5月27日付、「安倍9条改憲を阻止し、安倍政権の退陣を求める決議」を採択しました。

カテゴリ:憲法・平和,明文改憲,決議

安倍9条改憲を阻止し、安倍政権の退陣を求める決議

1 安倍首相は、昨年10月2日の第4次安倍内閣発足後の記者会見において、「国会の第一党である自由民主党がリーダーシップをとって…次の国会での改正案提出を目指していくべき」などと述べ、2018年臨時国会に向けて、あらためて改憲への強い意欲を示した。そして、その言葉どおり、自民党憲法改正推進本部長に下村博文氏(後辞任)、衆議院憲法審査会の筆頭幹事に新藤義孝氏をあてるなど、いわゆる改憲強硬派で人事を固めて国会に臨んだ。また、これに呼応して、自民党らは、昨年6月に衆議院へ提出した「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」(改憲手続法改定案)の審議を「呼び水」に改憲議論を推し進めようと画策し、昨年11月29日には、全会一致を原則としてきた憲法審査会の慣例を破って、職権で衆議院憲法審査会の開催を強行した。 

 しかし、私たちは、国会の改憲勢力が衆・参両院ともに3分の2を超える中で、昨年の臨時国会、そして今通常国会においても、安倍政権による改憲発議を許さなかった。それだけではなく、憲法審査会において、改憲議論の「呼び水」である改憲手続法改定案の審議や、安倍政権による自民党改憲素案の提示さえもさせなかったのである。これは、3000万人署名の推進に表れる市民運動や労働組合の力と立憲野党の共同により勝ち取った大きな成果である。

2 それでも、安倍首相は、改憲を諦めたわけではない。安倍首相は、本年5月3日の憲法記念日に改憲派の民間団体が行った集会にビデオメッセージを寄せ、そこで「憲法に、わが国の独立と平和を守る自衛隊をしっかりと明記し、違憲論争に終止符を打たなければならない。それこそが今を生きる私たち政治家の、そして、自民党の責任です。敢然とその責任を果たし、新しい時代を切り開いていこうではありませんか」と述べ、2020年までの改憲に向けた決意を語っている。

このような状況の中で、私たちは決して気を抜くことなく、さらに一層強く安倍9条改憲を許さないという大きな国民の声で安倍政権と自公与党を包囲して、改憲発議の目論見を断念させなくてはならない。

3 同時に改憲を目指す安倍政権のもとで、改憲を先取りする日米軍事一体化と歯止めなき軍拡が進められており、その阻止も急務である。

 昨年12月18日に新たな防衛大綱(平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について)と中期防(中期防衛力整備計画〔平成31年度~平成35年度〕について)が閣議決定された。新防衛大綱では、護衛艦「いずも」の空母化、F-35B戦闘機の導入、長距離スタンドオフミサイルの取得などが明記され、これまでの日本政府の専守防衛政策すら逸脱したあからさまな憲法違反に踏み出し、軍事大国化を進めようとしている。新中期防では、そのために5年で総額27兆円4700億円もの税金を投入することが謳われている。

 また、地元県民の意思を無視した沖縄辺野古新基地建設のための土砂投入、秋田県秋田市や山口県萩市へのイージス・アショア(陸上配備型イージスシステム)配備計画、横田基地へのオスプレイ配備など、全国で日米安保条約の下での日米軍事一体化(米軍指揮の下における軍隊としての自衛隊の強化)や基地強化が進められている。

 そのために、自衛隊の装備等の強化に費やす軍事費も、第2次安倍政権以降、年々増加し、本予算だけで単年度5兆円を超え、2019年度には過去最大の5兆2574億円となっている。アメリカからの高額兵器“爆買い”による代金などを「ツケ払い」とする後年度負担の累積額も5兆3613億円(2019年3月時点)に上っている。その反面で、生活保護費の切り下げや診療報酬、介護報酬の切り下げなど、国民生活を圧迫する政策が進められている。

 国民生活を犠牲にして、改憲を先取りし、日米軍事一体化と軍拡に突き進む安倍政権を許すわけにはいかない。

4 国民は改憲も軍拡も望んでいない。近時の世論調査においても、政権に期待する政策として「憲法改正」を挙げた割合は1割程度に過ぎず(日経新聞・テレビ東京合同世論調査など)、現在、国民の中で憲法改正を求める世論が高まっているとは到底いえない。

 そもそも、憲法を無視し蹂躙し続ける安倍政権に、改憲を呼びかける資格はない。安倍首相は、内閣総理大臣には「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)が課されているにもかかわらず、その立場を利用して、国会で国会議員に対して改憲議論を進めるように呼びかける、防衛大学校の卒業式で改憲を示唆する演説を行なうなど、憲法尊重擁護義務違反を繰り返している。また、秘密保護法、集団的自衛権の一部行使容認の閣議決定、戦争法制(安保法制)、刑訴法改悪・盗聴法拡大、共謀罪創設など、国民の多くが反対し、法曹関係者より憲法違反と指摘される数々の悪法等を十分な審議もせずに強引に数の力で成立させてきた。さらに、野党議員による臨時国会の召集要求権(憲法53条)を無視する一方で、解散権を濫用して衆議院を解散するなど、数々の暴挙を繰り返してきているのであり、憲法を無視し蹂躙し続ける安倍政権には改憲を語る資格はない。

5 安倍政権において、森友学園との国有地取引をめぐる財務省による公文書の改ざん、厚生労働省による裁量労働制における労働時間データの捏造、法務省による外国人労働者への調査データの捏造、毎月勤労統計の不正など、権力を私物化することによる「嘘とごまかし」が繰り返されている。

 また、安倍政権は、朝鮮半島における平和構築に向けた外交的努力に対して後ろ向きの態度に終始し、核なき世界を求める国際的な世論にも背を向けて、米国の核の傘に依存して核兵器禁止条約の批准を拒んでおり、国際社会の平和と安定にとっても阻害要因となっている。

 このような安倍政権には、改憲を語る資格に留まらず、もはや政権を運営する資格さえもない。

 私たちは、今こそ安倍政権の退陣を実現し、安倍9条改憲の策動を完全に断念させ、この5年余で失った数々の国民の権利や、民主主義と立憲主義の本分を取り戻す必要がある。そして、本年7月には、そのための大きなチャンスとなる参議院選挙が予定されている。

 自由法曹団は、引き続き3000万人署名の実現に尽力するとともに、来たる参議院選挙に向けて、市民と野党の共闘をいっそう前進させ、9条改憲を阻止し、安倍政権を退陣させるべく全力で奮闘することを決意する。

2019年5月27日

自 由 法 曹 団

2019年石川県・能登5月研究討論集会

 

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