2021年12月18日常任幹事会にて、「沖縄県知事による辺野古新基地建設の設計変更不承認を支持し、国に審査請求取下げを求める決議」を採択しました

カテゴリ:決議,米軍・自衛隊

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沖縄県知事による辺野古新基地建設の設計変更不承認を支持し、国に審査請求取下げを求める決議

 

1 2019年12月、土砂投入が始まっていない大浦湾側の工区に軟弱地盤が見つかり、沖縄防衛局は地盤改良に総工費9300億円、工期は10年に及ぶ見込みであることを公表して、2020年4月、沖縄県知事に対し、埋立承認処分変更承認申請を行った。この日本政府の変更承認申請に対し、玉城デニー沖縄県知事は、2021年11月25日、これを不承認とした。
 見つかった軟弱地盤は最も深いところで水深90mに達し、そのような水深の地盤改良は、世界的にも例が無く、専門家から技術的におよそ不可能と指摘されている。それゆえ少なくとも地盤調査及び土質試験の結果をもとに、地盤条件について、土の物理的性質、力学的特性等を適切に設定すべき(港湾基準及び港湾の施設の技術上の基準の細目を定める告示13条参照)ところであるが、日本政府は、問題とされる軟弱地盤の力学的試験をおこなっていない。当該地点から150m、300m、750m離れた3地点から地盤強度(せん断強さ)を類推するのみである。これでは災害の発生防止を十分に考慮した埋立変更計画とはならない。
 また、埋立対象地域は国指定天然記念物であるジュゴンの生息地域である可能性が指摘されており、ジュゴンの生息への影響を考慮した環境保全措置が求められるところ、事業者は工事船から継続的に出る水中音による影響の調査をせず、音圧レベルが基準を超えない限り調査はしないとしている。これでは適切な環境保全措置がはかられるとは言い難い。国の姿勢は「埋立工事先にありき」で、不都合があったら後からまた変更する、というものであり、変更承認に必要な正当な事由は見いだせない。加えて、日本政府は投入土砂の採取予定地に沖縄本島南部の糸満市八重瀬町などを加え、戦没者の遺骨が眠る地の土砂まで投入しようとしている。
 このような重大な問題を無視するずさんな日本政府の変更承認申請を沖縄知事が不承認としたことは合理的かつ妥当な判断であり、自由法曹団はこの判断を強く支持する。

2 ところが、日本政府は、沖縄知事の不承認決定に対し、2021年12月7日、国土交通大臣に行政不服審査法に基づく審査請求をおこなった。
 だが、国土交通大臣は内閣の一員であり、その国土交通大臣に政府が不服審査を請求すれば自ずと結果は見えてくる。行政不服審査法第2条は、行政庁の処分に不服のある者は審査請求ができることを定めているが、同法は公権力の行使に不服のある者の救済のために不服審査請求手続を設けているのであり、公権力の行使をおこなう国自身がこの手続を利用することは法律の濫用とも言うべきものである。かかる行為を許せば、国は政府の施策に異を唱える地方自治体の諸措置に対して行政不服審査法を利用してことごとく覆すことができるようになりかねないのであって、憲法第92条が地方自治を保障した趣旨を没却する事態となりかねない。
 日本政府はこれまでにも、沖縄県民の意思を無視して、2017年4月には辺野古先の埋め立て海域の外周護岸工事を開始し、2018年12月には土砂投入を強行した。また、大浦湾のサンゴの移植について、沖縄防衛局が条件を守らなかったことから沖縄県知事は2021年8月に許可を撤回したが、これに対し、沖縄防衛局は許可の撤回を不服とする審査請求を行い、これを受けた農水大臣は撤回の効力の執行停止を決めている。
 今回の設計変更申請の不承認に対する審査請求は、このような日本政府の暴挙をさらに重ねるものであり、自由法曹団は日本政府に対し速やかに不服審査請求を取り下げることを求める。

3 2014年11月に実施された沖縄県知事選挙で「あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地はつくらせない。」を掲げた故翁長雄志氏が当選したのをはじめ、沖縄県民は、2019年2月の県民投票および度重なる選挙のたびに新基地建設に反対する意思を明確に示してきた。この沖縄県民の意思に反して新基地建設を強行することは、それ自体民主主義を否定し、地方自治を侵害するものにほかならない。
 また、辺野古新基地は、日米軍事同盟・在日米軍の機能を大幅に強化し、周辺諸国に新たな軍事的緊張をもたらし、日本と東アジアの平和を脅かすものである。ひとたび基地が建設されてしまうと、沖縄県民に永続的な米軍基地による負担・被害をもたらすことになるのであって、絶対に許されない。日本政府は、「沖縄の負担軽減」などと称して辺野古新基地建設が普天間基地の撤去の唯一の解決手段である旨の説明をしているが、それは全くの偽りであり、基地のない平和な沖縄を実現するために必要なのは、普天間基地の即時無条件撤去と辺野古新基地建設の中止である。
 自由法曹団は、繰り返し、沖縄県民のたたかいに敬意を表し、連帯を表明してきた。この立場から、本12月常任幹事会として、上記の通り、今般の沖縄県知事による埋立承認処分変更承認申請に対する不承認決定を支持するとともに、日本政府に対し、速やかに国土交通大臣に対する審査請求を取り下げ、新基地建設を中止することを求める。

以上、決議する。

自由法曹団2021年12月常任幹事会

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