2023年9月7日、「地方自治の本旨を無視して、辺野古新基地建設を巡る沖縄県知事の設計変更不承認処分に対する 国の違法な是正指示を適法とした最高裁の不当判決に断固抗議する声明」を発表しました

カテゴリ:声明,米軍・自衛隊

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地方自治の本旨を無視して、辺野古新基地建設を巡る沖縄県知事の設計変更不承認処分に対する
国の違法な是正指示を適法とした最高裁の不当判決に断固抗議する声明

 

1 最高裁第一小法廷(裁判長岡正晶裁判官)は、2023年9月4日、辺野古新基地建設にかかる国の設計変更申請を不承認とした沖縄県知事の処分(本件不承認処分)に対して国が行った承認を求める旨の是正指示(本件是正指示)について、「国の違法な関与」であるとして沖縄県がその取消しを求めた訴訟において、これを適法として、県の上告を棄却した。

2 沖縄県知事は、大浦湾側の軟弱地盤を改良するために水深70メートルの海底に7万本以上もの杭を打ち込む等の追加工事を盛り込んだ国の設計変更申請について、地盤の安定性への検討や環境破壊への配慮が不十分である等の理由で、2021年11月25日、公有水面埋立法の規定に基づき、本件不承認処分を行った。国(沖縄防衛局)は、これを不服として、国(国土交通大臣)に行政不服審査法上の審査請求を申し立てたところ、同大臣は、2022年4月8日、これを受け入れて、本件不承認処分を取り消す旨の裁決を行った(本件裁決)。しかし、そもそも本件不承認処分自体が行政不服審査の対象ではない。仮に対象になるとしても、行政不服審査法が私人の権利救済を目的とするものであるから、国が国を救済するなどというのは、同法の濫用であって、到底許されるものではない。本件是正指示は、違法な本件裁決を前提とするものであるから、当然に違法であり、また、今回の設計変更にかかる追加工事は、その安全性や環境保全への検討・配慮が不十分である以上、国と対等の立場にある沖縄県はこれを受け入れる義務はない。最高裁は、三権分立、地方自治の本旨に基づき、本件是正指示を「国の違法な関与」として取り消すべきであった。

3 にもかかわらず、最高裁は、国が私人になりすまして国から救済してもらうという制度の悪用としかいいようのない不当な本件裁決につき、何らの審理もせずに当然に適法・有効なものとしたうえで(本件裁決の違法・取消を求めた沖縄県の上告受理申立については、2023年8月24日付の決定で棄却している。)、設計変更の内容及び問題点には一切触れることなく、「行政庁がした裁決は関係行政庁を拘束する」などの形式論理のみに基づき、本件是正指示を適法とした。行政権の濫用をチェックするという司法の役割を放棄したうえで、憲法が保障する地方自治の本旨を無視して、ただひたすら国の政策判断を追認する恥ずべき不当判決といわなければならない。

4 「辺野古に新基地はいらない」は県民の意思である。埋立の是非を問う2019年の県民投票では有効投票総数の7割以上がこれに反対した。沖縄県の玉城デニー知事は、最高裁不当判決を受けて、「過重な沖縄の基地負担の軽減と、一日も早い米軍普天間基地の閉鎖撤去、辺野古新基地建設の断念を求めていく姿勢に変わりはない」と発言している。是正指示を適法とする判決が出たからといって、県民の理解なきまま、政権が強制手段に訴えるべきではない。自由法曹団は、県と県民の判断を支持して、ともに辺野古新基地建設の阻止に向けてたたかうものである。岸田政権は、これ以上の押し付けを止め、沖縄の民意と地方自治の本旨を尊重し、普天間基地の運用停止・閉鎖撤去、辺野古新基地建設の即時中止・断念に踏み出すべきである。

5 自由法曹団は、今回の最高裁不当判決に断固として抗議するとともに、今後も、沖縄の人々と力をあわせて、沖縄の基地負担軽減、普天間基地の閉鎖撤去、辺野古新基地建設の即時中止・断念を求めて全力で取り組むことを表明する。

 

2023年9月7日

              自 由 法 曹 団
団長 岩田 研二郎

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