2022年10月24日、憲法9条を破壊する岸田政権の大軍拡に断固反対する決議

カテゴリ:明文改憲,決議

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憲法9条を破壊する岸田政権の大軍拡に断固反対する

 

1 岸田首相は、本年10月3日の所信表明演説で、「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」、「日米同盟の強化がますます重要」等と述べ、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有検討の加速、防衛力の5年以内の抜本的強化に向けた予算編成、米軍辺野古新基地建設の推進等の大軍拡方針を表明した。
 すでに自衛隊には海外での武力攻撃を可能とする空母や戦闘機の配備を進めてきており、2023年度の軍事費の概算要求でも、スタンドオフ防衛能力が強調され、射程を現在の百数十キロから中国本土にまで届く1000キロ程度に延ばす「12式地対艦誘導弾」の量産化が初めて盛り込まれ、大気圏内を超音速で滑空、攻撃する「高速滑空弾」の量産にも着手するとしている。また、中国艦船を念頭にした地対艦ミサイル部隊を沖縄本島に配備する計画を明示し、陸自勝連分屯地(うるま市)への配備を想定している。こうしたことを受けて、2023年度の軍事費の概算要求は過去最高の5兆5497億円に上った。さらに要求額を示さない「事項要求」を100件以上盛り込んでおり、最終的には6兆円台半ばまで膨れ上がる見通しである。
 そして、年末に予定されている安保関連3文書(「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」)の改定において、こうした敵基地攻撃能力の保有や軍事費の大幅増額といった方針を正式に盛り込こもうとしている。

2 しかし、敵基地攻撃能力の保有は、九州・沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿って対中国ミサイル包囲網を構築しようとする米軍の計画に呼応し、憲法9条を破壊して侵略的装備を保有しようとするものであり、到底容認することはできない。この点、岸田政権や自民党は、敵基地攻撃能力を「反撃能力」と言い換え、専守防衛の範囲内であると説明している。だが、敵の武力攻撃開始をどう判断するのかは難しく、かつ標的もミサイル基地だけに限られない以上は、「反撃能力」は先制攻撃能力に等しいものであり、まったくのごまかしである。
 また、軍事費の大幅増額についても、既に岸田首相は、本年5月の日米首脳会談で「防衛費の相当な増額」をバイデン大統領に誓約した上、本年6月の政府の骨太方針にも早期(5年以内)にGDP比2%を達成することを盛り込んでおり、来年度単年のものでなく、5年以内にGDP比2%以上の軍事費とするためのまさに端緒である。
 さらに見過ごせないのは、この大軍拡は我が国の防衛のためでなく、アメリカの対中国戦略の変容による日本の役割分担として要求されているものであることである。米中の衝突が起きた場合、アメリカと一体となって中国を攻撃するための大軍拡である以上、それは際限のない軍拡へと突き進んでいかざるを得ず、そのことが米中間、日中間の緊張関係の一層の激化を招くことは論をまたない。また大軍拡が社会福祉を切り捨て、増税に繋がることも自明であると言える。

3 岸田内閣が推し進めようとする大軍拡は、憲法9条を破壊し、わが国の平和と安全を脅かすとともに国民生活を困窮させるものでしかない。わが国の平和と安全を確保するには、憲法9条を堅持し、決して他国に軍事的脅威を与えることなく、中国などと対話を続ける中で緊張要因を除去していくことこそが最も現実的な方策である。そうした努力をせずにひたすら大軍拡に突き進むことは、本来政治がやるべき責任を放棄しているといわなければならない。
 よって自由法曹団は、憲法9条を破壊する岸田内閣の推し進める大軍拡路線に断固反対するものである。

 

  2022年10月24日

自由法曹団2022年京都総会

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