2025年5月26日、「高等裁判所における違憲判決が繰り返されている事実を踏まえ、 改めて最高裁の判断を待たずに早急に同性婚実現に向けての法整備を求める決議」

カテゴリ:市民・消費者,決議

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高等裁判所における違憲判決が繰り返されている事実を踏まえ、
改めて最高裁の判断を待たずに早急に同性婚実現に向けての法整備を求める決議

 

1 人の性のあり方は極めて多様であり、様々な性のあり方はありのまま尊重されなければならない。性のあり方によって個々人が差別されることなく、安心して生活できることは憲法13条及び14条、前文が保障する基本的人権である。しかし、性的マイノリティの少なくない人々は、社会制度の枠組みから排除され、適切な権利保障が受けられていない現状があり、2023年に成立した「性的指向およびジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」でも確認されているとおり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別のない社会の実現は喫緊の課題となっている。 

2 このうち、同性カップルの権利保障については司法による画期的判断が相次いでいるところ、特に同性間の婚姻が認められないことの違憲性を問うた「結婚の自由をすべての人に」訴訟に関し、2024年3月14日に札幌高裁は、性的指向及び同性間の婚姻の自由は憲法上の権利として保障される人格権の一内容を構成し得る重要な法的利益と認めたうえで、憲法24条1項の定める「両性の合意」の解釈について、「その文言のみに捉われる理由はなく、個人の尊重がより明確に認識されるようになったとの背景のもとで解釈することが相当」とし、「人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含み、両性つまり異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えることが相当である」と判示し、異性婚のみを定めた法制度が憲法24条に違反し、かつ異性カップルと同性カップルとの区別について合理的な理由を欠く差別的取扱いにあたり憲法14条1項に違反する、との違憲判決を行った。
 同訴訟は各地の裁判所に提起されており地裁段階でも多くの違憲(ないし違憲状態)との判決がなされていたところ、2024年10月30日に東京高裁、同年12月13日に福岡高裁、2025年3月7日に名古屋高裁、そして2025年3月25日には地裁で唯一合憲判断がなされていた大阪高裁においても同性婚を法律婚の対象としない現行民法及び戸籍法の諸規定が違憲であるとの判断がなされるに至っており、同性カップルの法的保護を積極的に進めるべきことについて司法が明確にその立場を明らかにし、遅々として議論すら進まない立法・行政に対して繰り返し警鐘を鳴らすものといえる。
 さらに上記福岡高裁は「端的に、異性婚と同じ法的な婚姻制度の利用を認めるのでなければ、憲法14条1項違反の状態は解消されるものではない」と指摘し、大阪高裁も「同性カップルの法的保護を法律上の婚姻と異なる形式で行うことは、性的指向という人間の自然的、本質的属性によって、その属性に基づく人格的生存の在り方において合理的理由のない差異を設けることになり、法の下の平等の原則に悖るものといわざるを得ない。」「さらに、同性カップルについてのみ婚姻とは別の制度を設けることは、性的指向及びジェンダーアイデンティティの態様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑みると、新たな差別を生み出すとの危惧が拭えない。」と判示しており、同性カップルの法的保護をパートナーシップ認定制度等の婚姻以外の形式によることが不十分であることも明示されている。
 同性婚が法制化されれば、望まない事実婚状態を余儀なくされていた多くの同性カップルが婚姻が可能となり、これまで排除されていた様々な制度からの保障を受けられることとなるのであって、同訴訟の継続する5つ全ての高等裁判所が違憲と判断している以上、同性婚についての異性婚と同じ法的な婚姻を認める形での法整備を行うことは急務である。

 3 既に野党各党から同性間の婚姻を法制化する法律案が国会に複数回提出されており、速やかな法制化は可能な状況にあるにも関わらず、石破茂首相は、上記判決を受けてもなお、同性婚を認めることは「国民の意見や国会の議論、訴訟の状況を注視する必要がある」として従来と同じ回答を述べるにとどまっており、政府として具体的な法整備に向けた検討の動きすら見られない状況にある。
 法的保護のない状況にあることを余儀なくされている同性カップルにおいて、異性カップルと同様の法的保護が受けられないことは明らかな人権侵害である。上記札幌高裁判決は、その付言において国会に対し「国会や司法手続を含めて様々な場面で議論が続けられ、違憲性を指摘する意見があり、国民の多くも同性婚を容認しているところであり、このような社会の変化を受け止めることもまた重要である。何より、同性間の婚姻を定めることは、国民に意見や評価の統一を求めることを意味しない。根源的には個人の尊厳にかかわる事柄であり、個人を尊重するということであって、同性愛者は、日々の社会生活において不利益を受け、自身の存在の喪失感に直面しているのだから、その対策を急いで講じる必要がある。」と触れ、その他の高裁判決も早急な対応を求めている。同訴訟の高裁判決が全て違憲判断をしている以上、最高裁に至っても違憲と判示されることは明らかであるから、行政・国会はその責務として速やかな法整備を行う義務があり、立法の不作為の違法性も否定しえない。

4 自由法曹団は、2022年京都総会において「多様な性のあり方の尊重を求め、全ての人が平和に安心して生活できる社会の実現を求める決議」を、2023年6月常任幹事会にて「性的少数者に対する差別をなくし個人の尊厳と人権が守られる法整備を求める決議」を採択している。そして、昨年2024年5月研究討論集会では「多様な性のあり方を尊重する司法判断を踏まえ、最高裁の判断を待たずに早急に同性婚実現に向けての法整備を求める決議」を採択して同性婚の速やかな法制化を求めており、性的マイノリティの権利擁護のための取り組みを続けているが、1年が経過し多くの違憲判決が出てもなお立法の動きはみられておらず、同性カップルの救済の必要性はより高まっている。
 繰り返されてきた上記の司法の判断を踏まえ、自由法曹団は、改めて同性カップルの法的保護の実現に向けた法整備の実現と、個々人が差別されることなく、安心して生活できる社会の実現を強く求めるものである。

 

2025年5月26日 

 自  由  法  曹  団
2025年沖縄・5月研究討論集会

 

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