2021年2月26日、「いのちのとりで裁判大阪地裁判決を歓迎する声明」を発表しました

カテゴリ:声明,活動報告,貧困・社会保障

PDFはこちら

生活保護引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)大阪地裁判決を歓迎し、
政府に対し同判決を受け入れ、生活保護引下げの早急な見直しを求める声明

 

2021年2月26日

自  由  法  曹  団

団長 吉  田  健  一

 

 2013年から3回にわたって行われた生活保護基準の減額改定を理由とする生活保護変更決定処分に対し、その取消しを求めて提訴した生活保護基準引下げ違憲訴訟(いわゆる「いのちのとりで裁判」)において、大阪地方裁判所第2民事部(森鍵一裁判長)は、2021年2月22日、上記生活保護基準の減額改定は、裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであり違法であると判示し、同保護変更決定処分を取り消す画期的な判決を言い渡した。自由法曹団は、誰もが「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利(生存権)を有することを定めた憲法25条1項にかなう本判決を歓迎するとともに、政府は同判決を受け入れ、上記生活保護基準の減額改定を直ちに見直すよう求める。

 同判決は、生活保護基準見直しの根拠とされた「デフレ調整」について、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて特異な物価上昇が起こった2008年を起点に取り上げて物価の下落を考慮した点や総務省が作成公表している消費者物価指数ではなく、厚労省が独自に算定した生活扶助相当CPIを採用することにより著しく大きい下落率を基に改定率を設定した点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、最低限度の生活の具体化という観点から見て、その判断の過程及び手続に過誤、欠落がある、と判断した。

 上記判断は、弁護団の主張・立証により明らかにした原告らの切実な生活実態を踏まえるとともに、客観的数値や専門的知見など事実と道理にもとづき導かれたものであって極めて合理的であるし、生存権を保障している憲法25条を無視して、生活保護という最低限度の生活をおくる原告らに対してさらなる切りつめを強要する政府の無慈悲な態度を厳しく断罪したものであり、高く評価できる。

 昨年来の新型コロナウィルス感染症の蔓延により、2020年11月時点で前年同月に比して生活保護申請件数が2.7%増加しており、生活保護に頼らざるを得ない状況の人々は増加している。しかし、それでも、日本における生活保護の捕捉率は、20%程度とされており、ヨーロッパ諸国等と比較すると著しく低いと言わざるを得ない。生活保護の利用自体を抑制するばかりか、生活保護基準の切下げによって生活保護利用者をさらに追い詰めてきた政府の態度は、生存権を保障した憲法の精神に反するものである。社会における最後のセーフティネットたる生活保護に充てる予算を減らすことばかりを考えるのではなく、日本社会における貧富の格差を是正し、誰もが幸せな生活を送ることができるようにすることこそが、政府の役割である。

 本判決がなされた今は、そのような政府方針への転換をする絶好の好機である。

 社会保障に対する政府の態度を根本的に改め、生存権が十分に保障される社会となるよう、自由法曹団は、政府に対し、本判決を受け入れ控訴して争うことなく、上記生活保護基準の減額改定を改めるとともに、これまでの社会保障に対する態度をも根本的に改め、充実した社会保障制度の構築を求めるものである。

以上

TOP