2025年5月15日、「日本学術会議廃止・解体法案の衆議院本会議での可決に抗議し、 参議院での廃案を求める声明」を発表しました
日本学術会議廃止・解体法案の衆議院本会議での可決に抗議し、参議院での廃案を求める声明
1 本年3月7日に国会提出された日本学術会議廃止・解体法案は、5月13日、衆議院本会議で自民党、公明党、日本維新の会などの賛成多数により可決された。
本法案は、現行の日本学術会議を事実上解体させ、政府による権力的介入・統制が可能となる新たな「科学者の代表機関」を作ることを内容とするなど極めて重大な問題を抱える。それにもかかわらず、わずか3日の実質審議で強行採決に至ったことは、立法府としての責任を放棄するに等しく、断じて容認できない。
2 衆議院における審議では、「科学者の総意の下に」「独立して職務を行う」と規定する現行日本学術会議法の文言が削除されていることや、政府が学術会議の人事、活動、財政にわたって介入する仕組みが幾重も設けられていること、学術会議の同意を得ないまま組織形態を変更すること等を理由に、学術会議の自律性・独立性に対する強い懸念が指摘された。政府からの独立性を徹底するためと説明されている本法案について、独立性強化どころか逆にこれを侵害することとなる懸念が存在する以上、本法案は撤回されなければならない。
また審議では、政府による学術会議の人事・運営に対する介入の仕組みが、学問の自由(憲法23条)の侵害につながることへの強い懸念も指摘された。政府に学問への介入の道を開くことは、学術会議のみならず、社会全体に学問、言論の自由の萎縮を引き起こす深刻な問題があるところ、衆議院ではこの問題に対する審議も全く深まらなかった。
3 加えて審議では、「(学術会議は)防衛に関する研究を拒否し続けている」「今後は防衛技術の研究に貢献していただきたい」との賛成討論がなされるなど、自民党、日本維新の会所属議員から、学術会議の軍事研究にかかる基本姿勢に対する反感が露骨に表明された。
そもそも本法案は、日本学術会議が軍事目的のための科学研究を行わない立場を堅持してきたことに対して、菅内閣総理大臣(当時)が、日本学術会議が推薦した会員候補者6名の任命を拒否して人事に介入したことに端を発して日本学術会議の組織改編の議論を本格化させ、同議論の帰結として策定された経過がある。本法案のねらいが、軍事研究をはじめとする政府や財界の意に沿う方向へと学術界を転向させようとする点にあることは明らかであるところ、これは平和主義の理念に真っ向から反する。
また政府からは、新設される「会員の解任」規定を通じて「特定のイデオロギーや主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」などの答弁がなされ、思想・信条に基づく会員の選別までもが予定されていることも明白となった。本法案は、学問の自由のみならず、思想良心の自由や表現の自由をも脅かすものである。
4 本法案については、学術会議自身が、国会に対して法案の修正を求める決議を採択しているところ、参考人質疑では、光石衛同会長からも、国会審議で懸念が払拭されたとは言えず、会員の意思としては、条文の修正を求める旨を強調する意見が述べられた。かかる懸念を国会が無視することは許されない。
私たち自由法曹団は、数々の重大な問題を抱える本法案が衆議院本会議で可決されたことに対して強く抗議するとともに、参議院での徹底審議と本法案の廃案を強く求める。
2025年5月15日
自 由 法 曹 団
団長 岩田研二郎