100周年・東京総会『「国民の裁判を受ける権利」を蔑ろにする民事訴訟法改正を許さない決議』

カテゴリ:司法,市民・消費者,決議

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「国民の裁判を受ける権利」を蔑ろにする民事訴訟法改正を許さない決議

 

 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会(以下、「法制審部会」という)では、民事裁判手続のIT化や新たな訴訟制度、新たな和解に代わる決定制度などの新制度の導入に向けた議論がなされている。政府は、2022年2月の法制審総会で取りまとめられる答申をもとに、同年の通常国会に民事訴訟法改正案を提出するものと思われる。
 しかし、2021年5月集会「『国民の裁判を受ける権利」を蔑ろにする、民事裁判手続のIT化を許さない決議」で指摘したように、主張書面や証拠のオンライン提出の義務化や、当事者の同意を要件としないウェブ会議等の方法による口頭弁論期日、ハイブリッド式の証人尋問・本人尋問・検証、新たな訴訟手続、新たな和解に代わる決定などは、国民の裁判を受ける権利や大衆的裁判闘争に重大な影響を与えかねない。このような民事訴訟法の改正は、到底容認できるものではない。

 本年2月26日から同年5月7日にかけて実施されたパブリックコメントでは、52の団体、216の個人が意見を提出している。その中には、法制審部会の中間試案に賛同する意見もあるが、国民の裁判を受ける権利の後退を危惧し、オンライン提出の義務化に反対し、ウェブ会議等を用いて行う口頭弁論期日の開催にあたっては当事者双方の同意を求める等の制度の見直しを求める意見が多くみられ、中間試案の提案に賛成する意見においても、要件の厳格化や例外規定の導入・拡大等を求める意見も散見される。
 特に、新たな訴訟制度については、23の団体と個人が、立法事実がないこと、不十分な審理につながること、憲法の裁判を受ける権利を侵害するおそれがあること、民事裁判手続のIT化と無関係であることなど、多岐にわたる反対意見がだされており、また、新たな和解に代わる決定についても、25の団体と個人から、処分権主義及び当事者主義に反することや、制度が濫用されるおそれがあること、立法事実がないこと、民事裁判手続のIT化と無関係であることなど、多岐にわたる反対意見が出されている。

 本来、法制審部会は、以上のような意見としっかりと向き合い、慎重な議論を重ねて、国民の裁判を受ける権利が実現される民事訴訟法改正を目指さなければならないはずである。
 ところが、法制審部会では、民事訴訟法という基本法を改正するものであるにもかかわらず、2022年通常国会提出という期限を決めて、急ピッチに議論を行っている。パブリックコメントに提出された意見を十分に斟酌し、その意見を反映させている様子は全く窺えない。正に、制度化ありきの議論と言わざるを得ないものとなっている。

 自由法曹団は、国民の裁判を受ける権利を蔑ろにする民事訴訟法改正に強く反対し、大衆的裁判闘争を支えてきた各弁護団や関係諸団体と連携し、国民の裁判を受ける権利が実現される民事訴訟法改正に向けて全力を注ぐ。

 

2021年10月23日

自由法曹団創立100周年・東京総会

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