2023年12月27日、辺野古新基地建設をめぐる軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更について沖縄県知事に承認すべきことを命じた福岡高裁那覇支部の不当判決に抗議し、沖縄県の上告を支持する声明

カテゴリ:声明,米軍・自衛隊

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辺野古新基地建設をめぐる軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更について沖縄県知事に承認すべきことを命じた福岡高裁那覇支部の不当判決に抗議し、沖縄県の上告を支持する声明

 

1 福岡高裁那覇支部(裁判長三浦隆志裁判官)は、2023年12月20日、辺野古新基地建設にかかる国の設計変更申請に対して不承認を貫く玉城デニー沖縄県知事から権限を奪い、地方自治法245条の8第6項に基づき本件変更申請を承認すべきことを命じる不当判決を言い渡した。
 沖縄県は不承認を貫き、12月27日、最高裁に上告したが、国は工事の設計変更承認を28日に代執行すると記載した通知を沖縄県に発送しており、来年1月にも軟弱地盤が存在する大浦湾の工事が着手されることになる。

2 沖縄県知事は、最深90メートルに及ぶ大浦湾側の軟弱地盤を改良するために、沖縄防衛局の試算でも9300億円の費用をかけて海底に7万本以上の砂杭を打ち込む等の追加工事を盛り込んだ国の設計変更申請について、地盤の安定性への検討や環境破壊への配慮が不十分である等の理由で、2021年11月25日、公有水面埋立法の規定に基づき、設計変更申請を不承認とした。これらの設計変更計画がかかえる矛盾は何一つ解決されていない。こうした状況の中で、本来国と対等な立場にある沖縄県が設計変更を受け入れる義務はなく不承認は適法であって、福岡高裁那覇支部は、地方自治の本旨に基づき、国の請求を棄却すべきであった。

3 それにもかかわらず、福岡高裁那覇支部は、不承認が放置されれば普天間基地の危険性が除去されないとして、沖縄県が不承認を貫くことを社会公共の利益を侵害するなどと断じた。しかし、県が主張するように、県民の生命・身体の安全性の確保と民意や環境への負荷への配慮などこそが公益であると考えるべきである。埋立の是非を問う2019年の県民投票では有効投票総数の7割以上が埋立に反対したのであって、「辺野古に新基地はいらない」は県民の民意である。県が不承認を貫く背景には、沖縄がアジア太平洋戦争において捨て石とされ、凄惨な沖縄戦で筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられ、終戦後も本土から切り離され米軍の施政権下において基地被害にさらされ、復帰後もその被害が続発していることに対する県民の怒り、基本的人権の獲得を求める強い県民の不屈の闘いの歴史があるからである。
 さらに、福岡高裁那覇支部は、知事の設計変更申請の不承認について代執行手続以外の方法で是正することは困難であるとする国の主張を鵜呑みにし、県が求める対話による解決は地方自治法に照らした代替策に当たらないと退けた。しかし、県は、沖縄防衛局の設計変更承認申請の前から今日まで再三にわたって国に対し辺野古新基地建設問題を解決するための対話の場を設けるように求めてきた。これに一切応じなかったのは国である。地方自治法が代執行の要件を厳しくするのは、地方自治の本旨に照らして地方自治体の権限を尊重するからである。地方分権の下、対等・協力の関係にあるべき国と地方自治体の関係に鑑みれば、国が地方自治体の権限を奪うという最終手段である代執行を認めることには極めて抑制的でなければならない。本判決は、こうした立場に逆行するものであり、地方自治の在り方そのものを根底から破壊するものである。他方、福岡高裁那覇支部は、付言として、辺野古新基地建設をめぐる一連の問題は国と県が対話を重ねることを通じて抜本的解決が図られることが強く望まれるとしている。相矛盾する判断といわざるを得ない。

4 岸田政権は、民主主義の基盤である民意と地方自治の本旨を尊重し、普天間基地の即時無条件撤去、辺野古新基地建設の中止に踏み出すべきである。

5 自由法曹団は、今回の福岡高裁那覇支部の不当判決に断固として抗議し、最高裁に上告した県と県民の判断を支持し、ともに普天間基地の即時無条件撤去、辺野古新基地建設の阻止に向けてたたかうものである。

2023年12月27日

自 由 法 曹 団 
団長 岩田研二郎

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