2026年5月25日、「えん罪被害者の真の救済に逆行する刑訴法改正案に反対し、証拠開示の義務化と 検察官抗告の全面禁止を含む抜本的な再審法改正を直ちに求める決議」
えん罪被害者の真の救済に逆行する刑訴法改正案に反対し、証拠開示の義務化と
検察官抗告の全面禁止を含む抜本的な再審法改正を直ちに求める決議
2026年5月25日
自 由 法 曹 団
2026年滋賀びわ湖5月研究討論集会
2026年5月15日、内閣は、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「法案」という。)を閣議決定し、国会に提出した。法案は、法制審議会刑事法(再審関係)部会による法務大臣への答申案に基づくものである。この間、政権与党の自民党内で、法制審答申案を巡り、特に検察官抗告の原則的禁止を刑事訴訟法に盛り込むかとの点で議論が紛糾をしていたが、盛り込むことで決着がついた。しかし、検察官抗告が原則禁止となったとしても、法案ではえん罪被害者の迅速かつ確実な救済という目的に反し、むしろ救済を困難にしかねない。
第1に、えん罪救済を長年阻害してきた再審開始決定に対する検察官の不服申立て(抗告)について法案は、原則禁止としつつも、例外的に「十分な根拠がある場合」に抗告を認める余地を残してしまっている。このような例外規定を残すことにより、原則と例外が逆転するような運用がなされることになれば、結局、袴田事件や福井女子中学生殺害事件、日野町事件などで見られたような検察官の抗告による数十年単位の審理長期化を防ぐことはできず、えん罪の真なる救済を達成することなどできない。
第2に、証拠開示について法案は、開示の対象を、これまでは裁判所の裁量的判断によって無限定に認められていたものを、再審請求理由に関連するもので、必要性、相当性が認められる証拠に限定しているうえ、弁護人への直接開示ではなく、裁判所への提出命令にとどめている。このような限定的な証拠の提出命令制度では、証拠が開示される範囲が従来よりもむしろ狭まり、再審開始の重要な証拠となった袴田事件における「5点の衣類」の写真ネガや福井女子中学生殺害事件の捜査報告書などの新証拠も開示されない可能性がある。このような法案では、従来の証拠開示の運用をむしろ改悪する方向に働きかねず、誤判是正・無辜の救済という制度目的から大きく遠のいてしまう。
第3に、法案は、開示された証拠の目的外使用を一律に罰則を科して禁止する規定を新設するとしているが、これまでの再審無罪事件では、弁護人だけでなく、支援者の力による新証拠発見が功を奏した例が少なくない。目的外使用禁止規定によって、このような活動が不可能となりかねず、さらには報道機関による報道の自由も著しく萎縮させる危険がある。
第4に、法案は新たに「調査手続」を設け、事実の取調べや証拠開示が行われないまま書面審査のみで再審請求を速やかに棄却できる規定を設けている。従前の法制審案に存在した「再審の請求の理由がないことが明らかであると認めるとき」という規定こそ削除されたものの、そもそもこのような足切り規定は安易に再審請求の棄却に繋がりかねず不要である。
えん罪被害者の真の救済のためには、検察官の手持ち証拠に対する全面的な証拠開示の義務化を実現すること、再審開始決定に対する検察官の不服申立て(抗告)を全面的に禁止すること、など抜本的な再審法改正が必要不可欠である。そして、これを実現するには超党派議員連盟による改正案(議連案)の成立が必須である。この点、議連案は2026年1月に衆議院解散に伴って廃案となってしまったところ、同年5月15日付けで一部野党(中道改革連合、日本共産党、チームみらい)が提出した改正案(以下、「野党案」という。)は、議連案の中身を正当に受け継いだものと評価でき、野党案を成立させることこそが真のえん罪救済に資する。
自由法曹団は、えん罪被害者の真の救済に逆行する法案に断固反対し、証拠開示の義務化と検察官抗告の全面禁止を含む無辜の救済を真に実効あらしめるための野党案による再審法改正を実現するべく奮闘する決意である。
