6月10日付、改憲問題対策法律家6団体連絡会が『検察庁法改正案を束ね法案から分離し廃案とすること 黒川元検事長の定年延長閣議決定を撤回することを求める法律家団体の要請書』を発表しました。

カテゴリ:声明,治安警察

内閣総理大臣 安倍晋三 殿

法務大臣 森 雅子 殿

各政党本部・各党国会対策委員長 各位

内閣委員会理事・法務委員会理事 各位

 

検察庁法改正案を束ね法案から分離し廃案とすること

黒川元検事長の定年延長閣議決定を撤回すること

を求める法律家団体の要請書

 

2020年6月10日

 

改憲問題対策法律家6団体連絡会

 社会文化法律センター         共同代表理事 宮里 邦雄

自 由 法 曹 団                 団  長 吉田 健一

青年法律家協会弁護士学者合同部会    議  長 北村  栄

日本国際法律家協会           会  長 大熊 政一

日本反核法律家協会           会  長 佐々木猛也

日本民主法律家協会           理 事 長  右崎 正博

 

要請の趣旨

 第1に、国家公務員法等の一部を改正する法律案(束ね法案)から、「検察庁法の一部改正」案(第4条関係)を分離し、同法案の勤務延長(定年延長)、役職定年延長に関する特例部分をすべて削除するか、同法案全体を撤回(廃案に)すること。

 第2に、黒川弘務元東京高検検事長の定年延長を決めた本年131日の閣議決

定を撤回すること。

要請の理由

1.検察庁法改正案は直ちに廃案に

 すでに各方面から厳しく批判されている通り、検察庁法改正案は、政治権力が準司法官である検察官の人事に介入し、政権にとって意に沿わない検察の動きを封じ込め、政権関係者の違法を摘発し刑事責任を追及する道を閉ざす事態を招くなど、三権分立に反し、検察官の独立性を損い、刑事司法の公正を害し、検察組織に対する国民の信頼を大きく揺がすものである。

 検察庁法改正案に抗議するツイートが何百万と集まり、各界の著名人も改正反対の声をあげ、日本弁護士連合会をはじめ全国52のすべての弁護士会が反対の声明を発表し、元検事総長を含む検察官OBも反対意見書を公表するなど、国民は検察庁法改正案に反対している。

 政府与党は、この激しい国民の追及の前に、今国会での成立を断念したとするが、未だ廃案にするとは明言していない。国民が忘れた頃に、再び成立を図る目論見が透けて見える。政府与党は、同法案の勤務延長(定年延長)及び役職定年延長に関する特例部分をすべて削除するか、さもなければ同法案全体を直ちに廃案とすべきである。

2.重要法案を束ねて一つの法案にして提出する問題性について

 政府与党は、国家公務員等の定年年齢の引き上げを定めた法案の成立もまとめて見送る方針のようである。しかし、一般職の国家公務員等の定年を65歳とする法案は、年金支給年齢が引き挙げられる中、かねてから改正の必要性が指摘されていたものである。束ね法案から分離して廃案にするべきは、検察庁法改正案のみである。まとめて法案の成立を見送るとする理由はなく、検察庁法改正案に反対するなら公務員の定年延長も認めないという国民に対する意趣返しにも等しく、許しがたい姿勢である。

 そもそも、いくつもの重要法案を束ねて一つの法案として提出し、国会審議を早々に打ち切って数の力で悪法を強引に成立させるのは、安保法制をはじめとして現政権のお家芸である。このような手法は、法案の問題点を見えにくくし、国会での議論を軽視する反民主主義的手法であり、それ自体厳しく批判されるべきである。

3.黒川弘務元東京高検検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める

 さらに、政府は、本年1月31日、黒川弘務東京高検検事長(当時)の勤務を延長する閣議決定を行ったが、この閣議決定は、検察庁法22条、同法32条の2に違反し、国家公務員法81条の3は検察官には適用されないとする一貫した立法者意思や政府解釈にも反するもので明確に違法である。

 黒川弘務元東京高検検事長が辞職しても、違法な閣議決定が残れば第2第3の黒川問題を引き起こしかねない。法秩序の回復のために、閣議決定を直ちに撤回すべきである。

4.さいごに

 政権与党は、黒川弘務元東京高検検事長の辞職をもって一連の問題の幕引きを図ろうとしている。

しかし、うやむやな幕引きは許されない。

 安倍政権は、違法な検事長定年延長の閣議決定を撤回し、検察庁法改正案を廃案にすべきである。

 更に、今年1月17日になって、法務省が突如、内閣法制局に対して、政府解釈の変更と、昨年11月には実質的に完成していた検察庁法改正案に急遽定年延長・役職定年延長の特例部分を付け加える法案の手直しを打診したのは、いかなる経緯によるのか、また、黒川弘務元東京高検検事長を懲戒処分に付さないとしたのは誰の意向によるものか。疑惑は尽きない。

 これらの事実関係を国会審議で徹底的に明らかにして、国民の批判に応えるべきである。

以上

 

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