愛知・西浦総会決議『仕事の場における暴力とハラスメントを根絶するためにILOハラスメント禁止条約に沿った国内法整備と同条約の批准を求める決議』

カテゴリ:労働,決議

仕事の場における暴力とハラスメントを根絶するためにILOハラスメント禁止条約に沿った国内法整備と同条約の批准を求める決議

 

1 2019年6月21日、ILO第100回総会において、暴力・ハラスメントの撤廃に関する条約(ハラスメント禁止条約)と勧告が、圧倒的多数の賛成で採択された。日本政府及び連合は賛成したが、経団連は棄権した。

2 ハラスメント禁止条約では、仕事の世界における暴力やハラスメントが、人権侵害または虐待となりうること、暴力とハラスメントを防ぐために人間の相互尊重と尊厳に基づいた職場文化の重要性を指摘している。そして、暴力とハラスメントの定義を、「身体的、心理的、性的または経済的な危害をもたらす可能性があり、容認できない行動や慣行、またはその脅威であって、性別にもとづく暴力やハラスメントを含むもの。」と定めた。
 この条約が適用される者の範囲は、わが国で同年5月29日に成立したハラスメント防止法(防止法)の適用対象よりはるかに広いものとなっており、契約状態に関係なく働く人々、インターン、見習い、ボランティア、雇用終了者、求職者を含んでいる。
 同様に、適用される場所や場面についても、職場だけでなく、仕事関連の旅行、トレーニング、イベント、情報及び通信技術によって可能となった通信を通じたもの、雇用主が提供する宿泊施設、通勤時など、仕事の過程で発生する、仕事に関連する、または仕事から生じる場所・案件の中の行為も含まれることとなっている。
 そして、ハラスメント禁止条約は、加盟国に対し、これらの対象・適用場面を含む内容の暴力やハラスメントを定義し、禁止する法律や規則を採用することを求めている。

3 ハラスメント禁止条約を批准するためには、条約の要求する水準で、セクハラを含むハラスメントを定義し、禁止する内容の立法措置が必要であるが、防止法は、ハラスメントの定義及び禁止の規定を欠いている。これらを含む国内法整備のための労働政策審議会雇用環境・均等分科会における議論も進んでいない。
 2019年の通常国会においては、防止法に関して、衆議院及び参議院で多岐にわたる付帯決議がなされているが、その要請を具体化するための検討はなされておらず、実現への道筋は描かれていない。

4 この間も、スポーツ界や教員職場でのハラスメントが起きていたことが報道されている。仕事の場におけるハラスメントの禁止は喫緊の課題であり、ハラスメントの横行は、新入社員が離職する理由になっているだけでなく、社会の様々な場所や場面で、深刻な人権侵害を引き起こすものとなっている。
 自由法曹団は、仕事の場における暴力とハラスメントを根絶するために、政府にも国会にも、早期に、包括的ハラスメント禁止法を整備して、ハラスメント禁止条約を批准することを求めるものである。

 

2019年10月21日
自由法曹団 愛知・西浦総会


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