2021年9月14日付、「早急に臨時国会を召集し、新型コロナ対策の抜本的改善を求める声明」を発表しました

カテゴリ:声明,憲法・平和,明文改憲

早急に臨時国会を召集し、新型コロナ対策の抜本的改善を求める声明

2021年9月14日

自  由  法  曹  団
団長 吉  田  健  一

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。新規感染者数は、1日1万人程度に減ってきたとはいえ、これまでにない高水準で推移している。

 アベノマスク以来、これまでの安倍内閣・菅内閣による新型コロナ対策はことごとく失敗してきた。菅内閣は、昨年9月の発足後「Go Toキャンペーン」を継続・拡大させた結果、昨秋から冬にかけて劇的な感染拡大を招き、2021年1月に2度目の緊急事態宣言を発出する事態に陥った。その後も、緊急事態宣言の発令と解除を繰り返し、7月12日から、東京都等に4度目の緊急事態宣言を発令するに至り、3度の延長を経て9月末まで継続することとなっている。ところが、多くの世論に反して緊急事態宣言の発令下において、東京オリンピック・パラリンピックの開催を強行し、8月には新規感染者が1日2万人を超える感染爆発を招くに至った。

 こうした事態の中で、菅内閣は、重症患者以外は自宅療養を基本とするなど国民の命の軽視としか考えられない方針を打ち出し、実際に病院に入院できないまま自宅で命を落とした者も少なくない。また、すぐに撤回に追い込まれたものの、西村経済再生相による酒類販売事業者に対する飲食店との取引停止の要請や金融機関からの飲食店への圧力を求める要請等、法的根拠なく強権的に飲食店の営業の自由を制限する手法を画策していたことも忘れてはならない。さらに、経済産業省においておこなっている事業者に対する月次支援金は9月6日現在で、申請約130万件に対し、給付は約77万件にとどまっている。また、すでに受付が終了した一次支援金は申請自体が約57万件と低調に終わっている。持続化給付金が給付約424万件であったことに照らすと、現在の支援金制度は「利用しづらい」「給付まで時間がかかる」ものとなっており、この中で事業の継続を断念する経営者も相次ぎ、失業を余儀なくされた者も多数に上っている。まさに惨憺たる状況である。

 今求められるのは、これまでの新型コロナ対策の失敗の原因を抜本的に総括し、科学的、医学的知見や諸外国の実例に学んだ効果的な対策を打ち出すことであり、それは一刻の猶予も許されない。

 ところが、菅内閣は、2021年6月16日に通常国会が閉会した後、今日に至るまで臨時国会を開こうとしていない。7月16日には、衆議院議員136人の賛同議員の名簿を添えた憲法第53条後段の規定に基づく臨時国会の召集決定を求める要求書が提出されたが、加藤勝信内閣官房長官は9月1日の記者会見で、「召集時期については(憲法で)触れられておらず、内閣に委ねられている」と述べて、この召集要求には応えない姿勢を示した。

 しかしながら、憲法第53条後段は、臨時国会について「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定めている。召集の具体的な期限及びその会期は明文で定められていないが、「憲法第53条後段に基づく内閣の臨時会の召集については……単なる政治的義務と解されるものではなく、憲法上明文をもって規定された法的義務と考えられる。」のであり、「……召集の要求がされてから合理的期間内に臨時会を召集する義務があると解される」とされている(那覇地判2020年6月10日。岡山地判2021年4月13日も同旨)。

 衆議院解散の場合、総選挙の日から30日以内に国会の召集をしなければならないことになっており(憲法第54条第1項)、衆議院議員の任期満了や参議院の通常選挙の場合も、その任期満了あるいは任期が始まる日から30日以内(国会法第2条の3)の国会召集が定められている。選挙によって議員が入れ替わる場合ですら30日以内の召集が義務づけられているのであるから、議員が入れ替わることのない召集要求があった場合の内閣に義務付けられる臨時会召集のための「合理的期間」がこれを超えることはない。それ故、自民党の改憲草案においてさえ、要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならないとされているのである。

 しかし、憲法第53条後段に基づく召集の要求がなされた7月16日から既に約2か月を経過しているにもかかわらず、菅内閣は未だに臨時国会を召集していない。これは内閣の怠慢を通り越した憲法無視の態度であり、断じて許されない。

 菅首相は新型コロナ対応と自民党総裁選挙が両立しないとして、自身の任期切れに伴う自民党総裁選挙への立候補をしないことを表明したのであるから、一刻も早く臨時国会を召集し、新型コロナ対策の問題点を洗い出し、必要かつ効果的な施策や立法措置、予算措置の議論をしなければならないはずである。9月29日に自民党総裁選挙が予定されているが、一党の党首選びのために今の国民のおかれた苦難の状況を脇に置いて国会を召集しないことが正当化されるものでないことは当然である。

 自由法曹団は、菅内閣が憲法第53条をこれ以上ないがしろにすることなく速やかに臨時国会を召集し、国会においてこれまでの新型コロナ対策を抜本的に見直し、科学的、医学的知見に依拠した効果的な対策を直ちにとることを強く求める。

以上

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