2026年7月27日 「自衛隊中央情報隊による違法なプライバシー侵害について調査・解明し、 再発防止策を公表すること等を求める声明」を発表しました

カテゴリ:声明,憲法・平和,秘密保護,米軍・自衛隊

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自衛隊中央情報隊による違法なプライバシー侵害について調査・解明し、
再発防止策を公表すること等を求める声明

 

 2026年7月27日

自  由  法  曹  団
団  長  黒 岩 哲 彦

1、2026年7月23日、熊本日日新聞は、陸上自衛隊中央情報隊(朝霞駐屯地)の対外情報部門である「現地情報隊」が、日本人の大学教授やNPO法人代表ら市民を対象に、「愛国心」や「対自衛隊感情」といった思想信条に関する情報に加え性的嗜好といった極めて私的な情報を組織的に調査・収集しているとみられることを報じた。
 その後も連日、続報がなされており、これらの報道によれば、同部隊は、現地の情報はもちろん、対象者の氏名、住所、電話番号、愛国心といった思想信条、交友関係、さらに性的嗜好や異性関係、身体的特徴といった極めて私的な情報まで収集し、『個人BSD(ベーシックソースデータ)』という成果報告書に記録して報告しているという。こうした個人情報の収集と保管について対象者の同意は得ていない旨を元隊員が証言しており、集められた情報は数千人分に上る可能性がある、とされている。
 防衛省はこの記事の内容の真否についてコメントをしていないが、記事の中で引用されている資料の写真も掲載されており、記事中の元隊員の証言内容も具体的で、実際に自衛隊の情報部隊が過去に起こしたプライバシー侵害事件とも符合しており、信憑性は高いと判断される。

2、自衛隊は、以前も、違法なプライバシー侵害の調査をおこなっている。自衛隊情報保全隊(市ヶ谷駐屯地)による市民監視が問題になった事件で、仙台高裁平成28年2月2日判決(判例時報2293号18頁)は、市民による「医療費負担増の凍結・見直し」、「04国民春闘」、「年金改案反対」、「原水爆禁止の会」、「右翼による北方領土の日の集会への参加の呼びかけ」、「年金改悪反対」、「消費税増税反対」に関する各街宣活動等や、「核兵器廃絶を求める署名活動」に関する情報収集を行っていたことを認定し、プライバシー侵害があったと認定している。
 このため、本年の特別国会で成立した国家情報会議設置法の審議に際して、自由法曹団は、上記の事件を含む情報機関によるプライバシー侵害事件の例をあげて、国家情報会議の設置により、警察や自衛隊の情報機関がより一掃プライバシー侵害に走る危険があることを指摘して同法律の成立に反対した(2026年4月30日付意見書)。

3、政府は、5月12日の参議院内閣委員会における塩村あやか議員(立憲民主党)の質問に対する木原官房長官の答弁において、「政府批判のデモや集会、市民活動、労働運動、マイノリティーの権利擁護などの活動に参加したことのみをもって、その参加者の動向等が本法案の第3条に規定される国家情報会議の調査審議事項の対象となることや、各省庁に対し情報活動の基本的な方針として示されるということはおよそ想定されていない」、「個人情報やプライバシーの保護に関して申し上げれば、個人情報保護法、公文書管理法、情報公開法などの関係法令に定められたルールに従うこと、これも当然のことであり、各省庁の情報活動は、こうした原理原則にのっとりながら、これまでと変わらない権限の範囲内で、所管大臣の監督の下、適正に行われるものであります。」、「国家情報会議や国家情報局は、その所掌事務の遂行に必要な範囲を超えて個人情報等を各省庁に求めることはいたしませんし、その必要もございません。」と述べて情報機関によるプライバシー侵害の危険を否定した。
 また政府は、5月21日の参議院内閣委員会、法務委員会、外交防衛委員会連合審査会において、当団団員でもある山添拓議員(日本共産党)が、政府が設立した事業団である動燃(動力炉・核燃料開発事業団)において労務課と公安調査庁、茨城県警が連携して職員の傾向調査をおこない、対象者をランク分けして差別処遇をおこなっていたことを裁判所が処断したことを指摘して、「こうした情報収集、事業者に対する提供、変わらないと言ってこれからも続けるのでしょうか。」と問うたのに対し、木原官房長官が、「関係機関が行う今参考人が申し上げたような各種の活動が、これが関係法令等を遵守した上で適正に行われるべきこと、これは当然であると考えております。組織として必要な業務管理が行われることや、また個人情報保護法を含む関係法令についての理解が徹底されることが重要であると考えています。」と述べて、関係法令を遵守した活動がなされるべきと答えていた。

4、こうした政府答弁は他の委員の質問においても繰り返されていた。しかし、今回の熊本日日新聞によって暴露された情報機関による情報収集活動の実態は、上記の政府答弁と矛盾している上、その違法性は極めて深刻・重大である。自衛隊の情報機関は政府答弁とは矛盾する違法な活動をおこなっていたのであり、これは熊本日日新聞が指摘するようにシビリアンコントロールがきいていないことを意味する。 
 また、小泉防衛大臣は24日、会見において、現地情報隊の活動について「必要な情報は報告されている。」と述べたが、そうだとすると政府黙認のもとでおこなっていた可能性がある。そうなれば、政府が違法な活動を黙認していたことになり、木原官房長官は国会において虚偽答弁をおこなった疑いが出てくる。
 さらに、同部隊が作成していた個人BSD報告書は職務行為として作成された公文書にあたるものであるから、これが朝霞駐屯地ほか陸上自衛隊内部で保管されていない場合には公文書管理法違反の問題も出てくる。
 小泉防衛大臣は、24日の会見において、「現時点で不適切な活動を行ったことは確認はされていない」などと調査もしていないうちからこの事件をなかったことにしようとするコメントをしているが、権力機関によるプライバシー侵害の脅威にさらされている市民の側からすれば言語道断であり、大臣として失格と言わざるを得ない。

5、本問題は政権の能力と姿勢の両方が問われる問題である。
 政府は、情報機関が隠れて市民のプライバシーを違法に侵害する情報収集活動をしていたことをどのように説明するつもりであるのか。また、この「現地情報隊」の活動について報告を受けて明示または黙示の承認をあたえていたのかどうか、万一報告を受けていなかったのであれば、なぜそのような情報管理漏れが生じていたのか、速やかに調査をおこない真摯な説明が求められるところである。
 また、木原官房長官は、前記の塩村議員の質問に答えて「国家情報会議で作成、公表を検討しております政府の情報活動の中長期的な推進方策においては、個人情報やプライバシーの保護を無用に侵害する情報収集や政治的中立性を損なう情報収集は行わないものであることなどについて、その具体的方策を含め検討していくものと考えています。」と述べていたが、本件を受けて情報機関による無用にプライバシーを侵害する情報収集活動をおこなわないための具体的方策をいつまでに、どのような内容で公表するのか、それともうやむやにするのか。この点も、速やかに真摯な説明が求められるところである。
 そして、政府が国家情報会議設置法の審議に際してやらないと言っていた事態が発覚した以上、再発防止策がとられるまでは情報機関による市民の違法なプライバシー侵害が続く危険が大であると言わざるを得ない。
 よって、自由法曹団は、今回の熊本日日新聞の報道を受けて、政府に対し、
① 陸上自衛隊中央情報隊が、報道にかかる違法な情報収集活動を行っていたかどうか、行っていたとすれば、その理由・目的を調査し、さらにこうした活動を抑止できなかったことの原因究明をおこない、市民に向けて説明をおこなうこと、
② 情報機関による無用なプライバシー侵害をおこなう情報収集活動をおこなわないための具体的方策ないし再発防止策の説明をおこなうこと、 
③ この①および②が果たされるまで、政府が自衛隊内の中央情報隊や情報保全隊など情報機関による市民を対象とした情報収集活動は一切停止することを宣言すること、
 をそれぞれ求めるものである。

以上          

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