、2019年11月26日、デモ妨害を共謀したとして、なんと、私(神原)を被告として損害賠償請求訴訟を提起してきた。これが一つ目の川崎ヘイトデモ裁判である。
 津﨑らの主張は、デモを中止に追い込んだ大勢の市民と神原との間に「客観的関連共同」乃至「共謀」が存在し、神原はデモの中止について共同不法行為責任を負うという、どだい無茶なものであった。これには自由法曹団を中心に150人以上の弁護士が代理人となってくださり、さらに、自由法曹団神奈川支部は「訴訟に名を借りた、弁護士の活動に対する妨害、ヘイトデモの正当化を断固許さない」との声明を発表してくれた。
 2022年5月31日、横浜地裁川崎支部は、デモ側の請求を全て棄却する判決を下した。判決文ではデモの際に行われた多くのヘイトスピーチが事実認定された。
 2023年6月28日、最高裁は、デモ側からの上告受理申立について受理しない決定を下し、デモ側敗訴が確定した。被告本人として団のご支援に心から感謝致します。
4 「祖国に帰れ」との発言を裁く裁判
 他方、2016年に国会で意見陳述をして以降、崔江以子さんには、インターネットにて、激しいバッシングを受けるようになった。バッシングの多くは在日コリアンという属性に対する攻撃であり、ヘイトスピーチであった。
 私は2020年になって、ようやく崔さんを執拗に攻撃し続ける人物の一人の手がかりをつかんだ。 特定のための法的手続きをとり、2021年9月、ようやく犯人を突きとめることができた。
 2021年11月18日、崔さんは、その人物を被告として訴訟に踏み切った。これが二つ目の訴訟である。ポイントとなる発言は、「日本に仇なす敵国人め、さっさと祖国に帰れ」との発言、「差別の当たり屋」という発言であった。とりわけ前者である。
 弁護団は、「さっさと祖国に帰れ」との投稿は、差別的言動解消法2条にいう「差別的言動」であり、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する差別的言動(排除類型)に該当するものであって、本邦外出身者がそのことを理由として差別され本邦の地域社会から排除されることのない権利又は法益を侵害する違法行為であると主張した。差別的言動解消法2条の「差別的言動」には、本邦外出身者に害悪を告知する「害悪告知類型」、虫や動物に喩える等著しく侮辱する「侮辱類型」、そして、本件のように地域社会から排除することを煽動する「排除類型」がある。排除類型こそが「差別的言動」の基本類型であり、永きにわたり本邦外出身者を苦しめてきた、ヘイトスピーチの典型中の典型であった。弁護団は、排除類型に絞って社会学者や法学者の意見書を提出し、「差別されない権利、地域社会から排除されない権利」を正面から認めるよう、裁判所に迫った。
 崔江以子さんの裁判は、本年7月20日に結審した。判決は、10月12日、横浜地裁川崎支部で言い渡される。

 

離婚後の共同親権に反対する

東京支部  大 森 典 子

1 はじめに
 団通信1817号の後藤富士子さんの論考「疑問だらけの「単独親権」制」と言う論考に反対の立場で以下私の考えをのべる。後藤さんの論考は離婚によって単独親権となるという制度は離婚に対する制裁であり、父母で協議がまとまらなければ、子の養育に責任を持たない裁判官が決めるというのは、おかしいとして、共同親権にして子のために実情に応じて「共生する方策」を講じれば足りる、とする。
 しかし、このような議論は現実にある離婚事件の実情を全く無視するものと考える。私は現実に目の前にある離婚事件を通じて、「共同親権」には反対する。
 理由は以下のとおりである。
2 離婚事件における親権者の決定の実情
 私たち弁護士、とくに女性の弁護士は離婚事件を数多く処理をしてきた。その実務経験から言えることは、親権でとことん父母が争って裁判所が判断したというケースはほとんどない、という事である。離婚の判決で終了した場合は裁判所が判断したことにはなるが、多くは財産分与や慰謝料の問題で争われて離婚の判決になり、判決の主文の1項には入っているが、親権が主な争点という事はほとんどないと言ってもよい。
 それは現実的に離婚の法的な紛争になる前に、子の養育についての関わり方が父母のどちらかに主として偏っているからであり、多くの離婚事件では母親が子供を抱えて父親と対峙するという形が多いからであると考える。そのような場合、父親が親権を要求して最後まで譲らないという場合は経験したことがない。また子ども自身がある程度の年齢になるとどちらかの親との生活を望み、その現実を基に親権が決まってくるというのが実情ではないだろうか。まれに父親と母親が子供を一人ずつ養育し、それぞれの親権者になるという場合もあるが、要はそのような場合も離婚の紛争の前に、そのような形がとれる関係が形成されているという事である。つまり全く同程度の理由をもって争っている父母の親権について、“養育に責任のない”裁 判官が親権者を決めるという事は実際の問題としてはほとんどおこっていない、と考える。
3 離婚後の父母の関係
 そしてこの問題を考える際には、特に離婚後の実情が重要であると考える。DV事案の場合は言うまでもないが、そうでない場合も、離婚後に父母が子どもの問題で平等に意見をいい、協議ができるという場合はほとんどないというのが実情ではないか、と考える。つまり離婚せざるをえないという事は、日常的に平等に、理性的に意見を言い合い、協議して何か物事を決めるという事ができない関係になっているから夫婦の関係を解消しようという事なのであり、離婚後に子どもの問題で協議がうまく進むはずがないというのが実情であると思う。
 「共同親権」の問題がにわかに民法改正の問題として浮上してきていることに、私は率直に大変な危機感を持っている。つまり離婚事案の圧倒的な場合は、夫婦が平等の立場でものを言える関係になく、力関係が平等でないところから紛争が起こっているからである。離婚という手段はそのような関係を解消しようとする試みであるとすると、離婚後の親権の行使において、「共同親権」として法的な権限行使の根拠を与えられた者は必ず離婚前の力関係を再現しようとするに違いないからである。
 あえて共同親権と言わなくても、子どもが親権者である父親のところに養育されていても母親のところを訪ねて進路やその他の相談をするという関係が形成されている事案も現にあり、どちらかが単独の親権者と定められてもこのような交流はできるのであるから、あえて「共同親権」などと言う必要はない、と言うのが私の意見である。そして共同親権にすれば両性の平等が実現される、と言うのは本末転倒の議論であると考える。

 

「立法府を形骸化する政省令委任の拡大を憂う」の朝日社説

京都支部  莇  立 明

皆様へ 
 冠省 遂に出ましたね。7月15日朝日新聞の社説(立法府を形骸化する「政省令委任」の拡大を憂う。)です。「マイナー健康保険証」が国民の知らない間に、法律化しており、2万円のポイント付を餌に、数千、数百万枚も発行されてしまっていたという事実についてです。法律は国会で議員の審議の上で、立法されるという憲法41条が定める立憲主義の大原則が、守られないで内閣が一方的に定める政令―省令で法律を制定したことにする。この「立法府の形骸化への懸念」を警告的に論じた朝日社説です。他のマスコミ、新聞はこのように明確に問題の本質を捉えたことはなかった。やっと、出ました。
 いまや、政府、行政府による憲法の破壊・蹂躙は、あらゆる分野に及んでいます。戦争―国民の命にかかわる9条の問題はその代表的なものに過ぎません。
 しかし、この「マイナー健康保険証」問題で露呈した、法改正の手続きの省略、形骸化は、更に各種分野にひろがっています。
 昨年成立した、経済安保を象徴する「経済安全保障推進法」の対象となる「特定重要物質」とは、何であるのか。138もの事項が、政令省令に委任されています。
 18年成立のカジノ実施法でも、331項目が政省令や規則に委任されています。
 委任立法の恐ろしさは、「ナチス授権立法」で世界の人々に周知の筈ですが。アメリカやイギリスでは「委任立法」を事後的に議会で否認する仕組みがあるようです。法律家が認識、自覚しなければ国民はわかりません。憲法41条の「国会が国の唯一の立法機関である」との原則、「立法の委任の限界」の原則を我々がしっかりと勉強し、自覚したいものです『最高裁平成14年1月31日第1小法廷の判決―児童福祉手当資格喪失処分を、法の委任の趣旨に反するとして取り消しした判決-に学ぶべきです』。

 

事務局長日記 ⑤(不定期掲載)

平 井 哲 史

北海道支部総会に参加して       
 7月8~9日におこなわれた北海道支部総会に参加させていただきました。ざっくり書くと、初日は、学習会と支部の体制についての議論。2日目は、沖縄の基地を弾丸視察してこられた佐藤博文支部長による特別報告と活動(主に学習会活動)の交流でした。
 佐藤支部長の現地視察報告は、写真もたくさん用いておられ、現地の様子がよく伝わってきました。特に印象に残った話の一つは、沖縄諸島では雨水をためて水資源としており、ここに大量の軍隊がくると水の取り合いになり生活用水が不足するほか、汚染の問題が出るので、住民にとって非常に大事な問題になるというものです。また、大戦時の経験として、諸島のハンセン病患者が療養施設に集められていたという話がありましたが、実は、軍隊の安全を優先してマラリア感染地域ではないところに軍隊を置くために、住民の方がマラリア感染地域に強制移動させられ、過半数がマラリアにり患し、4分の1以上が亡くなった。だから沖縄の人は、本島での戦闘の犠牲にされたというだけでなく、軍隊は住民を守らないとわかっているという話も、戦争のリアルを伝えるものとしてためになりました。そして、実際は住民は『本音は反対』だが、黙らされる、しかし住民はしたたかに、あきらめずたたかうという話も興味深いものでした。
 石垣市では、2019年頃から住民投票をできないようにするため住民自治基本条例における住民投票条項を廃止する策動があり、2021年に市議会で住民投票条項等を削除する条例改定が強行されましたが、翌2022年、石垣市議会は、僅差でしたが、反撃能力の保有に異を唱える意見書を可決採択しました。「抑止力と言われても反撃能力となれば話が違う」という提案者の市議の指摘は戦火を避けたいという住民の気持ちにぴたりとはまったのだろうと思います。そして、住民投票の手段は失っても、別の手段でたたかうというこの姿勢は、沖縄だけではないのでしょうが、しかし戦後の沖縄の住民のかたがたのたたかいを想起させるものだろうと思いました。
 支部の活動交流は、それぞれが学習会をやってみての感想、出てきた声にどうこたえたかを紹介しあうもので、事例の集積はこれからを待つことになりますが、こういうのは大変実践的でいいな~と思いました。
 本部として学習会講師の奨励金事業を始めており、各地から報告と申請がきはじめておりますが、これが集まっていけば、「どう語るか」「どうこたえるか」がブラッシュアップされていくだろうと思います。 
 ところで、初日の支部の体制についての議論の際に、本部から「次長を出していただけないか」というお願いもしました。コロナ前とは違い、今はzoomを用いたハイブリッド形式の会議になっているため、移動時間や交通費を省くことができるようになっており、ハードルは下がっています。そこで福島支部からも鈴木次長に出ていただいておりますが、月1回の常幹と前後の事務局会議のほか、担当委員会の会議もあるため、執務時間が減ることによる不安感は完全に払しょくすることはできません。それでも意義を認めて就任いただいているわけですが、北海道支部では、次長を出す場合に、その任を担う団員に財政的手当を出してはどうかと積極的な議論をしていただけました。具体的に出ていただけるのかは今後の課題になりますが、次長が出ることによってその地方の団員の取り組みが伝わるし、団本部の方針提起もより地方の実情に応じたものになっていくだろうと思いますので、ぜひ各支部でご検討いただけますようお願いいたします。

 

「新人・若手向け『弾圧学習会』
〜公安警察って何?大垣警察市民監視事件と道警ヤジ排除事件〜が開催されました」

刑事・治安警察問題委員会 担当次長 久 保 木 太 一 

1 はじめに 
 本年7月20日18時より、全労連会館304・305号室及びZOOMにて、毎年恒例の弾圧学習会を開催しました。
 弾圧学習会は、「新人団員の必修科目である」とFAXニュース等に銘打ち、大体的に宣伝したこともあり、新人やそうでない人など計30人弱の団員の方に参加していただきました。
 例年だと弾圧学習会は4月頃に開催し、公職選挙法関連のテーマも扱うものです。しかし、今年は諸事情で7月開催となり、選挙も間近にないということもあり、公安警察という「生き物」について知るということをテーマに、大垣警察市民監視事件と道警ヤジ事件について学習することにしました。
 以下、学習会の内容について簡潔ながら紹介します。
2 「大垣警察市民監視事件と公安警察」
講師:山田秀樹団員(岐阜支部)
 この事件は、2014年7月24日の朝日新聞の報道で露見した。大垣警察の警備課と中部電力子会社シーテックが、風力発電施設建設に関して、反対運動をしそうな人物4人についての情報提供、情報交換を行なっていたというのである。
 この事件の争点は、大垣警察の情報提供(情報漏洩)が違法かどうか、ということにとどまらない。そもそも、警察が、刑事事件と関係なく、このような情報収集・情報保有すること自体が違法なのではないか、と私たちは考えた。
 2016年12月に国家賠償請求を提訴し、2022年2月に地裁判決が出た。地裁判決では、大垣警察の情報提供が違法であることを認め、1人55万円の損害賠償を命じた。他方で、情報収集・情報保有は「違法とまではいえない」と判示した。理由は、「本件情報収集等の必要性はそれほど高いものではなかった」が、「抽象的には公共の安全と秩序の維持を害するような事態に発展する危険性はないとはいえない」とされ、まさに市民運動暴徒化論とも言える内容だった。
 大垣警察市民監視事件の裁判の中で、シーテック社が作成した議事録の開示と証人尋問が行われた。その中で分かってきたのは、大垣警察が誤って個人情報を漏洩したのではなく、また、シーテック社のために情報提供をしたのではないということである。大垣警察は、公安警察のための情報収集とその協力者づくりのために、あえてシーテック社に接触を図ったのである(なお、シーテック社の親会社である中部電力は警察の天下り先である)。
 公安警察は、司法警察とは全く違う。事件があり、その捜査のためにルールに則って行動する司法警察と同じように見てしまうと、公安警察の実体を掴むことはできない。
 公安警察による個人情報の収集等の法的根拠について、警察は、警察法(組織法)2条1項「公共の安全と秩序の維持」のために「通常行っている警察業務の一環」と説明している。これだと何ら規律がなされないことになる。
 ただ見られるだけでなく保有され利用されるということが問題の核心であり、これは任意活動の限界を超え、強制処分になりうるのではないか。強制処分だとすると、法律の根拠が必要となるが、公安警察による情報収集には明確な根拠はない。
 公安委員会が形骸化していることは周知であり、別の第三者機関を作り、公安警察活動に歯止めをかける必要があるだろう。そもそも、司法警察と公安警察は分離されるべきである。
 監視社会が一層強まる中で、「もの言う」自由を守るために、声を上げ続けることが大切である。
3 「道警ヤジ排除事件への取り組み」
講師:齋藤耕団員(北海道支部) 
 2019年7月15日、安倍自民党総裁(当時)が参議院選挙で来礼し、札幌市内3箇所で演説した際、警察官が、政権に対して批判的姿勢の見られた聴衆に対し、組織的な排除行為を行なった。警察官が行ったのは、ヤジ排除だけにとどまらない。「ABE OUT」のプラカードを持っていた男性が安倍氏の目の入らないところに連れて行かれたり、「年金100年安心プランはどうなった?」と書かれたプラカードを持つ女性3人組のうち1人がプラカードを掲げるのを妨害したりもした(これらは国家賠償訴訟の対象にはなっていない)。
 警察が政治警察となってしまっているように見える事案である。
 2022年3月の第1審判決では、映像と矛盾する警察官らの証言をことごとく排除し、排除行為について、排除行為が30万、つきまとい行為が20万円と金銭評価し、原告2名合わせて88万円の賠償を命じた。表現の自由に侵害についての判断では、「原告らはいずれも『安倍辞めろ』、『増税反対』などと声を上げていたところ、これらは、その対象者を呼び捨てにするなど、いささか上品さに欠けるきらいはあるものの、いずれも公共的・政治的事項に関する表現行為であることは論をまたない」とした。
 控訴審判決では、男性についての国賠請求を逆転で棄却した。
 高裁は、札幌駅前の排除行為について、控訴審で新たに提出された、自民党関係者が男性当事者を素手で押していた映像(乙号証)などから、トラブル回避のために男性の排除は警職法の要件を満たすとした。また、札幌三越前の排除行為について、男性が安倍氏に対して物を投げるなどの危険が切迫しており、直ちに実力によってこれを阻止しなければ当該危害が加えられてしまうものと判断したことは、社会通念に照らして客観的合理性を有するものと認めることができるとした。
 現在、男性について弁護団が上告、女性について北海道が上告している。
 高裁の判断は、警察官の行為は適法だった、という結論ありきの判決であり、被侵害利益が政治的表現の自由である点についての配慮がない。
 この判決が維持されてしまうと、警察が、主観的に危険だと感じた場合には有形力を行使できるということになりかねないため、弁護団としては、高裁の判断を覆すべく尽力したい。

 

国家防衛戦略(NDS)の反撃能力は台湾有事での対中国軍事作戦のためだ(下)

広島支部  井 上 正 信

1 安保三文書策定の動き
 前号の団通信で述べた敵基地攻撃能力保有論と政府に対する圧力の高まりと、台湾有事への危機感の高まりという二つの流れの中で、安保三文書策定の動きが具体化します。
2021.10.8 岸田首相が就任後初の臨時国会所信表明演説
 国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防の改定を表明し、同年10月14日にこれらの三文書改訂を政府内に指示
2022.1.7 2+2共同発表文
 未だかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合、日米間で、これから策定する安全保障関連文書の内容を調整
2022.4.26 自民党政務調査会、安全保障調査会連名の提言「新たな安全保障戦略等の策定に向けた提言」
 中国・ロシア・北朝鮮を脅威とし、「脅威対抗型防衛戦略」を採用すること、防衛大綱を国家防衛戦略、中期防を防衛力整備計画とする、防衛予算GDP比2%以上等を求める。安保三文書は丸呑みした。
*安保三文書は政府文書であるため、本音を隠した内容だが、自民党提言は分かりやい。以下のURLからダウンロードできます。
https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/203401_1.pdf

2022.5.23 日米首脳共同声明
 日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意
2022.8. 23年度防衛予算概算要求の概要(防衛省)
 防衛力の抜本的強化の七分野  そのままNDSの内容
2022.1.26~7.25 有識者会議意見交換会 合計17回
2022.11.22 「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書
 9月30日から11月22日まで4回開催
 第1回会議での浜田防衛大臣発言
 中途半端なのもでは降りかかる火の粉を払うことができない、我々に残された時間は少ない、我々は直ちに行動を起こし、5年以内に防衛力の抜本的強化を実現しなければならない(議事要旨より)
*5年以内とは、2027年までのことで、デビッドソン司令官が「6年先」と述べた2027年と時期まで一致することから、浜田防衛大臣は台湾有事が5年以内に発生する危険性が高いとの認識と思われる。
2 対中国軍事作戦の中に組み込まれる反撃能力
 以上の経過を踏まえると、安保三文書とりわけNDSで反撃能力を抑止力の中心に位置づけたのは、中国に対する軍事的抑止を目的とするものであり、それは台湾有事を抑止するためであることが理解できます。
 特に「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」第1回会合での浜田防衛大臣の発言は、台湾有事を想定した強い危機感から発せられたものであることが分かります。
 対中国日米共同作戦計画の策定について、2022年1月7日2+2共同発表文において、「同盟の役割・任務・能力の深化及び緊急事態に関する共同計画作業についての確固とした進展を歓迎」と述べています。これには中国を対象としたものと述べてはいませんが、中国を想定したものであることは以下の事情から明らかなことです。
 朝鮮半島での大規模武力紛争を想定した対北朝鮮日米共同作戦計画は既に作られています。作戦計画のコードナンバーはCONPLAN5055です。CONPLAN5055は2001年9月に在日米軍副司令官と自衛隊統幕会議事務局長の間で調印され、2002年12月2+2へ報告されました(共同発表文8項)(以上2007.1.4朝日新聞、2007.1.30しんぶん赤旗、2002.3.19参議院外交防衛委員会での防衛長官答弁、2003.2.27付参議院議員小泉親司質問主意書に対する政府答弁書)。ですから共同発表文が述べる共同計画とは対中国日米共同作戦計画に外ありません。
 「確固とした進展」の具体的な意味ははっきりとは分かりません。日米共同作戦計画作りは、新ガイドラインで設置された共同計画策定メカニズム内で密かに進められているもので、私たちには決して明かされないものだからです。
 ですが、日米間では2021年以降主要なものでも、オリエント・シールド(陸自と海兵隊の共同実動演習)、リゾリュート・ドラゴン(陸自と海兵隊の共同実動演習)、ヤマサクラ演習(陸自と米陸軍第1軍団との共同指揮所演習)、日米共同統合演習キーンソード(陸・海・空自衛隊と米軍との最大規模の共同実動演習)などが繰り返し行われています。これらの共同演習は、米軍の対中国軍事作戦の新しい戦い方を自衛隊と共同で行い、その舞台も南西諸島を想定したものとなっています。これらの日米共同演習を通じて対中国日米共同作戦計画の策定が進んでいるはずです。このことを共同発表文が「確固とした進展」と述べたものと思われます。
 もともと22防衛大綱で、動的防衛力構想が採用され、冷戦時代の北方重視から防衛力の南西シフトへと我が国の防衛政策が大きく方向転換したことから、南西諸島での防衛力の強化が進められ、それと併せて防衛省・自衛隊内では対中国作戦計画の研究が進められていました。その流れが30防衛大綱、新ガイドラインとなっています。
 ですから長い年月をかけ、国民には隠されながら日米による対中国共同作戦計画作りが進んでいたのです。
 このような日米間の積み重ねの中で、安保三文書が反撃能力保有に踏み切ったことは、これまでの日米間での積み重ねをさらに大きく進展させることは明らかです。
 なぜなら、安全保障法制が制定されたことによっても、日本が反撃能力を行使できないため、自衛隊と米軍との共同作戦においては、自衛隊は情勢緊迫段階から重要影響事態での米軍防護と後方支援、存立危機事態において我が国への攻撃排除と米軍支援、武力攻撃事態での我が国防衛のための共同作戦までしかできませんでした。存立危機事態でも、自衛隊は米軍と共同して中国本土への攻撃はできなかったのです。
 反撃能力の保有、行使に踏み切ったことで、日米が共同して中国の領域への攻撃(敵基地攻撃)が可能になりました。日米共同での反撃能力行使こそがNDSが述べる抑止力の中心です。
 岸田首相が安保三文書閣議決定直後の記者会見で、「平和安全法制によって法律的、あるは理論的に整っているが、三文書によって実践面からも安全保障体制を強化することとなります。」と述べた意味はこのことを意味していると思います。
 では、安保三文書により自衛隊はどのように変貌してゆくのでしょうか。これまでの国土防衛・専守防衛型の自衛隊から、他国領攻撃型の自衛隊に大きく変貌しようとしている姿を次号で述べる予定です。

 

広島ビジョンに対する反核法律家協会の声明

広島支部  大 住 広 太

 2023年5月19日から21日にかけて開催されたG7広島サミットにおいて、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が採択された。被爆地広島での初のサミットであり、首脳陣が広島に集まることから、核廃絶へ向けた前進になることが期待されたものの、広島ビジョンの内容は、核廃絶を願う人々の期待を裏切るものであった。
 この広島ビジョンに対して、日本反核法律家協会は、5月31日付で抗議声明を発表した。声明は反核法律家協会HPに掲載しているので是非ご覧いただきたい。
 声明では、広島ビジョンでは、被爆地広島を利用し、核廃絶を目指すパフォーマンスをしつつ、ロシア等の核を非難する一方、米国を中心とする側の核は正当化し、核抑止論を肯定していることを指摘した。
 広島ビジョンは、「全ての者にとっての安全が損なわれない形での」という限定を付して、「核兵器のない世界の実現に向けたコミットメントを再確認する」としている。その上で、核兵器を「防衛目的のために役割を果た」すと評価している。すなわち、ロシア、中国、北朝鮮、イランの核開発や核保有等は強く非難する一方、これに対抗する米国側の核保有は「防衛目的」として正当化しているのである。
 また、広島ビジョンでは、核兵器の非人道性に全く触れられていないし、NPT体制を堅持しなければならないとするものの、誠実交渉義務を定めた6条には言及せず、当然、核兵器廃絶のための具体的な措置も述べられていない。核兵器禁止条約にも全く触れられていない。
 このような声明を、被爆地広島から発出することは、核廃絶を願う被爆者をはじめとする市民の思いを、これまでの懸命な運動を蹂躙するものといえる。被爆者をはじめとする市民が求めているのは、核兵器の完全な廃絶であり、これに反する広島ビジョンは決して許容することはできない。
 首脳陣は広島平和記念資料館を訪問し、被爆者からの話を聞いて、一体何を見、何を感じたのであろうか。原爆の惨状を目の当たりにして、「敵国」が持つ核兵器は悪で、自分たちが持つ核兵器は正義だと、どうしていえるのだろうか。究極的には核兵器の使用を許容する核抑止論に、どうして依拠することができるのだろうか。
 いま求められているのは、一刻も早く核兵器をこの世界からなくすことであり、そのためには核抑止論に拘泥していてはならない。核抑止論から脱却し、核兵器の存在しない世界となるよう、真摯な取り組みが求められる。

 

「第6回「原発と人権」全国研究・市民交流集会 in ふくしま」

 原発問題委員会事務局長  柿 沼 真 利

はじめに 
 今回は、「原発と人権」ネットワークの活動、本年9月2日(土)~3日(日)に、福島県福島市金谷川の福島大学キャンパスで、開催する、第6回「原発と人権」全国研究・市民交流集会inふくしまを紹介いたします。
1 2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故の発生から12年という期間が経ちました。
 原発問題では、近時、岸田自民政権は、原発推進等5法(GX電源法)が本年5月31日に成立させ、東電原発事故の教訓を蔑ろにして、原発推進の政策を進めています。
 また、東電福島第一原発から生じていた処理水について海洋放出を多くの国民の批判を無視して強行しようとしています。
 さらには、事故の被害者の方々による訴訟については、昨年6月に最高裁で国に対する賠償請求を棄却する判決が言い渡されてしまいました。
 このような情勢の中、団も参加する「原発と人権」では、上記ように本年9月2日(土)~3日(日)に、福島大学キャンパスにて、6回目になる「原発と人権」全国研究交流集会を開催します。
 同集会は、2012年4月に第1回目の集会が開催された後、2年に1回のペースで過去5回行われました。
 そして、今回6回目の開催となります。以下の項目では、現段階での予定されている内容を紹介します。
2 内容:2023年9月2日(土)、初日全体会13:30~17:00
① 記念講演 50分 講師 広渡清吾氏(東京大学名誉教授・元学術会議会長)
「『ふくしま』と科学者の社会的責任-科学者・市民・政治」(仮題)
 震災直後からの学術会議での取り組みを踏まえ、その後の12年を、「科学者の社会的責任という切り口(フクシマ・市民・科学者)」という切り口で振り返る。
② 現場の声 50分
・汚染水問題:柳内孝之さん(小名浜機船底曳網漁業協同組合)
・帰還困難地域の未来(担:津島弁護団)
・解除地域:小林友子さん
・区域外広域避難者:鴨下美和さん、鴨下全生さん
・そもそも避難指示のなかった地域の現状、山林など
③ 基調報告及びパネルディスカッション
福島原発事故から12年を振り返り、今、何が課題かを考える
・基調報告 30分 吉村良一(立命館大学名誉教授・第6回原発と人権実行委員長)
・パネルディスカッション 80分
 司会  寺西俊一(一橋大学名誉教授)
・被害の全体像(事故後12年を経て明らかになったこと)
 関礼子(立教大学教授)
・「復興」の現状と課題
今野順夫(福島大学名誉教授)または礒野弥生(東京経済大学名誉教授)
・訴訟の動向
 米倉勉(弁護士)
・エネルギー政策、再稼働等
 大島堅一(龍谷大学教授)⇒明日香壽川(東北大学)
・反核平和の問題
 大久保賢一(弁護士)
④ 大会宣言の採択 10分
3 内容:9月3日(日)二日目分科会
① 復興再生:環境会議。復興を語る上での記録
 原発事故被害をなぜ記録するのか-人々が中心となる「復興」の条件を考える
② 訴訟の現状・到達点(全日)
 原発関連訴訟の振り返りとこれからに向けて
③ 反核エネルギー問題:核兵器と原発
 核兵器と原発を「核と人類」という観点で統一的にとらえるということと、被害の実態を原点とするということを基調に置きたいと思う。
④ 再稼働の持つ危険性・問題:原子力市民委員会
 政府のGX推進の動きにおいて、電力料金の高騰や脱炭素化の必要性が強調されていることをふまえ、原発が必要なのか、脱炭素・温暖化対策に有効なのか、という点について
⑤ メディア・ジャーナリズム分科会
 「3.11」以降を中心に、原発政策の動向をたどりながら、改めて「原発報道に何が欠けていたのか」「いま原発報道に求められることは何か」などについて、議論し、問題点を明らかにする
⑥ 原発事故による分断をどう乗り越えるか
 2023年9月までには、東信堂より成元哲編『原発分断:福島原発事故が引き起こした分断をめぐる現状と課題』を刊行する予定である。その執筆陣数名による簡単なシンポを分科会として開催する。 
4 今後、さらに集会の詳細を紹介させていただきます。ぜひご参加を。

 

花トレッキング―佐渡島(後編)

神奈川支部  中 野 直 樹

エスケープルート
 目印テープを見つけながら、かすかに踏み跡が残る藪を左へトラバース気味に下った。林の中は一面にカタクリが密生し、これ自体一見の価値ある光景であったが、今の私たちにはそれどころでなく、道を探すのに懸命だった。本土でこのような場所に進入するときにはまずはクマとの遭遇をおそれる。しかしここでは心配無用だった。ドンデン山荘までのタクシーで、佐渡島にはクマだけでなく、イノシシ、サル、シカなどの動物はいないこと、多分食用に持ち込まれたウサギが野生化して増え畑の食害となり、それを駆除するためにテンを放したそうだ。海底から隆起した佐渡島にはもともと小動物もいなかったこととなる。
 小屋のスタッフの予報通り雨は上がった。少し開けたところで、地がぬかるんでいるため立ったままパンやおにぎりを食べた。味気ない昼食後さらに目印テープを見つけながら藪を進んだ。踏み跡はいったん谷のような窪地に下った後、さらに左手に上がって続くテープの案内に従うと、なぜかそれまでと異なる明瞭な山道となった。変だと感じたのは上り道になったことだった。不安となって谷間まで戻ってみたが、谷間の下方面には目印がついておらず、やはりこの道かと考え、引き返してきた。しかし、急坂をつめると祠のある山頂に出てしまった。そこから先は急な斜面で道らしきものはない。行き詰まってしまった。GPSで現在位置を確認すると岨巒堂山という難解な山名が出てきた。
 浅野さんがエスケープルートを教えてくれた山荘のスタッフに電話をかけたところ通じた。道に迷ったこと、現在位置を伝えるなどしたところ、先ほどの谷間を下るのが正解である、との指摘を受けた。谷間まで戻り、谷を少し下ってみると求めていた目印がぶら下がっていた。この道迷いからの脱出のために1時間ほどかかった。
 どうもこの里の人たちが岨巒堂山の祠に参拝にくる道のようだ。里の人たちにとっては、この谷間の分岐で岨巒堂山に向かう道への案内の目印が大事なのだろうが、稜線からエスケープルートを下ってきた者にとっては、この分岐の谷間下り側のすぐのところに目印があれば迷わなくて済む。現在の目印は分岐から少し下ったところにあるものだから、分岐から見えない。改善点である。
救助!
 目印を拾いながら左側にトラバースするように薮内を30分ほど進むと、前から男性一人があがってきた。なんと、山荘のスタッフが私たちの遭難を心配して捜索にきてくれたものだった。私たち一同、ひたすら恐縮した。
 このスタッフは、神奈川県出身の30歳台の男性で、10年前から佐渡の人となっているそうだ。花や鳥の解説をききながら下った。30分ほど歩くと林道に出た。男性の車が止めてあった。ここからさらに私たちの車が止めてある場所までは相当な距離があった。その親切な男性は、私たちを車に乗せ、駐車場まで送ってくれた。
 車で七浦海岸に立つリゾートホテル吾妻に移動した。すっかり晴れあがり、青い海に波に洗われた岩が浮かび、とても美しい景勝地だった。ホテルの広い芝庭は断崖まで続き、その端にブランコが据えられていた。花岡さんはブランコにのって、本当は金北山から眺めたかった、青い空、蒼い海、岩に砕ける白い波を自分のロケ地として一人占めしているような気分を楽しんでいた。
 宿の食事にみんな満足し、宿のバスで、金山浮遊選鉱場跡の満月下のライトアップを楽しみ、帰るとホテル内では佐渡おけさの踊りが実演されていた。
ドンデン高原へ
 翌朝は少しリッチなリゾート客のゆとりの気分で広大な芝生庭を散歩した後、車で出発しようとしたところ、私の携帯電話がないことに気づいた。部屋内に充電したまま忘れてきたのだった。ここで気づいてよかった。
 9時にドンデン山荘に着いた。昨日お世話になったスタッフは不在だった。タムシバの白さに眼を奪われながら天然芝に覆われた尻立山山頂(940m)に向かうと両津の海が見えた。しかし、金北山の頂上部にガスがかかり姿形の全体はとらえられなかった。
 ドンデン高原の周回コースを歩んだ。名残のような水芭蕉を写真に収め、昨日歩いた縦走路に入り、その途中からアオネバ渓谷コースの下り道に入った。ここは、シラネアオイ、ニリンソウ、カタクリ、イワカガミ、エンレイソウ、サンカヨウなどの花の沢道だった。アオネバとの奇妙な名は青色の粘土層があるところから付けられた。確かに青味を帯びた地肌だった。周囲は若葉の色に包まれ、私たちも緑に染まった。
 下の登山口に着くと、佐渡弥彦米山国定公園と記した看板が立っていた。日本海を挟んで、佐渡と本土の弥彦山、米山の海岸一帯が1つの国定公園と指定されていることを知った。
 自宅に戻って、「新・花の百名山」の「金北山」を読むと、田中澄江氏は、7月に雨の弥彦山に登った後、佐渡にわたり白雲台から金北山に登ろうとした。しかし、強い雨と風にさらされてともかく寒さに耐えられず、「霧の中に花々を想像して宿に帰った」と書かれていた。田中氏は2000年没、春の花山は見ることができなかったようだ。

TOP