2023年10月23日、労働時間規制の厳格な適用・実施を求める決議

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労働時間規制の厳格な適用・実施を求める決議

 

1 2024年4月から、工作物の建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業について、罰則付きの時間外・休日労働の上限規制が適用される。
 その一方で、現在準備が進められている「2025年日本国際博覧会」(通称「大阪・関西万博」)については、2023年7月及び8月の世論調査において回答者の6割以上が「関心はない」と回答した上、当初想定から1,000億円以上も予算が肥大化するといった状況にあるが、2025年日本国際博覧会協会(通称「万博協会」)は、建設業界の時間外労働の上限規制を万博に関連する建設の業務に適用しないよう政府に要望し、世論の大きな反発を呼んだ。さらに、このような世論にもかかわらず、自民党大阪・関西万博推進本部において同党の議員から「超法規的な取扱い」を求める意見が述べられた。
 そもそも、時間外・休日労働の罰則付き上限規制については、2019年4月から施行され、2020年4月からは中小企業にも適用が開始された中、人材不足等の影響により、建設事業等の上記一部の事業に限って5年もの期間、適用が猶予されてきたものである。これ以上の猶予や例外を設けることなく、長時間労働を抑制することは、労働者の命と健康を守るとともに人が尊厳をもって生活をすることができるための国の責務である。
 多数の国民の関心が薄い事業に関する国や自治体の都合によって労働者の命と健康が危険にさらされる事態など絶対にあってはならない。
 自由法曹団は、政府に対して、労働時間規制の厳格な適用及び運用を求めるものである。

2 また、2023年9月12日、日本経済団体連合会(通称「経団連」)は、「2023年度規制改革要望」を発表し、兼業・副業を行う労働者に関して本業と副業・兼業それぞれの事業場での労働時間を通算しない方向での制度改革及び在宅勤務を行うフレックスタイム制・裁量労働制の適用者等に対して深夜労働の割増賃金規制を適用しない又は規制の対象時間を後ろ倒しにする方向での制度改革を要望した。いずれの制度改革要望についても、「真に自発的な本人の同意」がある場合にのみ認めるべきとの留保が付されているが、使用者との力関係上従属的な立場にある労働者による「同意」が長時間労働や深夜労働の歯止めとなる保証はない。
 1日8時間制等の労働時間規制も、深夜労働の規制も、長時間労働や深夜労働が人の健康に悪影響を及ぼすことから設けられているものであり、「労働者のニーズ」を口実に現行の規制が緩められることがあってはならない。むしろ、現行の労働時間規制を厳格に運用していくことこそが求められる。

3 自由法曹団は、政府に対し、2024年4月以降、建設業、自動車運送業、医業等の猶予事業について、罰則付の労働時間規制を、これ以上猶予したり例外を設けたりすることなく厳格に実施するとともに、現行の時間外・深夜労働規制についてもこれらを緩和しないことはもとより、より一層厳格・適正に運用することを求め、長時間労働を撲滅して労働者のいのちと健康を守る取り組みを強めることを決意する。

 

   2023年10月23日

                         自由法曹団2023年大阪総会

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