2025年10月20日、「旧動燃不当差別是正訴訟を早期に解決し、思想・信条による差別の一掃を求める決議」
旧動燃不当差別是正訴訟を早期に解決し、思想・信条による差別の一掃を求める決議
2025年3月25日、東京高等裁判所第21民事部は、動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃」という。)の権利義務を承継した国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「機構」という。)を被告とした元職員6名による損害賠償請求訴訟(令和6年(ネ)第2053号)について、前年3月の水戸地裁判決に続き、昇級昇格および昇給差別を中心とする各差別措置を認定し、機構に対し、原告らに合計約4700万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。
動燃は、1970年代から、安全性を脇においた原子力開発に対し批判的意見を持つ労働者について、公安警察や県警および所轄署と協力して、プライバシーを侵害する傾向調査をおこない、A・B・Cにランク分けするなどし、原告らを含む一部職員を「非良識派」と分類した。そのうえで動燃は、「非良識派」とした労働者に対して、枢要業務から排除する、新人研修において‘彼らに近づくな’と人間関係の切り離しをはかる教育をおこなう、他の職員に影響を広げにくい職場におく、結婚式への参列を妨害する、さらには昇級昇格および昇給において同期同学歴の労働者と格差をつけ長年にわたり昇級昇格を止める、など違法な差別的取り扱いをおこなった。このことが裁判で認定され、確定した事実となったのである。
1990年代から2000年代にかけて解決した電力各社による思想・信条差別事件ほか経営が「共産党員もしくはその同調者」とみなした労働者に対し各種の差別をおこなった例はいくつもあるが、本件原告らは採用されてから数年で「非良識派」と認定され、その後定年退職に至るまで職業人生をまるごと通じて違法な差別を受け続けた。これはまさに個人の尊厳を踏みにじる、日本国憲法のもとでありえない、あってはならないことである。それを警察組織も一緒になって推進したところに本件の特殊な重大さがある。それゆえに、当事者である機構のみならず、国もまたこの事件を解決する責任を負うべき立場にあると言える。
地裁および高裁が消滅時効により救済範囲を提訴前3年分に切り縮めた点は最高裁において是正がはかられるべきであるが、動燃から機構に至るまで国が設立した法人において長きに渡り差別がおこなわれてきたことは動かせない事実となっている。それにもかかわらず、機構は、長年にわたり差別を行ってきたことを認め、これを反省し、被害者に対して真摯に救済のための話し合いを求めることもなければ、再発防止をうたうこともしていない。これは社会的に強い非難が向けられるべき態度と言える。
自由法曹団は、戦前から人権擁護のためにたたかい続けてきた自負を持つ弁護士集団として、動燃から続く不当差別是正訴訟について機構が差別を認め、最高裁判決を待たずに当事者との真摯な話し合いで早期に解決する努力をすることを求める。また、国が監督権限を発揮して、当事者のみならず同じように人権侵害の被害をこうむった人々に対し機構が救済をはかるよう促し、職場における思想・信条による差別を一掃する施策を推進することを強く求める。
2025年10月20日
自 由 法 曹 団
2025年茨城・筑波山総会
