2025年10月20日、「いのちのとりで裁判最高裁判決後の厚労省の対応に強く抗議するとともに、 生活扶助基準引下げによる被害の全面的な回復を求める決議」
いのちのとりで裁判最高裁判決後の厚労省の対応に強く抗議するとともに、
生活扶助基準引下げによる被害の全面的な回復を求める決議
いのちのとりで裁判とは、2013年から2015年にかけて強行された、史上最大の生活扶助基準の引下げ(以下「本件引下げ」という)に対し、全国各地で1000名を超える生活保護利用者が原告となり、基準引下げが違憲・違法であることを理由に、生活保護減額決定の取り消しや慰謝料の支払いを求め提訴した各訴訟である。
2025年6月27日、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)は、本件引下げの理由の1つとされた「デフレ調整」について、専門的知見との整合性を欠くものであり、厚生労働大臣の判断の過程及び手続きに過誤、欠落があるとして、引下げが違法であると断じる画期的判断を下した。
原告団・弁護団・支援団体は、この最高裁判決を受け、国に対し、全ての生活保護利用者への謝罪、本件引下げ前の基準による保護費との差額支給等必要な被害回復措置を直ちに講じるよう求めた。自由法曹団としても、①国ないし厚生労働大臣からの心からの謝罪と、②差額分保護費の追支給など、全面的な被害解決に向けた対策を直ちに講ずることを強く求める声明を出した(2025年6月30日 生活扶助基準引下げの違法性を認めた「いのちのとりで裁判」最高裁判決を高く評価するとともに違法な生活扶助基準引下げの全面的な是正と被害回復を求める声明)。
しかしながら、国(厚労省)は、原告団や弁護団、支援団体が、再三にわたり謝罪を求めているにもかかわらず、いまだ、一切謝罪に応じない。それどころか、厚労省は、違法な引き下げから10年以上経過して、最高裁から引き下げが違法であるとの判断を下されたにもかかわらず、この期に及んで、引き下げ当時に遡及して、再度生活扶助基準の引下げを行うことを目論んでいる。そのために、厚労省は、「最高裁判決への対応に関する専門委員会」を突如立ち上げ、「デフレ調整」による4.78%の引き下げ率についても、本来はさらなる引下げをし得るところを、あたかも4.78%に留めたなどという言い分を持ち出し、委員らを誤導して、最高裁の判断を無きものとしようとしている。その一方で、原告らや弁護団員については、第2回委員会における「ヒアリング」で、限られた時間発言をさせたのみで、委員会への参加・発言はもちろん、傍聴すら認めず(唯一行っているのは、YouTubeのリアル配信のみである)、当事者を蚊帳の外に置き続けている。
かかる厚労省の対応は、長年にわたり尊厳を踏みにじった生活保護利用者に対する冒とくである。自由法曹団は、違法を断罪した最高裁の判断から目を背け、著しく不当な対応に終始する厚労省の態度に強く抗議するとともに、改めて、①国ないし厚生労働大臣からの心からの謝罪と、②差額分保護費の追支給など、被害の全面的な回復に向けた対策を直ちに講ずることを求める次第である。
2025年10月20日
自 由 法 曹 団
2025年茨城・筑波山総会
