2022年1月27日付、「2プラス2に抗議し政府に対し平和外交を求める声明」を発表しました

カテゴリ:声明,憲法・平和,米軍・自衛隊

2プラス2に抗議し政府に対し平和外交を求める声明

 

1 2022年1月7日、林芳正外務大臣、岸信夫防衛大臣、アントニー・ブリンケン国務長官及びロイド・オースティン国防長官が出席する日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開催され、同日、共同発表(以下「共同発表」)が発出された。
 昨年3月16日に実施された2プラス2において、日米は中国を名指しで批判し、台湾海峡の平和と安全を強調して、台湾有事を想定した日米同盟の強化を進めることを確認した。今回の2プラス2は、それを前提として日米軍事協力の内容をより具体化するものである。

 この間、日米は、対中国紛争を想定した共同軍事演習を繰り返し、一部の報道によれば、台湾有事の緊張が高まった際には南西諸島に攻撃用軍事拠点を置くこと等を内容とする共同作戦計画の原案も策定したという。また、コロナ禍にもかかわらず、昨年12月には、過去最大の防衛費7738億円を計上する2021年度補正予算が成立し、「思いやり予算」と呼ばれる在日米軍駐留経費負担についても、「同盟強靭化予算」と呼び変えた上、2022年度から2026年度の5年間で約1兆0551億円(年平均2110億円)との増額改定が日米間で合意された。共同発表は、このような日米同盟の深化を歓迎ないし賞賛している。

 共同発表は、「変化する安全保障上の課題に、パートナーと共に、国力のあらゆる手段、領域、あらゆる状況の事態を横断して、未だかつてなく統合された形で対応するため、戦略を完全に整合させ、共に目標を優先づけることによって、同盟を絶えず現代化し、共同の能力を強化する決意を表明した」として、より踏み込んだ強い表現で、日米が軍事協力を行うことを宣言している。
 日本は、米国に対し、防衛力を抜本的に強化することを表明し、本年中に目論まれている国家安全保障戦略等の改訂プロセスを通じて、ミサイルの脅威に対応するための能力を含め、国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する決意を表明した。林芳正外務大臣は、2プラス2後の記者会見の席で、「必要なあらゆる選択肢」には敵基地攻撃能力の保有も含まれると明言した。
 また、日米は、施設の共同使用、軍事関連技術の共同分析、情報共有の取組の強化等の連携を平時から強めるとともに、「必要があれば対処」するとして有事の際には共同で対処することを宣言した。日本の南西諸島を含めた地域における自衛隊の体制強化の取組み、辺野古新基地建設の継続、馬毛島への基地建設なども進めようとしている。
 このように、2プラス2の内容は、対中国武力紛争を想定して、日本がこれまでの「盾」としての役割を転換し、米国と平時から緊急事態に至るまで切れ目のない連携を強め、台湾有事が発生した際には共同で武力行使を行うことを宣言するものである。2プラス2の後、1月17日に開会した通常国会での施政方針演説においても、岸田首相は、敵基地攻撃能力の保有も含めあらゆる選択肢を検討して防衛力の抜本的強化に現実的に取り組む決意を表明した。この日本政府の姿勢を1月22日の日米首脳会談で伝えられたアメリカ政府は「空前のもの」であると評価したと報じられている。

 たしかに中国の軍事的脅威は否定できず、我が国は中国に対し国際法に従った行動を求めていかなければならない。
 しかし、2プラス2及び共同発表の内容は、米中間の緊張を高め、米中間の武力紛争を誘発するものであると言わざるを得ない。また、米中間の武力紛争において、日本の自衛隊が駆り出されることになりかねない。第2次安倍政権以降、日本の防衛費は増え続け、2022年度の防衛費は初めて6兆円を超えることとなったが、日米の軍事協力が強まることで今後もさらに防衛費が増大することも予想される。
 日本に求められる役割は、力によって覇権を獲得しようとする米国及び中国の行動に歯止めをかけ、平和外交により軍事衝突を回避することである。
 我が国は、既に米国との軍事協力を進めているが、対中国武力紛争を想定し、「敵基地攻撃能力」を保有し、いざとなればその行使も辞さずに「対処する」ことを宣言した共同発表の内容は、戦争放棄とそのための戦力の保持の禁止を定めた憲法9条に明確に違反するとともに憲法9条明文改憲に向けた地ならしともいえるものであり、断じて許されるものではない。
 自由法曹団は、2プラス2および共同発表に強く抗議するとともに、既に進展している日米の軍事協力を改め、日本政府に対し憲法9条を生かした平和外交を行うよう強く求める。

  2022年1月27日

自  由  法  曹  団
団  長   吉  田  健  一

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