2026年7月18日 7月常任幹事会において「ICCへの政治的攻撃及び無力化の動きに反対する決議 ~法の支配と平和のうちに生存できる世界の実現を求めて~」を採択しました

カテゴリ:国際,国際平和,決議

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ICCへの政治的攻撃及び無力化の動きに反対する決議
~法の支配と平和のうちに生存できる世界の実現を求めて~

2026年7月18日
自由法曹団常任幹事会

 

1 米国のマルコ・ルビオ国務長官は、2026年7月13日、政府全体が一体となって国際刑事裁判所(International Criminal Court、以下、「ICC」という。)の活動能力を組織的に無効化し、米軍兵士や政府関係者を標的にしたり、その他の方法で米国の主権を脅かしたりする行為を阻止するキャンペーンを発表した[1]。
 米国務省は、ICCが米国の主権に対する容認しがたい脅威であって、ICCが米国の国益のために活動する米軍兵士や当局者を訴追し、さらには投獄する権限を主張していること、ICCが超国家的な執行機関として、米国の軍人や政府関係者を恣意的に迫害する権限を与えられたグローバリスト官僚機構の一員になろうとしていることを理由として、ICCが米国の主権を脅かしたり、米国人を標的にしたりすることができないようにするための、幅広い行動を展開するとしている。
 措置の内容として、①外国に対し、ICCの不正行為と米国人および他国に及ぼすリスクを強調し、ICCからの脱退を促すこと、②米国の法執行機関や軍と協力関係にある国々、あるいは米国の安全保障の傘の恩恵を受けている国々は、米国の当局者や軍人を訴追するというICCの権限を否定されたいこと、③ICCの偽りの権威を拒否せずに米国の支援に頼る国々に対する監視を強化すること、④ローマ規程の締約国ではない国々に対し、米国と同等の行動を取られたいこと、⑤ICC職員に対するビザ取り消しおよび渡航禁止措置、⑥ICCおよび関連組織に対する制裁強化が挙げられている。

2 そもそも、ICCは、「20世紀の間に多数の児童、女性及び男性が人類の良心に深く衝撃を与える想像を絶する残虐な行為の犠牲者となってきたことに留意し」、「国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪が処罰されずに済まされてはならないこと」から、ジェノサイド犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪及び侵略犯罪について、その責任を有する個人を捜査・訴追し、処罰するために、国際刑事裁判所に関するローマ規程(以下、「ローマ規程」という。)に基づいて設置された国際刑事司法機関である(ローマ規程前文、第5条)。
 ICCは、ローマ規程に基づき、2024年11月21日、ガザ紛争における戦争犯罪及び人道に対する罪の疑いで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相及びヨアヴ・ガラント前国防相に対する逮捕状を発付した。同逮捕状発付は、ICC加盟国125か国に対して同2名が自国内で発見された場合に逮捕義務を課すものであり、ガザ地区での暴虐についての責任追及を確保するための重要な一歩であった。

3 米国は、ローマ規程を批准していないが、締約国か否かを問わず、国際社会の構成員は、普遍的管轄権や条約に基づく国際機関の正当な活動を尊重する義務を負う。また、締約国でない国の個人であったとしても、犯罪地がICCの管轄権内である限り、捜査、起訴、裁判の効果が及ぶのであるから、米国人が対象となることに国際法的な違法はどこにもない。
 しかるに、ドナルド・トランプ米大統領は、2025年2月、ICCが上記逮捕状を発付し権力を濫用したなどとして、ICCの職員やその活動を支援する人々の資産凍結や入国禁止等の制裁を可能にする大統領令14203号を発令し、2025年6月以降、実際にICC検察官や裁判官らに制裁を課した。
 米国は、度重なる国際法違反を犯している米国及びその同士国たるイスラエルに対する裁きが下ろうとするやいなや、それを担う国際刑事司法機関をも攻撃の対象とするものであり、このような行為は、国際法秩序を破壊する暴挙であって、決して許されるものではない。

4 日本政府は、国際法の遵守、国際司法機関への協力、国際ルール形成を通じて「法の支配」を強化し、国際社会の平和と安定を確保する外交政策を掲げており、2007年にローマ規程を批准し、ICCの締約国となった。締約国となって以来、最大の資金拠出国であるとともに、現在、赤根智子氏が日本出身として初のICC所長を務めていることに照らしても、ICCの最大の協力国である。報道によれば、日本政府は、米国の上記キャンペーンに対して、重大犯罪撲滅と法の支配を重視する立場から「ICCを一貫して支持してきている」と強調している[2]。
 日本政府は、同盟国による脅しや制裁によるICCの機能を損なう圧力を厳しく批判し、その暴挙をやめさせるとともに、ICCを通じた「法の支配」に基づく国際法秩序を実現するため他の締約国とともにICCへの支援を継続しなければならない。

5 なお、ICCに対する攻撃は、米国からだけでなく、2023年5月以降、ロシアのプーチン大統領らに対する逮捕状発付の報復措置として、ロシア政府によるICC検察官や裁判官を対象とする指名手配がなされている。こうした大国の思惑によりICCが消滅となった場合、時代はニュルンベルク裁判以前の状態へと逆行するものとなる。現在の国際情勢ではICCに代わる機関を設立することは不可能であると予想されるのであるから、取り返しのつかない事態へとすべきではない。

6 自由法曹団は、人権と民主主義の擁護を目的とし、日本国憲法9条の理念を擁護実現することに意義を認めている。戦争や国際紛争における一定の行動に制約をかけるローマ規程は、憲法9条の精神と軌を一にするものであり、ICCへの圧力行動を座視することはできない。
 その上で、自由法曹団は、日本政府を含むすべてのローマ規程締約国に対し、ローマ規程86条等に定められた広範な協力義務及び国際法の守護者としての役割を果たし、米国の不当な圧力に屈せず、ICCへの明確な支持を表明することを求める。
 さらに、米国に対しては、大統領令14203号に基づく、ICC裁判官、検察官、職員及びその家族への不当な措置の即時かつ無条件の撤廃、ICCの包括的な無効化を目指すキャンペーンの中止、国際刑事司法機関の独立性を尊重する法的義務の承認をすることを求める。

以上

 

[1] https://www.state.gov/releases/office-of-the-spokesperson/2026/07/state-department-launches-campaign-to-dismantle-international-criminal-courts-threat-to-american-sovereignty/
[2] https://www.jiji.com/jc/article?k=2026071400384&g=pol

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