2023年1月31日、「敵基地攻撃能力保有の閣議決定に反対する市民集会」アピールをアップしました

カテゴリ:声明,憲法・平和

改憲問題対策法律家6団体連絡会/9条改憲NO!全国市民アクション共催

「敵基地攻撃能力保有の閣議決定に反対する市民集会」アピール

 

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1 岸田政権は、昨年12月16日、安保関連三文書の改定を閣議決定し、防衛費を5年間で計43兆円の大幅増とするとともに、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を新方針として決定しました。この閣議決定は、改定された文書自身が認めているとおり、日本の安全保障政策の大転換であり、憲法9条に基づく「専守防衛」を逸脱するものです。

2 日本は先の大戦において、中国などを侵略し、コタバルや真珠湾への奇襲攻撃により泥沼のアジア太平洋戦争に突入し、自国及び他国に対し多くの惨禍をもたらした反省から、2度と政府の行為によって戦争の惨禍を繰り返さないと決意して(憲法前文1項前段)、憲法9条を定めました。 憲法9条の下、「自衛のための必要最小限の実力組織」としての自衛隊は、「専守防衛」の方針とともに、①外国からの武力攻撃が発生しない限り武力を行使せず、その場合であっても、②他に手段がないときに限って、 ③その武力攻撃を排除するために必要最小限度の武力行使にとどめるという武力行使三要件(旧三要件)の制約を受けていました。また、日本政府はこれまで、性能上もっぱら相手国の壊滅的な破壊のために用いられる攻撃的兵器は、「戦力」にあたり憲法9条2項で禁止さると説明してきました。 しかし、2015年に成立した安保法制(戦争法)は、武力行使の旧3要件の①を、我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生した場合にも武力行使ができると改編し(新3要件)、集団的自衛権の行使を容認したほか、海外における米軍などの戦闘行為の後方支援活動も広く認めました。加えて、今回の敵基地攻撃能力の保有の閣議決定は、すでに安保法制によって揺らいでいた③の要件をさらに骨抜きにし、加えて憲法9条2項が禁じる攻撃的兵器の保有を認めるものです。これにより、憲法9条による制約は事実上取り払われ、自衛隊は、平和憲法の縛りを受けない「普通の軍隊」へと変わろうとしています。 政府は、先制攻撃をしないことを根拠に、「専守防衛」の方針には変わりないと強弁しますが、先制攻撃をしないことは、国連憲章上のルールであり、どの国の軍隊も守らなければならないものです。憲法9条は、単に国際法上違法な先制攻撃はしないとするにとどまらず、海外での武力行使はしない、相手国の領域を攻撃する兵器は持たないと定めている点にこそ独自の意味があり、「専守防衛」は、その憲法9条の精神にのっとり「他国からの武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度のものに限る」受動的な防衛戦略であることは政府自身も認めてきたことです。先の安保法制に加え今回の閣議決定が「専守防衛」を逸脱するものであることは明らかです。

3 また、現在、米中間の緊張関係を背景として、「台湾有事」が取り沙汰されています。安保法制によって集団的自衛権を行使することになった日本は、この「台湾有事」を契機にして米中戦争に発展した場合には、戦争に参加せざるを得ない状況にあります。敵基地攻撃能力の保有は、そのことも睨み、米国が日本に、これまでの「盾」だけでなく、「矛」も持たせたものだと見ることができます。安保法制によって日本は戦争が「できる」国に、敵基地攻撃能力の保有によって日本は戦争を「する」国になろうとしているのです。台湾有事にアメリカが軍事介入し日本が参戦することとなれば、軍事拠点となる与那国島、石垣島、宮古島、沖縄、奄美大島、馬毛島等の南西地域、九州をはじめとする日本全土が戦場となり甚大な被害が及ぶことは避けられません。

4 安保関連三文書改定のもう一つの大きな問題は、5年間で43兆円とされる大幅な防衛費増です。これにより、政府は、2027年には軍事費を現在の規模の約2倍とし、GDP比2%を達成させる目論みです。仮にこの目論みが達成されれば、日本は世界第3位の軍事大国となります。 しかし、政府が深刻な懸念と位置付ける中国は、今でも日本の6倍程度の軍事費を計上しており、その額は年々上昇しています。さらに、中国は、日本の5倍程度のGDPを有しているので、日本が防衛費を増額しようものなら、それに対抗して、簡単に防衛費を増やすことができます。「安全保障のジレンマ」によって、軍拡は、相手国のさらなる軍拡を招くだけであって、軍拡によっては、安全は永遠に得られません。
他方、国民生活は、物価高、社会保険料負担の増加によって苦しいものとなっています。岸田政権は、今回の防衛費大幅増に際して、戦後初の「防衛増税」をすることを発表していますが、国民の生活をさらに苦しくするものであって、国民の意向に逆行しています。実際に、世論調査を見ても、「防衛増税」は反対が賛成を大きく上回っています。「歳出削減」によって防衛費を捻出するとしても、社会保障費や教育費などが削られる危険があり、国民生活が圧迫されることに変わりはありません。すでに世界最悪の赤字状態にある日本の国家財政は、今回の無謀ともいえる防衛費増によって破綻の道に陥らざるを得ません。限りある資源や予算は、社会保障の充実、教育・子育て支援の強化等に充てられるべきです。

5 私たちは、安保法制(戦争法)の廃止を求めてきましたが、岸田政権による「密室」での安保関連三文書改定も許さず、敵基地攻撃能力の保有・防衛費の大幅増によって、戦争が「できる」国から戦争を「する」国へと日本を変貌させることを断じて許しません。 私たちは、市民と野党の共闘によって、安保関連三文署改定の閣議決定の撤回を強く求めるとともに、閣議決定に基づく防衛予算増や関連法案の成立に反対します。

2023年1月31日
「敵基地攻撃能力保有の閣議決定に反対する市民集会」参加者一同

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