8月12日付、石垣市教育問題委員会及び与那国町教育問題委員会に対する「育鵬社公民教科書を採択したことに抗議する」を発表しました

カテゴリ:声明,教科書問題

          育鵬社版公民教科書を採択したことに抗議する

                                                   2020年8月12日

石垣市教育委員会  御中

与那国町教育委員会 御中

 

                                                自  由  法  曹  団

                                                団長 吉  田  健  一

 

 石垣市教育委員会及び与那国町教育委員会は、本年8月11日、両市町立中学校で2021年度から4年間使用する公民教科書として育鵬社版教科書を採択した。

 育鵬社版公民教科書は、国民主権よりも天皇の役割を情緒的に強調し、基本的人権を軽視して、日本国憲法及び平和主義を連合国から押し付けられた憲法であって「改正」すべきものであるかのように教え、国際紛争の平和的な解決よりも、自衛隊を海外に派遣する必要性を強調する内容となっている。その憲法に対する見方はあまりにも一面的で、教育基本法や学習指導要領に照らしても問題がある上、憲法について不正確あるいは不十分な記述がなされているため、高校入試問題でも他の教科書に比較して解きづらい場合が生じる。このことについて、私たち自由法曹団は、今回の教科書採択に先立って、育鵬社版公民教科書の問題点を明らかにする意見書を公表し、両教育委員会にも届けてきた。

 両市町では、これまでも育鵬社版公民教科書が採択されてきたが、これに対しては市民から強く批判がなされてきた。今回の採択は、かかる批判・反対の声を全く無視して行われたものである。

 また、八重山毎日新聞の本年8月12日付けの報道によれば、一部の教育委員からは、「他の教科書の選定は調査員の意見を反映している一方、公民については調査書で『指導しやすい』とされる東京書籍ではなく育鵬社が選ばれている」との指摘がなされたとのことである。両市町を含む八重山地区採択協議会では、2011年に規約に反する調査員選任や非公開無記名投票へのルール変更などを伴う不透明な手続によって育鵬社版教科書が選定され、竹富町教育委員会の離脱や、文部科学省の不当な介入を招いた歴史がある。今回また教育現場の意思を反映しないという異例の手続がとられたことは、採択手続の重大な瑕疵に当たると言わざるを得ない。

 採択された育鵬社版教科書で教育を受けることになる中学生は、人格的成長の途上の重要な時期にあり、育鵬社版教科書によって、上記のような一面的で偏った教育を受けることにより、生徒に回復しがたい重大な悪影響が及ぼされることが強く危惧される。

 私たち自由法曹団は、両教育委員会の今回の公民教科書の採択に対し抗議するとともに、改めて採択をやり直し、育鵬社教科書を採択しないよう求めるものである。

                                                            以上

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