2025年10月20日、『「核兵器も戦争もない世界」の実現を目指す決議』

カテゴリ:原発問題,国際平和,憲法・平和,決議

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「核兵器も戦争もない世界」の実現を目指す決議

 

 1945年8月にヒロシマ、ナガサキに投下された2発の核兵器は、その年の12月までに21万人の人々の命を無惨に奪い、生き残った多数の人々にも放射線等による耐え難い苦しみを与えてきた。被爆80年を迎えた2025年8月時点の原爆死没者名簿の登録者数は、広島市で34万9246人、長崎市で20万1942人に上る。非人道的な核兵器は二度と使用されることがあってはならない。

 現在も終わる気配のないウクライナ戦争において、ロシアは核兵器による威嚇を行いながら通常兵器による攻撃を続けている。米英仏中などの核保有国も軒並み核兵器の増強を進めており、核兵器が使用されるリスクがかつてなく高まっている。
 2025年6月には、イスラエル軍やアメリカ軍が、イランの核施設を武力攻撃した。核保有国のダブルスタンダードが露見するとともに、核が世界の緊張を高めるものであることが明らかとなった。

 緊迫する世界情勢の中、2021年1月に発効し、核兵器を明確に違法な兵器であるとした核兵器禁止条約の批准国は、現在74か国に上り、署名、批准、加盟した国が99か国に達した。これにより、条約加盟資格のある197カ国のうちの多数派となった。
 ところが唯一の戦争被爆国である日本の政府は、2025年3月3日から、米ニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器禁止条約第3回締約国会議につき、これまでと同様にオブザーバー参加を見送った。そればかりか、この間の日米拡大抑止協議で、有事を想定したシミュレーション(机上演習)を複数回実施し、米軍が核兵器を使用するシナリオを議論していたことが明らかとなった。日本が「核兵器のない世界」を追求しながら、米国の核抑止力への依存を深めている実態が浮き彫りとなった。
 そうした中、2025年7月に行われた参院選の当選者から「核武装」論が公然と語られる深刻な状況となっている。

 一方で、2025年7月11日時点で、全国726自治体議会で核兵器禁止条約への調印(署名)・批准・参加を日本政府に求める意見書決議が採択されており、全国1788自治体の41%にも及んでいる。
 また、2024年12月には、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞している。代表委員の田中熙巳氏は、受賞演説で「人類が核兵器で自滅することのないよう、核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて、ともに頑張りましょう」と訴えている。

 世界から核兵器がなくならないのは、核兵器を国家安全保障に不可欠とする核抑止論に基づく安全保障政策がとられているからである。これにより、核兵器の質的近代化と量的増加が進行し、緊張が高まってきた。しかし、そのたどり着くところは、「世界的な核の破局」、すなわち「全人類にとっての惨害」、「壊滅的な人道上の結末」である。
 そして、戦争がある限り、核兵器をなくすことはできない。軍事・武力による解決を図ろうとする延長に核兵器があるからである。結局、世界の滅亡を防ぐには、戦争放棄をかかげる憲法9条の実践が唯一の選択肢である。憲法制定時の答弁では、原子爆弾の存在に触れながら、憲法9条の理念が説かれている。憲法9条と核兵器廃絶は、歴史的にリンクしているのである。
 日本が採るべき態度は、日本国憲法の理念を体現する核兵器禁止条約に署名し批准するとともに、さらに日本国憲法9条の理念を世界に敷衍することである。

 被爆80年の節目、自由法曹団は、日本国憲法9条の理念のもと、市民とともに連帯して、日本政府に対して、そして世界に対して、「核兵器も戦争もない世界」の実現を目指し、これに必要なあらゆることを訴えていくことを宣言し、ここに決議する。

 

2025年10月20日

自 由 法 曹 団
2025年茨城・筑波山総会

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