実効性ある包括的ハラスメント禁止法の制定を求める

カテゴリ:労働,声明

実効性ある包括的ハラスメント禁止法の制定を求める
                           
1 事業者にハラスメント防止措置義務を定めた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」(いわゆる女性の活躍推進法の改正案、以下「内閣提出法案」)の審議が昨日衆議院厚生労働委員会で始まった。初日から参考人質疑を開始し、本日も終日審議するという異例の速さで審議が進められようとしている。

2 この参考人質疑の中でも、内閣提出法案にはハラスメント禁止規定がないため行政が違法行為の認定をできない、ハラスメント行為者に対して勧告ができない、措置義務違反を指摘する労働局側の人員が不足している、セクハラは2006年から措置義務の定めがありながら減少していないなど、ハラスメントの予防について実効性がないとの指摘があった。また、女性のセクハラ被害の実態は深刻であり、労働者だけでなく就職活動を行う学生(就活生)や業務委託従事者が被害を受ける場合、職場だけでなく営業先、顧客などから被害を受ける場合等、多岐にわたっていることや、強制性交に至る深刻なもの、報復を恐れて誰にも相談できないケースなど様々な実態も紹介された。

3 参考人の中には、セクハラを含めハラスメントを禁止すべきか今後中長期的に検討すべきであるという意見もあったが、昨年の労働政策審議会の議論でも、ハラスメントは人格権の深刻な侵害、すなわち人権侵害であることを前提に議論していた。また、ハラスメント相談は労働局の受ける相談で最も件数が多くなっており、もはや放置できない人権侵害であることは明白で、中長期の検討に委ねることなど許されない。ハラスメントという現に発生している人権侵害を直ちに禁止し、その実効性ある救済を図る必要があることは明白である。

4 ハラスメント行為により、労働者が出社できなくなったり、うつ病に罹患したりして職業生活から遠ざかる例、ひいては自死に至る例もあるのであるから、立法府が実効性のない措置義務を事業者に課すにとどまるなら、立法不作為の責任も問われることとなろう。
 
5 自由法曹団は、ハラスメントや差別のない人間性豊かな職業生活を送る権利は、憲法13条に保障された幸福追求権の一内容であることに鑑み、セクハラを含むハラスメントを防止し人権救済を図る必要から、内閣提出法案に対し、①ハラスメント定義部分につき、「労働者」に就活生、業務委託従事者、「職場」に営業先、顧客などを含む規定に修正すること、②何人もハラスメントを行ってはならないという包括的禁止規定を法案に盛り込むこと、③ハラスメント行為が民事罰の対象となることを明記すること、④調停においては、調停案を受諾しない場合にはハラスメント認定をした上であっせん案を公表できる制度を加えること、⑤セクハラの定義については、人事院規則の内容を定義として採用して、何人にも禁止し、セクハラ行為が民事罰の対象となるとの定めを加えること、との修正を行うよう求める。

6 本年6月のILO総会で採択予定のハラスメント禁止条約は、包括的なハラスメント禁止条約であり、内閣提出法案のような実効性もなくハラスメントを包括的に禁止していない法律案は、ILOハラスメント禁止条約案とあまりにもかけ離れている。
  よって、自由法曹団は、内閣提出法案について、実質的にILOハラスメント禁止条約案の水準に達するように、ハラスメントを包括的に禁止する実効性のある「ハラスメント禁止法」に修正することを要求するものである。

2019年4月17日

                                                                                                                                                    自由法曹団 団長 船尾 徹


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