2023年3月9日、「日野町事件における検察官の特別抗告に強く抗議し、改めて一刻も早い再審公判を求める」を発表しました

カテゴリ:声明,治安警察

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日野町事件における検察官の特別抗告に強く抗議し、改めて一刻も早い再審公判を求める

 

 本年3月6日、大阪高等検察庁(大阪高検)は、いわゆる日野町事件の第二次再審請求において再審開始を認めた大阪高等裁判所第3刑事部(石川恭司裁判長)の2022年2月27日付決定(以下「本決定」という。)に対して、特別抗告を行った(以下「本特別抗告」という)。本決定は、2018年7月11日に大津地方裁判所(今井輝幸裁判長)で出された再審開始決定(以下「原決定」という。)を維持し、検察官の即時抗告を棄却するというものであり、本来、これ以上の不服申立ての余地はなく、直ちに再審が開始されるべきものであった。
 本決定は、第一次及び第二次再審請求で開示された多くの新証拠に基づいて、あらためて新旧証拠を総合的に判断し、阪原さんを犯人と推認する確定判決を維持することには疑問があるとして、再審を開始するとした原決定を維持したものである。その論旨は、確定判決の犯人性の根拠として重視した2つの捜査について、捜査官による誘導の可能性も含めて疑問が生じたこと、アリバイについても虚偽と考えることには合理的な疑いがあり、この点を犯人性肯定の事情とした確定判決の判断部分は動揺をきたしていることを認定し、従前の判例に沿った判断過程を経て、再審開始決定を維持したものである。その内容に特別抗告事由が存在しないことは明白であり、大阪高検の本特別抗告は、実質的な理由なく再審請求審を徒に引き延ばし、再審公判を阻もうとするものと言わざるを得ない。

 一貫して無罪を主張していた阪原さんは、第一次再審請求中の2011年3月、病気で亡くなった。その無念の遺志を引き継いだ遺族が第二次再審請求を申し立ててから既に11年、再審開始を認めた原決定から本決定に至るまでだけでも、およそ4年半もの年月が経過している。原決定に対する検察官の即時抗告、本特別抗告が存在しなければ、速やかに再審公判が開始され、早急なる無罪判決の言い渡しが可能であった。
 本年件3月2日付「日野町事件における検察官の特別抗告を許さず、一刻も早い再審公判を求める声明」において述べた通り、わが国の刑事再審制度は、冤罪被害者の人権救済を目的とする制度であるが、あまりにも時機に遅れた救済では、人権救済の意味を失わせる。阪原さんのように冤罪を晴らすことなく再審請求の途中で亡くなり、あるいは高齢化する冤罪被害者が多数存在することを思えば、即時抗告はもとより、特別抗告も含めて検察官の再審開始決定に対する不服申立てを許すことなく、直ちに再審公判が開始される制度に改めるべきである。

 自由法曹団は、現行再審法の不備を糺し、再審請求段階での全面証拠開示や再審開始決定に対する検察官の不服申立て制度を禁止するなど、再審法を早急に改正するよう求めるとともに、無為に再審公判を先延ばしにしようとする大阪高検の本特別抗告に対し強く抗議する。同時に、自由法曹団は、すでに新証拠によって確定判決はもはや維持しえないことが明らかになっている本件において、阪原さんの無念を晴らし、一刻も早い名誉回復をはかるため、最高裁判所に対し、早急に特別抗告を棄却することを強く求めるものである。

 2023年3月9日
自     由     法     曹     団
団  長  岩 田 研 二 郎

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