2021年5月集会in東京決議『少年法「改正」法の成立に抗議し、少年の要保護性に即した調査・処遇の維持を求める決議』

カテゴリ:子ども・教育,決議

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少年法「改正」法の成立に抗議し、少年の要保護性に即した調査・処遇の維持を求める決議

 

1 少年法「改正」法
 昨日、少年法「改正」法案が参議院本会議で可決・成立した。少年法「改正」法は、18歳・19歳の者を「特定少年」と位置づけ、全件を家庭裁判所に送致する仕組みは維持しながら、原則逆送となる事件を短期1年以上の懲役や禁固が定められている事案に拡大し、逆送後起訴された場合に、推知報道の禁止を解除することや刑事処分上の特例措置を適用除外とする一方、ぐ犯の保護手続きの対象外とするなどを内容としている。

2 国会審議でも「改正」の必要性は明らかにならなかった
 少年法は、少年事件の背景として家庭環境や生活環境が影響していることを踏まえ、家庭裁判所によるきめ細かい調査に基づいて教育的な処遇することによって、少年の更生や社会復帰を図っている。現行の少年法による処遇が少年の更生や再犯防止に大きな役割を果たしていることは、3年以上にわたる法制審の検討でも共通認識となっていた。菅総理も「少年による刑法犯の検挙人員数は減少傾向にあり、少年法に基づく現行制度は、再非行の防止に一定の機能を果たしている」と国会で答弁した。なぜ有効に機能している少年法を「改正」しなければならないのか、国会審議を通じても説得的な説明はなされず、「改正」法の必要性は明らかにならなかった。

3 18歳・19歳の者の更生の機会が狭められる危惧は大きい
 原則逆送範囲が拡大されれば、悪質性が高いとは言えない行為態様のものなども含まれ、少年法に基づく内省や更生に向けた指導が受けられなくなる可能性がある。仮に刑事裁判となった場合は、推知報道の一部解禁により、むしろ18歳・19歳の者の更生や社会復帰を困難にする結果となる危険がある。原則逆送事件について、家庭裁判所でのきめ細かい調査が後退してしまうおそれもある。18歳・19歳の者への福祉的な支援の制度が乏しい中で、ぐ犯が適用されなくなれば、支援を受ける機会を得られない者が増加することになる。自由法曹団が指摘してきたこれらの問題点は、国会審議においてもその危惧は払しょくされなかった。このような少年の更生の機会を狭める危険のある法律の可決に強く抗議する。

4 今後もきめ細かい調査や少年の要保護性に即した処遇が求められる
 18歳・19歳の者についても、少年事件の背景にある家庭環境や生活環境などを詳しく調査し、犯情だけではなく個々の少年の要保護性に即した処遇が必要であることは当然のことである。法務大臣も、国会審議において、原則逆送対象事件についても、要保護性に関する家裁の調査が重要であることを明言した。
 「改正」法案の成立にあたっては、上記の「改正」法案の問題点を踏まえ、新たに原則逆送の対象となった事件について検察官送致をするか否かの決定に際しても「きめ細かな調査及び適正な事実認定に基づき、犯情の軽重及び要保護性を十分に考慮する運用が行われるよう努めること」や、18歳・19歳の者への保護や支援施策の推進を図ること、推知報道の一部解禁が少年の健全育成や更生の妨げとならないよう配慮すること、被害者について、名誉や生活の平穏害されないための配慮や法的支援策の検討など、8項目にわたる附帯決議が付された。この附帯決議は、引き続き、少年の要保護性に即した調査や処遇を行い、少年の更生の機会を狭めることのないように運用せよとの国会の一致した意思表明であり、政府・最高裁は附帯決議に合致する運用を行わなければならない。

5 まとめ

 以上より、自由法曹団は、少年の更生の機会を狭める危険のある少年法「改正」法の可決・成立に抗議するとともに、少年の要保護性に即した調査・処遇が今後も維持されることを求めるものである。

 

2021年5月22日

自  由  法  曹  団
2021年5月研究討論集会

 

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