2026年5月25日、『「核と人類は共存できない」、核兵器と原発の早期廃絶を求める決議』
「核と人類は共存できない」、核兵器と原発の早期廃絶を求める決議
2026年5月25日
自 由 法 曹 団
2026年滋賀びわこ・5月研究討論集会
1 世界は今、新たな核軍拡競争の危機に立っている。 現在も終わる気配のないウクライナ戦争において、ロシアは核兵器による威嚇を行いながら通常兵器による攻撃を続けている。米英仏中などの核保有国も軒並み核兵器の増強を進めており、核兵器が使用されるリスクがかつてなく高まっている。米ロの核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」は、2026年2月に失効した。
2025年6月には、イスラエル軍やアメリカ軍が、イランの核施設を武力攻撃した。また、2026年2月28日には、両国は、イラン国内の軍事拠点等を空爆し、最高指導者らを殺害した。後者の攻撃について、トランプ米大統領は、イランが核兵器を製造する可能性があるので「先制防衛した」と強弁している。核保有国のダブルスタンダードが露見するとともに、核が世界の緊張を高めるものであることがいっそう明らかとなった。
これに対し、2021年1月に発効し、核兵器を明確に違法な兵器であるとした核兵器禁止条約の批准国は、現在74か国に上り、署名、加盟した国もあわせれば99か国に達しており、条約加盟資格のある197カ国のうちの多数派となっている。2024年12月には、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞し、核兵器廃絶を求める国際社会の声もかつてなく高まっている。
このような状況の中、唯一の戦争被爆国である日本こそが核兵器禁止条約に積極的に参加し、核兵器の違法化と保有国への廃絶を迫っていくことが強く求められているが、日本政府は、アメリカの「核の傘」に守られているとして核兵器禁止条約には参加しない旨を明言し、核兵器保有国とともに核兵器の禁止に反対している。2025年7月に行われた参院選の当選者から「核武装」論が公然と語られ、同年12月には、首相官邸の幹部が報道陣に対し、個人の見解としつつ、「日本は核兵器を保有すべきだ」との考えを示した。さらに、2026年4月には、安保3文書改定に関する有識者会議の第1回会合が開催されたが、そのメンバーには、歴代政権が「国是」としてきた非核三原則の見直しを提言した者も含まれている。一方、2026年4月から米ニューヨークで開かれていた第11回核不拡散条約(NPT)再検討会議には、高市早苗首相は出席を見送った。
唯一の戦争被爆国としての矜持はないのか、これが多くの国民の共通した思いのはずである。「絶対悪」でしかない核兵器を「必要悪」とし、核戦力に依存した日本政府の安全保障政策からの脱却を図り、核兵器廃絶に向けた世界の流れを推し進めなければならない。
2 また、日本の原発政策の抜本的転換も求められている。
もともと原発は、兵器用プルトニウムの生産炉や原子力潜水艦用の原子炉といった「軍事利用」から生まれたものであり、原発の推進は核兵器の開発・拡散の危険と常に隣り合わせである。原発の燃料を作るウラン濃縮工場は核兵器用の高濃縮ウランの製造に転用でき、また、原子炉でウランを燃やした後に生じるプルトニウムも核兵器の材料となる。未曾有の福島原発事故の後も、日本政府が原発に固執し、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理技術を手放さない一つの大きな理由は、核の能力はあるがやらないだけ、つまり、非核政策をとりながら、核兵器に転用可能な技術を温存する「潜在的核保有国」を志向しているからであるともいわれている(技術抑止力論)。
これ以上、核兵器の材料となる核物質を生み出さないためにも原発は廃絶される必要がある。
3 原子力は、「軍事利用」と「平和利用」とを問わず、常に人類を滅ぼすリスクも抱えていることも直視しなければならない。日本は、「核の軍事利用」によって引き起こされる帰結がいかに悲惨なものであるかを体験した唯一の被爆国である。それとともに、「核の平和利用」の名の下に米国から原発を導入した帰結として発生した福島原発事故によって、「平和利用」であっても非人道的な被害をもたらすことも目の当たりにした。核を制御するには人知と人為の限界がある。核と人類は共存できない。これこそがヒロシマ、ナガサキ、ビキニの三度の核被爆体験に加え、福島原発事故を踏まえた私たちの最大の教訓である。そうしたことからすれば、NPT体制は、一定の評価ができるものの、核廃絶について不十分であり、また、核の平和利用を認めている点でも問題があるため、いずれは乗り越えなければならないものである。
ところが、日本政府は、2022年12月にまとめた「GX基本 方針」では原発の「最大限活用」を掲げ、その後も原子力政策を推進している。東京電力は、2026年1月、柏崎刈羽原発6号機を再稼働させた。政府は原発推進の理由として、脱炭素や経済性の強み、電力需要の増加見込みを強調する。しかし、原発を稼働させようとすれば、燃料を作り上げるまでの行程等で膨大な資材・エネルギー投入により二酸化炭素の放出は避けられない。また、原発事故に伴う賠償と廃炉作業に要するコスト、さらに事故が起こらなくとも、使用済み核燃料の保管・処理のコスト、その電気料金への転嫁も踏まえれば、決して安価とはいえない。さらに、電力需要についても、この間に原発が稼働していない中、電力に不足したことはなく、喧伝にすぎない。そもそも、トラブル続きの原発再稼働により電力を賄おうとすることは現実的ではない。
4 世界から核兵器がなくならないのは、核兵器を国家安全保障に不可欠とする核抑止論に基づく安全保障政策がとられているからである。これにより、核兵器の質的近代化と量的増加が進行し、緊張が高まってきた。しかし、そのたどり着くところは、「世界的な核の破局」、すなわち「全人類にとっての惨害」、「壊滅的な人道上の結末」である。そして、戦争がある限り、核兵器をなくすことはできない。軍事・武力による解決を図ろうとする延長に核兵器があるからである。結局、世界の滅亡を防ぐには、戦争放棄をかかげる憲法9条の実践が唯一の選択肢である。
自由法曹団は、2025年10月20日、「『核兵器も戦争もない世界』の実現を目指す決議」を採択している。日本が採るべき態度は、核兵器禁止条約に署名し批准するとともに、さらに日本国憲法9条の理念を世界に敷衍することである。そのための一つの手段として、まずは日本政府が核抑止依存政策および原発政策を見直し、全ての核兵器と核兵器の開発・拡散につながる原発を廃絶し、「核兵器のない世界」を実現していく必要がある。
自由法曹団は、2019年10月21日愛知・西浦総会にて、「『核と人類は共存できない』、核兵器と原発の早期廃絶を求める決議」を採択しているが、あらためて、核兵器と原発の廃絶を市民とともに連帯して、日本政府に対して、そして世界に対して訴えていくことを宣言し、ここに決議する。
