愛知・西浦総会決議『安倍9条改憲を許さず、憲法が生きる政治・社会の実現のために全力で取り組む決議』

カテゴリ:明文改憲,決議

安倍9条改憲を許さず、憲法が生きる政治・社会の実現のために全力で取り組む決議

1 本年7月に行われた参議院選挙では、全国32の一人区の全てで野党統一候補が実現し、10選挙区で接戦を制して勝利した。その結果、「早期の憲法改正」を公約に掲げた自民党は9議席を減らして単独過半数を割り込み、自民・公明や日本維新の会などの改憲勢力も改憲案発議に必要な総議員の3分の2に届かなかった。「安倍政権のもとでの改憲には反対」というのが参議院選挙で示された国民の意思である。

2 しかし、安倍首相は選挙で示された国民の意思を真摯に受け止めず、改憲策動を進めようとしている。選挙翌日に行われた記者会見では、「少なくとも(改憲の)議論は行うべきである、これが国民の審判であります。」と強弁し、今臨時国会の所信表明演説でも、憲法審査会での改憲論議を呼びかけた。自民党の細田博之改憲推進本部長も「友党公明党と野党のいくつかの党が前向きに議論してもらわないといけない」「修正案や新たな提案が出てきたら、それはまた(自民)党に戻して議論する」(9月27日時事通信インタビュー)と発言するなど、野党を分断し、とにかく国会で改憲論議を進めたいという姿勢を露わにしている。こうした動きに呼応して、公正中立であるべき大島理森衆院議長が、衆院憲法審査会で継続審議となっている改憲手続法改定案について今臨時国会での成立を図るように呼びかけるという重大な問題も生じている。

3 一方で、このような発言が相次ぐのは、改憲スケジュールが思うように進んでいないことへの焦りの表れである。
 安倍首相は、2017年の憲法記念日の改憲派集会へのメッセージで、憲法9条に自衛隊を書き込み、2020年には改憲を実現することを目指すことを明らかにした。2018年3月には、4項目(①自衛隊明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実)について自民党の改憲条文イメージをまとめた。しかし、安倍政権は、衆参両院で改憲勢力が3分の2以上の議席を握っていたにもかかわらず、昨年の通常国会から3国会連続で、自民党改憲案の国会提示はおろか、改憲論議の「呼び水」である改憲手続法改定案の審議すら進めることができなかった。
 そこには、3000万人署名を始めとする反対運動の広がりや、「嘘とごまかし」で権力を私物化し、民主主義を破壊する安倍政権に対する国民の怒りがあり、その怒りの受け皿となった市民、労働組合と立憲野党との共闘があったからである。ここに安倍政権の暴走を許さず、改憲を阻止する力があることに私たちは確信をもたなければならない。

4 同時に、安倍政権のもとで加速度的に進められている、改憲を先取りした日米同盟の強化、「戦争する国」づくりの阻止も急務である。
 本年9月27日に公表された2019年度防衛白書は、昨年末に閣議決定した新防衛大綱・中期防が打ち出した「多次元統合防衛力」を構築するとして、陸・海・空における能力強化に、宇宙・サイバー・電磁波領域といった新たな戦闘領域における能力獲得・強化を加え、それらを組み合わせた「領域横断」(クロス・ドメイン)作戦能力を獲得することを掲げている。そして、F35A戦闘機の増備、護衛艦「いずも」の改修による空母化と空母に搭載可能なF35B戦闘機の取得、敵の射程外から攻撃できる長距離巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の導入、宇宙領域専門部隊やサイバー防衛隊の創設などの大軍拡路線を示している。
 また、沖縄県民の意思を踏みにじる辺野古新基地建設の強行、配備候補地の住民が強く反対している「イージス・アショア」(陸上配備型イージスシステム)の整備推進、日米共同訓練・演習、米艦防護(米軍等の部隊の武器等防護)など、在日米軍基地・自衛隊基地の強化や日米軍事一体化が進められている。
 そして、これらを実現するため、2020年度の防衛関連費概算要求は総額5兆3223億円にものぼり、5年連続で過去最高額を更新した。その一方で、消費増税、社会保障費の抑制など国民生活を破壊する政治が行われている。

5 今、国民が求めているのは、「戦争する国」づくりでもなく、そのための9条改憲論議でもない。
 国民が求めているのは、個人の尊重(憲法13条)、生存権の保障(憲法25条)をはじめとした憲法が生きる社会であり、それを実現させる政治である。
 戦争法案阻止の闘いから始まった市民・労働組合と立憲野党との共闘は、参議院選挙における市民連合と立憲野党との13項目の共通政策の合意に結実した。その共通政策には、安倍政権下での改憲に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすことをはじめ、安倍政権下で切り崩された立憲主義・民主主義・平和主義の回復を図り、原発ゼロと核のない東アジアの建設、軍拡や沖縄新基地建設の反対、差別や貧困の解消、働く者の権利を守り、消費増税に反対して国民生活支援の諸政策を拡充するなど、だれもが自分らしく暮らせる政治へ転換を図ることが掲げられている。
 安倍政権が野党の分断を図ろうとするなか、安倍改憲阻止をはじめとした共通政策を実現するためには、立憲野党を支える市民・労働組合の草の根からの運動をもう一回りも二回りも大きくしていくことが重要である。
 自由法曹団は、市民、労働組合、立憲野党との共同を広げ、安倍9条改憲を許さず、憲法が生きる政治・社会の実現のために全力で取り組むことをここに決議する。

                    2019年10月21日
自由法曹団 愛知・西浦総会


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