2023年11月18日常任幹事会において、「イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区攻撃の即時停止を求める決議」を採択しました

カテゴリ:憲法・平和,決議

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イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区攻撃の即時停止を求める決議

 

1 イスラエルの大規模攻撃により、パレスチナ・ガザ地区では民間人犠牲者が増加の一途を辿っている。国連開発計画(UNDP)などが公表したガザの被害状況などに関する報告書によると、本年11月5日時点で、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃による死者数は9,770人にのぼり、うち子どもが4,008人を占め、2020年から2022年の各年に世界22か国以上の紛争で殺害された子どもの数を上回っていると指摘されている。またイスラエルの攻撃で少なくとも45%のガザ地区の家屋が倒壊・損壊し、国内避難民は全人口の約7割に当たる約150万人と推定されている。保健医療施設への攻撃によって、病院は3分の1以上、診療所や保健所などは3分の2が閉鎖に追い込まれたという。さらにガザ地区の封鎖によって、水、医療品、燃料等が底をつくなど人道危機が深刻化している。またヨルダン川西岸地区でもイスラエル軍の攻撃による犠牲者が出ている。
 このような事態を受けて、国連総会は10月27日、すべての当事者に「人道的休戦」を求める決議を121か国の賛成で採択した。また11月2日には国連特別報告者7名でつくる専門家グループが、「パレスチナの人々がジェノサイドの重大なリスクにさらされていると確信している」と厳しく警告を発している。イスラエルによるガザの民間人や民間施設を標的にした攻撃は、国際人権法及び国際人道法に明らかに反する行為であることはもちろん、その規模と残虐さからみて、ジェノサイド条約(1984年)が禁ずる集団殺害(ジェノサイド)にあたる可能性も高いのであって、即刻停止されるべきものである。

2 今回のガザ攻撃の直接の契機は、10月7日のハマスによる無差別攻撃にあった。1400人以上が殺害され、約200人が人質となりガザに移送されたと報道されており、これ自体国際法に違反し非難されるべきものであり、ハマスは人質を即時に解放すべきものであることも言うまでもない。
 しかしこれが契機になっているからといって、「自衛」の名の下、イスラエルが圧倒的な軍事力を行使して、上記のとおりガザ地区で民間人を大量に殺害し、人道危機をもたらすことが正当化されることは決してない。イスラエルは今なおガザ地区への攻撃と封鎖を続けており、これ以上の紛争の拡大、人々の犠牲は断じて認めることができない。

3 今回の事態の背景には、イスラエル政府によるパレスチナ人に対する系統的な差別・抑圧と、国連による度重なる勧告にもかかわらずイスラエルが1967年以来56年間にわたり国際法に違反して土地を占領し続けてきたことがある。特に、2007年以降16年にわたるガザ地区の封鎖強化は、「天井のない監獄」と呼ばれる非人道的状態をつくりだし、度々の空爆によって多くのパレスチナ人を犠牲にしてきたことも想起されなければならず、パレスチナにおける国際法の遵守状況については客観的・歴史的な検証がなされなければならない。

4 しかしながらまずはその前提として、ガザ地区での人道危機が、一刻の猶予もなく解消されなければならない。自由法曹団は、イスラエルとハマスの双方に対して即時の停戦を呼び掛け、ハマスに対しては人質の即時かつ無条件での解放を求め、イスラエルに対して、ガザに対する攻撃を停止し、封鎖を解除して、食料・医薬品・電気・水など生命維持や生活に必要な物資等の搬入を保障するとともに、市民の強制移動をやめるよう求めるものである。
 同時に、自由法曹団は、日本政府が前記10月27日付国連総会決議において採決を棄権したこと、及び、東京で開かれたG7外相会合の共同声明において、他のG7諸国とともにイスラエルの「自衛権」を強調し、圧倒的な軍事力で報復し、民間人の無差別殺傷を行っているイスラエルの行動を正当化したことを強く非難する。11月15日に国連安保理が採択した、ガザ地区の子どもの人道状況を改善するために戦闘の人道的休止を求める決議に日本政府が賛成したことは一定評価できるが、短期間の人道的休止では全く不十分であり、自由法曹団は、日本政府に対し、即時停戦のために最大限の努力をはらうよう求めるものである。

 

2023年11月18日

自由法曹団常任幹事会

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