2021年5月集会in東京決議『「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」の衆議院採決に強く抗議し、参議院での廃案を求める決議』

カテゴリ:明文改憲,決議

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「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案」の衆議院採決に強く抗議し、

参議院での廃案を求める決議

 

1 本年5月6日、衆議院憲法審査会において、日本国憲法の改正手続きに関する法律の一部を改正する法律案」(以下「7項目改正案」という。)が、立憲民主党が提出した 改正法施行後3年後を目途に、広告規制、資金規制、インターネット規制などの検討と措置を講ずるという附則をつける修正案(以下「7項目修正改正案」という。)とともに、賛成多数で可決され、5月11日には、衆議院本会議において賛成多数で可決され、参議院に送付された。
 そもそも7項目改正案自体、2018年3月に自民党改憲4項目が取りまとめられた後、改憲論議を進めるいわば呼び水として同年6月に提出されたものである。そして、本年5月3日に、菅首相が改憲派集会に寄せたビデオメッセージでは、改憲手続法7項目改正について「憲法改正議論を進める最初の一歩として、成立を目指す」ことを公言している。すなわち、今回の7項目修正改正案の衆院における採決は、自民党改憲4項目、とりわけコロナ禍において「自衛隊明記」「緊急事態条項創設」の改憲論議を進めるために、今国会での成立を狙ってなされた暴挙であり、自由法曹団は強く抗議する。

2 7項目改正案は欠陥法である。自由法曹団は、本年3月1日に意見書「憲法審査会に問われているもの-改憲手続法をめぐる問題点・論点」を公表し、広告放送問題、最低投票率問題、公務員・教職員の国民投票運動問題等、2007年の改憲手続法制定時の附帯決議で検討が求められていたにもかかわらず、検討されないまま放置されてきた問題が残されていることを指摘し、さらに、制定後にも、ネット広告問題、ビッグデータ問題、運動資金問題、外国からの干渉問題、「同日投票」問題など、適正な国民投票を実施するために無視してはならない問題も顕在化していることを指摘してきた。
 7項目改正案は、投票人名簿や投票所、投票時間などの投票環境をめぐる技術的な規定の改正を行うものであり、2016年に複数回にわたって行われた公職選挙法(公選法)の同趣旨の改正に合わせて改憲手続法の改正を行うもので、「公選法並びの改正」にとどまる。したがって、上記の付帯決議で検討が要求されている問題点を解消するものではなく、適正な国民投票を実施するために検討されなければならない新たな課題に向き合うものでもない。
 しかも、憲法改正国民投票は主権者による憲法改正権の行使であり、最高法規としての憲法の正統性を担保する重要な手段であって、公務員の罷免選定権に基づく公職者の選挙における投票とは本質的な性格が異なるものであり、国会において衆院選挙との「同時投票」を回避すべきこともが確認されている。両者の投票環境を同じにする必要性はないのであって、改憲手続法を「公選法に並べればいい」という議論自体が本質的な謬論であるというほかない。

3 そもそも改憲手続法には、2007年5月の成立時から付帯決議等により検討が求められてきた数多くの問題が未解決のままとなっている。
 その結果、改憲手続法には、国民投票に関する運動の資金規制がなく、広告規制が不十分で、最低投票率の定めがないなど、国民投票の結果の公正が担保されていない根本的致命的な問題点がある。立憲民主党による修正案は、附則に改正法施行後3年後を目途に、広告規制、資金規制、インターネット規制などの検討と措置を講ずるというものであるが、措置が講じられるまでの間は、「国民投票を金で買う」などの根本的問題が何ひとつ解決されることがない欠陥法のままであり、7項目修正改正案によって根本的致命的欠陥は何ら解消されることはない。

4 2007年5月11日、改憲手続法の制定に際して、有料広告の規制、最低投票率、公務員と教育者の地位利用による国民投票運動などについて検討や措置を求める18項目の附帯決議を行ったのは、参議院の憲法調査特別委員会である。
 今回、7項目修正改正案の送付を受けた参議院は、自らが附帯決議で掲げた改憲手続法の根本的致命的欠陥だけでなく、その後顕在化した改憲手続法をめぐる問題について、慎重かつ全面的な審議をすることなく、今国会で成立させるために形式的に7項目修正改正案を「審議」し、「採決」を行うことは、憲法と民主主義に対する冒とくであるばかりか、参議院の存在意味を失わせる自殺行為である。改憲手続法については、改憲手続法の根本的致命的欠陥の解消こそ求められるのであり、7項目修正案は廃案とする外はない。
 いま、国会と政府がなすべきことは、新型コロナウイルス感染拡大防止対策であり、市民の命と生活を守る施策の実施であって、改憲を論じることではない。
 自由法曹団は、7項目修正改正案の廃案を求めるとともに、自民党改憲4項目など改憲に向けた議論を許さないために断固たたかうものである。

 

2021年5月22日

自  由  法  曹  団
2021年5月研究討論集会

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