2025年10月20日、「生活保障法制定に向け積極的な取り組みを行う決議」
生活保障法制定に向け積極的な取り組みを行う決議
生活保護制度は、いうまでもなく、憲法25条に保障された生存権に基づく制度である。本来、厚生労働省や各地域の実施機関は、生活保護制度が憲法上の権利に基づく制度であることを啓発し、積極的な利用を促すための取り組みを行うべきであり、それを通して、国民の間にも、同制度が権利に基づく制度であることの認識が形成されていくこととなる。
しかしながら実際は、実施機関としても、生活保護が権利に基づき支給されるものであるという意識が希薄であり、その反面で義務や制限が不当に強調される運用がなされたり、「水際作戦」がなされる事案も未だに散見される。国民の間にも生活保護制度へのマイナスのイメージや、生活保護バッシング含め、生活保護利用者への差別的感情を持つ者も少なくない。
日本弁護士連合会(以下「日弁連」という)は、2008年に、「①水際作戦を不可能にする制度的保障」、「②保護基準の決定に対する民主的コントロール」、「③権利性の明確化」、「④ワーキングプアに対する積極的な支援の実現」を内容とする生活保障法要綱案を公表した。さらに、2013年には、当初の要綱案公表後の情勢の変化を踏まえ、「①権利性の明確化」、「②水際作戦を不可能にする制度的保障」、「③保護基準の決定に対する民主的コントロール」、「④一歩手前の生活困窮層に対する積極的な支援の実現」,「⑤ケースワーカーの増員と専門性の確保」の5つを柱とする、生活保障法要綱案(改訂版)を公表した。
さらに、日弁連は、2024年10月に実施された人権擁護大会の第1分科会において、「今こそ、「生活保障法」の制定を!~地域から創る、すべての人の“生存権”が保障される社会~」と題する、生活保障法制定に向けたシンポジウムを行うとともに、「「生活保障法」の制定等により、すべての人の生存権が保障され、誰もが安心して暮らせる社会の実現を求める決議」を採択した。同決議では、上記5つの柱を内容とする生活保障法の制定や、同法制定を待たずして、厚生労働省通知等を改正し、各地方自治体に先進的な自治体の取り組みを周知するなどして、同法の趣旨を早期に実現するべきことを提言している。
生活保障法制定が実現すればもちろん、同法制定やそれに先立つ運用改善の実現に向けた活動は、現在の生活保護制度の抱える問題点(権利性が明確となっていないことや「劣等処遇」に基づくような運用のまん延、外国人については一部の在留資格者への「準用」にとどまっていること等)の解消や、よりよい生活保護(生活保障)制度の実現につながる貴重な取り組みである。
収まらない物価高が国民の生活を圧迫し、貧富の差が一層拡大するなか、生活保護制度が果たす役割はますます重要なものとなる。そこで、自由法曹団としても、改めて、現状の生活保護法の問題点を解消し、よりよい生活保護(生活保障)制度の実現のために、生活保障法の制定に向け、積極的に取り組んでいくことを、ここに決議する。
2025年10月20日
自 由 法 曹 団
2025年茨城・筑波山総会
