愛知・西浦総会決議『「核と人類は共存できない」、核兵器と原発の早期廃絶を求める決議』

カテゴリ:原発問題,決議

「核と人類は共存できない」、核兵器と原発の早期廃絶を求める決議

 

1 世界は今、新たな核軍拡競争の危機に立っている。世界最大の核兵器大国であるアメリカとロシアが核兵器の近代化と強化を競い合い、核兵器の使用や拡散の危険が増大している。
 もっとも、これに対し、「核兵器の非人道性」を大きな理念として掲げ、被爆者と市民社会が連携して2017年に核兵器禁止条約を成立させるなど、核兵器廃絶を求める国際社会の声もかつてなく高まっている。
 このような状況の中、唯一の戦争被爆国である日本こそが核兵器禁止条約に積極的に参加し、核兵器の違法化と保有国への廃絶を迫っていくことが強く求められているが、日本政府は、アメリカの「核の傘」に守られているとして核兵器禁止条約には参加しない旨を明言し、核兵器保有国とともに核兵器の禁止に反対している。
 唯一の戦争被爆国としての矜持はないのか、これが多くの国民の共通した思いのはずである。「絶対悪」でしかない核兵器を「必要悪」とし、核戦力に依存した日本政府の安全保障政策からの脱却を図り、核兵器廃絶に向けた世界の流れを推し進めなければならない。

2 また、日本の原発政策の抜本的転換も求められている。
 もともと原発は、兵器用プルトニウムの生産炉や原子力潜水艦用の原子炉といった「軍事利用」から生まれたものであり、原発の推進は核兵器の開発・拡散の危険と常に隣り合わせである。原発の燃料を作るウラン濃縮工場は核兵器用の高濃縮ウランの製造に転用でき、また、原子炉でウランを燃やした後に生じるプルトニウムも核兵器の材料となる。未曾有の福島原発事故の後も、日本政府が原発に固執し、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理技術を手放さない一つの大きな理由は、核の能力はあるがやらないだけ、つまり、非核政策をとりながら、核兵器に転用可能な技術を温存する「潜在的核保有国」を志向しているからであるともいわれている(技術抑止力論)。
 これ以上、核兵器の材料となる核物質を生み出さないためにも原発は廃絶される必要がある。

3 原子力は、人類にとって巨大なエネルギー源であるがゆえに、「軍事利用」と「平和利用」を問わず、常に人類を滅ぼすリスクも抱えていることも直視しなければならない。日本は、広島と長崎への原爆投下という「核の軍事利用」によって引き起こされる帰結がいかに悲惨なものであるかを体験した唯一の核兵器被爆国である。それとともに、「核の平和利用」の名の下に米国から原発を導入した帰結として発生した福島原発事故によって、「平和利用」であっても非人道的な被害をもたらすことも目の当たりにした。核爆発による壊滅的被害はもちろんのこと、いったん核分裂反応が制御を失えば甚大な被害が生じる。また、核エネルギーの利用は必然的に生身の人体に非人道的な放射線被害をもたらす核分裂生成物を大量に生み出し、これらを制御するには人知と人為の限界がある。核と人類は共存できるのか、まさに今、根本的な問い直しが必要である。原発であれ、核兵器であれ、二度と核の被害者を出してはいけない。これこそがヒロシマ、ナガサキ、ビキニの三度の核被爆体験に加え、福島原発事故を踏まえた私たちの最大の教訓である。

4 今こそ、日本政府の核抑止依存政策および原発政策を見直し、全ての核兵器と核兵器の開発・拡散につながる原発を廃絶し、「核兵器のない世界」を実現していく必要がある。
 「核と人類は共存できない」、自由法曹団は、核兵器と原発の廃絶を市民とともに連帯して、日本政府に対して、そして世界に対して訴えていくことを宣言し、ここに決議する。

 

2019年10月21日
自由法曹団 愛知・西浦総会


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