2022年4月27日、「民事訴訟法改正案の拙速な衆議院通過に抗議し、参議院での慎重な審議を求める声明」を発表しました

カテゴリ:司法,声明,市民・消費者

PDFはこちら


 

民事訴訟法改正案の拙速な衆議院通過に抗議し、参議院での慎重な審議を求める声明

2022年4月27日

自  由  法  曹  団

団長 吉  田  健  一

 

1 2022年3月8日に衆議院に提出された民事訴訟法等の一部を改正する法律案(以下、「改正案」と言う。)は数々の問題点のあるにもかかわらず法務委員会での実質的な審議は同年4月13日、15日、20日の僅か3日のみで4月20日に衆議院を通過した。
 当該法案には、以下に述べる多くの問題点が明らかとなったにもかかわらず、十分な審議を経ることなく採決に至っており、拙速な審議であったものと言わざるを得ない。

2 現在国会に提出されている改正案は、当事者の意思に反してウェブ会議等による口頭弁論期日の開催を認めるもの、インターネットを用いる申立を訴訟代理人等に義務づけるもの、というIT化に関わる改正のみならず、IT化とは全く関係のない、審理期間を指定した期日から6ヶ月以内に限定するという法定審理期間訴訟手続を導入するといった問題点を含んでおり、憲法32条が保障する国民の裁判を受ける権利を後退させ、国民の裁判への信頼を失わせる内容となっている。当該改正案の問題点について、自由法曹団は、2022年3月30日、『「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」及び「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案」の問題点を指摘し、国民の裁判を受ける権利を尊重した法改正を求める意見書』にて指摘したとおりである。

3 改正案については衆議院法務委員会においても数多くの問題点が指摘された。法定審理期間訴訟手続に関しては、拙速で不十分な審理となるおそれ、訴訟代理人の選任を必須としないことの危険性、裁判官が当事者に利用を促すことが禁止されていないことの危険性、利用の可否についての裁判官の判断基準の曖昧さ、簡略化される判決の問題性、そして国内のテスト導入事例の検証や海外の事例調査すら行っていない実情などが指摘された。また、ウェブ会議での口頭弁論が直接主義、口頭主義、公開主義という訴訟原則に違反すること、インターネットを用いた申立の義務化についても、世論調査において反対が多数であることなども指摘されており、当該改正案については、より慎重な審議と内容の精査が必要不可欠であったことは明らかである。

4 かような問題点について精査されることなく、当該法案が拙速に衆議院を通過したことは、国民の裁判を受ける権利の保障の観点から極めて問題であり、自由法曹団は強く抗議する。
 参議院においては、前述の当該法案の問題点について慎重な審議がなされた上で、民事裁判手続における国民の裁判を受ける権利が保障されるよう修正がなされることを強く求めるものである。

以上

 

 

TOP