2025年6月21日常任幹事会において、「イスラエル及びアメリカによるイランへの攻撃の即時停止及びイランによる報復措置の自制、 日本政府に国際社会における法の支配を徹底する立場に立つよう求める決議」を採択しました

カテゴリ:国際平和,憲法・平和,決議

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イスラエル及びアメリカによるイランへの攻撃の即時停止及びイランによる報復措置の自制、
日本政府に国際社会における法の支配を徹底する立場に立つよう求める決議

 

1 2025年6月13日、イスラエル軍は、イラン国内の核関連施設をはじめとする100か所以上をイスラエル軍機約200機で空爆するとともに、イラン革命防衛隊総司令官や科学者らを殺害したと発表した。イスラエルは、14日以降もその攻撃を継続し、石油貯蔵施設などの燃料関連施設への攻撃も行った。さらに、イスラエルによる攻撃は、イラン国営放送局に対しても行われ、生放送中のスタジオが爆撃される映像が世界中で報道されている。同局によれば、爆撃によって職員3人が死亡したとされる[1]
 それに対して、イランは、イスラエルへの報復措置として無人機100機以上を発射するとともに、数百発の弾道ミサイルを発射しており、両国は事実上の交戦状態となった。
 6月21日、アメリカ軍が、イスラエルに加担してイランの3つの核施設を武力攻撃し、参戦した。これは、中東と世界の平和と安定に深刻な打撃を与えるものであって、断じて許されない。
 イラン保健省によれば、13日のイスラエルによる攻撃開始以降、21日までの間にイラン側で430人が死亡し、3500人以上が負傷したと報じている[2]。イスラエル軍による空爆は続いており、アメリカ軍による攻撃も加えると、さらに犠牲が拡大するおそれが極めて高い状況である。

2 イスラエル軍は、「イランの核開発計画への先制攻撃を行った」との声明を発表している。そして、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今回のイランへの攻撃を行った理由について、「イスラエルの生存を脅かす明白かつ差し迫った危機」があり、攻撃は「自衛のための措置」と正当化し、「脅威が取り除かれるまで作戦は継続する」と述べた。
 しかし、国際連合憲章は、平和的手段、すなわち国際の平和と安全、正義を危うくしない方法で紛争を解決する義務を加盟国に課しており、武力による紛争の解決を禁じている(国連憲章第33条)。今回のイスラエルによるイランに対する軍事攻撃は、イスラエル自らが認めるように「先制攻撃」であって、国連憲章と国際法に違反することは明白であり、いかなる理由であっても断じて許されない。中東において戦火を拡げる無法な武力攻撃は直ちに中止されるべきである。また、イスラエルが主張する「生存を脅かす明白かつ差し迫った危機」について具体的な主張は明らかではなく、国連憲章51条に規定される自衛権の行使には到底該当しない。イスラエルによる攻撃は、明白に、国際法及び国連憲章違反の武力行使であり、容認されるものではない。
 アメリカ合衆国が、イスラエルに加担し、武力攻撃を行ったことも国際法及び国連憲章に違反するものであって、厳しく断罪されるべきである。
 また、核開発を巡る問題は国際原子力機関(IAEA)を含む枠組みの中で協議が行われており、この枠組みの中で解決すべき問題である。イスラエルこそ直ちに核不拡散条約(NPT)に加盟し、自国の核施設に対するIAEAの査察を受け入れるべきである。イスラエルの今回の行為は、核開発をめぐる問題の平和的な解決を妨げるものであって、まったく正当性はない。実際、イランがアメリカ合衆国との間で2025年4月から行っていたイランに対する経済制裁解除も含めた核開発問題に関する協議がイスラエルによる攻撃で中止となっている。
 核関連施設をねらった攻撃によって放射性物質が飛散すれば広範囲にわたって甚大な被害をもたらすおそれがあるのであって、この点からもイスラエル及びアメリカによる武力攻撃は許されるものではない。IAEAのグロッシ事務局長は、6月13日の理事会において、「いかなる状況においても核施設への攻撃は許されない」、「すべての当事者に最大限の自制を求める」と訴えている。

3 日本政府を含む国際社会は、こうしたイスラエルの無法な武力攻撃に対し、これを厳しく非難し、その中止を即刻求めるべきである。
 にもかかわらず、6月16日、カナダで開催された主要7か国首脳会議(G7)において、G7諸国が、イスラエルによるイラン攻撃に関して、「我々は、イスラエルは自国を守る権利を有することを確認する。我々は、イスラエルの安全に対する我々の支持を改めて強調する。」、「イランは、地域の不安定及び恐怖の主要な要因である。」という内容の共同声明を出し[3]、反イランの立場を鮮明にし、イスラエルによる攻撃を容認したことは厳しく非難されなければならない。
 他方、国際社会ではイスラエル批判が相次いでいる。国連安全保障理事会において、アルジェリア代表及びパキスタン代表は、イスラエルの行動を国際法違反、国連憲章違反と批判したうえで、イスラエルは、パレスチナ・ガザ攻撃、イエメン、シリアなどへの攻撃も含め、一貫して国際法を故意に踏みにじっていると非難している[4]。英国の反核団体「核軍縮運動(CND)」及び日本原水爆被害者団体協議会はじめとする世界の平和団体、サウジアラビア、南アフリカなどの世界各国も、イスラエルによるイランへの攻撃を非難している[5][6]

4 自由法曹団は、イスラエル及びアメリカに対し、直ちにイランに対する武力攻撃を停止し、国際法に基づく秩序を遵守し、イランの人々が当然に有している生命、身体、財産、居住の権利、移動の自由、教育を受ける権利その他の基本的人権すべてを保障・尊重するよう強く求める。
 また、イランに対しては、事態をエスカレートさせる報復を自制することを求める。 
 さらに、日本政府に対しては、イスラエル及びアメリカに対して、即時停戦を強く求めるとともに、国際社会における法の支配を弱め・破壊する行為に対して敢然と立ち向かい、国際法遵守を求める立場から国際社会に働きかけ、誰もがひとしく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存できる世界の実現に向けた先頭に立つよう求める。

 

2025年6月21日

自由法曹団常任幹事会

 

[1] https://digital.asahi.com/articles/DA3S16237600.html?iref=pc_shimenDigest_top01
[2] https://digital.asahi.com/articles/AST6P449ZT6PUHBI020M.html?iref=pc_ss_date_article
[3] https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100861738.pdf
[4] しんぶん赤旗6月15日付3面「イスラエルによるイラン攻撃 安保理緊急会合 各国から次々 「国際法に違反」」
[5] しんぶん赤旗6月15日付国際欄「イスラエルのイラン攻撃を非難 核のない中東 外交で」
[6] しんぶん赤旗6月19日付1面「イスラエルを非難 日本被団協総会 停戦訴え」

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