2025年5月26日、「東アジアで戦争を起こさせないために、東アジアに平和を構築するために、 あらゆる力を尽くそう決議」

カテゴリ:国際平和,憲法・平和,決議

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東アジアで戦争を起こさせないために、東アジアに平和を構築するために、あらゆる力を尽くそう

 

1  今、世界は紛争と分断の時代にある。
 ロシアによるウクライナ侵略から3年が経過したが、公正な平和の実現にはほど遠い状況のまま人々の犠牲が拡大している。中東では、停戦合意を事実上破棄したイスラエルによるガザ地区に対する攻撃が再開され、パレスチナの人々の犠牲は既に5万2000人を超えている。
 2つの戦争は、人類が21世紀にいたっても未だ戦争を克服できていないという冷酷な現実を世界の人々の前に明らかにした。また、2つの戦争は、戦争によって人々の日常生活が根底から破壊され、多くの尊い命が犠牲となること、そして、ひとたび戦争の火ぶたが切られれば、それは誰にも容易に止めることがで きないことを世界の人々に明らかにした。
 戦争は絶対に起こしてはならないものである。

2 東アジアでは、中国の覇権主義的な軍備増強とアメリカの対中強硬路線への転換によって、米中軍拡競争が激化し、軍事的緊張が高まっている。中国・習近平政権は、「1つの中国」の原則を主張し、台湾問題は一切譲歩することができない「核心的利益」だとし、アメリカは、台湾を「第一列島線の死活的な結節点」と捉え、台湾への関与を強めている。歴代自民党政権は、アメリカに追従し、「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」あるいは「今日のウクライナは明日の東アジア」だと語り、安保三文書に基づく大軍拡に邁進し、南西諸島を軍事要塞化している。
 しかし、東アジアにおいて戦争になれば、台湾、沖縄はもちろん、日本、中国、朝鮮半島を含む東アジア全体に壊滅的な被害が生じるおそれがある。戦争は起こしてはならないものであり、台湾や沖縄はもちろん東アジアのいずれの地域も決して戦場にしてはならない。東アジアに戦争を起こさせないことこそ平和を希求する東アジアに住むすべての人々の願いであり、共通の利益である。
 東アジアにあるすべての政府は、外交と対話の努力を尽くし、戦争を防がなければならないのであり、自由法曹団はそのことを強く求める。

3 沖縄は、薩摩藩と清による支配という琉球王国の長い歴史を持ち、琉球処分を経て、第二次世界大戦において本土(日本)の「捨て石」とされ、悲惨な沖縄戦を経験し、戦後もアメリカによる占領と米軍基地による甚大な被害を受け続けている地域である。そして、今また安保三文書による大軍拡において最前線として犠牲を強いられながら、これに抗して不屈の闘いを続けている。
 他方、台湾は、1895年の台湾割譲に始まる日本による植民地支配、1945年以降の蒋介石・国民党による台湾支配という過酷な歴史を持つ地域である。アメリカは、台湾を東アジアの反共の砦とするため国民党・軍事政権を支援し続けたが、1972年、突如として中華人民共和国との国交を回復し、台湾は国連を脱退し、中華人民共和国がこれに取って代わった。台湾の民衆は、こうした大国の意向に翻弄されながらも民主化を勝ち取り、自由と民主主義のさらなる進化のためにたたかい続けている。
 沖縄と台湾。二つの地域の歴史を振り返れば、植民地主義の犠牲となり、大国に翻弄されてきた苦難の道のり、そして、これに抗う人々の闘いの姿が見えてくる。
 しかし、日本、アメリカ、中国といった大国は、「台湾有事」を殊更に喧伝し、自国の利益のために覇権を争い、軍拡競争を激化させ、再びこれらの地域を戦場とし、人々の命と暮らしを踏みにじろうとしている。
 私たちがなすべきことは、東アジアにおける平和の構築のための努力であり、そのために相互不信を取り除く外交の努力、寛容の精神に基づく対話の積み重ねをしていくことである。戦争を呼び込む「抑止力」を信奉し、大軍拡に突き進み、有事に備えることでは決してない。
 戦争がもたらす命を犠牲にし、あらゆるものを破壊する悲惨な現実、ひとたび戦争の火ぶたが切られれば誰にも止めがたくなる厳しい現実、これを東アジアの未来にしてはならない。
 アジア・太平洋戦争の終結から80年の節目である今年、自由法曹団は、沖縄の地において、平和憲法の理念を改めて思い起こし、侵略戦争の歴史に向き合い、同じ過ちを再び繰り返さないことを誓い、平和を希求する東アジアのすべての人々と連帯し、平和のためのあらゆる努力を尽くすことを決意し、ここに表明する。

 

2025年5月26日 

自  由  法  曹  団
2025年沖縄・5月研究討論集会

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