2026年5月25日、「一連の外国人排斥政策に断固抗議し、全ての市民が差別を受けず平穏に生活できる社会づくりを求める決議」
一連の外国人排斥政策に断固抗議し、
全ての市民が差別を受けず平穏に生活できる社会づくりを求める決議
2026年5月25日
自 由 法 曹 団
2026年滋賀びわこ・5月研究討論集会
1 外国人排斥を目的としたと考えられる政策が、政府や地方自治体から、矢継ぎ早に打ち出されている。
政府から打ち出されているものとして、①永住取消し厳格化の入管法改正(2024年6月14日)、②出入国管理庁による不法滞在者ゼロプラン(2025年5月23日)、③「経営・管理」許可基準の厳格化を定める省令改正(2025年10月16日)、④永住許可の運用厳格化(2026年2月24日)、⑤在留手続き手数料大幅値上げの閣議決定(2026年3月10日)、⑥帰化要件の運用厳格化(2026年4月1日)等がある。
また、自治体から打ち出されているものとして、①三重県知事による職員の国籍要件復活の言明(2025年12月25日)、②新宿区による外国人に対する国保料一括前納制度(2026年4月開始)、③茨城県による不法滞在者密告制度(2025年5月11日開始)等がある。
2 これらの政策に共通することは、これを支える立法事実が皆無であるか、極めて希薄なことである。
もっとも悪質で影響が大きいものは「不法滞在者ゼロプラン」(②)である。同プランを作成した出入国管理庁は、「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている社会情勢に鑑み、不法滞在者ゼロを目指」す等として、入国審査の厳格化や護送官付き国費送還の促進を行い、2030年までに非正規滞在外国人を半減する等としているが、そもそも「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている社会情勢」など存在しない。非正規滞在者はピーク時である1993年の約30万人から下降の一途を辿っており、2025年には約7万5千人まで減少しているが、外国人によって国内の治安が悪化したというデータは、1993年当時も現在も存在していない。
また、外国人の永住権を公租公課の故意による未払いのみで取り消す等したり(①)、永住許可基準を在留期間3年から5年に延長したり(④)、帰化要件の基準を5年から10年に延長したりしなければならない立法事実も存在しない。まして、「経営・管理」許可基準を、従来の資本金500万円から一気に3000万円に引き上げたり(③)、在留資格の更新や変更を行う際に必要な手数料の上限額を1万円から10万円、永住許可を申請する場合の手数料の上限額を1万円から30万円へと引き上げる立法事実があるとは到底考えられない。
「経営・管理」許可基準の引き上げの悪影響も深刻である。日本国内にある大手外食産業でも資本金3000万円未満のものがほとんどである。仮に資本金3000万円という基準を外国籍市民が経営する外食産業に適用した場合、基準を満たすことができるのは4%程度ではないかといわれている。実際、新規の在留資格「経営・管理ビザ」申請件数は約96%減少した。
格別の立法事実もなく、矢継ぎ早に出された一連の政策は、昨今の排外主義的世論に乗じる形で打ち出されたものであり、外国人排斥を目的としていると言わざるを得ない。
3 一連の外国人排斥による外国籍市民の生活への影響は甚大かつ深刻である。2025年1月から8月までの間に国費送還された者は203人、うちトルコ国籍が41人と最も多く、埼玉県川口市に集住するクルド人がターゲットにされたものと思われる。川口市周辺では父親だけ突如帰国させられ家族がバラバラになった例、日本で生まれ育ち日本社会に溶け込んで生きて来た小学生・中学生らが突然帰国を命じられ、人生を破壊される例が多発した。同じ事例は全国に存在するものと考えられる。
2026年5月13日の院内集会で、日本に30年間居住し18年間カレー店を営んできたある外国籍市民は要件厳格化でビザの更新が不許可となり「子どもたちは日本で生まれ日本語しか話せない。妻も娘も泣いています。どうしたらいいですか。」と聴衆の前で号泣した。
外国人を排斥し、外国人経営の飲食店が消滅した日本社会は、ますます内向きになり、差別とヘイトスピーチが蔓延する荒廃した社会になることが予想される。
4 外国人排斥を目的とした一連の政策は、外国籍市民の生活を破壊するだけでなく、地域社会を分断し、社会を荒廃させ、差別とヘイトスピーチの蔓延を招くものにほかならない。
我々自由法曹団は、一連の外国人排斥政策に断固抗議し、全ての市民が差別を受けず平穏に生活できる社会づくりを求め、法廷その他あらゆる場面において、全ての市民と連帯して闘うことをここに表明するものである。
