2025年6月12日、「日本学術会議解体・廃止法の成立に強く抗議する声明」を発表しました
日本学術会議解体・廃止法の成立に強く抗議する声明
1 2025年6月11日、参議院本会議において、日本学術会議解体・廃止法(日本学術会議法人化法。以下「本解体法」という。)が自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数により成立した。
本解体法は、学術会議の独立性を奪い、これを時の政権の意向に沿う別組織につくりかえる学術会議解体・廃止法というべきである。自由法曹団は、本解体法の成立に強い抗議の意を表明する。
2 国会における審議では、「科学者の総意の下に」「独立して職務を行う」と規定する現行日本学術会議法の文言が削除されていることや、政府が学術会議の人事、活動、財政にわたって介入する仕組みが幾重も設けられていること、学術会議の同意を得ないまま組織形態を変更すること等を理由に、学術会議の自律性・独立性に対する強い懸念が指摘された。
ところが自公及び維新は、学術会議の独立性の確保を趣旨とする立憲民主党からの修正案を一顧だにせず、同修正案は参議院内閣委員会において直ちに否決された。独立性強化どころか逆にこれを侵害することとなる懸念が解消されないまま本解体法が成立したことの問題は重大である。
また審議では、政府による学術会議の人事・運営に対する介入の仕組みが、学問の自由(憲法23条)の侵害につながることへの強い懸念も指摘された。政府に学問の自由への介入の道を開くことは、学術会議のみならず、社会全体に学問、言論の自由の萎縮を引き起こし、ひいては民主制の形骸化につながる深刻な問題がある。このような危険性があることは、米国トランプ政権の下で起きている大学への攻撃の事態を見ても明らかである。学問の自由に対する重大な懸念も国会審議で置き去りにされたことは極めて問題である。
3 加えて審議では、「(学術会議は)防衛に関する研究を拒否し続けている」「今後は防衛技術の研究に貢献していただきたい」との賛成討論がなされるなど、自民党、日本維新の会所属議員から、学術会議の軍事研究にかかる基本姿勢に対する反感が露骨に表明された。本法案のねらいが、軍事研究をはじめとする政府や財界の意に沿う方向へと学術界を転向させようとする点にあることは明らかであるところ、これは平和主義の理念に真っ向から反する。
また政府からは、新設される「会員の解任」規定を通じて「特定のイデオロギーや主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」などの答弁がなされ、思想・信条に基づく会員の選別までもが予定されていることも明白となった。本解体法は、学問の自由のみならず、思想良心の自由や表現の自由をも脅かすものである。
4 学術会議は本解体法について、会の活動や会員選考の独立性、国庫による安定した財政基盤などナショナルアカデミーに必須の5要件を充足する決議と声明を採択して法案修正を求め、国会の審議でも、同懸念点は学術会議会員によって繰り返し表明された。国会が学術会議の声を無視して本解体法の成立を強行したことは、科学者と政治の間に克服し難い禍根を残したと言える。
5 自由法曹団は、本解体法が可決・成立したことに対して強く抗議するとともに、科学者・市民と連帯して、自律的で独立したナショナルアカデミーとしての学術会議の存続と学問の自由を守り、学術の軍事動員を許さない取り組みをいっそう強める決意を表明する。
2025年6月12日
自 由 法 曹 団
団長 岩田研二郎